ヒグのサッカー分析ブログ

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充実のクリーンシート~明治安田生命J2第12節 ロアッソ熊本vsベガルタ仙台~

 さて、今回はロアッソ熊本戦を振り返ります。5連戦の2戦目。

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スタメン

 ベガルタ仙台は、前節・FC琉球戦で2-0の勝利。久々のクリーンシートを達成した。ここまでゴールがなかったカルドーゾにも得点が生まれ、またケガ人が徐々に帰ってくるなどポジティブな話題が絶えない。5連戦の2戦目はロアッソ熊本との対戦。琉球同様にボール保持を基軸とするチームであり、仙台としてはいかに相手の空けるスペースを利用できるかがポイントになる試合となった。

 前節から2人の変更。前節負傷交代した石原に代わって内田。ボランチにはフォギーニョがスタメンに戻った。

 一方のロアッソ熊本は、前節・ファジアーノ岡山と対戦し1-1のドロー。J2に返り咲いた今年は大木武監督らしいパスを細かく繋いでいくスタイルと若手の躍動が相まって大宮や長崎、ヴェルディに勝利している。ホーム連戦となる今節は3試合ぶりの勝利を目指しての試合だ。

 こちらも前節から2人のメンバーを変更。キーパーに田代、左ウイングバックに上村が起用されている。またベンチにはディフェンダー登録の選手がおらず攻撃的なメンバーが名を連ねている。

 

前半

(1)特殊な熊本のボール保持に対する対抗策

 序盤は、琉球戦同様にチャンスを作り出せた仙台だったが、次第に熊本がボールを保持する展開になった。

 それでも仙台は落ち着いて守れていたのは、特殊な熊本のボール保持に対してしっかり準備してきたからだった。まずはその辺りを見ていきたい。

 熊本のボール保持を整理すると、3バック+河原のビルドアップ隊からスタートする。ボールサイドには人を集めて同数または数的優位を作り出す。逆サイドではウインガーが外に張り出し、ウイングバックはシャドーのポジションを取ることで全体のバランス確保とクロスに対して侵入することが求められていた。

 熊本は同サイドで崩していく、もしくは相手守備陣をボールサイドへ集結させて、手薄になった逆サイドへ展開。そこからウインガーが仕掛けてクロスを上げることが大まかなパターンとなっていた。

 熊本の必殺技はゴール方向へ向かうアーリークロスだった。熊本はウインガーがサイドに対して利き足が逆になっており、ペナ角付近でボールを持つとゴール方向へクロスを上げることを狙っていた。ゴール方向へクロスを上げることで、そのままゴールへ向かう可能性もあるし、守備者は背走し、攻撃者は前向きで飛び込めるので非常に厄介だ。前節・岡山戦の坂本のゴールもこの形での得点だった。

 

 そんな熊本に対して仙台はボールサイドで奪いきることを徹底していた。起点となる左右バック(黒木とイヨハ)にはサイドハーフが出てプレッシングを開始する。ウイングバックにはサイドバックが出て行き、行けないときはサイドハーフがプレスバックを行う。アンカーの河原には2トップの1人が、竹本にはボランチが、ウインガーと1トップの髙橋にはセンターバックが付くといった形でマークをハッキリすることで、熊本のボール保持をサイドに追い込んでいった。

 特に逆サイドへ展開させないために横パスへの意識は強く、河原や竹本には厳しく行くことで、展開させない、彼らからボールを奪いきることを徹底していた。

 クロスに対してはクロッサーへサイドバックボランチが挟み撃ちにすることで上げさせないことを意識し、もし上げられた場合はしっかりセンターバックが準備をすることで跳ね返すことができていた。

 このようにボールを保持される時間帯は長かったものの、準備してきたことを全員が徹底することで大きなピンチを迎えることはなかった。

 

(2)ミスを見逃さなかった先制点と、徹底したアンカー脇狙い

 熊本のボール保持に対して我慢強く守っていると22分にチャンスが巡ってくる。

 一度攻撃は失敗したものの、素早い切り替えから熊本陣内で人を捕まえる仙台。杉山が横パスでプレスを回避しようと試みるも、そのパスがカルドーゾのもとへ渡り、そのまま冷静に流し込んで先制点を奪う。

 得点自体は相手のミス絡みだったが、素早い切り替えから人を捕まえることでパスコースを遮断し、ミスを誘発することができた。琉球戦同様に高い位置でボールを奪ったことで生まれた得点だった。

 

 その後の仙台は、徹底したアンカー脇狙いでカウンターからチャンスを作り出す。

 前述した通り、熊本は多くの人を前線に掛けるため後方は3バックと河原しか残っておらず、特にアンカーである河原の脇には大きなスペースが生まれていた。

 仙台はボールを奪うとそのスペースにサイドハーフが素早く位置取りしボールを受けることで、カウンターを発動していった。

 またウイングバックの背後にもスペースが生まれており、そこに真瀬がフルスプリントで駆け上がっていくシーンが多かった。

 

 前半序盤は、奪ったボールをなかなか攻撃へと繋げられず守備の時間が長くなったが、先制点を奪って以降は相手のアンカー脇をしっかり使えるようになりペースを取り戻すことができた。

 前半は1-0で折り返す。

 

後半

(1)立ち位置を修正して、ボール保持を高める仙台

 両者ともに交代なくスタートした後半。

 1点を追う熊本は、前半よりも手数を掛けずにサイドの突破を図ろうとすることが多くなる。このことでコーナーキックを得る回数が増え、51分には河原の右コーナーキックを髙橋が折り返し上村が合わせるが小畑がビッグセーブで止める。

 

 攻勢を強める熊本に対して、仙台はハーフタイムにボール保持時の立ち位置を整理することで、ボール保持率を高め始める。

 仙台はサイドバックにボールが渡ったときにしっかりボランチが平行サポート(横のサポート)を作ることで、熊本のウインガー(図でいうところの坂本)を引き出し、その背後に生まれるアンカー脇のスペースをより広げることで、熊本の守備網のなかへ侵入していく。

 前半はカウンター時にアンカー脇を利用することが多かったが、後半はボール保持時に意図的にアンカー脇のスペースを作って、そこをサイドハーフや2トップが利用することで、中央からゴールへ迫っていく回数を増やすことができた。

 

 仙台のペースで試合が進んでいくと60分に追加点を生まれる。皆川が右サイドでフリーキックを獲得。キッカーの中島がニアへボールを送るとそこに平岡が飛び込んで追加点を奪った。

 ここまでセットプレーの得点がわずか2点(PKと直接フリーキック)だった仙台に待望の得点が生まれた。これはスカウティングの成果ともいえる得点だっただろう。

 

(2)選手交代をしながら、したたかにゲームを進める仙台

 2点を追うことになった熊本は、土信田と東出を投入する。一方の仙台は加藤とカルドーゾに代えて名倉と富樫を投入する。

 正直に言えば、やはり熊本と仙台では交代で登場する選手の質の差はあって、仙台は名倉と富樫を投入したことで強度を維持しながらプレーできた。名倉は攻撃面だけではなく、プレスバックなどの守備面で攻撃の芽を摘むなど、随所にいいプレーがあったし、富樫も3バックを引っ張りながら前線で収めどころになったのも効果的だった。

 その後、80分は中島と皆川に代わって吉野と遠藤を投入する。遠藤は1.5列目に入りフリーマンのような役割でボールの収めどころを作って、テンポを調整することでボール保持率を高めていった。

 吉野は、まだボランチでのボールを受けるポジションだったり、前へのパスが通せなかったりと前節同様に課題を残した形となった。そのあたりは試合を通じて積み重ねていけばと思う。

 最後に氣田に代えて鎌田を投入する。

 

 90分には河原のロングフィードから途中投入で入った粟飯原の折り返しに土信田が合わせてネットを揺らされるもオフサイドで事なき終えた。

 

 ということで、選手交代を使いながら最後まで強度を落とさなかった仙台が2-0で勝利し、2試合連続のクリーンシートを達成した。

 

最後に・・・

 連戦であり、しかも九州での試合だったため、メンバーもある程度変えて挑むかと思ったが、調子のいい選手をそのまま起用することで連勝を達成することができた。

 この試合は、短期間ながらも特異なサッカーを展開する熊本に、攻守において対策をしっかり練ったことで勝利することができた。特に守備面でも一定の成果を上げられたことはポジティブな要素だと思う。

 加えてセットプレーで得点を奪えたことも、自信につながる部分だった。今後もコーナーキック等からゴールを増やせれば、難しい試合を制する可能性は高まるし、継続して精度を高めて行って欲しい。

 

 次節はホームに戻ってブラウブリッツ秋田との対戦。琉球や熊本と違って守備にウェイトを置くチームだけに、また簡単に勝てる相手ではない。自分たちの攻撃力に自信を持って、今シーズン初の3連勝をゲットして欲しい!!

 

ハイライト


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原崎監督の檄とそれに応えた選手たち~明治安田生命J2第11節 ベガルタ仙台vsFC琉球~

 さて、今回はFC琉球戦を振り返ります。ゴールデンウィーク5連戦の初戦。

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スタメン

 ベガルタ仙台は、前節・横浜FC戦で逆転負け。首位相手に勝利して勝点を縮めたかったところだが離された格好となった。仕切り直しとなる今節はFC琉球戦との対戦。ボールを保持して攻めに出てくる相手に対していかにして自分たちの時間を増やしていくがポイントになる一戦となった。

 仙台は前節から4人の変更。小畑は今シーズン初スタメン。キム・テヒョンは出場停止明け、ボランチには群馬戦以来の出場となる吉野、2トップの一角には初スタメンとなったカルドーゾが名を連ねた。ベンチには鎌田、遠藤が戻ってきた。

 一方のFC琉球は、ここまで1勝で最下位。攻撃力はあるものの失点数がリーグワーストとバランスに苦しんでいる様子。前節から3バックを採用するなどして守備のテコ入れをしている。上位相手ではあるが2勝目を挙げて苦しい状況から脱却したいところだ。

 今節は仙台対策もあり3-1-4-2を採用。前節から4人メンバーを入れ替えた。上原牧人は初スタメン。武沢、池田、沼田が前節と代わってスタメンとなった。

 

前半

(1)FC琉球が準備してきたこと

 試合開始直後から仙台が押し込む形で試合は進む。2分には中島のミドルシュート、続けて8分には中島の浮き球のパスにカルドーゾが反応するもののゴールとはならなかった。

 

 仙台としては序盤のチャンスを生かしたかったところだが、次第に琉球の準備してきたことが効果を表すようになる。まずはその準備してきたことについて見ていきたい。

 まずは守備について。

 この試合の琉球は仙台に対して3-1-4-2の布陣を敷いている。

 琉球のボール非保持は5-3-2の形。仙台のボール保持に対して2トップがセンターバックボランチの両方を見れる位置を取る。プレスの開始位置は仙台のサイドバックにボールが渡ったらだった。このときはインサイドハーフがプレスに行く。このときにハーフスペースに位置している仙台のサイドハーフへのパスコースを切るようなプレッシングを行う。

 もしサイドハーフにボールが渡ったらウイングバックが中に絞って対応し、3バックは基本的に2トップへのマークに集中する。

 自陣に引いたときは5-3-2の布陣を維持する。仙台の攻撃との特徴はペナルティエリアの角からサイドハーフが2トップとのコンビネーションで「潜り込んでいく」プレーだ。

 それを阻止したい琉球は3バックと3センターで中央のスペースを埋めることで、潜り込んでくる仙台の選手を捕まえていったり、2トップへ厳しく寄せることで仙台の攻撃のギアを上げさせないような守備を行った。

 

 次に攻撃を見ていく。

 琉球のボール保持は3-1-4-1-1で草野と清武が縦関係になる。

 仙台は琉球のボール保持に対して2トップが縦関係になり、左右バック(上原と福村)へサイドハーフがプレッシングに行き、インサイドハーフにはダブルボランチが掴まえに行くような設計になっていた。

 それに対してフリーマンの役割となる清武があらゆるところに顔を出して数的優位を作り出し、仙台のプレスのズレを生み出すことで敵陣への侵入に成功していく。

 よってプレスを剥がされた仙台は、センターバックボランチの間に広大なスペースが生まれることになった。

 最終的に仙台は平岡とキム・テヒョンを中心に弾き返せたので大きなピンチにならなかったが、守備がハマっていたなかったのは確かだった。

 

(2)ボールは持てどもチャンスが作れない仙台

 前述した通り、琉球が仙台対策といっていった守備シフトで来たために、仙台は得意としているペナ角からの潜り込んでいくプレーができない。

 ビルドアップのときには吉野が落ちたり、中島が2トップ脇に登場するなどして、前進できそうな形やスペースを見つけ出そうとする。

また中へ侵入できないのでウイングバックの背後を活用する動きもあったが、クロスまで持ち込むシーンは少なかった。

 結果的に攻撃のテンポもゆっくりとなり、集中して守る琉球の守備に対して前進できずにやり直すことが多かった。

 

 39分には石原が負傷で若狭と交代。この交代でキム・テヒョンが左サイドバックになり、残り5分間はアジャストする時間に使う形となった。

 

 琉球の3-1-4-2の布陣に対して、ボールは保持できても攻略の糸口を見出せなかった展開だった。スコアレスで後半へと折り返す。

 

後半

(1)外→外でボールを前進させていく仙台

 仙台は後半スタートに際して、吉野と名倉に代えてフォギーニョと鎌田を投入する。

 以上は原崎監督のハーフタイムコメントだが、前半の内容には不満だったようで、もっとテンポを上げていくことを指示していた。

 

 前半の仙台は自分たちが得意としているプレー(潜り込むプレー)ができずに苦労したし、また琉球の守備に対してなかなか前進する糸口を見出せなかった。

 後半の仙台はビルドアップ時にボランチが落ちることを止めて、4-4-2のままでボール保持攻撃を行った。

 前半は中央に位置することが多かった2トップとサイドハーフだが、後半になるとサイドバックがボールを持っているときに2トップがウイングバックの裏へ抜け出したり、サイドハーフが大外でボールを受けるなどして、インサイドハーフの守備を無効化することで前進を行った。

 よって前半よりも中央を攻略するというよりはサイドから縦に仕掛けてクロスを上げるシーンが増えるようになった。中がダメなら縦といった具合に仙台の攻撃は変化を見せた。

 

 そして、徐々に仙台ペースになってきた58分に先制点を奪う。

 琉球ゴールキックの流れから。上原から氣田がボールを奪うと中央のカルドーゾにプレゼントパス。これをきっちり決めて先制する。カルドーゾは今シーズン初ゴールとなった。

 先制点のシーンでは何回もチャレンジしていた前からのプレッシングがうまくハマったシーンだった。氣田が外を切りながらプレスをしたこともポイントだっただろう。

 

(2)選手交代でギアを上げたい琉球と効率よく追加点を奪った仙台

 琉球は失点直後に左ウイングバックに大本を投入。70分には中盤3人を一気に変更(上里、金井、中野)し攻勢を仕掛ける。

 喜名監督の戦前の予想では仙台は後半になるとスタミナがガクッと落ちてくると分析したようで、そこで一気に選手交代から流れを変えようと考えていたのではないだろうか。

 しかし、仙台もこの試合までにケガ人が帰ってきたことでベンチメンバーもスタメンと遜色ないスカッドを組めたことで、70分以降でも強度を落とすことなくプレーできた。象徴的なのはフォギーニョで、後半からの出場になったことでゲーム終盤も中盤を広範囲にカバーしてくれたことでチームが安定することができた。

 

 それでも前半同様にアクシデントが続く仙台は、75分に緊張から足が攣ってしまった小畑に代えてストイシッチを投入。キーパーで交代枠を使う形となった。

 そんな状況でも79分に追加点を奪う。右サイドのスローインからカルドーゾが岡崎からボールを奪うとマイナスクロス。これを氣田が冷静に決めて効率よく追加点を決めた。氣田は3試合連続ゴール。先制点のお膳立てが帰ってきた格好のゴールだった。

 

 その後も試合を支配し続けた仙台。守備強度を保ちながらアディショナルタイムになってもゴールを奪うチャンスを作って試合を終わらせた。

 2-0で勝利し、5連戦を勝利でスタートさせた。

 

最後に・・・

 前半はしっかりと準備してきた琉球の前に、思うような攻撃ができずに停滞。ここまで見せてきたスピーディーな攻撃は鳴りを潜めたが、後半は原崎監督の檄もあり、より攻勢を強めることができた。

 今回の琉球のように今後は仙台の攻撃に対して、しっかり対策を練ってくるチームが増えていくだろう。そうなったときに柔軟に色んな手立てを使って攻略していくことが大事だろう。この試合のゴールは前からのプレッシングが生んだゴールだったが、後半はそれ以外でも多彩な攻撃をすることができていた。

 

 また、ここまでケガで離脱して結果が出ていなかったカルドーゾに初ゴールが生まれたことは良かった。恐らく原崎監督もこの試合でカルドーゾが結果を出すことは1つのミッションにしていただろうし、ここから連戦が続く中で調子を上げて行ってもらいたい。

 

 ということで、次節はアウェイでロアッソ熊本戦。大木武監督の独特なパスサッカーとの対戦となる。若くてイキのいい選手が多く、波に乗らせると厄介だ。水曜日開催で準備期間は少なく、厳しい戦いになると思うが、琉球戦に出場していない選手も含めて多くの選手が活躍して連勝することを期待したい!!

 

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