さて、今回は名古屋グランパス戦を振り返ります。今シーズンも残り6試合。
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スタメン
ベガルタ仙台は、前節・松本戦で手痛い敗戦。今節の名古屋戦を皮切りに神戸、清水、ガンバと直接対決で、負けられない試合が続く。今節の名古屋戦のテーマは前節の反省を生かせるかどうか。
前節からの変更は、出場停止明けで帰ってきたシマオ・マテ以外になし。ベンチには椎橋、阿部、ジョンヤらが入った。
名古屋グランパスは、フィッカデンティ体制となってこれが3試合目。ここ2試合は引き分けが続いている。こちらも残留争いのなか、新体制で是が非でも勝点3が欲しい一戦となった。
こちらも前節からの変更は1人。左インサイドハーフに和泉が起用されている。
前半
(1)前から嵌め込む仙台の守備
まずは試合開始からの仙台の守備を見ていきたい。
仙台は、名古屋のボール保持に対して、前からプレッシングを行く形を取っていた。
ポイントを書くと、まずは2トップがセンターバックからアンカーのシミッチへのパスコースを切りながら、センターバックへとプレスを掛ける。このことで、名古屋のパスルートをサイド、もしくはロングボールへ誘導する。
次に、名古屋がセンターバックからサイドバックへパスをつなぐと、仙台はサイドハーフが一気にサイドバックへプレスを掛けに行き、さらに名古屋のボール保持を限定せていく。このときにボールサイドのインサイドハーフ(図で言う米本)には、ボランチがスライドして、パスコースを消す動きをしていた。
このように、2トップから名古屋のボール保持を限定させることで、高い位置でボールを奪取し、ショートカウンターからゴールを目指した。
そして7分の先制点となるコーナーキックは、このプレッシングで吉田のミスを誘ったところからショートカウンターを発動し、得たコーナーキックだった。
この試合のポイントとなった先制点は、ボールを奪うところ、そして平岡のコメントにもあったように準備していたコーナーキックで奪った狙い通りのゴールだった。
余談ではあるが、この前プレのやり口は第26節の札幌戦(J1第26節 北海道コンサドーレ札幌vsベガルタ仙台)でも見られた。センターバックとアンカーを2トップがいい立ち位置を取って見ることで前プレを可能にさせる。チームに浸透してきた形と言えるだろう。
(2)サイドの旋回攻撃から活路を見出す名古屋
先制点を奪われた名古屋も、10分過ぎからボール保持の配置を変更する。
名古屋のボール保持はインサイドハーフの役割によって、左右で若干異なる。
右サイドでは、米本がサイドバックの位置まで降りることで、吉田を押し上げ、ボール保持を安定させる。
左サイドでは和泉が、長沢と道渕の間に立つことで、2人の動きを制限。加えて前田がウイングのポジションを取ることで、蜂須賀をピン止めし、太田をフリーにさせる構造となっていた。
両サイドで共通して言えることは、サイドから数的優位で崩し、そしてクロスをジョー、もしくはペナルティエリアに侵入してきた味方に合わせるという形を攻撃ではメインとしていた。
ただ、問題だったのは、前線3枚がボールを欲しがるあまりに下がる回数が多く、効果的な攻撃が少なかったことだ。だからこそ、フィッカデンティ監督も途中でシステムを変更(4-4-1-1)したのかもしれないのだろうけれども、選手に上手く意図が伝わらずに、システムを戻すことなったのだと思う。
仙台も先制点を奪ったことで、両サイドハーフを下げることを許容し、4バックがなるべくペナルティエリア幅を出ない守備を心掛けながら、丁寧に名古屋の攻撃を弾き返していたと思う。
あとは、この守備でもボールを奪って前線に送れば、高い確率で2トップが相手センターバックに競り勝って、ボールを収めてくれたことで、カウンターへと出ていくことができたのも地味に大きい。守備一辺倒にならなかったのは、2トップがしっかりボールを収めてくれたからだ。
そんなこんなで、仙台は名古屋の攻撃を跳ね返しながら、時折カウンターでチャンスを作り出す狙い通りの試合運びで前半を過ごすことができた。1-0で後半へと折り返す。
後半
(1)赤崎、エドゥアルド・ネットの登場
後半の名古屋は、前半諦めたと思われた4-4-1-1のシステムに再び戻す。シャビエルが自由に動けるシャビエルシステムだ。
名古屋としては、サイドバックが高い位置を取れれば、仙台のサイドハーフが下がるし、2トップも無理に前から来ない。また、前線の距離も3枚より4枚(サイドハーフ+ジョー、シャビエル)の方が、近い距離でプレーできるという2つの理由からシステムを変更したのではないかと考えている。
実際にこのシステム変更が猛威を振るったのは、54分の赤崎、エドゥアルド・ネットが投入されてからとなる。
エドゥアルド・ネットと赤崎が投入されたことで、ネットが捌き役としてセンターバック間に降りてテンポよく捌き、前線では赤崎がジョーの近くでプレーすることで、攻撃の迫力を増していった。加えて赤崎が投入されたことで、中盤で比較的自由にボールを持てた松下にプレッシャーが掛かるようになり、仙台のボールを持つ時間が減らされていったことも、この交代によって起こった変化だ。
ネットが投入されて攻撃のテンポが良くなると、サイドハーフもなかなか前で出て行けずに、仙台は我慢を強いられる時間帯が徐々に長くなっていった。太田や前田から質の良いクロスも上がるようになった。
それでも前半と変わらずにペナルティエリア幅4バックが守り、弾き返す仙台。時々クバにピンチを救ってもらいながら、仙台はなんとかかんとか名古屋の攻撃を防いでいった。
(2)晴天の霹靂・アベタクPK奪取。
ピンチの後にチャンスあり。ではないけれども、仙台は丁寧に名古屋の攻撃を弾き返すとビッグチャンスを迎える。83分。
クバのゴールキックをハモンがヘディングで逸らすと、途中投入された阿部が丸山の背中を取り、ペナルティエリア内へ。背中を取られた丸山が思わず阿部を倒して、仙台はPKを獲得した。そしてそれをハモンがきっちり決めて、追加点。大きな1点を終盤に取ることができた。
途中投入された阿部だが、それまでは守備に追われ、なかなか本来求められていた役割をこなすことができなかった。それでも、あのワンシーンで結果を残すことができたのは良かったし、今シーズン中々ケガで出場の機会が少なかった阿部本人のとっても大きなプレーだったと思う。まさに職人芸といったところか。
そして残りの時間をクローズに掛かる仙台。ハモンからジョンヤで、5-4-1にシステムを変更。さらにアディショナルタイムには、この試合も最後までタフに戦った関口に代わって久しぶりに椎橋が登場。
最後の最後まで集中を切らさずに名古屋を抑えた仙台。2-0での勝利。久々のクリーンシートでの勝点3ゲットとなった。
最後に・・・
譲れないもの=勝点3をゲットした仙台。名古屋の攻撃に最後までしぶとく弾き返し、久々の無失点で勝利することができた。
この勝利のポイントは2つだと思っている。1つ目はスカウティング通りに決めることができた平岡の先制点。渡邉監督のガッツポーズがすべてを物語っている。
2つ目は、後半。特に70分以降の戦いである。ネットと赤崎投入以降の名古屋の攻撃をしっかり我慢強く守れたことで、最後にご褒美が待っていた。正直、これだけ下がって大丈夫かとは思ったが、渡邉監督がどっしり構えていたところを見て、この試合は、そういう耐える試合なんだなと思った。
残り試合が少なくなってきた中で、仙台は直接対決が続いていく。次節は再び2週間開けてのヴィッセル神戸戦。
また耐える時間の長い試合が待っていると思うが、しっかり2週間の準備を得て、我慢強く、泥臭く勝点を奪うゲームを期待したい!!