ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

今、僕たちが出来ていることと出来ていないこと~J1第2節 横浜Fマリノスvsベガルタ仙台~

 さて、今回は横浜Fマリノス戦を取り上げます。

 

f:id:khigu:20190303222554p:plain

 オープニングマッチである浦和レッズ戦は、手堅い守備で相手の攻撃陣を防ぎ、スコアレスドローでのスタートとなったベガルタ仙台。今節は、昨シーズンに散々苦渋を飲まされた横浜Fマリノスである。そんなマリノス相手に、今年のテーマである手堅い守備がどれくらい通用するのかがポイントになる一戦となった。

 浦和戦でスタメンだったハモン・ロペスは、左足の違和感で欠場。また、契約上の理由で吉尾海夏も出場できない。そんな中で渡邉監督が選んだのは、新加入のシマオ・マテをアンカーに置く3-1-4-2の布陣だった。どのような狙いがあったのかは後程お話することにしたい。マリノスのスカウティングを肩透かしに合わせるようなことをしてきた仙台である。

 一方、ガンバ大阪との開幕戦を3-2で制し、上々のスタートを切った横浜Fマリノス。昨シーズンから見せているパスサッカーにさらに磨きを掛け、今シーズンは花開かせるシーズンとしたいところだ。

 スタメンは前節と変更なし。広瀬、高野、三好、マルコス・ジュニオール、エジガル・ジュニオと実に5人のメンバーが新加入(高野はレンタルバック)という構成になっている。

 

前半

(1)昨年からグレードアップしたマリノスのボール保持

khigu-soccer.hatenablog.com

 昨シーズンのマリノスとの対戦を思い出すと、上の記事でも書いたように、マリノスがビルドアップの姿形を変化させることで、仙台の前プレを剥がし、そしてゴールへと襲い掛かっていった。

 それでも十分なほど完成度は高かったが、今シーズンはより相手にとって掴まえづらいボール保持を行っていた。

f:id:khigu:20190304211357p:plain

 キーワードは「頂点移動」、「連動したポジションチェンジ」と言えるだろう。

 マリノスは、両サイドバックを中へ絞らせ(偽サイドバック)、2-3-4-1のような形でボール保持を行う。しかし昨年と違うのは、サイドバックインサイドハーフ、ウイングの3人が、流動的かつ連動してポジションチェンジを行うことだ。

 昨年であれば、ウイングは主に横幅を、インサイドハーフはハーフスペースを主戦場としていたが、その縛りがなくなった。

 昨年までのマリノスは、ビルドアップ隊が相手の立ち位置や守備方法に応じて姿形を変化させていたが、今年は自分たちが目まぐるしくポジションチェンジを行うことで、相手に変化を強制させるようなプレーをしている。

 

f:id:khigu:20190304212215p:plain

 さらに細かく見ていくと、マリノスのボール保持は左右で若干だが異なっていた。

 左サイドでは、ボールを運べ、かつ的確に縦パスを送れる畠中がハーフスペースの入口にいることで、前3枚(高野、天野、マルコス)と四角形を作り、ボールを前進させていった。

 一方の右サイドでは、チアゴが畠中に比べてボールを運べないことやネガトラで待機していることもあり、基本的には広瀬、三好、仲川の3人でボールを運び、崩していくシーンが多かった。

 この試合では三好が落ちて広瀬が高い位置を取るプレーが多かったが、それは富田を引き出して、そこを起点に崩そうという狙いがあったように思える。

 また両サイドで共通して見られたのは、アタッキングサードに侵入できたときに、逆サイドのインサイドハーフが流れてきて局地的な数的優位を作り出すことだった。本家、マンチェスターシティでも行われている形。マリノスもしっかりと実装されたいた。象徴的だったのは17分の右サイドでの崩しだっただろう。

 そしてマリノスのチーム全体での狙いは、仙台の背後、特にウイングバックと左右バック(平岡と永戸)の間を狙うことでペナルティエリアへ侵入していくことだった。

 前半の2得点はまさにここを侵入できたことによる結果であり、この試合ではこの間を幾度となく突くことができたマリノスだった。

 

(2)攻守における仙台の狙いは何だったのだろうか

 そんなマリノスのボール保持に対して仙台が選んだ策は、「撤退して相手を待ち構える」だった。このあたりは、マリノスとの力量差やアウェイでの試合だったことがこのような策を取った理由なのではないだろうか。

f:id:khigu:20190304214632p:plain

 仙台のボール非保持は5-3-2。前線2枚は、基準点はアンカーの喜田にあったもののほぼこれといった守備タスクはなく、ボールを奪った後の最初の起点として中央に位置していた。

 3センターと5バックは、横の距離を極力短くし、スライドを丹念に行うことで、マリノスのボール保持に対抗していった。

 マリノスの連動したポジションチェンジに対しては、食いつきすぎないことをかなり意識していたと思う。食いつきすぎて自分の守るエリア・スペースを明け渡さないように心がけていた。それでも、ちょっとした隙や出て行った所でマリノスの面々に崩されてしまうシーンがあったわけだが・・・。

 あとは真ん中をしっかり守ること。外でやらせても、中は割らせない。クロスはある程度許容し、しっかり中央で弾き返せるような準備は行えていた。

 

f:id:khigu:20190304220056p:plain

 自陣に撤退することを決意した仙台は、どうやって攻撃へと転じようと思ったのか。次はそこを見ていきたい。

 仙台がボールを奪いたいポイントは、サイドのエリアだったように思う。仙台としては中を割らせたくない。しっかり中央を軸にして5-3-2のブロックを組むことで、マリノスの攻撃を外からペナルティエリアへという攻撃ルートに導きさせたかったのではないかと考えている。イメージとしては、外へ追い出すような守備をしたかったのではないかと。

 そして、サイドで奪ったボールをまず前線で待っている2トップへ当てる。そしてワンクッション収めてからポストプレー。その間に高い位置を取れた逆サイドの選手への大きな展開で攻撃のスピードを一気に上げる。

 逆サイドへの大きな展開は、マリノスサイドバックがネガティブトランジション時(攻撃から守備への切り替え)のポジションの移動を伴うので、そこの時間をうまく活用したかった狙いだった。

 しかし、この狙いには一つの賭けがあった。それは、マリノスのネガティブトランジションの早さを受け入れるということだった。マリノスはボールを奪われてから即時奪回を狙うチームで、攻守の切り替えも昨年にも増してスピードアップした。

 同サイドのトップへボールを当てるということは、この即時奪回を狙うマリノスのプレスを掻い潜る必要があるのだ。

 仙台としてはそこを掻い潜れば、チャンスになるし、逆に奪われる可能性もある。そこで勝負に出た仙台。まさしくそこが攻撃への生命線だった。

 開始からはボールを奪って、一回溜めてから大きな展開をしてチャンスメイクしていたが、時間の経過とともに、徐々にマリノスの即時奪回の餌食になり、次第に自陣に張り付く時間が長くなってしまった。

 もちろん、奪ったボールを丁寧に繋げられない自分たちの問題もあるが、それ以上にマリノスのプレッシングが非常に素早かったことが、仙台が攻めに出られなかった最大の原因だと思う。

 

 前半は、守備から攻撃に転じることができなくなり、次第に守りの時間が増えるとPKと右サイドを崩され2失点。

 どちらも自分たちが準備できていない、イレギュラーな状況で守っていたときの失点だった。悔しいの一言。

 ということでマリノスが2点リードで折り返す。

 

後半

(1)守備タスクが与えられる石原

 前半はマリノスのボール保持に対して、ひたすら自陣で我慢を強いることになった仙台。この試合の次なるテーマは仙台が、この2点リードの状態でどういう手立てを打つかということになる。

 

f:id:khigu:20190305212323p:plain

 仙台が打った手立ては、攻撃ではなく守備だった。

 前半では、5-3-2でブロックを組んでいたが、2トップには奪った後の起点となるべく、中央に位置すること以外の守備タスクは与えられなかった。

 しかし後半では、開始から長沢と石原が縦関係になることが多くなった。長沢にはタスクはなかったが、石原はアンカーの喜田を監視する役割が与えられる。

 喜田は、ボール保持攻撃での調整役として色んなエリアでボールを受けては捌いていた。そんな喜田と石原がデートをすることで喜田を消すことを狙いとして行っていた。

 実際に後半の開始10分過ぎまで、マリノスが喜田を消されたことで、左右に揺さぶることができずに、同サイドでの攻撃が目立っていた。

 仙台としては、前半に書いた奪いたいエリアにマリノスの攻撃を誘導することができ、ボールを奪える回数も増え、またそれを攻撃にも繋げられることができていった。

 しかし肝心のシュートまではなかなか到達できないところがもどかしい。石原が試合後のコメントで「後半立ち上がりに1点返したかった」とコメントしているが、守備が機能し、攻撃まで繋げられたこの時間帯に得点を取りたかったのが本音だろう。

 

(2)ジャーメインとリャンの2枚替え

 仙台は61分に長沢と富田に代えてジャーメインとリャンを投入する。

f:id:khigu:20190305213218p:plain

 この交代後に起きた現象として、喜田とデートしていた石原が、前に出て再び2トップが横並びになったことだ。せっかく機能した守備を自ら放棄する形を取った。

 もしかすると、この交代はハーフタイムで言われており、攻撃へのギアを上げるための交代だったのではと考えている。そのために喜田とデートしていた石原を再び前に押し出したのかもしれない。

 

 しかし、ギアを上げるどころか再びマリノスがボールを握る展開となってしまう。解放された喜田が再びボールを捌きはじめ、加えて喜田の周辺では、インサイドハーフサイドバックが助け始めたことが1つの理由。

 もう1つは交代で投入されたジャーメインをうまく利用できなかったことだろう。ジャーメインにもっと裏を狙わせて、攻撃に奥行きを作らせられれば、全体を押し上げることができ、流れが変わったのかもしれない。何回かは裏に抜けるシーンがあったが、その回数をもっと増やしたかったのが現実だ。

 追加点を許してもおかしくない状況だったが、なんとか最後をブロックすることで失点は免れた。

 

(3)付け焼刃な4-3-3

 81分に関口から阿部へスイッチ。ここで仙台は4バックへと変更する。

f:id:khigu:20190305214450p:plain

 時間もなくなってきて、とにかく前から行きたい!という形を取った。

 ジャーメインと阿部はセンターバックへプレス。石原は再び喜田とデートすることになった。

f:id:khigu:20190305214559p:plain

 しかしそんなに現実は甘くない。動いたのは畠中だった。

 さっきまではハーフスペースでボールを受けたが、今度は幅を取る。このことで仙台の前プレを鈍化させていった。

 また構造上フリーになる高野も、畠中が幅を取って時間とスペースを得られたことで、自身も時間とスペースを得ることができ、マリノスは仙台の付け焼刃な前プレを剥がすことに成功した。

 

 それでも仙台は、89分にサイドからの波状攻撃から石原がPKを獲得。それを自分で決めて1点差に詰め寄るも、万事休す。

 マリノスは連勝。仙台は初めて日産スタジアムで敗れることとなった。

 

最後に・・・

  スコア以上に完敗を感じる内容だった。しかしこれが現実だ、受け入れるしかない。

 0ベースでゲームを進めるプランを選んだ仙台だったが、そのためには攻撃の時間を作り、守備の時間を減らしたかったところだ。しかし時間を追うごとに自陣に張り付くことになり、個人的にはそこが一番まずかったように思える。

 守備に関しては、現段階でこれ以上のことを求めるのは酷な気もしていて、とあるレビューで「仙台は守備が整っているだけ」と書かれていたが、去年はそもそも整ってすらなかったしフルボッコにされたことを考えると、しっかり成長できているのだと思う。確実に成長はできているので、これを毎試合戦うごとに、もっともっといいものにしていければなと思っている。

 

 最後に、この試合でポジティブだったところを挙げておきたい。

・アンカーにシマオ・マテを置く3-1-4-2がある程度機能したこと。

・5バックと3センターの横幅・距離が短くなったことで、スライドが良くなり、またクロスの対応が改善されたこと。

・永戸が守備(特に対人守備)、攻撃(ボールを繋ぐことやダイナミックなサイドチェンジ)の双方で一定の手ごたえを掴むことができたこと。

・2トップが縦関係になり、アンカー番を付けることで、短時間ではなるが守備に安定感をもたらすことができたこと。

 特に最後の2トップが縦関係に守るアイデアは昨年までになかったもので、もしこの試合で前半から行うことができれば、もう少し前半は我慢できたのかもしれない。

 

 次節はホームでヴィッセル神戸との対戦。またマリノスと似たようなチームだ。攻守において我慢強く、粘り強く戦い、ユアスタで初勝利できることを期待したい!

手堅いスタート~J1 第1節 ベガルタ仙台vs浦和レッズ~

 さて、今年も開幕しましたね、Jリーグ!ということで今回は開幕戦・浦和レッズ戦を取り上げます。

 

f:id:khigu:20190223173235p:plain

 このオフのベガルタ仙台は、主力選手の移籍に伴い大幅な選手の入れ替えがあった。今シーズン新たにベガルタ戦士となったのは10人。そのなかで、兵藤と長沢が先発に名を連ねた。

 昨シーズンは天皇杯決勝で悔しい思いをした仙台であるが、その悔しさを糧に今シーズンは悲願の初タイトルを目指す。

 

 浦和レッズは、先週にゼロックスを戦い、川崎フロンターレに0-1で敗れた。その試合から左ウイングバックのポジションに山中が変わって起用されている。なお、右ウイングバックには宇賀神が起用された。

 昨シーズンは天皇杯のタイトルを獲ったが、浦和が欲しいのはアジアとリーグのタイトル。今シーズンは充実の選手層で両方のタイトルを狙う。

 

前半

(1)なぜ仙台はハイプレスを仕掛けられなかったのか?

 昨シーズンの失点数の反省から今シーズンのテーマに「守備」を挙げている渡邉監督。特に前からプレスを掛けてアグレッシブにボールを奪おうというのが狙いである。

 この試合でも開始から浦和のビルドアップ隊に対して積極的にプレスを仕掛けていくシーンが見られ、それに加えて奪われた後の切り替えが素早くなり、即時奪回、また相手の攻撃を遅らせるプレーはいくつも見られた。

 

 しかし、時間が経過するとともに仙台は前からプレスを仕掛けられなくなっていく。

f:id:khigu:20190224123921p:plain

 浦和は3バック、仙台は3トップと同数であるので前からプレスを仕掛けられやすいように見えるが、アンカーのエヴェルトンがいることが非常に厄介だった。

 エヴェルトンを加えると浦和は4枚、仙台は3枚なので浦和の数的優位となり、仙台が無理やり前からプレスを掛けてに行くと、エヴェルトンのところで剥がされてしまう構造になっていた。

 それゆえに、仙台もエヴェルトンが気になり、なかなか積極的に前から行くことができなかった。

 時間の経過とともに長沢がエヴェルトンにプレスを掛けに行ったことが、その象徴といえよう。

 

 加えて、浦和のインサイドハーフである長澤と柏木が仙台のシャドーの背後にポジションを取ることで、仙台のボランチが引っ張られ、縦パスを通されることも多くなった。

 このように、浦和の3センターの動きやポジションによって仙台はなかなか前プレを仕掛けられず、徐々に浦和がボールを持つ展開へとゲームの流れは変わっていった。

 

(2)自陣撤退したときの守備強度

 自陣に撤退し5-4-1のブロックを形成して守ることとなった仙台。もちろん自分たちが理想としていた展開ではなかったが、それでもこのような状況をしっかり受け入れることで浦和の攻撃に冷静に対応していった。

f:id:khigu:20190224124724p:plain

 特に良かったのは、浦和が縦パスを入れたときの対応だった。この試合の仙台は5バックがいい距離で守れていたことで、チャンレジ&カバーのポジションをしっかり保てており、おかげで浦和の2トップに入ったときはしっかり3バックが迎撃することとボランチがプレスバックしサンドすることで、2トップに自由を与えなかった。

 浦和の攻撃に対して、自分たちの「前」でプレーさせることで危ないシーンを作り出すことなく、しっかりと守れていた印象だ。集中力の高い守備だったと思う。

 もちろん、縦パスを入れさせてしまうことは良くないし、縦パスを入れる選手に対して、しっかりプレッシャーを掛けることが最優先である。しかし、この試合でできた縦パスが入ったところでしっかり芽を摘む守備は、それはそれでしっかり評価できる部分だと思う。

 

(3)相手のプレッシャーを無効化する

 今年の仙台に加わった新たな武器として長沢の「高さ」がある。前線にポイントがあることで、相手の前プレに対して「逃げ場」を作ることができるのは昨シーズンと比較して大きく変わったことだ。

 そしてその「高さ」がさっそく生かされる試合となった。

f:id:khigu:20190224125854p:plain

 昨シーズンまでであれば、相手が前プレに来るとそれを剥がすことができずに、最終的に石原にロングボールを蹴り、それを相手に回収されるというシーンが増えていった。

 この試合の仙台は、ボール保持時に富田が降りて4枚になり、浦和のプレス隊を剥がそうというポジションを取る。

 浦和も例外なく、2トップと3センターで仙台のビルドアップを阻害しに来る。

 そのときに仙台は無理にボールを繋ぐことより、まずは前線の3枚を目掛けてボールを送っていた。この試合は長沢、石原、ハモンとボールを収められる選手を前線に揃えており、ボールを繋いでいくことよりも、ロングボールを前線に送って収めたところから全体を押し上げていく形を狙っていたのかもしれない。

 おそらく、渡邉監督も昨シーズンの対戦から考えて、浦和が前からプレスを仕掛けてくるということを念頭に置いていたのだろうし、そうなったらまずは前線を見ようということは準備していたのだと思う。

 

 しかし岩波、マウリシオ、槙野の3バックは個人能力が高く、簡単にはボールを収めることができなかった。ハモンは何回かボールを収めていたのだが、そこから自分で持っていくことを優先してしまい、最終的に槙野にボールを取られる場面が多かった。ここをシンプルにプレーできるようになると、全体をスムーズに押し上げられると感じた。

 前半はスコアレスで折り返す。

 

 

後半

(1)セカンドボールを回収できるようになる仙台

 後半も前半と同様に、ボール保持する浦和、それに対して構えてロングフィードで前線を狙っていく仙台という構図でゲームが進んでいく。

 後半は前半に比べて、ロングボールで競った後のセカンドボールを富田と兵藤が回収できるようになり、そこからサイドへ展開することで、仙台もチャンスを作り出せるようになる。

 この試合で一番の決定機だった56分の長沢のヘディングシュートも、中盤でセカンドボールを回収したところからの展開だった。

 ボールを繋ぎながら前進させることを、ある程度妥協している仙台にとって、前線で競ることや中盤でそのセカンドボールを回収することは、この試合においての生命線となっていたが、後半はうまくボールを回収できるようになったことが良くなったポイントだろう。

 

(2)65分のプレーは今後の布石か

 後半になり、サイドからの攻撃ができ始めてきた仙台は、65分に興味深いプレーでサイドを攻略した。

f:id:khigu:20190224144539p:plain

 その場面は、永戸と関口の関係で左サイドを突破しクロス、ファーで蜂須賀が合わせたがヘディングがヒットしなかったシーン。

 このシーンを巻き戻すと、中盤でボールを奪ってから攻撃が始まっているのだが、永戸がサイドで高い位置を取っている代わりに富田が永戸のポジションに落ち、そこを起点に攻撃が始まっていたのだ。

 永戸はサイドバックが本職であり、このような3バックの一角でも攻撃に加わることを求められていると思う。永戸が高い位置を取れるようにボランチが真ん中ではなく、斜めに落ちてくる形をチームとして再現性を持ってデザインできれば、とても面白いなと考えている。この辺りはこれからの試合のなかで注目していきたい。

 

(3)リャンの投入とバランスを崩したくない両者

 仙台は65分に兵藤に代えてリャンを投入する。兵藤は富田とともに広範囲をカバーし、そして奪ったボールを正確に味方へ繋いでいた。そんな兵藤は足が来ているとの判断での交代だった。

 

 リャンは広範囲に動いていた兵藤とは打って変わり、中盤の真ん中でアンカーのような振る舞いをしていた。

 投入直前に真ん中を割られたシーンもあったので、リャンにはなるべく真ん中を開けないことをタスクとして託していたのかもしれない。

 ボールに絡むプレーは少なかったが、富田とバランスを取りながら中盤に穴を開けずに、ブロックを組んだ時にもしっかりバイタルエリアをケアしていた。この交代は守備強度を保つのに効果的なものだったと思う。

 本人としては奪ったボールを前線へと供給し、自身も飛び出していきたかったと思うが、我慢をしながらしっかりチームのバランスを保っていた。

 

 この交代くらいからお互いに、バランスを崩したくないという意思が見え隠れしはじめ、ゲームを徐々に膠着状態になっていく。

 浦和もバイタルエリアをしっかり埋められたことで、なかなか決定機を作りだせない。一方の仙台も守備疲れもあって、なかなか前線へとパワーのある状態で飛び込むことができなかった。

 おそらく、どちらかがバランスを崩せばゲームが動いていただろうが、お互いにバランスが崩れるのを待っているような展開で、どちらも動きづらくなっていった。

 そんなミス待ちの展開は、最後まで崩れることなく試合終了。スコアレスでのシーズンスタートとなった。

 

最後に・・・

 オリヴェイラ監督の言葉を借りれば「勝ったかもしれないし、負けたかもしれない試合」だった。非常に手堅く、渋い試合を開幕ゲームからした両者だった。

 

 仙台としては課題としていた守備で一定の収穫を得られたことは良かった点だと思う。5バックとダンを中心に集中した守備ができたことはトレーニングの成果といえよう。

 攻撃に関しては、前線3枚が新しいユニットであるので、これからまだまだ詰めていかなければいけない。しかしこの試合では、長沢の高さやハモンの打開力が見られたのは良かった。あとはそこが個々人ではなくグループとして力を発揮することができれば、ゴールへの期待も大きくなっていく。

 

 開幕戦ということもあるのかもしれないが、この試合は非常にリアリスティックな采配をした渡邉監督だった。

 今年はタイトルを獲るうえで理想だけではなく、このようなリアリスティックな部分も追及していくのではないだろうか。

 昨シーズンまではボールを保持して攻撃していくスタイルを構築してきたが、今年はもっと戦い方に幅を持たせようとしている感じがした。

 個人能力が劣るチームだけあって、相手のやり方に対してしっかり色々な策を持てるチームになりたいのかもしれない。なので、ボールを繋ぐだけではなく、今節のように前プレに対してロングボールで回避しようという試合は今後も増えていく気がする。あくまで個人の見解ではあるが、そういうチームになっても面白いなと思う。今後の戦いが非常に楽しみだ。

 

 次節は、アウェイでの横浜Fマリノス戦。昨シーズンたくさんの苦渋を味わったチームだ。さっそく今年の守備強度が試される一戦となる。昨年のリベンジを今シーズン初勝利を掴み取りたい!!