ヒグのサッカー分析ブログ

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ベガルタ仙台テクニカルレポート2017【前編】

 みなさん、こんにちは。2月に始まった2017年シーズンも終わり、ストーブリーグを迎えております。
 今回のテーマは2017年シーズンの振り返りです。昨年の2016年シーズン同様の形で振り返っていこうと思います。

 

 前編では、シーズン全体の総括とシステムを変更した今シーズンのサッカーの中身を振り返ります。
 後編では、個人的なベストゲームやベストゴール、気になった選手について書いていきたいと思います。
 では、さっそく前編から。

■今シーズンの総括  

 2017年の仙台は11勝8分15敗で勝ち点41の12位でフィニッシュした。昨シーズンは13勝4分17敗で勝ち点43の12位だったので、昨年とほぼ成績の変わらないシーズンとなった。それでも今シーズンは伝統の「4-4-2」から「3-4-2-1」にシステムを変更し、よりチャレンジングにそして充実した内容のサッカーを展開した。試合を経るごとにサッカーの完成度が高くなっていくのが目に見えて分かり、非常に楽しい1年だった。  

 開幕前の石原、クリスラン、中野、永戸、増嶋と夏に野津田、古林を的確に補強したことは、システム変更というリスクはありながらも残留争いに巻き込まれずにシーズンを過ごせた最大に要因だと思う。加えてルヴァンカップではクラブ初のベスト4まで進出。ニューヒーロー賞を取った西村をはじめ、蜂須賀、椎橋、ダンがこの大会で台頭したことで、チームの底上げを図れたことは非常に大きかった。  

 しかし、昨年同様にシーズン中のケガ人の多さに悩まされたのは課題の1つだった。ベストメンバーで戦えた試合がもっとあれば、さらに充実したシーズンを過ごせたかもしれない。来季こそはケガ人が少ない1年を過ごしたい。  

 渡邉監督就任以降、攻撃的なサッカーを標榜しチャレンジして続けたが、今シーズンはようやく「自分たちのサッカー」と言えるものを見つけ出すことができた年だった。

 

■対戦成績から見えるもの

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 続いて、対戦成績や気になるデータを見ていきたい。  

 上の対戦表は、今シーズンの順位に照らし合わせた仙台の対戦成績と得点者、各チームから得た勝点を一覧にしたものである。  

 仙台は前半戦では6勝3分8敗の勝点21、22得点32失点。後半戦では5勝5分7敗の勝点20、22得点21失点だった。完成度の高まった後半戦よりも前半戦のほうが1ポイント勝点が多い。一方で前半戦では浦和戦の7失点が代表されるように32失点と非常に失点の数が多かったが、夏場に守備を修正したことで後半戦は21失点まで減らすことができた。もちろんこれ以上に失点を減らさなければならないが、シーズン通して攻守のバランスを取れるようになっていった証拠だろう。

 

 次に上位、中位、下位に分けた戦績を見てみる。勝点50以上取れた1~6位が上位、勝点40台の7~13位を中位、勝点が40以下の14~18位を下位とし、成績を見てみると・・・  

上位:3勝4分5敗(勝点13,15得点20失点)  

中位:2勝2分8敗(勝点8,11得点25失点)  

下位:6勝2分2敗(勝点20,18得点8失点) となった。  

 昨シーズンは上位にめっぽう勝てなかった(2勝1分9敗,勝点7)が、今シーズンは上位にはそこそこ結果を残している一方で中位に勝てないシーズンだった。中位には浦和やガンバ大阪FC東京など苦手とするチームがいるのも原因の1つであることは確かだが、仙台が昨年以上の成績を残せなかったのは順位の近い直近の相手に勝てなかった、もしくは勝点を拾えないゲームが多かったことが最大の理由であろう。

 

 そして面白いデータがもうひとつ。それは前半戦の下位相手におけるクリスランの活躍である。クリスランはリーグ戦では8得点決めているが、そのうち6得点が前半戦の下位相手である。前半戦はシステムが変わり試行錯誤が続いている中、クリスランの個の力でぶん殴ることで勝点を得ていたことが分かる。チームの完成度が上がる中でなかなかフィットできず、加えてクロッサーであった永戸の負傷で後半戦は1点に止まったが、前半戦のクリスランの活躍がなければ残留争いに巻き込まれていた可能性は高い。

 

■今シーズンのサッカーについて

(1)「ポジショナルプレー」、「5レーン」、「ハーフスペース」  

 システムが「3-4-2-1」に変わった今シーズンの仙台を振り返るうえで、重要になるキーワードがある。それは「ポジショナルプレー」、「5レーン」、「ハーフスペース」である。  

 まずはポジショナルプレーについて。ポジショナルプレーとは、「攻・守・ポジティブトランジション(守→攻の切り替え)・ネガティブトランジション(攻→守の切り替え)の4つの局面において、相手よりも『優位なポジション(立ち位置)』をとることで、ゲームを優位に進める考え」である。これは戦術というよりもプレー原則や概念である。なので、こういうプレーがポジショナルプレーだという決め打ちはない。むしろいい攻撃ができていたり、いい守備ができていたりしたときにポジショナルプレーが上手くできているという見方のほうが正しい。このポジショナルプレーには、「数的優位」、「位置的優位」、「質的優位」という3つの優位性があるのだが、それは後程具体例を見ながら説明していく。  

 今シーズンの渡邉監督のコメント中に「いい立ち位置」というフレーズが多く使われていたが、この「いい立ち位置」こそがポジショナルプレーのお話である。

 

 続いて「5レーン」と「ハーフスペース」について。

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 5レーンとは先ほどのポジショナルプレーをピッチ上で実践的に利用できるように可視化したものである。通常ピッチを横に分割することが多いが、5レーンではピッチを縦に5分割する。  

 この5分割したレーンのうちに重要になってくるのが、もうひとつのキーワードである「ハーフスペース」である。  

 ハーフスペースとは、中レーンと外レーンの間のレーンを差す。なぜこのレーンが重要かというと、中レーンとはいわばゴール前であり、相手守備陣もしっかり固めるので、そこからゴールを破るのは難しい。かといって外レーンではゴールから遠くチャンスになりずらい。そこで登場するのがハーフスペースである。ハーフスペースにいる選手にボールを預けることで、相手守備陣がスライドせざるを得なくなり、そのズレを利用して攻撃側は守備を崩すことができるのである。要はハーフスペースは相手を崩す第一歩目として重要なスペースなのである。  

 加えれば自陣においてもこのハーフスペースは重要で、特にビルドアップの起点となる「ハーフスペースの入口」にビルドアップ能力が高い選手を置くことでビルドアップからの攻撃をスムーズに行うことができる。  

 今シーズン、椎橋や西村が急成長したのも、このハーフスペースにおけるプレーの理解度が早くかつ的確だったので起用され続けたのである。  今シーズンの仙台は状況に応じて、この「5レーン」と「ハーフスペース」に的確に人を配置(ポジショニング)し攻撃することで、より多くの人が関わった攻撃ができていたのである。

 また前述したようにポジショナルプレーでは攻撃の局面だけではなく、他の局面においても必要となってくるのだが、特に守備に関しては正しい立ち位置が取れずに崩されてしまうことがあり、守備におけるポジショナルプレー(いい立ち位置)を取れるようになることは来シーズンへの課題である。

 

(2)ポジショナルプレーの具体例  

 次は、具体的にポジショナルプレーができているプレーとはどのようなものか見ていきたい。

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 もちろん、相手守備陣の立ち位置によってポジションの取り方や攻め方は変わってくる。ここでは相手守備陣が前からプレスを掛けてきたときを想定して話を進めていきたい。  

 仙台の左右バック(図では左バック)がボールを持っているところからスタートする。ここでは相手サイドハーフが寄せている。  

 左バックはハーフスペースの入口に立っており、中レーンにはボランチが、外レーンにはウイングバックがポジショニングしている。この2人は左バックからのパスコースを確保しており、また左シャドーを含めてスクエア(四角形)を組むことができている。  

 左バックの運ぶドリブルによって、相手サイドハーフをおびき出すことに成功すると、サイドハーフの背後に位置しているボランチウイングバックとで3対1の数的優位ができる。かつ、ボランチウイングバックは相手サイドハーフの背後に位置しているため位置的優位なポジショニングができているとも言える。  

 もちろん相手守備陣もボランチサイドバックが飛び出し、対応してくることが容易に想定できる。しかし仙台はスクエアを組んでいるため、その次のシャドーへのパスコースも確保されている。同じレーンではなく違うレーンに角度を作って人を配置することで、もし同数になった場合でもパスコースを確保することができる。

 5レーンに人を配置することで、相手陣地に入ったときもバリエーション豊富に攻めることができる。  

 シャドーにボールを預け、ウイングバックとのワンツーでの抜け出し。シャドーが前を向ける状態であればそこから1対1での勝負。また、左バックからボールを受けたボランチやシャドーから落としを受けたボランチが逆サイドのウイングバックへフィードで展開し、そこから攻撃を仕掛けるなどが考えられる。  

 仙台の今年の攻撃パターンで最も多かったのが、左サイドで起点を作ってからの逆サイドのウイングバックへの展開である。特に4バック相手だと相手が5レーンを4枚で守るために大外のウイングバックが空く。仙台は左で時間を作ることでウイングバックの押し上げることと相手守備陣のスライドを行わせ、そこから大きな展開で空いた右サイドからの攻撃を行っていた。  

 ここでより良いのは、ウイングバックが1対1で必ず突破できる選手を置くことである。これが質的優位性である。極端な話、サイドにロッベンリベリーを置き、1対1をチームとして意図的に作り攻撃していくことである。今シーズンの仙台には中野が質的優位を持つ選手だったがケガで戦線を離脱することが多かった。サイドでドリブル突破ができる選手やペナルティエリア内で空中戦で絶対に勝つといった質的優位性があるとさらに攻撃に厚みをもたらすことができる。

 

 今シーズンの得点のなかで、5レーンとハーフスペースを上手く利用して崩したシーン紹介したい。

・第16節vsセレッソ大阪戦,石原直樹のゴール

【公式】ゴール動画:石原 直樹(仙台)36分 ベガルタ仙台vsセレッソ大阪 明治安田生命J1リーグ 第16節 2017/6/25 - YouTube

 左で起点を作り、右へ展開して完全に崩して決めたゴール。全員で狙いを共有できた得点だった。

 

・第31節vsガンバ大阪戦,奥埜博亮のゴール

【公式】ゴール動画:奥埜 博亮(仙台)22分 ガンバ大阪vsベガルタ仙台 明治安田生命J1リーグ 第31節 2017/10/29 - YouTube

 数多くのパスを回しながらガンバディフェンスに穴を開けると、増嶋からのスルーパスに抜け出した蜂須賀のクロスから中で複数に絡んで奥埜のゴールにつながった。これも狙いを共有できた得点だった。

 

・第32節vs大宮アルディージャ戦,オウンゴール

【公式】ゴール動画:オウンゴール(仙台)36分 ベガルタ仙台vs大宮アルディージャ 明治安田生命J1リーグ 第32節 2017/11/18 - YouTube

 これもセレッソ大阪戦と同様にスペースの空いた右サイドへの展開からのゴール。注目したいのがペナルティエリアに4人流れ込んでいること。右サイドに展開する時間を利用して多くの選手がボックスに入り込むことができる。

 

・第32節vs大宮アルディージャ戦,三田啓貴のゴール

【公式】ゴール動画:三田 啓貴(仙台)57分 ベガルタ仙台vs大宮アルディージャ 明治安田生命J1リーグ 第32節 2017/11/18 - YouTube

 今度はサイドから中央に崩していった得点。狭いスペースで多くの人数が絡んだ得点だが、注目してほしいのは逆サイド。左ウイングバック(蜂須賀)に右サイドハーフが付いていったことで、中央のスペースが空いた得点だった。相手の守備陣形を崩したという意味で良いポジションができている証拠である。

 

(3)今シーズンの課題
 今シーズンの一番の課題は、5バック相手に対して得点できずに勝てなかったことだろう。

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上の表は今シーズン、4バックと5バック相手別の戦績である。4バックと5バックで戦っているチームの数にかなりの差があるものの、5バック相手には9試合戦って勝利した数はわずかに2勝で、勝点8しか稼げていない。今シーズン全体の勝率は32%だが、5バックだけ見ると勝率は22%と、いかに5バック相手との対戦で足を引っ張ているのかが分かる。

 

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  5バック相手を崩せない最大の原因は、5バックの場合、仙台が利用したい5レーンを埋められてしまい、相手守備陣にギャップができない。  

 例えばウイングバックに1対1の突破が得意な選手を置くことで質的優位で攻撃したいところだが、そのような選手も中野以外におらず個で突破することもできない。よって仙台は5バック相手を崩せずに、反対にワンチャンスを決められ敗れることが多かった。第24節の札幌戦(0-1)、第26節のFC東京戦(0-1)、最終節の甲府戦(0-1)のように攻撃でリズムを作れずにいると、一撃で決められ敗れるというパターンは今シーズン見受けられた負けパターンだった。来シーズンは5バック相手に対してどう攻略していくかは上位進出に向けた1つのポイントとなるだろう。

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 また今シーズンは4バックの相手でも守備時は5バックになるチームも出現した。片方のサイドハーフウイングバックのように振る舞い、守備時は532や541で守る可変型である。第3節の神戸戦(0-2)、第28節の浦和戦(2-3)ではこのような可変型の守り方をしてきた。もしかすると来シーズン以降は仙台対策としてこのような守り方をするチームが増えるかもしれない。このようなチームをどう攻略するかも重要になってくる。

 

以上が前編です。後編に続きます。

最後の最後で出たさまざまな課題~J1最終節 ヴァンフォーレ甲府vsベガルタ仙台~

 いよいよ最終節です。今回はヴァンフォーレ甲府戦を取り上げます。f:id:khigu:20171206183143p:plain

 仙台は前節・マリノス戦からスタメンの変更はなしだったのだが、アップ中に蜂須賀が負傷。代わりに茂木が起用された。ベンチにはダンが復帰、また小島もベンチ入りをしている。  

 勝たなければ後がない甲府。この試合に勝利し清水の結果を待ちたいところ。まさに人事を尽くして天命を待つ状態。前節・大宮戦で島川が負傷し、代わりに新井がアンカーを務め、3バックの中央に山本を起用した。それ以外は変更なし。

 

■前半

(1)仙台の狙いと甲府との駆け引き  

 仙台にとっては苦手な5バック相手は久々の対戦となり、5バック相手にどのような攻撃をしていくのかは1つのポイントとなった。ここでは仙台の狙いとその後の甲府の対応、それに続く駆け引きについて見ていきたい。

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 試合開始からの仙台のボール保持は3142の形で行われていた。ついでに守備は541のままとなっている。  仙台がビルドアップ時における時間とスペースを得たいエリアは左右のバックのポジションである。いわゆるハーフスペースの入口。仙台は奥埜が2トップの間に入り、三田と野津田がインサイドハーフ付近にポジショニングすることで甲府の2トップとインサイドハーフをピン留めし、ハーフスペースの入口である増嶋と平岡に時間とスペースを与えることに成功する。  

 そこからウイングバックに当てて、2トップへの斜めパスや西村や石原が裏に抜けてボールを引き出すような攻撃をしていく。

 

 しかし甲府も20分過ぎから対応できるようになっていく。

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 甲府は仙台の立ち位置を把握すると、左右のバックに対してインサイドハーフが突撃するようになっていく。図でいえば仙台の左にボールがあるとしたら小椋がプレッシングに行き、そのカバーを新井が行うという形である。  

 甲府はビルドアップ隊へのファーストディフェンダーがハッキリしたことで各ポジションの選手もマークがハッキリし、守備がハマるようになっていく。

 

 甲府に対応されるようになった仙台だが、元の形である3421の形で三田と奥埜を並列に並べることで、ビルドアップを安定させ、なんとか甲府のプレッシングを掻い潜っていく。おそらく3421になったのは、監督の指示ではなく自分たちの判断からなのではないだろうか。根拠はないが3421に変わっていくときに各々のポジションが微妙にズレていたように思える。前半も終盤に差し掛かるとポジションが修正されていたので、おそらくピッチ内の判断で行われていたのではないか。  

 そんな攻防が前半45分間の中にあった。

 

(2)被カウンターが多かった仙台

 この試合は前半からとにかく甲府にカウンターを食らう場面が多かった。それは仙台の攻撃が上手くいってない証拠でもあった。  

 仙台はミドルゾーンまでボールを運ぶことができていた。しかし相手ブロック内へ縦パスを通すもそれがズレてしまったり、通ったものの落としたボールが引っ掛かったりと、縦パスの精度や最後の精度を欠いてしまうシーンが多発していた。監督コメントにもあったようにピッチが荒れていたことも原因だろうが、それ以上に甲府の最後の守備がしっかり集中していたことがミスが増えた最大の理由だ。  

 よって攻撃の終わり方が悪い仙台は中盤でリンスとドゥドゥ(時々中盤の3人)に前を向かれカウンターを食らう場面が増えていった。縦パスを奪われるため、ネガティブトランジションもうまく機能せず、大宮戦やマリノス戦のように即時奪回からの厚みのある攻撃を繰り出すことができなかった。 

 それでも相手の決定力不足に助けられたり、3バックと関が体を張って守ったことで前半は0-0で折り返すことができた。

 

■後半

(1)早めのクリスラン投入  

 後半も前半同様に、仙台の攻撃には閉塞感が漂っていた。ミドルゾーンまではボールを運べるもののその先になかなか行けない。甲府の集中力の高い守備の前に、阻まれる時間が続く。  

 それを打破するためにクリスランを西村に代えて投入する。58分と早めの交代だった。クリスランをまずはポイントに攻めようというのが狙いだった。  

 甲府の中盤の守備が緩みだした60分過ぎから、徐々に落ち着いてボールを動かすことができた。野津田が3センターの脇に登場し、茂木とのコンビネーションからチャンスを作り出す。62分に茂木がカットインをしてシュートを打ったシーンがあったが、あのような攻撃がもっと欲しかったのが本音である。

 

(2)一進一退のなかで  

 後半はお互いに一進一退の状態が続く。甲府は2トップを中心としたカウンターと前半から得ていた数多くのコーナーキックからチャンスを作り出す。68分に堀米を投入すると中盤でタメを作ることができ、全体を押し上げることができていた。

 甲府はどうしても勝利が欲しいために、時間の経過とともに焦りだす。前半からもあったが、どうしても荒いプレーが増えてしまい、ピッチに倒れ込む選手が続出していった。そんな中で仙台も相手の焦りを見逃さずにチャンスを窺いたかったが、やはり食らいついてくる甲府の守備になかなか決定機を作り出せない。

 

 仙台は菅井とジャーメインを投入する。一方の甲府も橋爪、そして黒木を投入しパワープレーに打って出る。  

 甲府は90分に新井が2枚目のイエローカードをもらい、退場となる。仙台は相手が10人でしかもパワープレーに出たことで後方にスペースが生まれ、ようやく決定機を生み出すことに成功する。アディショナルタイムにはジャーメインに1回、クリスランに2回立て続けに決定機を迎えたが、決めきることができなかった。 

 決定機を3つ外したチームをサッカーの神様は味方するはずもなく、90+6分にリンスがドリブルから4人を抜いてゴールを決め、勝負あり。  

 我慢に我慢を重ねた甲府が1-0で勝利した。しかし清水が勝利したために来季の降格が決定。ミッションクリアとはならなかった。

 

■最後に・・・

 最後まで甲府相手に効果的な攻撃ができずに敗戦となった。アディショナルタイムの3つの決定機を決めきれれば問題なかったのだが、ここ最近の課題である決めきるところを決めきれない課題を大事なシーンで露呈してしまった。  

 今シーズンすべてに言えることだが、5バック相手はすこぶる苦手である。4バックだと5レーンを利用して攻撃できるものの、5バックだとレーンを埋められてしまい、本来狙いとしている攻撃ができなくなってしまう。甲府戦のように剥がすことに終始してしまい、相手を動かすプレーがなかなか出てこなかったのは来年への課題である。さらに攻撃のバリエーションが必要である。

 

 これで今シーズンは終了。最終的には昨年同様に12位でのフィニッシュとなった。しかし昨年以上にサッカーには充実感のあるシーズンであり、また課題が明確なことから来年以降もどれだけ伸びていくか純粋に楽しみである。  

 自分たちのサッカーに自信があるからこそもっと強くなりたいし、結果を出したいと思えるシーズンだった。来年の更なる飛躍を期待したい!  

 まずは一年間お疲れさまでした!!