ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

最後の最後で出たさまざまな課題~J1最終節 ヴァンフォーレ甲府vsベガルタ仙台~

 いよいよ最終節です。今回はヴァンフォーレ甲府戦を取り上げます。f:id:khigu:20171206183143p:plain

 仙台は前節・マリノス戦からスタメンの変更はなしだったのだが、アップ中に蜂須賀が負傷。代わりに茂木が起用された。ベンチにはダンが復帰、また小島もベンチ入りをしている。  

 勝たなければ後がない甲府。この試合に勝利し清水の結果を待ちたいところ。まさに人事を尽くして天命を待つ状態。前節・大宮戦で島川が負傷し、代わりに新井がアンカーを務め、3バックの中央に山本を起用した。それ以外は変更なし。

 

■前半

(1)仙台の狙いと甲府との駆け引き  

 仙台にとっては苦手な5バック相手は久々の対戦となり、5バック相手にどのような攻撃をしていくのかは1つのポイントとなった。ここでは仙台の狙いとその後の甲府の対応、それに続く駆け引きについて見ていきたい。

f:id:khigu:20171206183400p:plain

 試合開始からの仙台のボール保持は3142の形で行われていた。ついでに守備は541のままとなっている。  仙台がビルドアップ時における時間とスペースを得たいエリアは左右のバックのポジションである。いわゆるハーフスペースの入口。仙台は奥埜が2トップの間に入り、三田と野津田がインサイドハーフ付近にポジショニングすることで甲府の2トップとインサイドハーフをピン留めし、ハーフスペースの入口である増嶋と平岡に時間とスペースを与えることに成功する。  

 そこからウイングバックに当てて、2トップへの斜めパスや西村や石原が裏に抜けてボールを引き出すような攻撃をしていく。

 

 しかし甲府も20分過ぎから対応できるようになっていく。

f:id:khigu:20171206183455p:plain

 甲府は仙台の立ち位置を把握すると、左右のバックに対してインサイドハーフが突撃するようになっていく。図でいえば仙台の左にボールがあるとしたら小椋がプレッシングに行き、そのカバーを新井が行うという形である。  

 甲府はビルドアップ隊へのファーストディフェンダーがハッキリしたことで各ポジションの選手もマークがハッキリし、守備がハマるようになっていく。

 

 甲府に対応されるようになった仙台だが、元の形である3421の形で三田と奥埜を並列に並べることで、ビルドアップを安定させ、なんとか甲府のプレッシングを掻い潜っていく。おそらく3421になったのは、監督の指示ではなく自分たちの判断からなのではないだろうか。根拠はないが3421に変わっていくときに各々のポジションが微妙にズレていたように思える。前半も終盤に差し掛かるとポジションが修正されていたので、おそらくピッチ内の判断で行われていたのではないか。  

 そんな攻防が前半45分間の中にあった。

 

(2)被カウンターが多かった仙台

 この試合は前半からとにかく甲府にカウンターを食らう場面が多かった。それは仙台の攻撃が上手くいってない証拠でもあった。  

 仙台はミドルゾーンまでボールを運ぶことができていた。しかし相手ブロック内へ縦パスを通すもそれがズレてしまったり、通ったものの落としたボールが引っ掛かったりと、縦パスの精度や最後の精度を欠いてしまうシーンが多発していた。監督コメントにもあったようにピッチが荒れていたことも原因だろうが、それ以上に甲府の最後の守備がしっかり集中していたことがミスが増えた最大の理由だ。  

 よって攻撃の終わり方が悪い仙台は中盤でリンスとドゥドゥ(時々中盤の3人)に前を向かれカウンターを食らう場面が増えていった。縦パスを奪われるため、ネガティブトランジションもうまく機能せず、大宮戦やマリノス戦のように即時奪回からの厚みのある攻撃を繰り出すことができなかった。 

 それでも相手の決定力不足に助けられたり、3バックと関が体を張って守ったことで前半は0-0で折り返すことができた。

 

■後半

(1)早めのクリスラン投入  

 後半も前半同様に、仙台の攻撃には閉塞感が漂っていた。ミドルゾーンまではボールを運べるもののその先になかなか行けない。甲府の集中力の高い守備の前に、阻まれる時間が続く。  

 それを打破するためにクリスランを西村に代えて投入する。58分と早めの交代だった。クリスランをまずはポイントに攻めようというのが狙いだった。  

 甲府の中盤の守備が緩みだした60分過ぎから、徐々に落ち着いてボールを動かすことができた。野津田が3センターの脇に登場し、茂木とのコンビネーションからチャンスを作り出す。62分に茂木がカットインをしてシュートを打ったシーンがあったが、あのような攻撃がもっと欲しかったのが本音である。

 

(2)一進一退のなかで  

 後半はお互いに一進一退の状態が続く。甲府は2トップを中心としたカウンターと前半から得ていた数多くのコーナーキックからチャンスを作り出す。68分に堀米を投入すると中盤でタメを作ることができ、全体を押し上げることができていた。

 甲府はどうしても勝利が欲しいために、時間の経過とともに焦りだす。前半からもあったが、どうしても荒いプレーが増えてしまい、ピッチに倒れ込む選手が続出していった。そんな中で仙台も相手の焦りを見逃さずにチャンスを窺いたかったが、やはり食らいついてくる甲府の守備になかなか決定機を作り出せない。

 

 仙台は菅井とジャーメインを投入する。一方の甲府も橋爪、そして黒木を投入しパワープレーに打って出る。  

 甲府は90分に新井が2枚目のイエローカードをもらい、退場となる。仙台は相手が10人でしかもパワープレーに出たことで後方にスペースが生まれ、ようやく決定機を生み出すことに成功する。アディショナルタイムにはジャーメインに1回、クリスランに2回立て続けに決定機を迎えたが、決めきることができなかった。 

 決定機を3つ外したチームをサッカーの神様は味方するはずもなく、90+6分にリンスがドリブルから4人を抜いてゴールを決め、勝負あり。  

 我慢に我慢を重ねた甲府が1-0で勝利した。しかし清水が勝利したために来季の降格が決定。ミッションクリアとはならなかった。

 

■最後に・・・

 最後まで甲府相手に効果的な攻撃ができずに敗戦となった。アディショナルタイムの3つの決定機を決めきれれば問題なかったのだが、ここ最近の課題である決めきるところを決めきれない課題を大事なシーンで露呈してしまった。  

 今シーズンすべてに言えることだが、5バック相手はすこぶる苦手である。4バックだと5レーンを利用して攻撃できるものの、5バックだとレーンを埋められてしまい、本来狙いとしている攻撃ができなくなってしまう。甲府戦のように剥がすことに終始してしまい、相手を動かすプレーがなかなか出てこなかったのは来年への課題である。さらに攻撃のバリエーションが必要である。

 

 これで今シーズンは終了。最終的には昨年同様に12位でのフィニッシュとなった。しかし昨年以上にサッカーには充実感のあるシーズンであり、また課題が明確なことから来年以降もどれだけ伸びていくか純粋に楽しみである。  

 自分たちのサッカーに自信があるからこそもっと強くなりたいし、結果を出したいと思えるシーズンだった。来年の更なる飛躍を期待したい!  

 まずは一年間お疲れさまでした!!