ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

ベガルタ仙台テクニカルレポート2017【後編】

 

 前編に続き後編では、私的ベストゲームやベストゴールなどさまざまな視点から振り返っていこうと思います。

 

■ベストゲーム

・第27節 vsセレッソ大阪戦(4-1)

2017明治安田生命J1リーグ 第27節 セレッソ大阪戦ハイライト - YouTube

 ベストゲームに挙げたのは、27節のセレッソ大阪戦。上位相手に対して臆することなく、自分たちのサッカーを展開し勝利した試合だった。先制点のゴールへの過程は今シーズン目指している形での得点であり、その後もボール保持からの攻撃だけではなく、カウンターからの得点やセットプレーからの得点も挙げることができた試合だった。
 またベテラン勢の活躍も光った試合だった。ダンの負傷で急きょ出場した関のファインセーブ、久々の先発でアーリークロスからアシストしたリャン、そしてゲームに花を添えるゴールを決めた野沢の活躍は素晴らしかった。どの選手が出場してもクオリティが維持されることを証明したゲームであり、さらに自分たちのサッカーに自信を持つことができたゲームだった。

 

■ベストゴール

ルヴァンカップグループステージ第4節 vs大宮アルディージャ戦,佐々木匠

【公式】ゴール動画:佐々木 匠(仙台)17分 大宮アルディージャvsベガルタ仙台 JリーグYBCルヴァンカップ グループステージ 第4節 2017/5/3 - YouTube

 今シーズンは月間ベストゴールにノミネートされたクリスランのジャンピングボレーや、前編でも紹介したパスを数多くつないでのゴールなど、さまざまなファインゴールが生まれた年でもあった。その中であえてベストゴールに選んだのはこの佐々木匠の得点である。
 このゴールを選んだ最たる理由はその得点過程にある。椎橋→西村→蜂須賀→茂木→西村→蜂須賀→匠と得点に絡んだすべての選手が生え抜きの若手選手である(蜂須賀は微妙だけれども(笑))。そしてこのゴールは椎橋から西村がハーフスペースで受け、反対サイドの蜂須賀にロングフィードを送ったところからの得点で、まさに今シーズン目指していた形である。春先から若手選手が積極的に新システムと戦術にトライし、そしてそれを実践の場でできたこのゴールの意義はとても大きいと思う。また椎橋と西村、蜂須賀はその後のリーグ戦でスタメンに名を連ねるようになった。そういった意味では、その後の仙台にとって欠かせない成長体験だったゴールだと思う。

 

■気になった選手

 今シーズンは気になった選手がかなりいるが、ここでは選りすぐりの6人にフォーカスすることにしたい。

・シュミットダニエル  

 今シーズン、松本から帰ってきたダンことシュミットダニエル。開幕当初は関に守護神の座を譲っていたが、第7節鹿島戦から出場すると第27節FC東京戦まで守護神としてゴールマウスを守り続けた。リーグ戦に出場し始めた当初は失点につながるミスも多く、決して安定しているとは言い難いパフォーマンスだった。しかしJ1の試合を経験するごとに成長し、徐々に安定感も増していき、ダンのセーブで勝点をもぎ取った試合もあった。  

 また中学時代までボランチを経験していることから、確かな足元の技術を併せ持つ。後方からのビルドアップが生命線になってきたチームにとって攻守における重要な役割を担うようになった。来シーズンも仙台でのプレーが決まっている。より安定感を増したプレーを披露し、仙台からぜひ代表を選ばれてほしい。

 

大岩一貴  

 公式戦全試合に出場したまさに鉄人。シーズン開幕から前半戦は右バックを主戦場にプレーし、3バックながら積極的なオーバーラップなどを見せていた。しかし今シーズン最も成長したのは中央のセンターバックに起用されてから。第22節広島戦から中央で起用されると、的確なカバーリングと高いライン設定でよりチームがコンパクトに保てるようになり、攻守のバランスを取れるようになった。  

 またキャプテン富田が負傷離脱するとキャプテンマークを巻き、チームを引っ張る存在ともなった。年間MVPに選ばれなかったものの、個人的には今シーズンのMVPだと思っている。公式には発表されていないが、来シーズンも仙台でのプレーを選んでくれた(らしい)。来シーズンも今シーズン同様に後方からチームを支え上位進出を目指してほしい。

 

・椎橋慧也、蜂須賀孝治、西村拓真  

 いわゆるルヴァンカップ台頭組。  

 椎橋はルヴァンカップグループステージ第3節vs清水戦で初出場すると、その試合で初得点を決め鮮烈なデビューを飾った。本職はボランチであるが、ビルドアップ能力の高さを買われ今シーズンは3バックの一角として出場した。後方から的確に球出しをできるパスセンスと運ぶドリブルが標準装備され、守備陣のなかではビルドアップ能力に関しては頭一つ抜けていた。フィジカル的な問題もあり守備にはまだまだ課題が残っているものの、実戦を通して成長していた。来シーズンも仙台でプレー。今シーズン以上に欠かせない存在へと成長していってほしい。  

 蜂須賀は入団5シーズン目でなかなか伸び悩んでいたが、今年は間違えなく成長した選手の1人であった。シーズン通してケガ人が多かったウイングバックだが、蜂須賀はほぼケガをすることなく今シーズンを過ごせた。もともとの体躯の良さを活かしたダイナミックなオーバーラップに加えて、クロスの種類も豊富になり、左右両方で正確なクロスを供給できるようになった。もちろんセットプレーでの守備など課題が残ってはいるものの、今シーズンの成長ぶりは素晴らしかった。残念ながら最終節・甲府戦で膝を負傷し長期離脱を余儀なくされたが、また一回り二回り成長した蜂須賀がサイドを駆け上がる姿を見たい。  

 そして最後は西村。クラブ初のニューヒーロー賞を取った成長株。今シーズン一番システム変更の恩恵を受けた選手と言っていいだろう。ハーフスペースでのボールを受ける技術、そしてそこからの判断力の高さはお見事。年々体つきも良くなり、相手をドリブルしながらなぎ倒していく姿にたくましさを感じた。しかしリーグ戦では29試合2ゴールと前線の選手としては寂しい結果となった。終盤にはシュートシーンで力んでしまう場面も見られ、ゴール前の冷静さは課題だろう。そこが解決されればいよいよ手の付けられない選手になるはずだ。

 

石原直樹  

 最後に挙げるのは石原。自己最多タイの10得点を決めた年間MVP。今シーズン浦和から加入し、移ろいが激しかった前線で31試合に出場した。それだけこのシステムの理解度が高くかつ渡邉監督からの信頼度も厚かった。得点をはじめ、前線のキープや労を惜しまないチェイシングなど、前半戦はかなりオーバーワークだった。しかし夏に野津田が加入した後半戦では、前線でキープしていた役目が軽減され、ボックス内での仕事に集中できるようになった。10点の内6点が野津田加入後に挙げたゴールということからも石原にとって野津田の存在は非常に大きかった。来シーズンも報道では石原、野津田双方とも残留が濃厚。石原には今シーズン以上に活躍を期待し、ぜひ自己最多得点を目指してほしい。

 

■来シーズンへの期待とか  

 今シーズンはシステムや戦術が大きく変化し、まさに変革の一年だった。その中でも若手の台頭や新戦力の活躍もあり、ルヴァンカップではベスト4という成績を残すことができた。またリーグ戦では12位と昨季と同じ成績だったものの、主力が抜け戦術が変わったなかで残留争いに巻き込まれずシーズンを過ごせたことは十分に評価ができることである。  今シーズンは新システムと戦術の土台が作り終え、上位へ殴り込みに行く準備の年だったと言えるだろう。ということで来年はこのサッカーを継続しながらも、さらに練度を上げて結果を残せるシーズンとしたい。  

 そのためにはもちろん克服しなければいけない課題はいくつもある。守備時におけるセットプレーや5バック相手に対する攻略法、2-3で負けた川崎戦のようにどのように逃げ切るか(もしくは攻め切るか)といったゲームの運び方などなど。このような課題を克服しながらチームが成長していく姿を来年も見ていきたい。そのためにはキャンプからいいトレーニングをして落とし込んでいけるかがポイントとなってくるだろう。

 

■最後に・・・  

 今シーズンも当ブログをご覧いただきありがとうございました。今シーズンはサッカーが変わっていく中で学ぶことも多く、納得できる文章を書けない日々でしたが、いい経験のできた一年でした。  

 個人的には今シーズンやっているサッカーは、応援し始めてから一番といっていいほどワクワクしています。なので本当にルヴァンカップ準決勝は悔しかったですし、このサッカーで結果を残したいと思えた瞬間でした。そして決して潤沢ではない地方クラブがこのようなサッカーで結果を残すことの意義は、自分たちの想像以上に大きいはずです。来年も精いっぱい応援したいと思います。

 そして私事ですが、スポーツナビブログが閉鎖するために当ブログも閉鎖せざるをなくなりました。よって来シーズンからは、ヒグのサッカー分析ブログ(仮)にて更新していきたいと思います。  

 また来年からは社会人になるために毎試合更新できるとは限りません。それでもみなさんの観戦の足しになれるようなブログを今後も書いていきたいと思います。

 

 今シーズンもありがとうございました。また来シーズンもよろしくお願いします!それではよいお年を。