ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

今シーズン一番悔しい敗戦 J1第28節 ベガルタ仙台vs浦和レッズ

 さて、浦和レッズ戦を取り上げます。f:id:khigu:20171113114026p:plain

前節・セレッソ大阪戦で完勝した仙台、連勝で中位へと殴りこみたい一戦となった。浦和戦は石原が契約の関係で出場できない。今節はセレッソ戦でゴールを決めた野沢がワントップに入った。それ以外は変更点なし。

 突然のミシャ式終焉から2回目の緊急登板となった堀監督の浦和。リーグ戦では中位に甘んじているものの、ACLでは準決勝に進出している。そのACLの準決勝が水曜日にあっての今節となった。ミッドウィーク・上海戦からの変更点は長澤から梅崎のみ。ほぼメンバーは変更なくこの試合を迎えた。

 

■前半

(1)仙台:ボール保持、浦和:ボール非保持のとき

 前半はお互いにボールを持つ時間、反対に持たない時間があった。

 仙台がボールを保持したとき、浦和がボール非保持のときの状況から、まずは見ていきたい。

 浦和は堀監督に変わってから、4141にシステムを変更している。その真意は浦和の試合を見ていないのでよくわからない。 f:id:khigu:20171113114112p:plain

 この試合の浦和は、仙台のボール保持時の対応として、5バックを選択した。梅崎がサイドハーフながらウイングバックのタスクを行うネルシーニョ方式。梅崎がウイングバックとして振る舞うことで、古林のマークをハッキリさせる。それ以外にも槙野はリャン、野津田に対しては阿部が付くことでマークのズレを作らせなかった。元々5バックを採用していたチームだけあって、この辺の対応は非常に柔軟だった。

 では、前方はどうかというと、試合開始直後は仙台のビルドアップ隊に対して前プレを掛けていた。興梠、柏木、武藤、ときどきラファエルシルバが前プレを行うことで、仙台のビルドアップを阻害。または前線でボールを奪うことでチャンスを作っていた。

 青木の両脇が空くリスクもあったが、浦和としてはシャドーのマークをハッキリさせているので、多少リスクはあっても問題ないという計算だったのかもしれない。

 

 それに対して仙台は試合の序盤は、前プレを受けてしまい、危ない場面や後方でボールを奪われることも多かった。しかしなんとかボールを前線に届けるシーンもあった。リスクを伴うもののチャレンジすることで剥がすことができていた。

 野津田が時間の経過とともに阿部が付いてこないエリアでボールを受けられるようになってくる。青木の脇に登場したり、サイドに顔を出して起点を作ったりと、野津田がポジション優位でボールを受け、全体の押し上げを行わせることで、仙台は攻撃へと転じることができた。

 ただ、シュートまで持っていくことはなかなかできなかった。野沢が潰されることが多く、サイドから効果的なクロスも上げることができなかった。

 

 25分に浦和が先制すると、時間の経過とともに浦和は後ろに重心を置くようになる。f:id:khigu:20171113114151p:plain

 柏木がボランチの位置に下がり、完全な541にシフトチェンジする。先制したこともあって、このまま前半を乗り切りたいというのが浦和の狙いだった。

 

 反対に仙台は相手が引いてくれたことで、ボールを動かしやすくなった。ボランチとシャドーの位置でうまく相手を剥がしてチャンスを作ることができていた。浦和の541では、中盤の4枚がいい距離感で守れておらず、またさぼりがちのラファエルシルバがいたので、仙台がポジションと選手の密集でテンポの良い攻撃が次第にできるようになった。前半で得点は奪えなかったものの、前半はヒントを掴むことができたのではないか。

 

(2)浦和:ボール保持、仙台:ボール非保持のとき

 では、反対はどうか。

 浦和はシステムが4141に変更したものの、攻撃のやり方自体は変わってないかなと思う。元々ミシャ式の可変システムでは攻撃時は4141のような形だったし。

 浦和は仙台の541の守備ブロックに対して、4バックが広く距離感を取り、そこをU字形にボールを動かすことで、仙台の541の「4」の距離感を広げ、空いたところに縦パスを打ち込むことを狙っていた。

 そこで地味に効いていたのが、今夏加入したセンターバックのマウリシオ。守備は並のセンターバックだが、ビルドアップ能力はずば抜けていた。早いタイミングでボランチに預けたり、正確な対角のフィードを送ったり、前が空いていると見るや運ぶドリブルで相手との間合いを詰め縦パスを打ち込んだりと、状況に応じてプレーできる選手だった。この選手の加入は結構大きいんだろうなと感じた。

 加えて時折、柏木から裏へのパスで興梠を走らせたりと、相変わらず多彩な攻撃で仙台の守備を揺さぶっていた。

 

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 時間の経過とともに、柏木が落ちてくるシーンが増え始める。柏木が下がったことで、迷ったのが仙台のダブルボランチだった。柏木が下がり、どこまで付いていくのかは結構迷っていた。付いて行きすぎればボランチの背中のスペースを空けてしまうし、行かなければ柏木をフリーで持たせてしまい、自由にやらせてしまうと。そこで前半はだいぶ迷いが生じていたのかなと感じた。実際に失点には繋がってはいないが、相変わらず柏木は面倒な存在だった。

 

 25分にセットプレーからの失点は喫したものの、仙台も浦和同様に体を張って集中力の高い守備ができていたと思う。ただ、浦和のビルドアップ隊にフリーでボールを持たせると面倒な選手がいたことは仙台としてはやっぱり厄介だった。

 前半は0-1、浦和リードで折り返す。

 

■後半

(1)仙台の修正

 後半開始からリャンに代わって西村を投入した。監督コメントによると筋肉系のトラブルがリャンにあったらしい。

 後半に入って仙台は積極的に前から奪いに行く。前半は相手のボールになると後方に撤退し、守備ブロックを組む姿勢でいたが、リードを許したこともあり、前から積極的に奪いに行く。球際バトルで負けないプレーを見せた。

 後半の仙台は浦和のウィークポイントであるアンカー付近を狙うようになる。特に仙台が守から攻に切り替わったときに、より早く縦パスを野沢に入れることで、展開をひっくり返し、カウンターを発動させていった。

 野沢や野津田が中央でボールを受け、タメを作ることで前半は鳴りを潜めていた古林も高い位置を取れるようになり、梅崎とのサイドの駆け引きでも勝てるようになった。

 48分の三田の同点ゴールも積極的に奪いに行ったことで、得られた同点ゴールだった。

 

 また浦和が前からプレスを掛けに来たときは、ロングボールを前線に送り、セカンドボールをダブルボランチやシャドーが回収する作業も行えるようになった。前々節にFC東京がやっていたやり方だが、今度は自分たちがそれを行うことで、相手の守備を押し込もうとしていた。

 

(2)オープンな展開になる中で

 仙台が攻勢を掛ける中で、次に得点が生まれたのは浦和だった。60分。仙台の左サイドで野津田が遠藤に引っ掛けられるも、ノーファウル。一瞬足の止まった仙台を他所に、ラファエルシルバに預けてもう一度受けた遠藤がクロス。それに興梠が合わせて勝ち越しを決める。ジャッジに関してはおそらくファウルだったと思う。渡邉監督の言う通りしょうがない失点だった。それをしっかり決めきる浦和のほうが一枚上手だったと思う。

 

 仙台は再度追いかける展開の中で、より攻勢を強めた。どうしても早い攻撃を仕掛けたいあまり、全体が間延びしオープンな展開を強いてしまう。

 浦和の空洞化する中盤を突くには早い攻めが必要で致し方ないところはある。しかし、浦和にもスペースを与えると牙を剥く選手がいる。それが武藤とラファエルシルバだった。特に武藤は仙台が前掛かりになればなるほど、よりドリブルから仕掛けるシーンが増えるようになる。

 

 70分に仙台はクリスランと蜂須賀を投入する。クリスランの投入は得点のことを考えれば有効な手段だが、元あったコンビネーションでの崩しが難しくなるという問題があって、この試合でも細かいミスで、攻撃の機会を失う場面は少なくなかった。

 

 前掛かりになった仙台に対して、浦和は82分に追加点。ゴールキックの流れからラファエルシルバと武藤の関係で、最後はラファエルシルバが裏に抜け出してゴールを決め、1-3とする。この場面では集中力を欠いてしまった仙台だった。

 

 仙台も疲労の色が隠せなくなった浦和にサイドから仕掛ける。しかし中野や蜂須賀のクロスは浦和のセンターバックに跳ね返されてしまう。それでも88分に中野のアーリークロスをクリスランが決めて1点差に詰め寄る。

 

 その後、アディショナルタイム5分の中でパワープレーに出るも最後まで追いつくことができずにタイムアップ。打ち合いを制したのは浦和だった。

 

■最後に・・・

 今シーズン、悔しい試合はいくつもあったが、この試合はシーズンの中でも1番悔しい試合だった。4月のあの悲劇的な試合から比べればかなりの成長だし、自分たちの持ち味を存分に出せた試合だったことは確か。それだけに勝利という結果が欲しかった。

 どこに差が出たかといえば、やっぱり最後の決定力ということになる。仙台だって西村のポスト直撃のシュートやクリスランのドフリーヘッドがあったわけで、そこを決めきれるかどうかの差なのだと、FC東京戦同様に思った試合だった。

 監督コメントにもあったように惜しい試合だったねで終わってはいけないと思う。このクオリティまできているのだからこそ、やはり結果が欲しい。

 

 この悔しさを晴らすチャンスはまだまだある。まずはルヴァンカップ準決勝の川崎戦が直近である。自分たちの持ち味を川崎相手に発揮し、そしてクラブの歴史をさらに塗り替えてもらいたい!

誰が出ても変わらないチームへの変貌 J1第27節 セレッソ大阪vsベガルタ仙台

 さてさて、セレッソ大阪戦を取り上げます。f:id:khigu:20171113114629p:plain

 仙台は、今週の練習でダンが負傷した。代わって関が久々の先発出場。また前節から西村に代わってリャンが右シャドーに起用された。

 一方のセレッソ大阪は、ここ直近5試合で1勝1分3敗と調子を落としている。このまま優勝戦線・ACL争いから脱落しないためにも落とせない今節の一戦。前節・広島戦からはスタメンの変更はなし。復帰予定だった清武が再離脱したのは少し痛手か。

 

■前半

(1)セレッソ大阪をいかに分断させるか

 前半は、仙台が非常に効果的にボールを保持して攻撃することができた。まずはどのような狙いを持ってプレーしていたかを見ていきたい。f:id:khigu:20171113114655p:plain

 セレッソは、試合開始から仙台のビルドアップ隊に対して前からプレスを掛けに行く。前回対戦でも同様に前から行く姿を見せたが、今回も同様に前からプレスを行っていた。

 ただ、仙台も三田や奥埜がビルドアップ隊へうまくフォローすることで、前プレを回避することができていた。

 

 この日の仙台の狙い目はセレッソボランチだった。セレッソの中盤の守備はほとんどボランチが負担しているという現状があった。水沼は下がってくるが、柿谷は気まぐれ。また一列目(杉本、山村)も積極的にプレスバックには戻ってこない。そうなるとボランチの守備範囲が広くなり、負担がかかる。

 仙台はそういったセレッソのウィークポイントを組織で対抗していった。ボランチとシャドーがボックスのような形を取り、セレッソボランチ付近で4対2のような状況を作り出す。セレッソボランチが仙台のボランチに食いつけば、シャドーが空くのでそこに出す。ボランチがフリーならば、そこからサイドへの展開や自ら持ち上がってチャンスを作る。といったように、セレッソボランチ付近で相手に後手を踏ませることで、仙台は中盤で効果的なボール保持ができていた。

 またもう一つのポイントとして、石原がセンターバックをピン留めすることで、よりボランチを孤立させることに成功した点だった。これはシャドー(野津田、リャン)の特性もあって下がることを選択しなかったのかもしれないが、結果的に中盤を支配するために効果的な働きができていた。

 

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 セレッソが自陣に撤退した場合は、左右のセンターバックからウイングバックへの外外循環での前進が主だった。それでも、狙いは変わらずボランチ付近だった。外からシャドーないしはボランチに当てて、セレッソボランチをずらすという狙いを徹底的に行っていた。

 

 先制点も狙い通りの形だった。42分。f:id:khigu:20171113114804p:plain

 きっかけは自陣左サイドで椎橋がボールを持ったところから。このときに椎橋、三田、中野、リャンがトライアングル形成している。そしてリャンは相手の四角形の中心へ。

 椎橋は少し自ら運んで相手をくぎ付けにし、リャンへ縦パスを入れる。リャンはターンをし、三田へ出す。しかし相手ディフェンダーに引っ掛かり、左サイドの中野へ。f:id:khigu:20171113114834p:plain

 中野をオーバーラップしていった三田。中野はその三田へスイッチし、左サイドからファーへクロスを上げる。このときに中の人数は同数だったが、その奥の古林はフリーだった。フリーで受けた古林はマイナスのクロスを石原へ。石原が冷静にハーフボレーで流し込み先制する。

 古林がボールを受けたときのセレッソの守備は非常に怠慢。折り返されたときの柿谷の戻りの遅さやボランチバイタルエリアをカバーし切れていないところが見られた。

 前回対戦のときも仙台の1点目は似たような形だったが、セレッソの守備は似たような現象があったはず。横幅をうまく利用し、揺さぶることで相手のウィークポイントを突いた見事な先制点だった。

 

 前半はこの石原の得点でリードした仙台が1-0で折り返す。

 

■後半

(1)セレッソの修正

 後半に入ってセレッソは守備を修正。泳がせていた仙台のボランチとシャドーに対して、マークをハッキリさせる。ボランチに対してはセレッソボランチが、シャドーに対してはボールが入ったときに山下、ヨニッチの両センターバックが出てきて対応する場面が見られるようになる。守備の基準点をハッキリしたことで、よりプレスの強度と寄せのスピードを上げることが修正点だった。

 一方の攻撃では主に右サイドの攻撃が中心になっていた。真意は分からないが、指示ではなく、水沼と松田陸がいい距離感でプレーできたことで、右サイドからスムーズに攻撃できていたのが要因ではないかと思う。反対に左サイドは柿谷が中に絞りがちになり、丸橋との距離感が遠いため、攻撃することが難しかった。

 開始早々に松田のロングパスから山村が1対1を迎えるが関がぎりぎり体に当てて防いだ。それ以外にも仙台の寄せの甘いところから水沼や松田にクロスを上げられ危ない場面を迎える。しかし関、平岡、大岩、椎橋を中心にペナルティエリアで体を張ってなんとか凌ぐ時間が、後半開始からあった。結果的にはこの時間帯にしぶとく守れたことで、もう一度流れを引き戻すことができた。

 

(2)慌てずに攻める仙台

 序盤は苦しい時間もありながら、仙台は前半同様に中盤エリアで慌てずにボールを繋ぐことで、攻撃に転じることができた。後半は奪ったボールを縦に素早く当てるのではなく、野津田や石原が一旦キープし、周りの選手とパス交換をしながら全体を押し上げて攻撃することができた。特に野津田のキープ力と展開で、苦しい場面でも全体を押し上げることに成功する。

 

 69分に足をつった石原に代えて野沢を投入する。中盤でボールを保持できることを考えればクリスランよりも野沢で地上戦を行ったほうがいいという判断だった。

 この判断はすぐに正しかったと証明される。70分。セレッソからボールを奪った仙台。中野が中央の奥埜へパス。奥埜は丸橋をターンで交わすとカウンターが発動する。奥埜は野沢に預け、そのまま右の古林へ展開する。古林は低いアーリークロスを上げ、最後は野津田が決めて追加点を決める。

 

 その後、74分にはスローインの流れから杉本のシュートのこぼれ球を水沼に押し込まれ2-1とされるが、直後の77分に追加点を奪う。

 交代で入った蜂須賀が右サイドを突破しようとするが丸橋に倒されファウルをもらう。フリーキックは合わないがセカンドボールを拾って、リャンがファーの椎橋へクロス。椎橋は逆サイドのネットにループ気味のヘディングシュートを決めて、再度突き放す。

 リャンの正確なキックが椎橋の得点を生んだ。椎橋はリーグ戦初ゴール。

 

 極めつけは90分。中盤エリアで仙台がボールを奪うと途中出場の西村へ。西村はドリブルで相手に向かい、2人を引き付けて左の野沢にパス。フリーの野沢はきれいな弧を描くシュートを決めて勝負あり。

 

 前節・FC東京戦を払しょくするような試合運びで4位・セレッソ大阪に完勝した。

 

■最後に・・・

 セレッソ大阪は良くも悪くもあまり形が変わらないチームなのだと思う。だからこそ、しっかりとしたスカウティングと選手起用で勝つことができた。仙台がユンジョンファンが率いるチームに4点を奪ったのは初めてのことである。

 

 また今節はベテランが輝いた試合だった。今年はなかなか思うように試合に出られず悔しい思いをしてきた関、リャン、野沢の活躍は本当にうれしい。特に関は2,3点分のピンチを防いでくれた。ダンが活躍する中でしっかり日ごろのトレーニングから準備してきた証明だった。

 そして椎橋、西村といった若手も結果を出し、今節はまさしくチームの総合力で勝利したゲームだった。

 

 まだまだ上へと上がっていくチャンスがある。次節は浦和レッズとの試合。順位を上げるためにも連勝を期待したい!