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【Vegalta is Back!!】明治安田J2第27節 ベガルタ仙台vsジェフユナイテッド千葉

 さて、今回はジェフユナイテッド千葉戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

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↓前回対戦のレビューはこちら

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スタメン

 ベガルタ仙台は、前節・レノファ山口FCと2-2の引き分け。一時は逆転に成功したが、スタミナが切れた終盤に追いつかれて勝点1に留まった。

 この結果により5試合勝ちなしで順位も6位となった。仙台にとってはまさに正念場。今節の結果次第では昇格争いから大きく後退する可能性もある。

 さらに今週は、名願斗哉の川崎フロンターレ復帰とオナイウ情滋の横浜F・マリノス完全移籍が発表され、既存の30人で残りの試合を戦うこととなった。

 今節の対戦相手は、2位のジェフユナイテッド千葉。千葉は大宮、徳島との上位直接対決で連勝しており、悲願のJ1昇格に向けて好調をキープしている。

 背水の陣で挑む仙台は、千葉を相手に果敢に挑むことが求められる。好調千葉に今季ユアスタ初勝利を挙げて、勢いを取り戻したい一戦となった。

 仙台は5人のメンバーを入れ替え。センターバックに菅田が戻ってきて、左サイドバックには奥山。ダブルボランチは武田と鎌田のコンビで、右サイドハーフに郷家。2トップは荒木と小林のコンビとなった。

 ベンチには、前節の反省もありボランチの控えに松井と工藤の2枚を置き、山内、エロンがメンバー入りとなった。

 

 一方のジェフユナイテッド千葉は、前節・徳島ヴォルティスとの上位直接対決を1-0で制して2位をキープしている。

 ここ最近は、ホセスアレスを中心とする守備が安定しており、大宮、徳島を零封。さらに今夏加入したイサカゼインがさっそくフィットし、攻撃を活性化させている。

 悲願のJ1昇格を目指して、この調子をさらに加速させていきたいところ。上位直接対決3連戦のラストとなる仙台は千葉にとって相性も良く、ここで勝ち切って自動昇格に向けてさらに歩みを進めたい試合となった。

 千葉はカルリーニョス・ジュニオが欠場し、代わりに呉屋がスタメン。ベンチには米倉が前節から代わってメンバー入りとなっている。

 

前半

(1)本来の姿を取り戻した仙台

 試合開始から千葉がサイドから押し込むシーンを作っていたものの、仙台は集中した守備でシュートを打たせない。

 

 この日の仙台は、試合開始からいつも以上に高い集中力を保っていた。

 ボールホルダーに対する寄せ、攻撃から守備への素早い切り替え、激しい球際バトル。局面で絶対に負けないという強い意志を感じるプレーの連続で、誰1人としてサボらずに、集中力を切らすことなく試合開始から戦うことが出来ていた。

 森山ベガルタの強みである高い強度のプレーが序盤から数多く見られ、チームのこの試合に掛ける強い想いをプレーから感じ取れたのと同時に、本来のあるべき姿を取り戻すことが出来た。

 

(2)ミドルプレスと相良の外切りプレッシング

 試合は千葉がボールを保持し、仙台がミドルブロックで構える展開が続ていく。

 仙台のミドルブロックは、前回対戦同様に高いディフェンスラインを敷いてコンパクトな陣形を作る。

 千葉は仙台のミドルブロックに対して、田口がアンカー、日高とエドゥアルドがインサイドハーフ、森と呉屋が縦関係となる3-1-5-1の形に可変する。

 千葉としては仙台の4-4に対して中盤を5レーンで人を埋めることでビルドアップ隊からのパスコースを作り出しながら、サイドからのアーリークロスを狙う形が多かった。

 

 仙台は4-4-2のハイラインのミドルブロックで構えながら、髙橋、鳥海、河野、田口のビルドアップ隊に対して2トップが田口を背中で消しながら構えて、相良の外切りプレッシングをきっかけに前線のプレッシングをスタートさせる。

 相良が外切りを行うのは髙橋からイサカゼインのパスコースを消すためで、千葉のパスルートを左サイドへと誘導させることで、イサカゼインをゲームから消すことが狙いだった。

 試合序盤こそ、プレッシングを仕掛けたところで縦パスを差し込まれて回避されるシーンはあったが、ハイラインでコンパクトな陣形を保っていたことでブロック内に入ったボールに対してはしっかり守れていた印象だ。

 またディフェンスラインが高いことで、千葉のアーリークロスオフサイドにするなど前回対戦同様に機能していた。

 

 仙台は21分に相良のプレッシングをきっかけに前線からのプレッシングを行うと、千葉が窮して蹴ったボールを真瀬が敵陣で回収。真瀬の楔パスから荒木がポストし、最後は小林がシュートを放つシーンを作り出す。

 小林のシュートは相手ディフェンスに当たってコーナーキックになったが、このプレーを見てからか小林監督は飲水タイム以降にボール保持の形を変化させる。

 千葉は髙橋が右サイドバックのポジションに戻り、4-3-3に形を変化させ打開策を見出そうとするが、仙台は千葉の両サイドバックに対してしっかり相良と郷家が付いていくことで蓋をし、千葉のボール保持を停滞させていった。

 

 局面における高強度のプレーとハイラインのミドルブロックが機能し、少しずつゲームの主導権を握り始めた仙台。

 ボール保持の局面では、4-2-4のミドルブロックで構える千葉に3-4-2-1の形から千葉のサイドバックサイドハーフの間でポジショニングする相良や真瀬へ届けることで千葉の一列目の守備を突破。

 そこから千葉を押し込んでプレーする時間も作り出していった。

 18分には奥山の楔パスを小林が受けて鋭いターンから荒木へスルーパスを送る。荒木は3度の切り返しからシュートコースを作り出して放つもホセスアレスの正面に飛んだ。

 続く31分には素早い切り替えから鎌田がボールを奪うと、右サイドで細かいパスワークから真瀬のグランダーのクロスに相良が合わせるも相手ディフェンスのシュートブロックに防がれた。

 

(3)待ちに待った今季ユアスタ初ゴール!

 チャンスを少しずつ作り出し、着実にゴールの匂いがしてくると、結実したのは38分だった。

 ホセスアレスロングフィードを受けた椿は、田口へ横パスを送ろうとする。

 しかしそれを読んでいた鎌田がインターセプトすると、小林がカウンターを発動。小林はドリブルで運んで相手を引き付けると右サイドの荒木へパス。荒木のダイレクトのクロスに長距離をスプリントした武田がヘディングシュートを叩き込んで、仙台が先制に成功する。

 待ちに待った今季ユアスタ初ゴールは、素早いカウンターからの得点だった。この試合守備で光っていた鎌田のカット、小林のドリブル、荒木の鋭くて正確なクロス。そして何と言っても長距離をスプリントした武田のヘディングシュート。いずれも素晴らしいプレーだった。

 千葉目線で言えば、ホセスアレスから椿がボールを受けたときに、日高はインナーラップをしていたために、奪われた時点で左サイドにスペースが生まれてしまっていた。椿の横パスが痛恨だっただろう。

 

 その後も仙台が主導権を握る展開。千葉も無理に前からプレッシングに来ないため、仙台はしっかりとボールを動かしながら前から来たら背後へのロングフィードでひっくり返すプレーを繰り返して、前半のアディショナルタイムを過ごした。

 

 前半は、攻守、そして局面において千葉相手に主導権を握った仙台が武田のゴールでリードし、後半へと折り返す。

 

後半

(1)右サイドからの攻撃で主導権を明け渡さない

 1点を追う千葉は、後半開始から2枚替え。日高と椿に代えて植田と杉山を投入。イサカゼインが左サイド、杉山が右サイドでの起用となった。

 

 後半開始から選手交代を行って攻勢に出たい千葉に対して、主導権を明け渡せまいと仙台が右サイドから押し込んでいく。

 開始間もない46分には郷家のクロスを奥山がファーサイドで回収し、相良の落としから武田がミドルシュートを放つ。

 50分には井上の自陣からのフリーキックから真瀬が競って郷家に渡ると、グランダーのクロスを上げ、荒木の落としにフリーで相良が合わせるも枠の上を越えていった。

 追加点を決め切ることはできなかったが、仙台は右サイドを起点に序盤からチャンスを作り出すことで主導権を明け渡さない試合展開をすることが出来た。

 

 一方の千葉は、前半途中で4-3-3のボール保持に変化させたものの、後半開始からは再び3-1-5-1の保持に戻してプレーする機会が増えていた。

 千葉はハイラインの仙台にまずは背後へのロングボールを送りながら仙台を押し下げていこうとする。また、逆足ウイングとなったことで縦への突破だけではなくサイドから中央へ差し込むボールも狙い始める。

 しかしながら、仙台も押し下げられそうになってもしっかりディフェンスラインの高さを維持しながらコンパクトな陣形を維持。差し込むパスに対してもしっかりボールを奪い切ることができていた。

 千葉は57分に呉屋に代えて横山を投入。狭いスペースでのプレーが得意な横山を1.5列目に起用して打開を図る。

 

 仙台は61分に小林に代えてエロンを投入。攻守に最前線でハードワークした小林はここで御役御免。前線でタメの作れるエロンを投入することで、前からプレッシングを掛け始めた千葉に対してロングボールからエロンのポストプレーで越えていく選択肢を作った。

 

(2)バトンを繋いだ交代選手たち

 千葉が圧力を強めていくなかで、自陣で守備ブロックを敷く時間も長くなっていったが、前掛かりになる千葉をひっくり返すことでチャンスを作ることも出来た。

 66分には井上のカバーリングから真瀬が前線に残っていた鎌田へ楔パス。鎌田からエロン、相良と繋ぎ、相良のヒールパスにエロンが反応してシュートを放つも、ホセスアレスに阻まれる。

 続く69分には、林のゴールキックからエロンが収めて鎌田へ。鎌田のパスは相手に引っ掛かるが、結果的に相良の下へボールが流れてホセスアレスと1対1となる。しかし、相良のシュートをホセスアレスがセーブし、ここはホセスアレスに軍配が上がった。

 追加点こそ奪えなかったが、前節と比べると守備一辺倒とならずにチャンスを作り出していたのは良かったと思う。

 

 終盤に差し掛かろうとしたところで、仙台は疲労が溜まっていた奥山、武田、相良に代えて髙田、松井、宮崎を投入。千葉は、森に代えてデリキをピッチへ送り込む。

 終盤の時間帯になると、千葉にサイドからクロスボールを上げられることも増えていったが、林を中心に集中を切らさずに跳ね返していく。

 アディショナルタイムに突入すると、千葉は河野を最前線に上げてパワープレーに出る。仙台は最後の交代で鎌田から工藤へ代えてゲームを締めに掛かった。

 千葉のロングボールを跳ね返しながら、水漏れが起きそうなところも代わって入った松井や工藤、髙田がカバーリングすることで千葉にチャンスを与えなかった。

 

 アディショナルタイム6分間も最後まで集中力を切らさずに守り切った仙台が、1-0で千葉を下し、今シーズン初のユアスタ勝利と6試合ぶりの勝点3をゲットした。

 

最後に・・・

 試合開始から高強度で局面に激しく行く姿勢を見せた仙台。本来のあるべき姿を取り戻し、そして最後まで集中力を切らさずに戦い切ることで6試合ぶりの勝利を挙げた。まさに森山ベガルタの真骨頂という試合内容であり、「Vegalta is Back」な試合だった。

 

 それ以外でも守備ではミドルブロックで構えながら、行くときは全員でプレッシングに行くという部分が整理され、体力をある程度セーブできたのも大きかった。リードしていたこともあるが、2回目の交代が79分だったことを考えれば、前節の反省をしっかり活かせたゲームマネジメントだったと思う。

 

 2,3回あった追加点のチャンスをモノに出来なかったことは反省点だが、最後まで1点差を守り切ったところにある意味でのらしさを感じた。

 重要なのは、この戦いを次節以降も継続できるかである。そういう意味では、次節のアウェイ・愛媛FC戦はとても大事な試合となる。

 愛媛はここまで最下位で、今節も藤枝MYFCに1-4で敗れており、かなり苦しい状況に置かれている。しかしながら、前回対戦ではホームで苦戦し、終盤の梅木のゴールでなんとか勝点1を拾った相手であり、決して侮れない。

 西日本はまだまだ残暑が厳しく、暑さとの戦いにもなるため、この高強度のプレーを続けながら山口戦の反省を引き続き活かせるかがポイントになりそうだ。

 また先制点も重要になってくる。今節のように先制点を奪えれば、愛媛も前から来ざるを得なくなるので、それを逆手に取ったゲーム運びが可能となる。

 この勝利をより価値あるものにするためにも、次節は本当に重要な一戦となる。試合開始から愛媛に襲い掛かり、まずは先制点を奪い、そして勝利を手繰り寄せて欲しい!!

 

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