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【駆け引きと睨み合いの90分】明治安田J2第4節 ベガルタ仙台vsV・ファーレン長崎

 さて、今回はV・ファーレン長崎戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

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スタメン

 ベガルタ仙台は、前節・大分トリニータに2-0の勝利。武田と鎌田のダブルボランチを中心にボール保持が安定。石尾、荒木、エロンといったスタメンのチャンスを掴んだ選手が活躍し、ホーム開幕戦を勝利で飾った。

 今節迎えるのはV・ファーレン長崎。昨年のJ1昇格プレーオフ準決勝で勝利したのは記憶に新しい。強力な攻撃陣を抑えながら、少ないチャンスを活かせるかが勝利のポイントとなる試合だ。

 仙台は前節と同じ11人をピッチに送り込んだ。ベンチにはマテウス・モラエスが復帰。それ以外は変更なしとなっている。

 

 一方のV・ファーレン長崎は、前節・ジュビロ磐田に1-0の勝利。

 今シーズンはエドゥアルドや山口蛍といったJ1の主力級だった選手を補強し、今シーズンこそ悲願のJ1昇格を目指す。ここまで2勝1分としっかり勝点を積み重ねており、好調な滑り出しのなかで、プレーオフで敗れた雪辱に燃える一戦。

 長崎も勝利した前節と同じ11人をスタメンに選んだ。ベンチには新井、七牟禮が前節と代わってメンバー入り。マルコス・ギリェルメや松澤、エジガル・ジュニオなど豪華なメンバーがベンチに揃っている。

 

前半

(1)仙台の守備と長崎のボール保持の駆け引き

 最初にボール保持の局面を作り出したのは長崎だった。

 長崎のボール保持局面と仙台の守備との間には、多くの駆け引きが見られた。

 長崎のボール保持に対して、プレーオフ準決勝同様にまずはミドルブロックで構える。

 2トップはアンカーの山田を守備基準点とし、センターバックがボールを持てば、エロンか荒木のどちらかが寄せながら、一方はそのまま山田を監視する。

 サイドハーフはいつも通り高い位置を取り、サイドバックに対して牽制を掛けながら、プレッシングのスイッチが入れば、2トップと連動してボールを奪いに行く。

 対する長崎は、ミドルブロックで構える相手にまずは4-3-3を維持しながらボールを動かしていく。両インサイドハーフは仙台のダブルボランチを食らい付かせながら、センターバックからマテウス・ジェズスへ楔パスを差し込むことを狙っていた。12分に照山の楔パスをマテウス・ジェズスが収めて前進できたシーンは狙いだっただろう。

 仙台が前線からのプレッシングをしてくるのであれば、今度は後藤からのフィードで前進を試みる。最前線のマテウス・ジェズスを目掛けたフィードもあれば、プレッシングに来るサイドハーフの背後で待つサイドバックへフィードを送ることで、プレッシングを越えていく。

 特に右サイドバックの関口は基本的に低い位置を維持しながら、相良の背後でビルドアップの出口を作り出していた。郷家サイドよりも相良サイドを狙ったのも意図を感じるものだった。

 今シーズンは展開力のあった秋野が移籍したものの、後藤の加入によって前プレに来る相手を最後方から一気に越えていくのは今シーズンの狙いの1つかもしれない。

 そして長崎はこのフィードをきっかけに先制点を奪う。

 後藤のフィードからマテウス・ジェズスが収めると名倉、関口と繋ぎ、増山までボールが到達。増山は中へ切り込んでいくとマテウス・ジェズスとのワンツーからシュートを放ち、菅田の足に当たりながらゴールへ吸い込まれた。

 このシーンでは、後藤に対して相良がプレッシングを仕掛けたことで、マテウス・ジェズスから名倉を経由して受けた関口はフリーで前進できた。まさに狙い通りの攻撃で長崎が先制に成功する。

 

(2)長崎の守備と仙台のボール保持の駆け引き

 一方の仙台は、試合序盤は長崎のディフェンスライン背後を狙うロングボールを見せながらボール保持局面も作り出していく。

 そんな仙台のボール保持に対して、長崎も対応・対策を見せていく。

 長崎は名倉が一列前に出て4-4-2で構える形。これは昨シーズンから継続されているもの。

 前節の仙台は、鎌田をアンカーに武田が右インサイドハーフとなる4-3-3にトライしているが、この試合でもスタートのポジションはこの形となっていた。

 そんな仙台に対して、長崎はマテウス・ジェズスが菅田をマークし、名倉は井上に睨みを利かせながらも、基本的には鎌田をマークするタスクとなっていた。

 よって仙台のビルドアップは井上がフリーで持ち出せるシーンが多かった。しかし、井上はフリーでも他の選手が捕まっているために、その先へ繋ぐことが出来ない。真瀬にパスを通すシーンはチャレンジしたがうまくいくシーンは少なかった。

 

 そんな仙台は失点後にすぐさまボール保持に変化を加えた。

 武田と鎌田が並列となり、3-4-2-1を形成。武田が列を降りて名倉周辺でビルドアップをサポートすることで、鎌田を名倉のマークから解放。

 ボール保持にリズムが生まれると、すぐさまゴールに繋がる。

 武田と鎌田でリズムを作ったところをきっかけに、菅田が相良へ楔パス。左サイドから押し込むと内側で受けた石尾がそのまま駆け上がり鎌田とワンツー。ニアへ鋭いシュートを突き刺して、すぐさま同点に追いついた。

 石尾にとっては嬉しいプロ初ゴール。前節終了後にゴールを決めると宣言したが、まさに有言実行となった。

 

 その後の仙台はボール保持が安定したことで、ペースを握っていく。向上し始めた左サイドのコンビネーションを中心に長崎ゴールへ迫っていった。

 38分には郷家と荒木のコンビネーションで左サイドから中央へ侵入し、エロンへクロスを送るもわずかに届かなかった。

 

 前半は攻守において数多くの駆け引きが見られた展開だった。相手のボール保持をどう対応するか、相手が前に出てきたときどう動くか、構えたときにどう攻略するか、マンツーマンで見られたときにどう剥がしていくかなど、あらゆる状況・局面での駆け引きが非常に面白かった前半だった。

 両チームともに1点ずつを取って後半へ折り返す。

 

後半

(1)変幻自在のビルドアップ隊

 長崎は、前半に足を痛めた笠柳に代わって松澤を投入した。

 

 後半も基本的には前半のリピートのような試合展開となった。

 仙台は守備時はミドルブロックを基本とするものの、前半はプレッシングをしたときに後藤まで追っていたが、後半はそこを捨てて愚直にミドルブロックを組みながら長崎のボール保持に応戦。

 後方で起点となるマテウス・ジェズスに井上が担当するようになり、起点を潰す回数も増やせていった。

 

 またビルドアップでもダブルボランチを中心に変幻自在になっていく。

 前半にもあったような「3-2」の形もあれば、上記のようにボランチセンターバック間や斜めに落ちることでサポートする形も作っていた。

 ただ形を作るのであれば簡単だが、ボールを循環させながら、武田と鎌田がポジションチェンジをすることでマークされにくいようにしていたことが巧みだった。

 また石尾も彼らの動きに合わせて外に広がるのか、絞ってビルドアップに加わるのかを判断できており、武田、鎌田、石尾の3人は仙台のボール保持安定に欠かせないメンバーとなっている。

 

 ボール保持の安定、そして左サイドのコンビネーションで長崎を押し込めるようになっていくと、もう1つの狙いが見えた。

 仙台は左サイドで作って、武田や鎌田から右サイドへの展開で仕掛ける場面が多かった。

 このときに郷家が右ハーフスペースでポケットを取りに行く動きで長崎ディフェンスラインの背後を突いていく。

 長崎の守備も高畑の背後を誰がケアするのかが定まっておらず、仙台はそこを突いた格好だった。何度か右サイドのポケットを取ったところからチャンスを作るも、ゴールまでには結びつかなかった。

 

(2)選手交代で攻撃が停滞

 拮抗した試合展開。少しのミスが命取りになるような状況で両者ともに選手交代を切りづらい状況が続いていった。

 そんななかで両者ともに72分にようやく交代カードを切る。長崎は名倉と増山に代わってエジガル・ジュニオとマルコス・ギリェルメを投入。仙台は武田と荒木に代わって松井とオナイウを投入した。

 攻撃の火力を上げようという長崎に対して、仙台は中盤の強度を維持させながら右サイドのハーフスペース突撃を絶えず狙っていこうという狙いだった思う。

 しかし長崎が選手交代によってもう少し圧力を掛けてくるかと思われたが、継続してミドルブロックを続行。よって仙台もボールを保持できる時間が出来た。

 選手交代により、ボール保持の形も変化が生まれた。右サイドでは真瀬が内側に入り、オナイウが大外に。鎌田がセンターバックをサポートしながら松井がアンカー役となる。

 しかし選手交代以降は攻撃が停滞。松井がアンカーとしてポジショニングはしているものの、味方からパスを引き出す動きが少なく、味方と繋がっていないことが多かった。よって後ろの3枚(井上、菅田、鎌田)でボールを回しながら、ときどき郷家や真瀬が降りてボールを引き出すようになり、必要以上に自陣でのボール保持に人数を割いてしまった。この辺の人が変わったときの形は課題となっただろう。

 また右サイドでは真瀬が内側にいることで、井上からオナイウへのパスラインを確保。何度かオナイウへパスは通ったものの、受けた後のプレー選択に迷いが生じていたオナイウはボールロストが多く、右サイドの攻撃も停滞してしまった。

 そんな状況下で仙台はエロンに代えて宮崎を投入。ロングボールを送ることも選択肢に入れながら敵陣への侵入を目指した。

 

 後半終盤になっても、両者ともに拮抗した展開が続いた試合は、そのままスコアが動くことなく1-1の引き分けに終わった。

 

最後に・・・

 昇格候補最有力である長崎を相手にいい戦いができたと感じた。

 ミドルブロックを軸とした守備と、ダブルボランチが変幻自在な動きを見せるボール保持はシーズンスタートして間もない段階でも一定の完成度となってきた。さらにそこからゴールへ迫る回数、特にシュート本数を増やしていきたい。この試合でも逆転できるチャンスはあったと思うが、もっとそのチャンス数を増やせればと思う。

 一方で新たな課題が出てきたことも事実。選手交代によって攻撃が停滞してしまったことは課題だろう。違う特徴の選手が入ってきたときに、新たな攻撃パターンやバリエーションを作り出していければチームの底上げは進んでいくはずだ。

 武田と鎌田にはない良さが松井や工藤にはある。恐らくセカンドボールの奪い合いが多い展開であれば彼らは生きるだろうし、加えて足元での繋ぎが向上していければレギュラー争いはさらに熾烈になるはずだ。松井や工藤の成長に期待したい。

 

 次節はアウェイで水戸ホーリーホックとの対戦。今シーズンの水戸はより若返りを図り、アグレッシブなチームな印象だ。前節、今節と打って変わって前線から積極的にプレッシングを仕掛けてくるかもしれない。

 そのときにどうやってそこを越えていくかがポイントになってくるだろう。地上戦で剥がすのか、空中戦で越えていくのか。様々な選択肢があるなかで、この1週間でいい準備をして欲しい。

 長崎と分け合った勝点1の価値を高めるためにも、水戸に勝ちたいところだ。次節もベースとなるハードワークで水戸を上回り、ゴールへ襲い掛かって欲しい!!

 

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