ヒグのサッカー分析ブログ

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勝つべくして勝った筑波大学 天皇杯2回戦 ベガルタ仙台vs筑波大学

 反省文です。結果はご存知かと思います。今回はベガルタ仙台vs筑波大学を取り上げます。

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 昨年の天皇杯ではJ3の盛岡にフルボッコされた記憶があるような、ないような。ミッドウィークの試合ということで、ターンオーバーを採用した仙台。注目はやはり筑波大出身の中野嘉大。後輩の前でいいところを見せることができるだろうか。

 筑波大学といえば風間八宏のイメージが個人的には強い。もちろん風間さんがいなくなってかなりの年月が経っているので、そのイメージとは変わっているのだと思うけど。現在、関東大学リーグ1部の首位を走る筑波大学。磐田内定の中野誠也、名古屋ユース出身の北川柊斗の2トップや高校選手権で活躍した鈴木徳真(前橋育英)と鈴木大誠(星稜高校)、柏ユース時代にU17W杯に出場経験のある会津雄生などなど、実力のあるメンバーがそろっている。

 

■前半先生、6バックなんて聞いてません!

この試合、まずは筑波大学がどのような準備をしてきたのかを見ていきたい。f:id:khigu:20171115120034p:plain

筑波大学は仙台に対して6バックで対応してきた。その心は、守備の基準点をハッキリさせること。特にウイングバックを誰が見るかはポイントだったのだろう。

 J1のチームであればウイングバックに対しては横スライドで対応する。サイドハーフの1人が降りてきて疑似的5バックにする。といった対応がよく見られるが、筑波大学は仙台との力量差や個々の能力差を見て、このようにサイドハーフが降りてきて6バックで対応した。

 そうすることによって仙台のシャドーに対してはサイドバックが、クリスランへはセンターバックの2人が対応することになり守備の基準点がハッキリすることができていた。

 また仙台のビルドアップ隊へは、2トップが追い掛け回すことで対応していた。もちろん状況に応じては自陣へ撤退。622のブロックで仙台の攻撃を迎撃していた。

 

 一方、攻撃でも筑波大学はシステムのミスマッチをううまく突く攻撃を見せる。f:id:khigu:20171115120127p:plain

 筑波大学のビルドアップは4222で行われていた。ビルドアップ隊はセンターバック2人とダブルボランチ。そこからシャドーとボランチの間に顔を出しているサイドハーフへとボールを届けていた。特に中野、三苫がいる左サイドからの攻撃が中心だった。

 先制点の場面でも三苫が間に顔を出して、上手にボールを引き出してからの攻撃だった。

 加えて先制点でもあったように、三苫が中へドリブルで仕掛けると、中野がアイソレーションでサイドへ抜け出す動きがある。これで仙台のDFを引っ張り、三苫のドリブルのコースを作っていた。

 あとは俊足の中野を狙った裏へのボールが効果的だった。中野は非常に飛び出すのが上手で素早い。椎橋は三苫と中野を対応しなければならず、90分間苦労していた。

 

 まさかの6バックで来た筑波大学に対して、仙台は手を焼くことになる。いつものようにサイドからの攻撃を仕掛けたいのだが、守備がハッキリしている筑波大学のマークをなかなか剥がすことができない。それに加え、カウンターから素早い攻撃を食らうストレスが溜まる展開を過ごすことになる。

 しかしボールを持てている事実はある。よって少しずつ相手の守備のやり方に慣れながら、どこから崩せそうか考えながらプレーできたいたと思う。焦ってはいないというか、こういうときは時間が解決してくれることもあるしみたいな。

 

 時間が経過するとともに、筑波大学も少しずつ変化していった。f:id:khigu:20171115120155p:plain

 25分過ぎから右サイドハーフの戸嶋が少しだけ前にポジショニングするようになる。

 これにはいろいろな憶測があるが、石川直樹を警戒していたものではないだろうか。石川はタイミングが良ければ、積極的にオーバーラップしゴール前に顔を出すシーンもあった。これをけん制するためだったのかもしれない。うしろは5枚で対応できるのでそのぶん前にポジショニングできた。

 ただ、仙台が真ん中を超えると6バックになっていたので、あくまでも6バックで守ることが前提だったのだろうけれども。

 

 仙台としては一枚前に来たことで、後方に走るスペースが生まれ攻撃がしやすくなったように思える。同点のシーンでは、石川→中野→佐々木で左サイドを突破したところから始まった。佐々木からインナーラップした中野に渡り、冷静に決めて同点に追いつく。31分。

 

 前半はこのまま1-1で折り返す。6バックでしっかり準備をしてきた筑波大学だが、前半の途中から変化があったように6バックで守ることを

絶対とはしていなかったのだろう。そんなことを戸嶋のプレーから見れた。

 仙台は相手が6バックで来たことに面食らい、先制を許すが悪いなりに追いつくことができた前半だった。ボールを保持できているという事実の中で、焦らずにゲームを運べたのは良かったことだったと思う。

 

■後半仙台の何が問題だったのか

 ハーフタイムを経て、仙台は菅井→蜂須賀。散々攻め込まれた右サイドの守備の修正を行う。

 後半のテーマは6バック相手にどうやって攻め込むかだった仙台。攻撃の修正を行う。f:id:khigu:20171115120226p:plain

 6バックが相手だとどこに時間とスペースを得られるのか。それは3バックの左右であるというのが仙台の答えだった。仙台は3バックの左右が広くポジショニングし、そこにボールを預け、そこから前進していく。また前半はリャンが下がってボールを受けるシーンが目立ったが、後半は前線3人は下がってボールをもらうよりも、前線に張ってスペースを作ることに専念していたように思えた。

 後半の仙台は、その3バックの左右から簡単にペナルティエリアに放り込む、もしくはウイングバックが放り込むシーンを増やしていった。そして50分に中野が右足で入れたクロスがそのままゴールに吸い込まれ逆転に成功する。

 

 その後の仙台は、541でブロックを組みながら、ボールを保持したときはサイドから攻めるという展開にシフトしていく。逆転後にあったリャンの二つの決定機が入っていたら、余裕を持ってゲームを運べていたのは言うまでもない。

 仙台は541でしっかり迎撃するという選択は間違っていないと思う。リードしたことで、無理に攻めることをしなくても良くなったし、相手が前に出てきてくれたほうがスペースが生まれる。そう言った意味でも自陣に撤退する選択は論理的だった。

 しかし、誤算があったとしたらボランチの位置でまったくフィルターが掛からなかったことだろう。この日の藤村、奥埜のダブルボランチは攻守においてパフォーマンスが中途半端だった。特に守備では、簡単に縦パスを通されて、ピンチを招くシーンが数多くあった。またボールも取り切れない場面が多く、アピールとしてはかなり物足りない内容になってしまった。

 

 筑波大もボールを保持できたことで少しずつ自分たちを出せるようになった。前半同様にシステムのミスマッチをうまく使いながら間々でボールを受け、ゴール前まで持っていくことに何度も成功する。

 そして同点に、65分。困ったときのセットプレー。コーナーキックからだった。ファーサイドからの折り返しを中野が決めて同点。前半から狙い続けていたファーサイドからの折り返しで決めた得点だった。

 その後の筑波大は仙台に押し込まれながらも我慢して、攻撃のチャンスをうかがう。そして73分に逆転。蜂須賀の不用意なバックパスを途中投入の西澤がカットすると、三苫へ。三苫は冷静に流し込んで逆転。筑波大としてはうまく相手の隙を突いた得点。仙台としてはあまりにお粗末な失点をし、ゲームは再び筑波大リードへ。

 

 筑波大は攻守にハードワークしていた戸嶋に代えてセンターバックの山川。会津を右サイドハーフへ。山川をセンターバックに置くことで逃げ切りを図る。結果的にこの交代が効果的だったと思う。会津を中野に当てることで、中野を蓋することに成功し、また高さが生まれたことで放り込まれてもしっかり跳ね返すことができていた。

 仙台も西村、石原を入れて最後までゴールを目指すが、最後まで3点目を取ることができなかった。

 

 そしてタイムアップ。筑波大が仙台を3-2で下し、3回戦へと駒を進めた。

 

■最後に・・・

 しっかり準備をしてきた筑波大が勝つべくして勝ったかなと。そういう感想のゲームだった。相手との力関係を理解し6バックという手を使ったのは非常に面白かった。そしてそれを最後までやりきった遂行力と集中力は本当に素晴らしいと思った。

 また個々の能力も非常に高く、さすが関東1部の首位を走るチームだなと感じた。関東大学リーグを見に行きたいと思う。

 

 一方で屈辱的な敗戦を喫した仙台。6バックという非日常な相手を前に最後まで崩すことができなかったのは残念。もちろんショッキングな敗戦ではあるが、こういう相手は日ごろやっているJのチームではなかなか巡り合わない。だからそんなに深くショックを受けることもないと思う。こういう日もあるさと言い聞かせながら、次に切り替えることもとても大切だ。

 

 すぐにまたゲームがやってくる。ここからユアスタで大阪勢との連戦。前半戦も残り2試合となった。もう一度「仙台らしさ」を取り戻し、いい結果を残して後半戦へと弾みをつけたい!