さて、今回は徳島ヴォルティス戦を振り返ります。
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スタメン

ベガルタ仙台は、中断明け初戦となったV・ファーレン長崎戦で0-0の引き分け。前半から押し込まれ、耐える時間が長い展開で、数多のピンチを林のビッグセーブや守備陣の体を張ったシュートブロックでなんとか守り抜き、敵地で勝点1を持ち帰った。
ホームに戻っての今節は、徳島ヴォルティスとの6ポインターとなる。堅守を誇る徳島を相手に課題である得点力を発揮し、ユアスタ再開後のゴールと勝利を挙げたいところ。徳島には近年勝てていない相性の悪い相手でもあるが、そこを乗り越えて上昇気流へ乗っていきたい一戦だ。
仙台は前節からスタメンを5人入れ替え。センターバックにマテウス・モラエスが起用され、左サイドバックには石尾、ダブルボランチは松井と鎌田がコンビを組み、相良が怪我から帰ってきた。2トップはエロンと小林。ベンチには前節スタメンだった奥山、武田、荒木、宮崎らが控えている。
一方の徳島ヴォルティスは、前節・愛媛FCとの四国ダービーを1-0で制した。得点は愛媛守備陣の一瞬の隙を突いたルーカス・バルセロスのゴールだったが、前半からそのルーカス・バルセロスを中心にチャンスを作り出していた。
前述の通り、堅守を誇る徳島はここまでわずかに13失点しか喫しておらず、堅い守備とボール保持をベースにルーカス・バルセロスのような飛び道具も備えている。
6ポインターとなる今節は、アウェイではあるが相性の良い仙台に勝利して、順位をひっくり返したい一戦となった。
前節からの変更は1枚のみ。杉本が左シャドーで起用されている。ベンチの顔ぶれもトニー・アンデルソンがメンバー入りした以外は変更はなく、前節の良かった流れを踏襲した格好となった。
前半
(1)長崎戦の反省を活かした前線からのプレッシング
試合序盤は徳島がボールを保持し、仙台がそれに対して構える形でゲームが展開されていった。
前節の長崎戦では、前線からのプレッシングがハマらずに前半からミドルブロックで応戦する時間が長くなり、結果的に長崎に押し込まれる展開となった。
その反省を踏まえて、今節の仙台は前線からのプレッシングが整理されていた。
徳島は3-4-3もしくは永木と鹿沼のダブルボランチが縦関係となる3-1-5-1のような形でのボール保持で前進を目指していく。
対する仙台は、4-4-2でミドルブロックを構えながら、まずは2トップがダブルボランチを背中で消すような形で3バックへボールを持たせる。

徳島の3バックが横パスを選択したところをトリガーにプレッシングのスイッチを入れるのだが、このときに郷家と相良の両サイドハーフは外切りでウイングバックのパスコースを消しながらプレッシングを掛けていく。
サイドへのパスルートを消し、また2トップがボランチのパスコースを消すことで、徳島に前線3枚への楔パスを誘発させ、そこでダブルボランチが奪い取り、ショートカウンターを仕掛けることを狙った。
8分にはロングフィードのセカンドボールを回収すると、松井が永木をターンで交わして小林へスルーパス。抜け出した小林のシュートは田中の正面に飛んだが、狙いとしていた攻撃を序盤の時間帯に作り出すことができた。
仙台はサイドハーフの外切りによるプレッシングが最優先ではあったが、プレッシングが出来なさそうであれば、徳島のパスルートをサイドへと誘導して、サイドバックがウイングバックへ縦スライドしたり、サイドハーフがプレスバックして戻るなど、状況に応じて守備を使い分けることでまずはコンパクトな守備陣形を維持することを目指していた。
この辺りは長崎戦からかなり改善され、仙台らしい試合の入り方が出来ていたのではないだろうか。
また、徳島は1トップの渡が降りてきてポストプレーをする一方で、快足のルーカス・バルセロスが抜け出すことも狙っていたが、井上とこの日スタメン起用されたマテウス・モラエスがアラートに対応し、ルーカス・バルセロスを封じていた。
久々のスタメン起用なったマテウス・モラエスだが、しっかりと自分の役割を理解してタスクを遂行することが出来ていたと思う。
(2)1つ目のチャンスを活かした徳島
仙台の守備が機能していた一方で、リーグ最少失点を誇る徳島の守備もコンパクトで全員の意思疎通が図られていた。

試合序盤の徳島は、仙台のビルドアップ隊に対して前線3枚とダブルボランチがマンツーマン気味で人を掴まえに行き、仙台から時間とスペースを奪いに行く。
仙台に徳島陣内へとボールを運ばれたら、すぐさま自陣で5-4-1の撤退守備を築く。ただ、カウンターの急先鋒としてルーカス・バルセロスはやや攻め残りのような形で高い位置にいることもあった。
徳島はタイトな守備で、ボールホルダーへも激しく寄せていく。狭いスペースでは複数人で襲い掛かりボールを奪いに行く。それゆえにファウルの数も多いのだが、それだけ激しくボールホルダーへ寄せている証拠だろう。
両チームともに守備で良さが出ていた内容のなかで、チャンスを活かしたのは徳島だった。
明治安田J2リーグ 第25節#ベガルタ仙台 0-2 #徳島ヴォルティス
— 徳島ヴォルティス 公式 (@vortis_pr) 2025年8月10日
20分 #エウシーニョ⚽️#vortis#徳島とともに最高の瞬間を pic.twitter.com/imqR6N4LEe
きっかけは仙台の右サイドでのスローインを奪ったところからだった。
左サイドでボールを動かし、鹿沼がファーサイドへアーリークロスを送る。エウシーニョが競り勝ち、ルーカス・バルセロスとのワンツーで抜け出すと、冷静に左足でファーサイドへ流し込んで徳島が先制に成功した。
徳島にとっては1つ目のチャンスを活かした格好となった。
仙台としてはスローインから狭いスペースを抜け出せなかったことと、エウシーニョと競り合った石尾が競った際に足首を負傷し数的不利になってしまった不運が重なった。
石尾がジャンプするときにエウシーニョの足に接触した際、足首がぐきっと曲がってしまっていた。これはさすがにファウルは取れない。
石尾はその後プレー続行不可能となり、石井との交代を余儀なくされた。
(3)活路を見出した左サイドと停滞する右サイド
徳島に先制を許し、かつ石尾が負傷してしまうというまさに泣きっ面に蜂な仙台だったが、その後は徳島に対してボールを保持していく時間が長くなっていく。
徳島も先制したことによって、無理に前から行く必要がなくなり、5-2-3のミドルブロックもしくは5-4-1の撤退守備で仙台のボール保持に応戦するようになった。
仙台のビルドアップ隊に時間とスペースが生まれるようになったことで、仙台はボランチを起点に主にサイドから攻めていく姿勢を見せていった。
そんな中で存在感を放ったのは左サイドの石井と相良のコンビ。緊急出場となった石井は相良とのコンビネーションで左サイドを抉ってクロスを送ったり、後方から相良へスルーパスを送ってチャンスメイクをしていた。
43分には、マテウス・モラエスからボールを受けた石井が間髪入れずに相良へスルーパスを送ると、相良はエウシーニョを交わしてクロスを上げ、ファーサイドへ郷家が合わせる惜しいシーンを作り出した。
その一方で停滞感があったのは右サイド。右サイドでは主に真瀬、郷家に加えて松井がサポートすることが多かったが、足元でのパスが多く、なかなかサイドの奥深くであったり、ポケットへのランニングも少なく、徳島の守備ブロック手前でのプレーが多くなっていった。それゆえに右サイドの高い位置までボールを運べても、そこから徳島の守備ブロックの中へ侵入することが出来なかった。
仙台は主に左サイドからとセットプレーからいくつか同点のチャンスを作り出すも、田中が守るゴールを割ることが出来ずにハーフタイムを迎えることとなった。
前半は、徳島がワンチャンスを活かして先制に成功し後半へと折り返す。
後半
(1)修正された右サイドと繰り返される仙台のターン
仙台キックオフで始まった後半。仙台のキックオフは、相良が左サイドの奥深くへとロングボールを送ることから始まったが、先のクラブワールドカップでパリサンジェルマンがやっていたもの。
相手のスローインから前線からのプレッシングでボールを奪おうというのが狙いだった。
後半開始早々の仙台は、連続して徳島ディフェンスラインの背後にロングボールを送り込んで、押し込んでいった。
コーナーキックを連続で獲得すると、48分には石井の左コーナーキックに井上が合わせ、続く49分には井上のクリアから郷家のフリックに反応した小林にチャンスが訪れる。
後半の入りも良かった仙台は、そのままの勢いで自分たちのターンを増やしていく。

前半は、特に右サイドではなかなか深い位置までボールを運べずに手詰まり状態だったが、前半よりも押し込んだ状態でプレーできたことに加えて、小林も中央から右サイドに関与するようになり、少しずつ右サイドからの攻撃も増えていった。
57分には左サイドからボランチを経由して右サイドへ展開すると、郷家の突破からのクロスに小林がヘディングで合わせるもシュートは枠の上を飛んでいった。
徳島が自陣での撤退守備を選んだということもあるが、仙台が前半以上に押し込んでいく。しかし徳島の守備もかなり手強く、特にクロスに対してはファーサイドのウイングバックもしっかりカバーリングに入っているため、跳ね返されることが多かった。
ならば中央からと、サイドから中央へと楔パスを差し込みシュートを放つも、徳島守備陣のシュートブロックに遭い、なかなか牙城を崩せないまま時間が経過していった。
(2)早めの決断をする増田監督
徳島は50分に渡に代わって重廣を投入していたが、仙台が65分に相良とエロンに代えて山内と宮崎を投入すると、すぐさま徳島ベンチも高木、エウシーニョ、杉本に代わってカイケ、柳澤、トニー・アンデルソンの3枚を同時投入する。

特に早い段階でカイケを投入したのは、宮崎へのマークし起点を潰す狙いもあったかもしれない。
66分までに4枚の交代カードを切って、さらに守備強度を高めた増田監督はこの時点で1点差を逃げ切る方向へと舵を切る決断している。
かなり早い時間帯での決断だっただろうが、堅い守備に自信があることの現れとも言えるだろう。
守備強度を高めた徳島に対して、攻め込む仙台だがなかなかシュートまで持ち込むことが出来ない。
仙台はさらにマテウス・モラエスが足を攣ってしまい、73分に3回目の交代を余儀なくされる。マテウス・モラエスと小林に代わって菅田とグスタボを投入。荒木の機動力ではなく、グスタボのパワーを選んだ森山監督だった。
宮崎とグスタボの2トップになったことでコンビネーションよりもサイドからのクロスでチャンスを見出そうとする仙台だったが、前述の通りで堅く集中力の高い徳島の守備に跳ね返されてしまう。
なかなか牙城が崩せないでいると、再び徳島に少ないチャンスを活かされてしまう。
明治安田J2リーグ 第25節#ベガルタ仙台 0-2 #徳島ヴォルティス
— 徳島ヴォルティス 公式 (@vortis_pr) 2025年8月10日
90分 #西野太陽 ⚽️#vortis#徳島とともに最高の瞬間を pic.twitter.com/U3tlHAS5FD
井上のクリアを回収すると、重廣、トニー・アンデルソンと繋いで、最後は抜け出した西野が冷静に決めて、仙台を突き放す。徳島にとっては勝利を手繰り寄せる追加点となった。
様々なアクシデントがあった後半は9分間と長いアディショナルタイムが与えられたが、菅田を前線に上げたパワープレーは不発に終わり試合終了のホイッスルを聞くこととなった。
仙台は0-2で徳島に敗れて4試合勝なし。5位に順位を落とすこととなった。
最後に・・・
前節は体を張った守備でなんとか勝点1を持ち帰ったが、今節は試合の入りから守備は機能していたもののワンチャンスを活かされ、その後は押し込むものの最後まで堅守を攻略することが出来なかった。
やはり失点の少ないチームには先制点を与えたくなかったが、先制を許してしまい結果的にそれが重くのしかかる形となってしまった。
特に後半は火力を強めて徳島を押し込む展開を作り出したが、やはり最後のクオリティで課題が出た。堅守で密度の濃い徳島守備網を攻略するには、まだまだ出し手と受け手のコンビネーションであったり、狭いところを通すパスコントロールだったりが足りていないということだろう。
さらに今節はクロス本数もかなり増えたが、徳島守備陣に跳ね返され、クロッサーと中の選手で狙いが合わないことも多かったので、またトレーニングから積み上げていくしかない。
6ポインターに敗れ、順位も落として苦しい夏場の戦いとなっている。まさに踏ん張りどころだ。ここで下を向いていたら、簡単にこの昇格レースから脱落してしまうだろう。大事なのは次節以降でリバウンドメンタリティを示せるかどうかだ。
幸いにも長崎戦よりも内容は向上している部分もあり、特に前線のプレッシングは整理されて機能した。攻撃ではシンプルに背後を狙うプレーも増えており、クオリティの向上は求められるが、間違いなく課題に取り組み、改善の兆しが見えている。だからこそもがいて、足掻いて、この苦境を乗り越えたい。
この苦しい状況を打破する一番の突破口はゴールを決めること。それしかないだろう。ゴールを決めるためにはシュート数を増やさなければいけないだろうし、ミドルシュートやロングシュートなども積極的に狙っていければ扉が開くのではないかと思っている。吹っ切れて戦えるかが大事になってくる。
次節はアウェイでレノファ山口FCとの対戦。山口は志垣前監督から中山監督へ交代して以降も勝ち星に恵まれずに苦しい戦いが続いている。山口も残留を目指しているだけに必死に襲い掛かってくるだろう。
簡単な相手ではないことは確かだが、今節のような前線からの守備とより積極的にゴールを目指すことで、自ずと重い扉が開くはずだ。カギとなるのは先制点。試合序盤から山口以上にアグレッシブに戦い、主導権を握りたいところだ。
まだまだ仙台も若いチーム。この苦しい状況を自分たちで乗り越えるためにも、山口に果敢に襲い掛かって、仙台らしく高い強度とハードワークでゴール、そして勝利を掴み取って欲しい!!
ハイライト