ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

殴り続けられるかどうか~J1 2ndステージ第12節 ヴァンフォーレ甲府vsベガルタ仙台~

 前節、マリノスに敗れたことで3連敗を喫した仙台。夏場の好調はケガ人の大量発生と共にどこへやらといった状況。今節の相手はヴァンフォーレ甲府。台所事情が厳しい中、この不調の波を断ち切れるか。f:id:khigu:20191230151740p:plain

 今シーズンも残留争いの渦中にいる甲府。1stステージにいた助っ人は総入れ替え。なんだかパラナやダヴィと懐かしい名前がいる。甲府の残留のキーマンであるドゥドゥがケガで6週間アウト。前節はガンバに逆転負けし、降格圏とは勝ち点4差。今節は土屋が最終ラインに復活。前線では盛田とダヴィがスタメンとなった。

 一方の仙台も相も変わらずケガ人が多い状態。それに加え今節は三田と大岩が出場停止。スタメンには右サイドバックに菅井。ボランチにはキムミンテ、左サイドハーフには今シーズン初先発の茂木。ウイルソンが欠場の前線にはリーグ初先発の西村が名を連ねた。厳しい状況の中で今節は、リャンがいよいよ復帰しベンチスタートとなった。

 

■前半~横に揺さぶり、縦に仕掛けよ!~

 試合開始と同時に始まる甲府の撤退守備。今回の試合も例外なく、この守備をどう崩すかが仙台のテーマとなった。

 1stステージの対戦時と違い、今回は三田も野沢もリャン(ベンチに入るけど)もいない仙台。いわゆる崩すためのキーマンが揃っていない。そんな中でどう崩していくかという話。

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 仙台のやることは大きく変わっていない。ビルドアップ隊はボランチが落ちて3枚になる。そしてサイドバックを高い位置へと押し上げ、サイドハーフを中に相手の守備ブロックのライン間へと置く。

 甲府と試合となると、甲府が前から掛けてこない分、それがよくわかるのだ。いつもならば三田が降りてビルドアップ隊となるのだが、今日は晋伍がその役割を担った。

 仙台の攻撃ルートは2つ。横と縦。甲府の守備は中に人数を掛けている。だから安易に縦パスを入れるとそこで潰されてカウンターを食らう。なので仙台は安易に縦パスを入れずにまずはサイドに展開しながら、甲府のブロックを揺さぶらせることから始める。そして相手のブロックに隙が出来たらダイレクトで縦パスを入れる。というのが一連の理想の流れ。

 仙台は縦パスを入れた時に2つのアイデアを持っていた。1つはフォワードに当てて、そのボールをサイドハーフに落としてシュートもしくは前を向いて突破。19分のハモンが落として茂木のミドルシュートは狙っていたシーンだった。

 もう1つは、サイドハーフが受けて、フリックしてフォワードへ。そこから振り向いて打つか、もう一度前を向いたサイドハーフに落としてシュート。この2つのパターンを持っていた。

 この時大切なのが前線の4人のユニット(FWとサイドハーフ)が良い距離感を保つことである。前半は相手を押し込んでいる時間のときは非常に距離感よく出来ていたと思う。常に縦パスが入ったときに段差を作って、誰かが前を向くシーンを作っていた。

 

 一方の甲府はドゥドゥが不在で盛田とダヴィなので、選手の特性上どうしても素早いカウンターは打てない。なので甲府は主にロングボールを主体として攻撃を行っていた。狙いは盛田。山本やキーパーの河田からのロングボールを盛田が競ってファウルをもらうもしくはセカンドボールを拾って前進するといった狙いがあった。ポイントだったのが、菅井と盛田が競り合う状況を作っていたことである。いわゆるミスマッチを作ること。

 甲府の先制点のシーンを巻き戻すと、ロングボールを盛田と菅井が競って、セカンドボールを拾って左からクロスという流れだった。

 これで前進出来た甲府は、そのクロスを博文にクリアされ、逆サイドのスローインになる。甲府スローインの流れから稲垣が裏へ抜け出すと後ろから石川直樹が高く足を上げてクリアしようとし、それが稲垣の顔に当たってPK。足を高く上げたことによるファウルなので妥当。今シーズンは石川直樹がPKを与える場面が多いことが気になる。

 これを山本英臣が冷静に決めて甲府が先制。

 

 甲府が先制後も状況は変わらず仙台がボールを持つ展開。失点の時間も24分と時間的にはまだまだあるので慌ててはいなかっただろう。自分たちがやることを失点後も焦れずに行っていた印象である。

 そして同点ゴールは37分。石川直樹アーリークロスにファーで西村が合わせて同点。西村はうれしいプロ初ゴール。リーグ戦で10代の選手が決めるってあったかな?J1での話だけど。

 この得点のポイントはハモンと新里にあったと思う。

 

晋伍から石川直樹へとボールが移動している間、ハモンは右から左に移動。この時に左バックの新里が付いて行ってる。この動きを見逃さなかった西村は、うまく山本の背後に走り込み、石川直樹のクロスをフリーで合わせることが出来た。新里が釣られたことで、いるべきところにいなかった甲府の守備。もしくはそれをカバーできなかった甲府の守備となった。

 

 前半のうちに焦れずに攻め続けたことで、同点にすることに成功した。1-1で後半へと折り返す。

 

■後半~殴り続けられることが出来るか~

 後半も概ね、試合の展開は変わらなかった。

 甲府は後方からのロングボールを菅井と盛田とのミスマッチを狙った蹴り、ファウルを受けるなどして地道にボールを前進させていた。

 仙台も前半同様に、甲府のブロックを遅攻で攻めることが多かった。

 

 仙台は、前半にもあったが、奪われても素早い切り替えで複数人がボールホルダーにプレスに行くことで、すぐさまボールを奪い2次3次攻撃へと繋げることが出来ていた。これは前節のマリノス戦の前半にも出来ていたことである。

 その切り替えの部分で陰ながら芽を摘んでいたのがキムミンテ。ミンテが中盤でフィルター役を担うことで、甲府にカウンターを打たれなかった。

 

 試合の流れが変わったのは、ミンテから藤村に交代したところだろう。ここまで中盤のフィルター役として芽を摘んでいたが、やはり攻撃では物足りなかったところがあった。だから藤村を入れて、晋伍がミンテがやっていたフィルター役を。藤村がボールの配給役という役割にチェンジし、さらに相手を押し込もうとした。決してこの采配に問題はなかったと思う。

 しかし、交代してからボールを回すテンポが狂ってしまった。晋伍がボランチから最終ラインに降りていた時には、後方でのボール回しのテンポが良く、ダイレクトで縦パスを入れることも出来ていた。

 こうなってしまった原因はいくつかあると思う。まず藤村が降りてボールを受ける時にセンターバックとの距離が空いてしまっていたこと。余は晋伍よりも藤村の方が高い位置を取っていたということである。そうなるとパスの距離も長くなり、ボールを回すテンポが変わってしまう。

 もう1つは、横のパスが減少してしまったこと。縦を狙いすぎるあまりに、横の揺さぶりが減ってしまい、「横にパスを入れて戻して縦」みたいなパスの流れを作ることがなくなってしまった。

 後方のバランスが変わってしまったことで、前線のバランスも次第におかしくなり、前半は前線の4人のユニットが良い距離感でブロックの中にポジショニングしていたが、サイドハーフが降り来てしまうために距離感がおかしくなり、結果的に縦パスを入れても前半のような崩しは出来ずに攻撃も単発に終わってしまうことが増えていった。

 

 こうも攻撃のバランスを崩してしまうと、甲府にもチャンスが巡ってきて何回か危ない場面を招いてしまった。後半は結果的に自分たちの交代でよい流れを崩してしまったということになる。それは監督が悪いとか選手が悪いとかじゃなくて、チームとしてまだまだクリアすべき問題があるということである。

 お互いに終盤は惜しい場面を作るがゴールには至らなかった。仙台は90分通して殴り続けることが出来ずに試合を終えてしまった。11でタイムアップ。

 

■最後に・・・

 試合の潮目が変わったのは藤村の交代だった。決して渡邉監督の采配を批判する気はない。おそらく配給役としての藤村に期待をしたのだろうが、結果として期待に応えられなかったというのが、現状というただそれだけのことだと思う。今シーズンは様々なポジションをこなすことで着実にレベルアップしている藤村だが、J1のボランチとしてプレーするにはまだまだといったところだろう。特にこの試合はボランチがチームを動かすことが鍵だったので、それが如実に表れてしまったということだろう。

 1stステージでは殴り続けることで甲府の守備を瓦解できたのだが、台所事情が厳しい中ではこれが現状といったところだろうか。もし殴り続けることができればこの試合も追加点を取って勝てた可能性はある。

 それでも茂木や西村、ミンテいった代わりに出た選手が各々のポテンシャルを十分に発揮し、活躍してくれたことは今後につながる収穫だった。特に西村は初ゴールと結果が具体的に出たことは何より大きいことである。

 

 気が付けば次勝てば残留が決まるらしい。というよりも久しぶりに勝ち点を40に乗っけたいところだ。そんな次なる相手は降格圏に沈む名古屋グランパス闘莉王が帰ってきたことで、きっと球際の勝負は厳しいものなるだろうし、今節ガンバに敗れたことでこの仙台に懸けるものは大きいはずだ。そんな相手に対して、球際で負けずに、そして焦る相手を冷静な攻撃で得点を奪い勝利してほしい。勝利して残留を決めると同時に、勝ち点40に乗っけてもらいたい!!