ヒグのサッカー分析ブログ

ヒグのサッカー観戦日記からのお引越しです。ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

雨中での熱戦~J1第8節 ベガルタ仙台vs川崎フロンターレ~

 みなさん、お久しぶりです。元気に生きていました。ということで、川崎フロンターレ戦を取り上げます。

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 ベガルタ仙台は前節・名古屋戦、西村の2得点もあり3-2で勝利した。そのメンバーから6人が変更。一発退場で出場停止となった大岩に代わり、ルヴァンカップで好調を維持している常田がリーグ戦デビュー。またリャンが今シーズン初先発となっている。そしてベンチには6年ぶりに帰ってきた関口訓充が入った。

 川崎フロンターレは前節・C大阪戦で1-2の敗戦。ここ最近はセットプレーでの失点が多い。ターンオーバーを採用した前節から、憲剛、阿部、家長、エウシーニョ、車屋、奈良が帰ってきた。反対に小林悠がケガで欠場。エドゥアルド・ネットもメンバー外となっている。

 

■前半

 前半は、川崎がエンドを変えてキックオフをする。最近どのチームもエンドを変えたがる。

(1)互いのマッチアップと川崎の攻撃

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 仙台はこの試合3-1-4-2のシステムを採用している。それは個々の選手のマッチアップをハッキリさせることが狙いとしてある。第6節の浦和戦では反対にマッチアップをハッキリさせられた苦戦した。今回は逆。川崎対策として、よりマークをハッキリさせるやり方をチョイスしたといえるだろう。

 そんな対策を講じられた川崎はお構いなし。左サイドで人数を増やして攻撃に出ていく。頻繁に家長が左サイドに登場する。しかし通常であれば、密集地帯をコンビネーションでくぐり抜ける川崎だが、なかなか成功しない。スルーパスを出してもゴールキックになるケースが多かった。止めて蹴るが信条の風間式で、その精度が落ちているのかどうかは川崎を見ていないので不明。ただ、川崎の攻撃にそこまで怖さがなかったということは言える。

 前半の川崎の決定機は、川崎らしい崩しというより、ポジティブトランジションからの素早い攻めだった。特に家長のポスト直撃×2はどちらとも疑似カウンターの形だった。仙台の守備が整っていない状態に決定機を作り出していた川崎だった。

 

(2)合言葉は「サイドバックの裏」

 相手とのマッチアップを作るなど、川崎に対策を準備してきた仙台。試合前のコメントで渡邉監督は、我慢の時間帯をいかに粘り強く戦えるかがポイントだと述べていた。

 次にそんな仙台が攻撃時にどこを狙いとしていたかを見ていきたい。

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 合言葉は「サイドバックの裏」。ボールを持っている、持っていないに関係なくサイドバックの裏を起点に攻めようという狙いが見て取れた。

 特にポジティブトランジション時(守備から攻撃への切り替え)には、長いボールを使ってスピードのあるジャーメインと西村をサイドバックの裏へ走らせ、チャンスを作り出していた。

 川崎のボール保持時は、両サイドバックが高い位置を取るために狙いやすい場所となる。仙台の2トップが裏へ抜け出せる2人ということもあり、効果的な攻撃となった。

 また我慢を強いられる時間帯でも、切り替わったときの狙いが明確なために、素早く前線へとボールを届けることができた。

 

 また、ボール保持時でも、サイドバックの裏をうまく突けたシーンも作り出した。41分のシーンを振り返る。

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 まずは常田から平岡へ。このときに野津田とリャンは、相手ボランチ付近にポジショニングしている。そして平岡は蜂須賀へとパス。

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 サイドで受けた蜂須賀は前を向く。そして対面の車屋が出てくる。これと同時にリャンがサイドの裏へ抜けていく。

 もう1つ注目はリャンが抜け出したタイミングで西村が降りてきていること。蜂須賀の動きに対してリャンと西村がしっかり連動した動きを見せていることが分かる。

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 裏へ抜け出すことに成功したリャンは谷口も交わしてクロスを上げる。このときの降りてきた西村を見ることになった大島。大島のマークがずれたことで野津田がフリーでニアへと猛ダッシュできた。

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 野津田のシュートはチョン・ソンリョンの正面に行ってしまい、ゴールとはならなかった。

 このあとすぐに、同じような流れから西村が右サイドを抜け出して、ファーへクロス。受けた中野がカットインからシュートを打つも惜しくも右にそれた。

 このように仙台はサイドバックの裏を効果的に利用して、チャンスを作り出すことに成功した。

 

(3)仙台が押し込むことができた最大の理由

 前半の25分過ぎから仙台は、川崎を押し込むことに成功する。もちろん前述したように川崎のサイドバックの裏を突いた攻撃ができたいたことも理由の1つではあるが、最大の理由がもう1つある。

 それは、ネガティブトランジション(攻撃から守備への切り替え)である。一番初めに仙台は、相手とマッチアップするような組み方をしたと書いた。そのことは切り替え時にも効いていた。

 仙台の攻撃が一時的に終わっても、そのあとに素早い切り替えと高くて正しい位置取りをすることで、ボールを回収し二次三次攻撃へと繋げていった。

 特に目立っていたのは金と平岡の両センターバック。その中でも平岡は高い位置取りをすることで、ボールを回収しまくっていた。というのも、平岡の対面は阿部で、その阿部が仙台の攻撃時に下がったことで、反対に平岡は高い位置を取ることができた。もちろん常田と金が後方でカバーをすることで平岡を高い位置に置けている。

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 対面をハッキリさせることは守備だけではなく、自分が取れる位置取りの決め手ともなる。そのことで高い位置から守備を仕掛けられるし、セカンドボールを回収することができる。

 

 前半は、決定機の数では川崎、ボールを持ってペースを握れていたのは仙台という内容だった。スコアレスで折り返す。

 

■後半

(1)自分たちのペースへと引き戻すために

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 後半開始から川崎は、知念に代えて大久保を投入する。お互いにシステムの変更はなかった。

 前半は決定機の数こそ川崎が多かったが、ボールを握れていた、自分たちの狙いをうまく表現できていたのは仙台だった。

 川崎は自分たちのペースにするために、まずは運動量を上げて、仙台のビルドアップ隊に対して、プレッシングを掛けていった。まずは相手からボールを奪うこと、回収することが後半開始からの川崎のテーマだった。

 また、前半苦労していた仙台の2トップに対しても谷口、奈良がしっかり対応できるようになり、前半よりも抑えられていた。特に奈良は鉄壁の守備。この試合だけ見れば代表に選ばれてもおかしくないパフォーマンスを披露していた。

 

(2)各地で起こる球際バトル

 川崎が後半から一気にギアを上げてきたことで、ゲーム内容が激しい展開へと移り変わっていった。各地で起こる局面の球際バトルがより一層激しくなっていく。

 戦術的な勝負よりも、局面での勝負がこのゲームを左右する方向へと進んでいった。その中でも前述した奈良の頑張りや、中野の相手に引っ張られながらもドリブルしていく気迫はとても印象的である。

 ふと、不条理な形で解任となった監督がこの試合を見たら、大変喜ぶんじゃないかなと思ったりもして。

 

 そんなこんなで、後半は激しいゲームに。仙台はその中で次第に運動量が落ちていき、川崎の攻撃をゴール前で必死に食い止めるという展開へと変わっていた。それでも初先発の常田を中心に中央を割らせない。

 仙台は中野をインサイドハーフに中盤に推進力を、石原を投入してボールを収めることで全体を押し上げたいところだったが、上手くいかなかった。

 それでも我慢に我慢を重ねて、川崎の攻撃を食い止めた。

 

 90分が近くなると、川崎も攻め疲れで間延びし、仙台もチャンスを作るが、チョン・ソンリョンを脅かすシュートを打つことはできなかった。

 そして両者得点なくタイムアップ。激しく熱いゲームはスコアレスドローとなった。

 

■最後に・・・

 気迫溢れる、熱いゲームだった。いつも以上にテンションが高く、気持ちが入っていることが伝わってくる内容だった。

 年間通して、こういうゲームはいくつかあって、戦術的に見ていると忘れがちになるんだけど、実際はこういう局面局面の勝負がゲームを左右するんだなと思い出させてくれる。

 

 仙台としては積み上げてきたものを昨年王者に十分ぶつけることができた試合だった。だからこそ得点を取って、この強さや勢いが本物であることを証明したかった。充実感もあるけど、悔しさもあるというのが本音。

 

 初先発の常田は素晴らしいパフォーマンスだった。心配はしていなかったが、3バックの真ん中で堂々とプレーしている姿はとても頼もしかった。大岩抜きでも川崎を無失点に抑えたという事実は自信を持っていいはずだ。

 

 そして試合は続く。次回はミッドウィークにルヴァンカップ・新潟戦。そして土曜の磐田戦となる。ケガ人も続出し、台所事情が厳しいことには変わりはないが、総力戦で頑張ってほしい!

勝って兜の緒を締める~J1第5節 ベガルタ仙台vsV・ファーレン長崎~

  ここから始まる怒涛の15連戦。今回は、V・ファーレン長崎戦を取り上げます。

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 ベガルタ仙台は、前節から晋伍に代えて西村を起用。野津田ボランチ、西村シャドーという、ここ最近で得点が取れている形の布陣を採用した。ベンチにはケガから帰ってきた蜂須賀とリャンが入った。この2人が帰ってきたことは非常に心強い。そしてキャプテンマークを巻くのは古巣対戦に燃える奥埜博亮

 V・ファーレン長崎は、前節・札幌戦から徳重、中原、鈴木武蔵を入れ替えてきた。ルヴァンカップでの勝利はあるものの、未だにJ1リーグでの初勝利を掴めていない。ということで、そろそろ初勝利を掴み取りたい。

 

■前半

 前半は長崎がエンドを変えてキックオフをした。策士・高木監督らしい選択だった。

(1)なぜ長崎がペースを握ることができたのか?

 前半は予想に反して、長崎がペースを握る展開となった。仙台としてはボールを保持して、いい立ち位置からの攻撃を仕掛けたかったところだ。

 まずは、そうさせなかった長崎の仕組みから見ていくことにしたい。

 

 始めに攻撃から。

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 ざっくりではあるが図で表すとこんな感じになる。肝はダブルボランチの役割。ボールを保持するとなったら、碓井が列を降りてきて4バックに可変する。後ろが4枚になったことで、髙杉と徳永はサイドバックとなる。

 以前にも書いたが、5-2-3または5-4-1で守る相手に対して、サイドバックがビルドアップの出口となることで、スムーズにボールを前進させることはひとつの定跡となっている。今回の長崎も4バック化することでサイドバックをビルドアップの出口にした。前節・札幌戦では見られなかったが、昨シーズンではミラーゲーム対策として頻繁に行われていたらしい。

 そして仙台の3枚(西村、阿部、石原)のポジションを見てボールを循環させていった。シャドーが中(中原へのケア)に絞っていたならば、サイドバックへ展開し前進。反対にシャドーがサイドバックよりに立ち位置を取っていれば中原や落ちてくる澤田を、もしくは直接2トップへと縦パスを入れていた。

 このようにハードワークとカウンターのイメージが強い長崎ではあるが、しっかりとボールを保持する仕組みを作っていたことが分かる。

 それに加えて、無理をしない場面も多かった。サイドバックへボールが渡ったときにパスコースがなければ、ファンマへロングボールを狙う。そしてそれに呼応して走り出す鈴木と澤田、または競ったセカンドボールを回収するということを繰り返し行い、チャンスを作り出していた。

 

 続いて守備を見ていく。

 長崎の特徴はハードワークである。そしてそのハードワークの中身は、人とボールに激しく、また素早い切り替えと距離感を近くすることで複数人で奪い取るということだと感じた。

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 特にスローインからの場面ではそれが顕著だった。この写真もスローインからの流れからだが、画面上に7人いることで分かるように、常に距離感を近くし、プレスを掛けやすくしている。

 この試合では2トップ+トップ下という布陣で挑んだ長崎だが、もしかするとより距離の近い形で守備を行うことも狙いの1つだったかもしれない。

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 またこの図では、ファンマが仙台のパスルートをサイドへと誘導することで、コースを限定させている。このように前線からしっかりボールを追うこと(限定すること)、また狭い局面へと運ばせることで、強度の高いプレスを実現させていた。

 ついでにこの場面では阿部のバックパスを鈴木に奪われ、あわやという場面を作らせてしまっている。

 

 仙台としては狭い局面でボールを握ることよりも、ボランチや3バックを経由してより広く展開したかったところだ。特に相手の中盤が密集守備を行っているので、ミドルゾーンで広く展開をすることで長崎の選手をより走らせたかった。

 

(2)それでも先制点を奪う仙台

 間違いなく前半は長崎のペースだった。しかし先制点を挙げたのは仙台だった。31分。自陣のフリーキックの流れから一度はペナルティエリアに侵入するもクリアされる。しかしそのクリアを平岡がはじき返すと、古林に渡りクロス。DFがクリアしきれなかったボールを西村が拾い、冷静にキーパーを交わしてゴールを決めた。

 ルヴァンと合してこれで公式戦は2ゴール。昨シーズンはここぞの場面で決めきれなかった西村が、こうやって結果を出してくれるのは嬉しい。

 

 自分たちの流れではなかったが、先制点を奪うことに成功した仙台。このタイミングでワントップに入っていた阿部とシャドーの石原を代えている。この試合のスタートは阿部がワントップだったが、狙いが何だったのかはよく分からなかった。長崎対策がうまくハマっていなかったので、そのあたりでこの試合の狙い(阿部のワントラップ起用)と違う面が出たのかもしれない。

 本来の位置に戻った2人は、いつも通りのプレーを見せてくれる。阿部は古林との連携から右サイドを崩し、また石原は前線で起点となった。少しずつチャンスができ、コーナーから平岡のヘッドはポスト直撃。もう1点取れれば優位にゲームを進めることができたが。

 それでも、流れの悪い中で先制に成功した仙台は、1-0とリードして折り返す。

 

■後半

(1)お互いの変化を見ていこう

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 後半スタートから長崎は両ウイングバックの位置を変えている。おそらく前半は長崎の左サイドを突破されたシーンが多かったからだろう。翁長の裏を突かれたシーンは非常に多かった。ゆえに飯尾を置くことで左サイドの守備を修正した。この変化によって、仙台の右サイドからの攻撃をうまく抑えることに成功した。

 また、後半は翁長が右サイドになったことで、右サイドからのクロスがより増えた。

 

 一方の仙台。前半で石原と阿部の位置を変えた以外は目に見えた変更はなかった。しかし前半よりも後半のほうが、攻撃時に奥埜と野津田が縦関係になることが多かった。2人でバランスを取りながら、前線の3人と絡んでいくシーンは前半よりも増えた。

 しかし長崎のボランチを突破できても最後のシュートまで持っていくシーンは作れなかった。後半のシュート自体、セットプレーのこぼれ球を拾った永戸のミドルシュートだけであり、そこからも仙台がこの試合を通して苦しい試合を展開していた(してしまった)ことが窺える。

 

(2)両監督の交代の意図とは?

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 長崎は立て続けに米田と前田を投入し、システムを3-4-2-1へ。一方の仙台は阿部に代えてジャーメインを投入する。

 長崎が鈴木に代えて米田を投入しシステム変更を行った。裏が取れる鈴木ではなく、米田にしたことでファンマが競ったあとのセカンドボールを拾えるようにすること、それからボールを保持できる中で、ライン間で勝負できる選手というところで米田を起用したのだろう。

 前田に関しては、後半になってからボランチ付近を突破されることが増え、その対応のための起用だった。実際に広範囲でカバーをする前田は非常に効いていた。また4バック化するときも前田が列移動をし、アンカーの位置に碓井がいた。

 仙台はジャーメインは起用。個人的には裏へ抜け出すことで、相手のラインを下げさせたかったのかなと思ったが、足元で受ける場面が多かった。ただ、ジャーメインが足元で受けることで、その裏を抜け出す選手がおらず、左サイドの攻撃は正直機能していなかった。もっとシンプルにジャーメインの裏でも良かったような気がする。

 

(3)ブロックを敷くことを選択した仙台

 70分に奥埜が出血で一時10人となる。このあたりから仙台は5-4-1のブロックを敷いて、相手のボール保持させることを選択する。監督コメントでも、ボールを持たせても構わないということから選択肢としてあった。

 もちろんこの選択は悪くないと思うが、しかしボールを奪った後になかなかいつものようにボールを保持できない、または運べない展開が続く。長崎の切り替えの早さもその原因としてある。しかし石原がキープするものの、落として受ける選手が見つからない。ジャーメインのくだりでも書いたように裏を取る選手や相手DFを引っ張る選手がいないなど、自分たちに原因があったことも確か。そこは再度修正する必要がある。

 攻撃のリズムが良くないと守備のリズムも悪くなり、名倉の決定機2連発のようなことが起きてしまう。攻撃のリズムが生まれずに守備もうまくいかないという展開が後半ラスト20分で起きてしまった。

 それでも相手に助けられ、なんとか凌いだ仙台だった。晋伍と菅井を投入し、クローズ。今回も1-0での勝利となった。

 

■最後に・・・

 なかなかに内容がひどい試合だった、それでも勝てたことは地力がついた証拠かなと思う。

 なによりの救いは、渡邉監督自身が内容に納得していないことだろう。これで「よく耐えた」とか「自信が付いた」というコメントだったら、どうしようかと思った(笑)

 相手がどうこうではなく、純粋にもっと自分たちは戦えると語ってくれたのは何より嬉しい。そして間違いなくもっとできるチームだと思っている。もっともっとこのチームは強くなれるはずだ。

 

 水曜日にルヴァン・FC東京戦を挟み、次節はアウェイでの浦和戦。昨年の埼スタでの屈辱を果たし、そしてまだまだ自分たちは高みへ行けるというところを見せてもらいたい!

ボランチの最適解~J1第4節 清水エスパルスvsベガルタ仙台~

 さて、今回は清水エスパルス戦を振り返ります。クリスランとの再会戦。

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 ベガルタ仙台は、水曜日に行われたルヴァンカップマリノス戦で板倉が負傷。今節は代わって金正也がスタメンとなった。それ以外は変更なし。ベンチにはケガから戻ってきた中野が入っている。

 清水エスパルスはヨンソン監督が就任し、ここまで仙台同様に2勝1分と好調なスタートを切っている。攻撃陣は3試合で7得点を挙げ、その中心にいるのがクリスランと金子。ソリッドな4-4-2を基軸とした組織的なチームに変貌した。スタメンは前節・札幌戦と変更なし。

 

■前半

(1)システムのミスマッチをどちらが利用するか

 この試合は、非常に風が強い中で行われた。前半は風上が清水、風下が仙台だった。渡邉監督のコメントにもあったように風の影響もあり、前半は耐えて、風上に立つ後半に攻勢を仕掛けたかった。しかし前半9分の金子のシュートで先手を許すこととなる。金子の素晴らしいロングシュートも風に乗った影響でかなり伸びた得点だった。

 

 そんな環境を整理したところで、お互いの狙いとゲームの推移を整理していくことにしたい。まずは先制点を奪った清水から。

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 清水のシステムは4-4-2、仙台のシステムは3-4-2-1である。システムが違えば、ピッチ上にズレが生じるのは当然の話である。

 ということで、このズレをどちらが活かすかという話に変わっていく。始めに生かしたのは清水だった。清水のビルドアップ時の立ち位置は4-2-2-2。両サイドハーフのデュークと金子が中央に絞り、仙台のダブルボランチの脇に登場する。また清水のダブルボランチはDFラインに落ちることはない。それはビルドアップの出口をサイドバックするからだった。システムのかみ合わせ上、サイドバックがフリーでボールを持てるので無理に可変しなかった。

 清水はボールを受けたサイドバックから斜めにパスを送ることが多かった。具体的にいえばバイタルエリア。仙台の3バックとボランチの間である。そこに斜めパスを送り、中央の4人からの崩しを狙った。先制点はイメージ通りで、松原から斜めパスを受けた北川が落として金子のロングシュートへ繋げた。もちろん仙台の寄せが甘かったのはあるが、清水としては練習してきた形で得点に結びつくことができた。

 また状況に応じて、クリスランにボールを当てることもあった。しかしこちらはクリスランへの警戒が強く、そこからチャンスが生まれることは決して多くなかった。

 そんな清水ペースの流れが開始から20分ほど続いていった。

 

(2)動き出す富田晋伍奥埜博亮

 清水ペースで始まった試合だが次第にゲームが落ち着ていく。そして仙台がボールを保持する展開へと変わっていった。

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 清水は守備時に4-4-2でブロックを作る。仙台のビルドアップ隊である3バックには2トップが対応する。3バックがボールを持っても、両サイドハーフは前には出てこなかった。

 仙台のボール保持を安定させたのは、ダブルボランチである晋伍と奥埜だった。晋伍と奥埜は、基本的に清水の2トップの後ろに位置する。しかしボールの位置によっては、2トップの間や2トップの脇に顔を出し、ボールを引き出していた。ダブルボランチがボールを引き出すことで、奥行きができ、3バックとボランチでボールを出し引きすることで、3バックがスムーズに前を向いて前方へパスを送れるシチュエーションを作っていった。ボランチ2人が関わることで3バックがフリーになるシーンを作ったわけである。

 具体的なシーンを見ていきたい。35分。

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 ボールを持つ金。このときに奥埜は2トップ脇に、晋伍は2トップ間にポジショニングしている。

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 金は晋伍に当て、リターンパスを受ける。

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 縦のパス交換を行ったことで、清水の2トップは一回引くことになる。これで3バックはフリーでボールを持つことに成功する。

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 そして金は大岩へ横パス。フリーで受けた大岩は隙を見て石原に縦パスを送る。

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 石原がフリックし、阿部へ。阿部はバランスを崩しながらも野津田にパスを出す。このとき阿部に立田が付いていったことで、仙台の左サイドに広大なスペースが生まれる。

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 そして野津田はスペースがあった左サイドへ。そこにフリーで駆け上がる永戸が登場する。

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 フリーで受けた永戸はグランダーのクロスを上げるも、清水守備陣にクリアされる。

 シュートまで持っていくことができなかったものの、3バックとボランチのビルドアップから相手を崩せたシーンだった。

 

 しかしこの35分のチャンスでもそうだが、仙台はあと一歩のところまで侵入できても、清水の守備を崩しきることができなかった。清水は多少、外をやらせても中をしっかりと固めることで対応していた。というのも清水の4バックはいずれも180㎝を超えており、高さでは絶対の自信がある。なので外からの攻撃には落ち着いて対応できていた。ただ後半のところで述べるが、仙台にボールを保持させている状況はヨンソン監督にとっては良しとしていなかった。

 それでも耐えて耐えて清水はリードして前半を折り返す。一方の仙台は、序盤の流れから自らの流れに引き寄せたものの、最後のところを突破できずに折り返すこととなった。

 

■後半

(1)ハイプレスを仕掛ける清水

 金子のゴールで先手を奪ったものの、前半のほとんどの時間で仙台にボール保持されていた清水。しっかりと中を固めることで対処し、リードして折り返すことに成功したものの、ヨンソン監督はこの状況を良しとはしなかった。

 ということで、後半の清水はハイプレスを仕掛けていく。前半は仙台のビルドアップからの攻撃に対して、ブロックを敷いて守備をする時間が長かった。しかし後半に入ると、仙台の3バックとキーパーに対して、2トップと両サイドハーフがハイプレスを仕掛けることで、仙台に対して自由にボールを保持させないようにした。

 仙台も繋ぐ意思を見せるが、最終的には関からのロングキックでプレスを回避するしかなくなっていった。このように清水の後半開始のハイプレスは効果的だった。

 また清水は中盤の球際バトルでも強度を高め、高い位置でボールを奪取し、ショートカウンターを発動させていった。この時間帯で追加点を取ることができれば、清水は勝利をグッと手繰り寄せることができていただろう。

 

(2)ボランチ野津田岳人の登場

 前半とは打って変わって、清水がハイプレスを仕掛けてきたことでボールをうまく保持できなかった仙台。渡邉監督は早めにカードを切ることを決断する。

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 60分に晋伍に代わって西村を投入する。これで野津田と奥埜のボランチ、阿部と西村のシャドーとなった。前節・神戸戦でも見られた形である。

 野津田がボランチに入ったことで、仙台はボールを再び保持することに成功する。晋伍よりも野津田の方がボールを受けて前を向ける。また1列飛ばす大きな展開ができるために、野津田と奥埜の位置から徐々にボールが循環するようになっていく。

 ボランチとして決して晋伍が劣っているわけではないが、選手としての特徴やスコア上、バランスが取れる晋伍よりも野津田の方が守備は若干おろそかになっても、前を向けるという判断だった。この早い決断は同点ゴールへとつながる。

 

 70分の同点ゴールは、スローインからの流れ。左のスローインから一旦大岩まで戻す。大岩は野津田へ縦パスを送り、その野津田は反転してシュートを狙う。しかし当たり損ねたシュートになり、そのボールは西村へ。西村のシュートは六反に弾かれるものの、こぼれ球を阿部が拾って落ち着いてネットを揺らし、追いつくことに成功する。

 

(3)最後まで攻勢を強めた仙台だが

 同点に追いついた仙台。残りは20分もある。仙台は同点直前に投入した中野や、80分にはジャーメインを投入し、さらに攻勢を掛けにいった。

 清水が時間を追うごとに体力も減り、ハイプレスが続かなくなったことで、前半同様に再びペースを取り戻す。前半では足元のパスからサイドの展開もあったが、ジャーメインや西村が入ったことで、足元だけではなく、裏へのパスも増えていった。

 加えて裏への形もできたことで中盤にはスペースが生まれ、そこからサイドに展開し、クロスを上げるシーンもより多くなった。しかし永戸のクロスはなかなか味方に合うことはなかった。これは永戸のクロス精度の問題なのか、永戸とクロスに合わせる選手の問題なのか。この辺はより調整していく必要がありそうだ。

 最後まで攻勢を強めた仙台だが、清水の集中した守備もあり、逆転ゴールを奪うことができなかった。

 ということでタイムアップ。前節に引き続き先制されたものの追いついた仙台だった。4試合終わって未だ無敗である。

 

■最後に・・・

 この試合を振り返ると、前半は先制されたあとに晋伍と奥埜が上手くボール引き出すことでボール保持ができた。後半は相手がハイプレスを仕掛けてきたものの、ボランチに野津田を登場させたことで、再び仙台ペースへと取り戻した。そんなボランチがゲームの流れを変えるポイントになった試合だった。今シーズンは三田が抜け、まだまだ解決すべきことが多いが、晋伍や奥埜、そして野津田がダブルボランチまたは3センターとしてこのチームの軸となっていることはこの4試合で明らかになってきている。

 どの組み合わせが最適なのかは、清水戦のように相手の特徴やゲームの流れで変化していく。よって昨シーズンのように三田と晋伍、また三田と奥埜という固定ではなく、状況に応じて柔軟に対応していくようになっていくのではないか。そんなチームに今シーズンは変化してきているのかもしれない。

 もちろんこのポジションには庄司や椎橋もいるわけで、彼らの成長も欠かせない。チームの骨格の1つであるポジションだけに、熾烈なポジション争いを繰り広げてほしい。

 

 リーグ戦はしばし中断。次回はホームで長崎を迎え撃つ。そしてここから始まる怒涛の15連戦。チームの総合力が試される。ここからさらにチームがレベルアップしていくことを期待したい!