ヒグのサッカー分析ブログ(仮)

ヒグのサッカー観戦日記からのお引越しです。2018年より稼働予定です。

ベガルタ仙台テクニカルレポート2017【後編】

 

 前編に続き後編では、私的ベストゲームやベストゴールなどさまざまな視点から振り返っていこうと思います。

 

■ベストゲーム

・第27節 vsセレッソ大阪戦(4-1)

2017明治安田生命J1リーグ 第27節 セレッソ大阪戦ハイライト - YouTube

 ベストゲームに挙げたのは、27節のセレッソ大阪戦。上位相手に対して臆することなく、自分たちのサッカーを展開し勝利した試合だった。先制点のゴールへの過程は今シーズン目指している形での得点であり、その後もボール保持からの攻撃だけではなく、カウンターからの得点やセットプレーからの得点も挙げることができた試合だった。
 またベテラン勢の活躍も光った試合だった。ダンの負傷で急きょ出場した関のファインセーブ、久々の先発でアーリークロスからアシストしたリャン、そしてゲームに花を添えるゴールを決めた野沢の活躍は素晴らしかった。どの選手が出場してもクオリティが維持されることを証明したゲームであり、さらに自分たちのサッカーに自信を持つことができたゲームだった。

 

■ベストゴール

ルヴァンカップグループステージ第4節 vs大宮アルディージャ戦,佐々木匠

【公式】ゴール動画:佐々木 匠(仙台)17分 大宮アルディージャvsベガルタ仙台 JリーグYBCルヴァンカップ グループステージ 第4節 2017/5/3 - YouTube

 今シーズンは月間ベストゴールにノミネートされたクリスランのジャンピングボレーや、前編でも紹介したパスを数多くつないでのゴールなど、さまざまなファインゴールが生まれた年でもあった。その中であえてベストゴールに選んだのはこの佐々木匠の得点である。
 このゴールを選んだ最たる理由はその得点過程にある。椎橋→西村→蜂須賀→茂木→西村→蜂須賀→匠と得点に絡んだすべての選手が生え抜きの若手選手である(蜂須賀は微妙だけれども(笑))。そしてこのゴールは椎橋から西村がハーフスペースで受け、反対サイドの蜂須賀にロングフィードを送ったところからの得点で、まさに今シーズン目指していた形である。春先から若手選手が積極的に新システムと戦術にトライし、そしてそれを実践の場でできたこのゴールの意義はとても大きいと思う。また椎橋と西村、蜂須賀はその後のリーグ戦でスタメンに名を連ねるようになった。そういった意味では、その後の仙台にとって欠かせない成長体験だったゴールだと思う。

 

■気になった選手

 今シーズンは気になった選手がかなりいるが、ここでは選りすぐりの6人にフォーカスすることにしたい。

・シュミットダニエル  

 今シーズン、松本から帰ってきたダンことシュミットダニエル。開幕当初は関に守護神の座を譲っていたが、第7節鹿島戦から出場すると第27節FC東京戦まで守護神としてゴールマウスを守り続けた。リーグ戦に出場し始めた当初は失点につながるミスも多く、決して安定しているとは言い難いパフォーマンスだった。しかしJ1の試合を経験するごとに成長し、徐々に安定感も増していき、ダンのセーブで勝点をもぎ取った試合もあった。  

 また中学時代までボランチを経験していることから、確かな足元の技術を併せ持つ。後方からのビルドアップが生命線になってきたチームにとって攻守における重要な役割を担うようになった。来シーズンも仙台でのプレーが決まっている。より安定感を増したプレーを披露し、仙台からぜひ代表を選ばれてほしい。

 

大岩一貴  

 公式戦全試合に出場したまさに鉄人。シーズン開幕から前半戦は右バックを主戦場にプレーし、3バックながら積極的なオーバーラップなどを見せていた。しかし今シーズン最も成長したのは中央のセンターバックに起用されてから。第22節広島戦から中央で起用されると、的確なカバーリングと高いライン設定でよりチームがコンパクトに保てるようになり、攻守のバランスを取れるようになった。  

 またキャプテン富田が負傷離脱するとキャプテンマークを巻き、チームを引っ張る存在ともなった。年間MVPに選ばれなかったものの、個人的には今シーズンのMVPだと思っている。公式には発表されていないが、来シーズンも仙台でのプレーを選んでくれた(らしい)。来シーズンも今シーズン同様に後方からチームを支え上位進出を目指してほしい。

 

・椎橋慧也、蜂須賀孝治、西村拓真  

 いわゆるルヴァンカップ台頭組。  

 椎橋はルヴァンカップグループステージ第3節vs清水戦で初出場すると、その試合で初得点を決め鮮烈なデビューを飾った。本職はボランチであるが、ビルドアップ能力の高さを買われ今シーズンは3バックの一角として出場した。後方から的確に球出しをできるパスセンスと運ぶドリブルが標準装備され、守備陣のなかではビルドアップ能力に関しては頭一つ抜けていた。フィジカル的な問題もあり守備にはまだまだ課題が残っているものの、実戦を通して成長していた。来シーズンも仙台でプレー。今シーズン以上に欠かせない存在へと成長していってほしい。  

 蜂須賀は入団5シーズン目でなかなか伸び悩んでいたが、今年は間違えなく成長した選手の1人であった。シーズン通してケガ人が多かったウイングバックだが、蜂須賀はほぼケガをすることなく今シーズンを過ごせた。もともとの体躯の良さを活かしたダイナミックなオーバーラップに加えて、クロスの種類も豊富になり、左右両方で正確なクロスを供給できるようになった。もちろんセットプレーでの守備など課題が残ってはいるものの、今シーズンの成長ぶりは素晴らしかった。残念ながら最終節・甲府戦で膝を負傷し長期離脱を余儀なくされたが、また一回り二回り成長した蜂須賀がサイドを駆け上がる姿を見たい。  

 そして最後は西村。クラブ初のニューヒーロー賞を取った成長株。今シーズン一番システム変更の恩恵を受けた選手と言っていいだろう。ハーフスペースでのボールを受ける技術、そしてそこからの判断力の高さはお見事。年々体つきも良くなり、相手をドリブルしながらなぎ倒していく姿にたくましさを感じた。しかしリーグ戦では29試合2ゴールと前線の選手としては寂しい結果となった。終盤にはシュートシーンで力んでしまう場面も見られ、ゴール前の冷静さは課題だろう。そこが解決されればいよいよ手の付けられない選手になるはずだ。

 

石原直樹  

 最後に挙げるのは石原。自己最多タイの10得点を決めた年間MVP。今シーズン浦和から加入し、移ろいが激しかった前線で31試合に出場した。それだけこのシステムの理解度が高くかつ渡邉監督からの信頼度も厚かった。得点をはじめ、前線のキープや労を惜しまないチェイシングなど、前半戦はかなりオーバーワークだった。しかし夏に野津田が加入した後半戦では、前線でキープしていた役目が軽減され、ボックス内での仕事に集中できるようになった。10点の内6点が野津田加入後に挙げたゴールということからも石原にとって野津田の存在は非常に大きかった。来シーズンも報道では石原、野津田双方とも残留が濃厚。石原には今シーズン以上に活躍を期待し、ぜひ自己最多得点を目指してほしい。

 

■来シーズンへの期待とか  

 今シーズンはシステムや戦術が大きく変化し、まさに変革の一年だった。その中でも若手の台頭や新戦力の活躍もあり、ルヴァンカップではベスト4という成績を残すことができた。またリーグ戦では12位と昨季と同じ成績だったものの、主力が抜け戦術が変わったなかで残留争いに巻き込まれずシーズンを過ごせたことは十分に評価ができることである。  今シーズンは新システムと戦術の土台が作り終え、上位へ殴り込みに行く準備の年だったと言えるだろう。ということで来年はこのサッカーを継続しながらも、さらに練度を上げて結果を残せるシーズンとしたい。  

 そのためにはもちろん克服しなければいけない課題はいくつもある。守備時におけるセットプレーや5バック相手に対する攻略法、2-3で負けた川崎戦のようにどのように逃げ切るか(もしくは攻め切るか)といったゲームの運び方などなど。このような課題を克服しながらチームが成長していく姿を来年も見ていきたい。そのためにはキャンプからいいトレーニングをして落とし込んでいけるかがポイントとなってくるだろう。

 

■最後に・・・  

 今シーズンも当ブログをご覧いただきありがとうございました。今シーズンはサッカーが変わっていく中で学ぶことも多く、納得できる文章を書けない日々でしたが、いい経験のできた一年でした。  

 個人的には今シーズンやっているサッカーは、応援し始めてから一番といっていいほどワクワクしています。なので本当にルヴァンカップ準決勝は悔しかったですし、このサッカーで結果を残したいと思えた瞬間でした。そして決して潤沢ではない地方クラブがこのようなサッカーで結果を残すことの意義は、自分たちの想像以上に大きいはずです。来年も精いっぱい応援したいと思います。

 そして私事ですが、スポーツナビブログが閉鎖するために当ブログも閉鎖せざるをなくなりました。よって来シーズンからは、ヒグのサッカー分析ブログ(仮)にて更新していきたいと思います。  

 また来年からは社会人になるために毎試合更新できるとは限りません。それでもみなさんの観戦の足しになれるようなブログを今後も書いていきたいと思います。

 

 今シーズンもありがとうございました。また来シーズンもよろしくお願いします!それではよいお年を。

ベガルタ仙台テクニカルレポート2017【前編】

 みなさん、こんにちは。2月に始まった2017年シーズンも終わり、ストーブリーグを迎えております。
 今回のテーマは2017年シーズンの振り返りです。昨年の2016年シーズン同様の形で振り返っていこうと思います。

 

 前編では、シーズン全体の総括とシステムを変更した今シーズンのサッカーの中身を振り返ります。
 後編では、個人的なベストゲームやベストゴール、気になった選手について書いていきたいと思います。
 では、さっそく前編から。

■今シーズンの総括  

 2017年の仙台は11勝8分15敗で勝ち点41の12位でフィニッシュした。昨シーズンは13勝4分17敗で勝ち点43の12位だったので、昨年とほぼ成績の変わらないシーズンとなった。それでも今シーズンは伝統の「4-4-2」から「3-4-2-1」にシステムを変更し、よりチャレンジングにそして充実した内容のサッカーを展開した。試合を経るごとにサッカーの完成度が高くなっていくのが目に見えて分かり、非常に楽しい1年だった。  

 開幕前の石原、クリスラン、中野、永戸、増嶋と夏に野津田、古林を的確に補強したことは、システム変更というリスクはありながらも残留争いに巻き込まれずにシーズンを過ごせた最大に要因だと思う。加えてルヴァンカップではクラブ初のベスト4まで進出。ニューヒーロー賞を取った西村をはじめ、蜂須賀、椎橋、ダンがこの大会で台頭したことで、チームの底上げを図れたことは非常に大きかった。  

 しかし、昨年同様にシーズン中のケガ人の多さに悩まされたのは課題の1つだった。ベストメンバーで戦えた試合がもっとあれば、さらに充実したシーズンを過ごせたかもしれない。来季こそはケガ人が少ない1年を過ごしたい。  

 渡邉監督就任以降、攻撃的なサッカーを標榜しチャレンジして続けたが、今シーズンはようやく「自分たちのサッカー」と言えるものを見つけ出すことができた年だった。

 

■対戦成績から見えるもの

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 続いて、対戦成績や気になるデータを見ていきたい。  

 上の対戦表は、今シーズンの順位に照らし合わせた仙台の対戦成績と得点者、各チームから得た勝点を一覧にしたものである。  

 仙台は前半戦では6勝3分8敗の勝点21、22得点32失点。後半戦では5勝5分7敗の勝点20、22得点21失点だった。完成度の高まった後半戦よりも前半戦のほうが1ポイント勝点が多い。一方で前半戦では浦和戦の7失点が代表されるように32失点と非常に失点の数が多かったが、夏場に守備を修正したことで後半戦は21失点まで減らすことができた。もちろんこれ以上に失点を減らさなければならないが、シーズン通して攻守のバランスを取れるようになっていった証拠だろう。

 

 次に上位、中位、下位に分けた戦績を見てみる。勝点50以上取れた1~6位が上位、勝点40台の7~13位を中位、勝点が40以下の14~18位を下位とし、成績を見てみると・・・  

上位:3勝4分5敗(勝点13,15得点20失点)  

中位:2勝2分8敗(勝点8,11得点25失点)  

下位:6勝2分2敗(勝点20,18得点8失点) となった。  

 昨シーズンは上位にめっぽう勝てなかった(2勝1分9敗,勝点7)が、今シーズンは上位にはそこそこ結果を残している一方で中位に勝てないシーズンだった。中位には浦和やガンバ大阪FC東京など苦手とするチームがいるのも原因の1つであることは確かだが、仙台が昨年以上の成績を残せなかったのは順位の近い直近の相手に勝てなかった、もしくは勝点を拾えないゲームが多かったことが最大の理由であろう。

 

 そして面白いデータがもうひとつ。それは前半戦の下位相手におけるクリスランの活躍である。クリスランはリーグ戦では8得点決めているが、そのうち6得点が前半戦の下位相手である。前半戦はシステムが変わり試行錯誤が続いている中、クリスランの個の力でぶん殴ることで勝点を得ていたことが分かる。チームの完成度が上がる中でなかなかフィットできず、加えてクロッサーであった永戸の負傷で後半戦は1点に止まったが、前半戦のクリスランの活躍がなければ残留争いに巻き込まれていた可能性は高い。

 

■今シーズンのサッカーについて

(1)「ポジショナルプレー」、「5レーン」、「ハーフスペース」  

 システムが「3-4-2-1」に変わった今シーズンの仙台を振り返るうえで、重要になるキーワードがある。それは「ポジショナルプレー」、「5レーン」、「ハーフスペース」である。  

 まずはポジショナルプレーについて。ポジショナルプレーとは、「攻・守・ポジティブトランジション(守→攻の切り替え)・ネガティブトランジション(攻→守の切り替え)の4つの局面において、相手よりも『優位なポジション(立ち位置)』をとることで、ゲームを優位に進める考え」である。これは戦術というよりもプレー原則や概念である。なので、こういうプレーがポジショナルプレーだという決め打ちはない。むしろいい攻撃ができていたり、いい守備ができていたりしたときにポジショナルプレーが上手くできているという見方のほうが正しい。このポジショナルプレーには、「数的優位」、「位置的優位」、「質的優位」という3つの優位性があるのだが、それは後程具体例を見ながら説明していく。  

 今シーズンの渡邉監督のコメント中に「いい立ち位置」というフレーズが多く使われていたが、この「いい立ち位置」こそがポジショナルプレーのお話である。

 

 続いて「5レーン」と「ハーフスペース」について。

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 5レーンとは先ほどのポジショナルプレーをピッチ上で実践的に利用できるように可視化したものである。通常ピッチを横に分割することが多いが、5レーンではピッチを縦に5分割する。  

 この5分割したレーンのうちに重要になってくるのが、もうひとつのキーワードである「ハーフスペース」である。  

 ハーフスペースとは、中レーンと外レーンの間のレーンを差す。なぜこのレーンが重要かというと、中レーンとはいわばゴール前であり、相手守備陣もしっかり固めるので、そこからゴールを破るのは難しい。かといって外レーンではゴールから遠くチャンスになりずらい。そこで登場するのがハーフスペースである。ハーフスペースにいる選手にボールを預けることで、相手守備陣がスライドせざるを得なくなり、そのズレを利用して攻撃側は守備を崩すことができるのである。要はハーフスペースは相手を崩す第一歩目として重要なスペースなのである。  

 加えれば自陣においてもこのハーフスペースは重要で、特にビルドアップの起点となる「ハーフスペースの入口」にビルドアップ能力が高い選手を置くことでビルドアップからの攻撃をスムーズに行うことができる。  

 今シーズン、椎橋や西村が急成長したのも、このハーフスペースにおけるプレーの理解度が早くかつ的確だったので起用され続けたのである。  今シーズンの仙台は状況に応じて、この「5レーン」と「ハーフスペース」に的確に人を配置(ポジショニング)し攻撃することで、より多くの人が関わった攻撃ができていたのである。

 また前述したようにポジショナルプレーでは攻撃の局面だけではなく、他の局面においても必要となってくるのだが、特に守備に関しては正しい立ち位置が取れずに崩されてしまうことがあり、守備におけるポジショナルプレー(いい立ち位置)を取れるようになることは来シーズンへの課題である。

 

(2)ポジショナルプレーの具体例  

 次は、具体的にポジショナルプレーができているプレーとはどのようなものか見ていきたい。

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 もちろん、相手守備陣の立ち位置によってポジションの取り方や攻め方は変わってくる。ここでは相手守備陣が前からプレスを掛けてきたときを想定して話を進めていきたい。  

 仙台の左右バック(図では左バック)がボールを持っているところからスタートする。ここでは相手サイドハーフが寄せている。  

 左バックはハーフスペースの入口に立っており、中レーンにはボランチが、外レーンにはウイングバックがポジショニングしている。この2人は左バックからのパスコースを確保しており、また左シャドーを含めてスクエア(四角形)を組むことができている。  

 左バックの運ぶドリブルによって、相手サイドハーフをおびき出すことに成功すると、サイドハーフの背後に位置しているボランチウイングバックとで3対1の数的優位ができる。かつ、ボランチウイングバックは相手サイドハーフの背後に位置しているため位置的優位なポジショニングができているとも言える。  

 もちろん相手守備陣もボランチサイドバックが飛び出し、対応してくることが容易に想定できる。しかし仙台はスクエアを組んでいるため、その次のシャドーへのパスコースも確保されている。同じレーンではなく違うレーンに角度を作って人を配置することで、もし同数になった場合でもパスコースを確保することができる。

 5レーンに人を配置することで、相手陣地に入ったときもバリエーション豊富に攻めることができる。  

 シャドーにボールを預け、ウイングバックとのワンツーでの抜け出し。シャドーが前を向ける状態であればそこから1対1での勝負。また、左バックからボールを受けたボランチやシャドーから落としを受けたボランチが逆サイドのウイングバックへフィードで展開し、そこから攻撃を仕掛けるなどが考えられる。  

 仙台の今年の攻撃パターンで最も多かったのが、左サイドで起点を作ってからの逆サイドのウイングバックへの展開である。特に4バック相手だと相手が5レーンを4枚で守るために大外のウイングバックが空く。仙台は左で時間を作ることでウイングバックの押し上げることと相手守備陣のスライドを行わせ、そこから大きな展開で空いた右サイドからの攻撃を行っていた。  

 ここでより良いのは、ウイングバックが1対1で必ず突破できる選手を置くことである。これが質的優位性である。極端な話、サイドにロッベンリベリーを置き、1対1をチームとして意図的に作り攻撃していくことである。今シーズンの仙台には中野が質的優位を持つ選手だったがケガで戦線を離脱することが多かった。サイドでドリブル突破ができる選手やペナルティエリア内で空中戦で絶対に勝つといった質的優位性があるとさらに攻撃に厚みをもたらすことができる。

 

 今シーズンの得点のなかで、5レーンとハーフスペースを上手く利用して崩したシーン紹介したい。

・第16節vsセレッソ大阪戦,石原直樹のゴール

【公式】ゴール動画:石原 直樹(仙台)36分 ベガルタ仙台vsセレッソ大阪 明治安田生命J1リーグ 第16節 2017/6/25 - YouTube

 左で起点を作り、右へ展開して完全に崩して決めたゴール。全員で狙いを共有できた得点だった。

 

・第31節vsガンバ大阪戦,奥埜博亮のゴール

【公式】ゴール動画:奥埜 博亮(仙台)22分 ガンバ大阪vsベガルタ仙台 明治安田生命J1リーグ 第31節 2017/10/29 - YouTube

 数多くのパスを回しながらガンバディフェンスに穴を開けると、増嶋からのスルーパスに抜け出した蜂須賀のクロスから中で複数に絡んで奥埜のゴールにつながった。これも狙いを共有できた得点だった。

 

・第32節vs大宮アルディージャ戦,オウンゴール

【公式】ゴール動画:オウンゴール(仙台)36分 ベガルタ仙台vs大宮アルディージャ 明治安田生命J1リーグ 第32節 2017/11/18 - YouTube

 これもセレッソ大阪戦と同様にスペースの空いた右サイドへの展開からのゴール。注目したいのがペナルティエリアに4人流れ込んでいること。右サイドに展開する時間を利用して多くの選手がボックスに入り込むことができる。

 

・第32節vs大宮アルディージャ戦,三田啓貴のゴール

【公式】ゴール動画:三田 啓貴(仙台)57分 ベガルタ仙台vs大宮アルディージャ 明治安田生命J1リーグ 第32節 2017/11/18 - YouTube

 今度はサイドから中央に崩していった得点。狭いスペースで多くの人数が絡んだ得点だが、注目してほしいのは逆サイド。左ウイングバック(蜂須賀)に右サイドハーフが付いていったことで、中央のスペースが空いた得点だった。相手の守備陣形を崩したという意味で良いポジションができている証拠である。

 

(3)今シーズンの課題
 今シーズンの一番の課題は、5バック相手に対して得点できずに勝てなかったことだろう。

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上の表は今シーズン、4バックと5バック相手別の戦績である。4バックと5バックで戦っているチームの数にかなりの差があるものの、5バック相手には9試合戦って勝利した数はわずかに2勝で、勝点8しか稼げていない。今シーズン全体の勝率は32%だが、5バックだけ見ると勝率は22%と、いかに5バック相手との対戦で足を引っ張ているのかが分かる。

 

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  5バック相手を崩せない最大の原因は、5バックの場合、仙台が利用したい5レーンを埋められてしまい、相手守備陣にギャップができない。  

 例えばウイングバックに1対1の突破が得意な選手を置くことで質的優位で攻撃したいところだが、そのような選手も中野以外におらず個で突破することもできない。よって仙台は5バック相手を崩せずに、反対にワンチャンスを決められ敗れることが多かった。第24節の札幌戦(0-1)、第26節のFC東京戦(0-1)、最終節の甲府戦(0-1)のように攻撃でリズムを作れずにいると、一撃で決められ敗れるというパターンは今シーズン見受けられた負けパターンだった。来シーズンは5バック相手に対してどう攻略していくかは上位進出に向けた1つのポイントとなるだろう。

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 また今シーズンは4バックの相手でも守備時は5バックになるチームも出現した。片方のサイドハーフウイングバックのように振る舞い、守備時は532や541で守る可変型である。第3節の神戸戦(0-2)、第28節の浦和戦(2-3)ではこのような可変型の守り方をしてきた。もしかすると来シーズン以降は仙台対策としてこのような守り方をするチームが増えるかもしれない。このようなチームをどう攻略するかも重要になってくる。

 

以上が前編です。後編に続きます。

最後の最後で出たさまざまな課題~J1最終節 ヴァンフォーレ甲府vsベガルタ仙台~

 いよいよ最終節です。今回はヴァンフォーレ甲府戦を取り上げます。f:id:khigu:20171206183143p:plain

 仙台は前節・マリノス戦からスタメンの変更はなしだったのだが、アップ中に蜂須賀が負傷。代わりに茂木が起用された。ベンチにはダンが復帰、また小島もベンチ入りをしている。  

 勝たなければ後がない甲府。この試合に勝利し清水の結果を待ちたいところ。まさに人事を尽くして天命を待つ状態。前節・大宮戦で島川が負傷し、代わりに新井がアンカーを務め、3バックの中央に山本を起用した。それ以外は変更なし。

 

■前半

(1)仙台の狙いと甲府との駆け引き  

 仙台にとっては苦手な5バック相手は久々の対戦となり、5バック相手にどのような攻撃をしていくのかは1つのポイントとなった。ここでは仙台の狙いとその後の甲府の対応、それに続く駆け引きについて見ていきたい。

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 試合開始からの仙台のボール保持は3142の形で行われていた。ついでに守備は541のままとなっている。  仙台がビルドアップ時における時間とスペースを得たいエリアは左右のバックのポジションである。いわゆるハーフスペースの入口。仙台は奥埜が2トップの間に入り、三田と野津田がインサイドハーフ付近にポジショニングすることで甲府の2トップとインサイドハーフをピン留めし、ハーフスペースの入口である増嶋と平岡に時間とスペースを与えることに成功する。  

 そこからウイングバックに当てて、2トップへの斜めパスや西村や石原が裏に抜けてボールを引き出すような攻撃をしていく。

 

 しかし甲府も20分過ぎから対応できるようになっていく。

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 甲府は仙台の立ち位置を把握すると、左右のバックに対してインサイドハーフが突撃するようになっていく。図でいえば仙台の左にボールがあるとしたら小椋がプレッシングに行き、そのカバーを新井が行うという形である。  

 甲府はビルドアップ隊へのファーストディフェンダーがハッキリしたことで各ポジションの選手もマークがハッキリし、守備がハマるようになっていく。

 

 甲府に対応されるようになった仙台だが、元の形である3421の形で三田と奥埜を並列に並べることで、ビルドアップを安定させ、なんとか甲府のプレッシングを掻い潜っていく。おそらく3421になったのは、監督の指示ではなく自分たちの判断からなのではないだろうか。根拠はないが3421に変わっていくときに各々のポジションが微妙にズレていたように思える。前半も終盤に差し掛かるとポジションが修正されていたので、おそらくピッチ内の判断で行われていたのではないか。  

 そんな攻防が前半45分間の中にあった。

 

(2)被カウンターが多かった仙台

 この試合は前半からとにかく甲府にカウンターを食らう場面が多かった。それは仙台の攻撃が上手くいってない証拠でもあった。  

 仙台はミドルゾーンまでボールを運ぶことができていた。しかし相手ブロック内へ縦パスを通すもそれがズレてしまったり、通ったものの落としたボールが引っ掛かったりと、縦パスの精度や最後の精度を欠いてしまうシーンが多発していた。監督コメントにもあったようにピッチが荒れていたことも原因だろうが、それ以上に甲府の最後の守備がしっかり集中していたことがミスが増えた最大の理由だ。  

 よって攻撃の終わり方が悪い仙台は中盤でリンスとドゥドゥ(時々中盤の3人)に前を向かれカウンターを食らう場面が増えていった。縦パスを奪われるため、ネガティブトランジションもうまく機能せず、大宮戦やマリノス戦のように即時奪回からの厚みのある攻撃を繰り出すことができなかった。 

 それでも相手の決定力不足に助けられたり、3バックと関が体を張って守ったことで前半は0-0で折り返すことができた。

 

■後半

(1)早めのクリスラン投入  

 後半も前半同様に、仙台の攻撃には閉塞感が漂っていた。ミドルゾーンまではボールを運べるもののその先になかなか行けない。甲府の集中力の高い守備の前に、阻まれる時間が続く。  

 それを打破するためにクリスランを西村に代えて投入する。58分と早めの交代だった。クリスランをまずはポイントに攻めようというのが狙いだった。  

 甲府の中盤の守備が緩みだした60分過ぎから、徐々に落ち着いてボールを動かすことができた。野津田が3センターの脇に登場し、茂木とのコンビネーションからチャンスを作り出す。62分に茂木がカットインをしてシュートを打ったシーンがあったが、あのような攻撃がもっと欲しかったのが本音である。

 

(2)一進一退のなかで  

 後半はお互いに一進一退の状態が続く。甲府は2トップを中心としたカウンターと前半から得ていた数多くのコーナーキックからチャンスを作り出す。68分に堀米を投入すると中盤でタメを作ることができ、全体を押し上げることができていた。

 甲府はどうしても勝利が欲しいために、時間の経過とともに焦りだす。前半からもあったが、どうしても荒いプレーが増えてしまい、ピッチに倒れ込む選手が続出していった。そんな中で仙台も相手の焦りを見逃さずにチャンスを窺いたかったが、やはり食らいついてくる甲府の守備になかなか決定機を作り出せない。

 

 仙台は菅井とジャーメインを投入する。一方の甲府も橋爪、そして黒木を投入しパワープレーに打って出る。  

 甲府は90分に新井が2枚目のイエローカードをもらい、退場となる。仙台は相手が10人でしかもパワープレーに出たことで後方にスペースが生まれ、ようやく決定機を生み出すことに成功する。アディショナルタイムにはジャーメインに1回、クリスランに2回立て続けに決定機を迎えたが、決めきることができなかった。 

 決定機を3つ外したチームをサッカーの神様は味方するはずもなく、90+6分にリンスがドリブルから4人を抜いてゴールを決め、勝負あり。  

 我慢に我慢を重ねた甲府が1-0で勝利した。しかし清水が勝利したために来季の降格が決定。ミッションクリアとはならなかった。

 

■最後に・・・

 最後まで甲府相手に効果的な攻撃ができずに敗戦となった。アディショナルタイムの3つの決定機を決めきれれば問題なかったのだが、ここ最近の課題である決めきるところを決めきれない課題を大事なシーンで露呈してしまった。  

 今シーズンすべてに言えることだが、5バック相手はすこぶる苦手である。4バックだと5レーンを利用して攻撃できるものの、5バックだとレーンを埋められてしまい、本来狙いとしている攻撃ができなくなってしまう。甲府戦のように剥がすことに終始してしまい、相手を動かすプレーがなかなか出てこなかったのは来年への課題である。さらに攻撃のバリエーションが必要である。

 

 これで今シーズンは終了。最終的には昨年同様に12位でのフィニッシュとなった。しかし昨年以上にサッカーには充実感のあるシーズンであり、また課題が明確なことから来年以降もどれだけ伸びていくか純粋に楽しみである。  

 自分たちのサッカーに自信があるからこそもっと強くなりたいし、結果を出したいと思えるシーズンだった。来年の更なる飛躍を期待したい!  

 まずは一年間お疲れさまでした!!

 

 

 

決めるところを決めきるという課題~J1第33節 ベガルタ仙台vs横浜Fマリノス~

 さてホーム最終戦です。横浜Fマリノス戦を取り上げます。f:id:khigu:20171201131228p:plain

 前節・大宮戦では3-0の快勝。残りの2試合もいいゲームをして今シーズンを終えたい仙台。スタメンは変更なしだが、ケガから帰ってきたリャン、そしてジャーメインがベンチ入りした。  

 一方のマリノス。前節、セレッソ大阪とのACL争い直接対決に敗れ状況が厳しくなった。ACL圏内入るためには仙台戦で是が非でも勝利がほしい。今節はマルティノスと扇原が出場停止。前節と代わってデゲネク、山中、喜田、シノヅカ、ウーゴがスタメンと大きくメンバーを入れ替えての一戦となった。

 

■前半

(1)主導権争いの中で  

 試合開始からお互いに相手のビルドアップ隊に対し、激しく前プレを仕掛けることで主導権を握ろうという狙いが見えたスタートだった。よってボールの落ち着かない展開が続く。

 この展開の中で優勢だったのはマリノスだったかと。マリノスは仙台の前プレに対して、サイドバックを前プレの逃げ場として利用することで剥がすことに成功していた。一方の仙台は3バックとキーパーに圧力を掛けられるとどうしてもロングボールを選択せざるを得ない場面が続いていった。

 この無秩序な時間帯で先制に成功したのはマリノス。5分。やや右25ⅿ当たりのフリーキックを天野が見事に沈め、ACL圏内を目指すマリノスが先手を取る。

 

(2)定位置攻撃と即時奪回  

 先制された仙台。思えば昨年の最終節も開始早々にフリーキックで失点した記憶がある。昨年は失点後、ボールを握り磐田ゴールに迫ったが、最後まで得点を奪えなかった。

 マリノス戦の仙台は開始早々の失点でも昨年と同じ仇を踏むことはなかった。この一年で磨き上げた攻撃に加えて、ネガティブトランジション時の素早い切り替えで、ボールを即時奪回し、二次三次攻撃へと繋げていった。

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 毎試合ではあるが、この試合でも仙台の攻撃のポイントはサイドだった。ウイングバックの位置的な優位性を生かした攻撃で、マリノスを押し込んでいく。  

 マリノスは442のブロックを組む。前の2枚とサイドハーフはなるべく高い位置を取って前から限定していく、もしくは圧力を掛けていくのが本来の狙いだったのだろう。  しかし、仙台は3バックからウイングバックへの対角フィードなどをうまく織り交ぜながら攻撃することで、マリノスの前プレを牽制することに成功する。特に増嶋や大岩から右の古林へと対角フィードを送りチャンスを作り出していたのはその象徴的なシーンだった。  

 マリノスと仙台はシステムのミスマッチが発生するために、サイドハーフボランチが誰を見ればいいのか、またはどこにポジショニングしてコースを限定させるかというのが曖昧になっていった。まさにこれは仙台がいい立ち位置を取れている証拠で、この一年間の積み重ねである。 

 そして攻撃から守備に切り替わったとき(ネガティブトランジション)も素早くボールホルダーにプレスを掛け、マリノスにロングボールを蹴らせてセカンドボールを3バックやボランチが回収するといったシーンを何度も作り出したことで、何度も自分たちのターンにすることに成功する。  

 このネガティブトランジションは昨年一番良かった部分だが、今シーズンはシステムの変更もあって、守備時にどこにポジションを取ればいいのかが定まっていなかった。ここ最近(特に前節・大宮戦)では各々のポジションが良くなったことでネガティブトランジションからのボール回収ができるようになった。これは来年に向けても非常に大きな要素になってくると思う。

 

 試合は、19分に右コーナーキックからの混戦で大岩が押し込んで同点。28分には中央やや右よりの三田のフリーキックから平岡が折り返し最後は石原が決め、逆転に成功する。石原はこれで10ゴールとなった。  

 前半は早々に失点したものの、その後は自分たちのサッカーを展開することで主導権を握り、逆転に成功して前半を折り返した。

 

■後半

(1)後半開始から70分まで  

 後半開始からマリノスは再度、前線から圧力を掛けて仙台を押し込んでいく。前半開始と似たように前からのプレスと中盤でのデュエルでボールを奪うと仙台ゴールに迫っていくシーンを作っていく。  

 しかし、それも開始10分まで。その後は仙台が再び押し込む時間帯へとなっていく。

 53分の蜂須賀のグランダーのクロスに野津田が合わせたシーンから仙台が前半同様な展開を作っていく。サイドから中央から攻撃を作っていき、奪われたら素早い切り替えでボール奪取。前半のリピートを後半も行うことができていた。しかしこの時間帯に幾度となく決定機が生まれたものの決めきることができなかった。試合全体を見ると、この時間帯にもう一点取れていたかどうかは試合を振り返るうえで一つのポイントだったと思う。

 

(2)70分から失点まで  

 70分過ぎになると仙台の全体的な体力が落ちてきたのか、徐々にマリノスに押し込まれるようになっていく。マリノスは喜田がアンカーポジションを取り、センターバックやキーパーとともにビルドアップに参加することで、ボール保持を安定させる役割をこなしていた。推進力のある遠藤やトップの伊藤翔を投入し、さらに攻勢を強めていくマリノスだった。  

 一方、攻め疲れなのか次第にボールを持てなくなる仙台。前に出たい気持ちがあるものの、ボールが奪えず、なかなかマリノスのプレッシャーを剥がすことができなかったので、ボール保持を安定させることができなかった。ベンチにも攻撃的な選手しかおらず、選手を変えることでバランスを調整することが難しかった。70分過ぎの攻撃に出たいけどボールを持てないし、守備に追われているという曖昧で中途半端な時間帯は少し勿体無かったかなと。  

 奏功しているうちに88分にコーナーの流れから、天野のシュートをはじき返そうとした平岡のクリアがミスとなってゴールに吸い込まれ同点を許してしまった。平岡は足を振ってクリアしようとしてしまったのが仇となった。面を作ってしっかり当てるだけよかったのだが、無念。

 

(3)失点から終了まで  

 仙台もここでようやく動く。クリスランと菅井を投入。なりふり構わず攻撃へと出ていく。ホーム最終戦で勝ちたい仙台とACLに行きたいマリノス、終盤は間延びした状態の打ち合いになっていく。仙台はクリスランに2度の決定機が訪れるも決まらず、マリノスもカウンターからチャンスを迎えるもバブンスキーのシュートは平岡にブロックさせる。  

 最後の7~8分は反対に見ごたえのあるワクワクする時間帯だった。しかし両チームともゴールを決めることができずにタイムアップ。2-2のドローとなった。

 

■最後に・・・

 1点リードで終盤を迎え、なんとか勝利をもぎ取ってホーム最終戦を飾りたかった仙台にとって悔しい引き分けとなった。前半の内容や後半の70分までの内容は素晴らしかったが、交代カードを切ることができずに最後は少しトーンダウンしてしまった。

 前述したように後半の押し込んでいる時間帯に追加点を奪えれば、勝利をグッと寄せられていただろう。大宮戦同様に決めるところを決めきるという課題を露呈してしまった。  

 交代に関してはしょうがないかと。ベンチには攻撃的な選手しかおらず、スタメンの11人が現状のベストでそのバランスを崩すのもなかなか難しかったと思う。終盤のゲームのクロージングは選手の層を含めて来季の課題といったところか。

 

 今シーズンも残り1試合となった。次節は降格の危機に瀕しているヴァンフォーレ甲府が相手である。今シーズンの集大成、最後の試合を勝利で飾ることを期待したい!

蓄積の差~J1第32節 ベガルタ仙台vs大宮アルディージャ~

 さて中断期間が明けました。残りは3試合です。大宮アルディージャ戦を取り上げます。f:id:khigu:20171201122729p:plain

 仙台は前節・ガンバ戦で残留が決定。またこの中断期間には渡邉監督の来季続投も発表され、残り3試合は今シーズンの集大成、そして来季へ向けた戦いとなる。残念ながらケガ人の復帰はキーパーの石川慧だけに止まった。よって前節・ガンバ戦からのスタメンは変更なし。  

 一方の大宮は残留争いの渦中にいる。この中断期間にはシーズン2度目の監督交代を敢行。今季途中まで鹿島を率いていた石井監督を招へいした。この博打が吉と出るか凶と出るか。スタメンは442の布陣、金澤が久々の先発起用となっている。またセンターバックの菊地が負傷離脱し、高山が代わりに起用されている。

 

■前半

 (1)曖昧だった大宮のサイドハーフ  

 中断明け。大宮が監督が交代したことで、仙台に対してどういう振る舞いを見せてくるかがこの試合の1つのポイントだと考えていた。おおよそやり方を変えない仙台に対して大宮がしっかり準備してきて挑んでくると面倒だなと。  仙台としては、大宮がビルドアップ隊に対して積極的にプレスを掛けに来たり、反対に大宮のサイドハーフが仙台のウイングバックマンマークのようなやり方で付いてこられると厄介だなと思っていた。

 

 しかし、蓋を開けてみれば肩透かしに合うこととなった。

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 大宮は守備時は442のブロックを組む。ただ、サイドハーフのタスクが非常に曖昧だった。前から行くためにボールサイドのサイドハーフが前に出るわけでもなく、前述したようにウイングバックへと付いていくわけでもない。かといって中央に絞って中のスペースを閉じているわけでもない。とても曖昧な大宮のサイドハーフだった。  

 大宮の守備はとりあえず442のブロックは組んでいるね、で終わってしまい、仙台のボール保持に対してどこからプレスを掛け、そして限定しどこで奪うのかというのが明確ではなかった。

 

 よって仙台はいつも通りの攻撃を繰り出していく。ハーフスペースの入口(増嶋と平岡)のポジションから攻撃をスタートし、相手の立ち位置を見ながら外レーン(蜂須賀、古林)、ハーフスペース(西村、野津田)をうまく利用しながら攻撃することができた。

 また大宮が4バックで来てくれたことで、大外が空き、例えば左サイドで人を密集させた後で、右サイドの古林へと展開するといった形を数多く作ることができた。

 2点目の流れも左サイドで奥埜、三田、石原と絡んで、大宮の守備を中央に集めた後に、できた右サイドのスペースに古林がランニングして生まれたゴールだった。

 仙台は大宮の守備にさまざまな問題を抱えていたことで、しっかりと自分たちがやりたいような攻撃を展開することができていた。仙台が何か特別良かったというよりかは大宮の守備が問題だったというのがこのような試合展開になった最大の理由だろう。

 

(2)仙台の守備はどうだったか

 大宮の守備が整備されておらず、理想的な攻撃を繰り出すことができた仙台。では反対に守備はどうだったか。

 大宮はボールを保持したときは4222のような形となる。ボールを奪ったら2トップはウイングバックの裏へと抜け出し、そこでボールを受けることで全体を押し上げることを狙っていた。

 またビルドアップ時には、江坂と横谷がボールの位置と相手の位置を見ながら、顔を出すことで仙台の守備に対抗していった。

 

 仙台は、前から行くときは523。後ろに構えるときは541の布陣。大宮に危ない場面を作られることは少なかった(大山のフリーキックぐらい)が、それでも前から行くときに少し気になる場面があった。

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 図は前半31分の場面。大宮が加藤からビルドアップをスタートさせ、仙台の前プレをうまく剥がしながら前線へと運んでいった。結果的に横谷のタッチが長くなり増嶋がクリアしたことで、何ともなかったシーンだったが、ここを振り返りたい。

 加藤から山越にボールが渡ったときに野津田は山越に対してプレスを掛ける。しかし山越、奥井、金澤で三角形を作っている大宮に対して仙台は野津田と金澤に付いていた三田しかいない。山越→金澤→奥井とボールが動いたときに蜂須賀が慌てて前から掛けに行く。しかし出遅れたために再度金澤に横パスを出され、その金澤はダイレクトでフリーの横谷に渡すことができた。

 仙台の問題は後方が人を掴まえきれていない状況で前からプレスを掛けてしまったこと。この場面だけではなく、前半では他でもそのようなシーンがあった。決して前からプレス掛けるなというわけではなく、前から行くのならばしっかり人を掴まえてプレスを掛けたい。そうでないならば、ある程度パスコースを限定させたい。仙台は簡単に剥がされてしまい、中盤エリアで前を向かれることが多く、今後の課題とも言えるだろう。特に来週のマリノス戦では、モンバエルツ監督はそのあたりも狙ってくるかもしれないので1つのポイントだ。

 

 前半は、26分にコーナーのこぼれから蜂須賀のクロスを増嶋が合わせ先制。36分には中央で崩し右の古林へと展開、古林の低いクロスが相手のオウンゴールを誘い2点のリードで前半を折り返す。

 

■後半

(1)後半開始から3点目、そして退場までのお話

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 大宮は後半から大前に代えて瀬川。前半の途中から横谷と大山の位置が変わり、横谷がボランチとなっている。  仙台は西村と野津田のポジションを変えた。状況によっては反対のこともあったが、基本的に後半は右西村、左野津田というポジションだった。

 

 後半開始10分は、無秩序な時間が続く。どちらが主導権を握ってというよりは、中盤でボールを握れたチームが攻撃へと転じる時間帯だった。  お互いに落ち着かない展開が続く中で、次の得点を決めたのは仙台だった。56分。

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 スローインの流れから右サイドで崩して、最後は三田のミドルシュートで追加点を奪った。後半開始して仙台が初めて相手陣地に押し込んで攻撃で来た場面だった。  

 この得点を振り返ってみると、確かに仙台は右サイドで密集からパスワークで崩しての素晴らしい得点だった。  しかし大宮の守備のポジショニングを見ると、中盤で密集から剥がされてしまった守備も問題があるのだが、逆サイドのサイドハーフ・大山が蜂須賀へと付いていっている。このことで真ん中のバイタルエリアにスペースが生まれ、三田がいい状態からミドルシュートを決めることができた。  

 大山が蜂須賀へ付いていったのは大宮の修正ポイントだったからではないだろうか。前半に仙台は幾度となくサイドチェンジやピッチの幅を有効活用した攻撃を繰り出していった。それを嫌がった大宮は後半に入るところでボールサイドと反対のサイドハーフウイングバックへと付いていくようにしたのだった。  

 このような場面は直後の62分にも表れている。右サイドから三田が中央で受け、左の蜂須賀へ展開し、ダイレクトでクロスを上げるも西村も三田もシュートを打ち損じた場面だ。  しかし大宮はウイングバックへのケアをしようと試みたものの、肝心の中央のエリアにスペースを明け渡してしまう状況になってしまったのだ。この辺に監督交代直後の影響が出ていたように思える。  

 ついでに大宮のサイドハーフウイングバックへと付いていくのは、仙台が大宮のバイタルエリア付近に侵入したときだった。仙台が中盤エリアもしくはビルドアップ時にはサイドハーフは前に出て対応していた。大宮が完全に引くときには5バックの状態というのを狙っていたのだと思うが、アドリブだったのか、その移動がうまくできていなかった。

 

 3点目を奪った仙台、後半は前半よりも素早い切り替えから中盤で大宮に自由を与えないようになる。大宮が仙台のプレッシャーを受けたことでロングボールを送り、それを回収するという展開が続いていった。  また前プレも徐々に機能するようになり、前半よりも圧力を強めてゲームを運べていたと思う。前プレ時にボランチが中央でスペースを与えてしまうのは諸刃の剣ではあるが、それでも奥埜と三田が運動量でカバーするシーンが増えていく。  

 奏功しているうちに大山が2枚もらって退場となり、ゲームはほぼ決まった。

 

(2)退場後のお話  

 大量リードと数的優位ということからか、ゲームも徐々に緩くなりだす。もちろん緩くなってはいけないのだけどどこかで落ち着いた感じがピッチに漂っていたのは確かだった。  

 仙台は退場後も多くのチャンスを作り出す。押し込んでの形、ショートカウンターからの形などなど、さまざまな形から得点を奪いに行くが決めきれない。  

 特に西村には多くのチャンスが訪れたが決めきれなかった。ニューヒーロー賞を取り、もっと結果が欲しいという気持ちが先走っているのか肝心なところでのコントロールミスが目立った。まだまだ若いということを感じる。ゴール前でもっと落ち着けるようになるといよいよ手が付けられない選手になりそう。

 

 仙台は古林から菅井。しかし5分後に増嶋が交代したことで茂木が入り、菅井は3バックの右へと入ることとなる。監督コメントでは菅井を称賛していた。特別なにかをしたわけではないが、攻撃に出たい気持ちを抑えてしっかり守ってくれた菅井に対する感謝と申し訳なさがコメントから感じ取られた。  

 その後は茂木がフリーキックのチャンスが巡ってくるけど決められないみたいなことがあってタイムアップ。久々の完勝。クリーンシートでの勝利は第22節・広島戦以来となった。

 

■最後に・・・

 1年を通し継続して戦ってきたチームと監督交代から日の浅いチームの蓄積の差が結果として現れたゲームとなった。渡邉監督のコメント通り決めらなければいけない場面が多々あり、そこは反省材料ではあるが。  

 仙台が何か特別良かったというわけではないと思う。大宮が仙台に対する対策が甘かった中で、自分たちのサッカーをピッチ上で謳歌した結果である。普通にここまでできるようになったことを今節は示してくれた。  

 ピッチ上で多くの選手が要求し合う姿がとても頼もしく見えた。守備ではまだまだ改善の余地があるが、それでも開幕から着実に進歩してきた。残るは2試合。次はホーム最終戦、横浜Fマリノスとの対戦となる。上位にどれだけできるか、そして残り2試合でもぜひ今シーズンの集大成を見せてほしい!

 

今戦える選手がベストを尽くすこと J1第31節 ガンバ大阪vsベガルタ仙台

 なにやらスポナビブログが終わるらしいですね。とりあえず今年はこちらで書きますが、来年以降どうなるかは考え中です。

 ということで、今回はガンバ大阪戦を取り上げます。

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 仙台は前節とスタメンの変更はなし。というよりもケガ人が多すぎて変更できない。茂木もケガで前日に大宮で大学リーグを戦ったジャーメインを緊急招集する形となった。特別指定の選手を酷使するのはすごく申し訳ない気持ちになる。

 一方のガンバもケガ人が多い。また長谷川監督の今シーズン限りの退任が発表されると一気に調子を落とし公式戦は9戦勝ちなしとなっている。ホームラスト2試合。長谷川監督の有終の美を飾るためにもなんとか勝ちたいのが本音だろう。ファン・ウィジョがケガしたために長沢が先発となっている。それ以外は前節と変更なし。

 

■前半

(1)仙台の攻撃における狙いは何だったのか?

 前半はお互いにボールを保持して攻撃する時間が多かった。その辺を書いていきたいと思う。まずは仙台から。

 

 ガンバのシステムは4312。仙台は3421である。f:id:khigu:20171109204018p:plain

 システムのかみ合わせ上、図のようにサイドは1対1となっている(もちろん図のようにはいかないが)。となるとサイドに人数を掛けてうまく攻略して攻めていきたい。仙台は相手のサイドバックインサイドハーフ(倉田と井手口)をうまく動かしながらサイド攻略を目指していく。

 

 ここでは狙い通りにいった2つのシーンを見ていく。まずは16分のプレー。

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 ここでは仙台は左サイドで四角形ができている。この場面では四角形ができたことで、ボールホルダーの増嶋にはパスコースが3つある。加えて西村が倉田をピン留めし、蜂須賀は初瀬を引っ張り出すことに成功している。となるとサイドの裏にスペースができ、3列目(ボランチ)の位置から三田が抜け出し、ボールを受けてクロスまで持っていくことができた。結果的にはクロスははじき返されてしまうが、相手を引き出し、空いたスペースに味方が走り込むという、連動したプレーが見られた。

 

 もう1つのプレーは同点ゴールの起点となった22分のプレー。f:id:khigu:20171109202101p:plain

 このゴールでは仙台のゴールキックの流れから数多くのパスがつながり決まった、まさに今シーズン目指していることが形になった得点だった。その得点の一番のポイントが蜂須賀がサイドをえぐることができた場面だった。ここを振り返ってみたい。

 大岩からボールを受けた増嶋。このときに前方には増嶋、三田、蜂須賀という三角形が形成されている。三田と野津田が入れ替わっているのは流れの中で入れ替わっているからである。

 入れ替わった三田がフリーだったので、初瀬は三田へマークを付く。しかし初瀬が三田に付いていったことで、サイドの裏にスペースができる。ここを見逃さなかった増嶋が裏へスルーパス。抜け出した蜂須賀がグランダーのクロスを上げる。石原が落とし、三田、野津田と繋いで最後は奥埜のミドルシュートで同点ゴールを決める。

 このように自分たちがいい立ち位置を取り、相手とのシステムのミスマッチを利用しながら、スペースを作って攻撃することでガンバ守備陣を崩すことができた。この2つのシーンでは狙い通りに攻撃することができたと思う。

 また前節・清水戦では、引いた相手を崩すことができなかった。特にサイドからの攻撃では、コンビネーションから崩すことができずもどかしい時間を過ごしたが、今節はその反省も踏まえ、サイド攻撃ではいい距離感で攻撃を繰り出すことができていた。増嶋が運ぶドリブルをできないぶん、周りの選手がいい距離感でフォローすることで、左サイドの攻撃は改善されたと思う。もちろんまだまだできるとは感じるが。

 

(2)ガンバの攻撃はどうだったか?

 仙台の攻撃が自分たちのポジショニングを利用した攻撃だとしたら、ガンバは以前よく言われた「人とボールが動く」という流動的な攻撃を繰り出す。

 ガンバは攻撃時はポジションが自由になる。左にいた井手口が右サイドにフォローに行ったり、アンカーの中原がサイドを飛び出すというのは往々にしてあった。

 ガンバは、パスを出したら動くという基本的な動きが基本である。例えば、アンカーの中原から倉田にボールが渡る。倉田はサイドの初瀬へパスを出す。倉田はパスを出した後に裏へとフリーランをする。倉田が抜けたスペースに遠藤が登場しボールを受ける、みたいな流動的な攻撃をガンバは行う。というかずっとこれをやっている。

 今更なぜこんなことを書くかというと、仙台とガンバは同じ攻撃的なサッカーを志向していても、その中身が違うということを言いたいからである。攻撃的なサッカーやパスサッカーと言ってもさまざまなやり方があるというのは、この試合のお互いの攻撃のアプローチから分かることである。

 

 仙台はガンバの流動的な攻撃に対して、試合開始からなかなか人を掴まえきれないことが多かった。特に開始から10分間くらいは中原がサイドの裏に抜け出しているに、マークの受け渡しがうまくいかずにフリーにさせていたりと、危ない場面が多々あった。時間の経過とともに少しずつ対応できるようになったが、それでも剥がされてシュートを打たれたり、ペナルティエリアに侵入されてしまうことがあった。

 今シーズンは攻撃のクオリティが格段に良くなったものの、まだまだ守備の改善には余地があり、541で堅い守備を形成するのには一つの課題である。

 それでも集中力が高い守備と、最後のところで粘り強く守ったことで、コーナーからの失点のみで前半を折り返せたことは上出来だったと思う。

 

 前半は19分に長沢がコーナーから先制点を決められるも、直後の22分に奥埜のゴールで追いつき1‐1で前半を折り返した。

 

■後半

(1)奪ったボールを大事にできるかどうかf:id:khigu:20171109204209p:plain

 ガンバは後半、井手口と中原の位置を変えてスタートした。おそらく、守備範囲の井手口をアンカーにすることでより中盤でボールを奪えるようにすることが狙いだったのではないか。

 後半のガンバは、前半よりも前からのプレスを強くした。仙台のビルドアップ隊とキーパーに対して2トップが追い掛け回す光景を何回も目撃することとなった。

 一方の仙台はそのプレスをなかなかかわすことができずに、ロングボールで回避することが多くなってしまった。

 プレスの強度が強くなったガンバに対して仙台もボールを奪ったら前半のようにサイドに広げて前進を図りたかったが、ガンバの切り替えの早さが際立ち、前半のようになかなかボールを落ち着かせることができなくなっていった。

 

 ガンバは後半60分に中原から泉澤に代わって、遠藤と井手口のダブルボランチにシステムを変えた。これでガンバはより前からのプレスの圧力を強めるのと、サイドからの攻撃を強化させた。後半は泉澤が入ったことで前半鳴りを潜めていた藤春が高い位置を取れるようになった。

 クロスから惜しい場面を作るガンバだったが、仙台も最後のところを体を張って守っていた。

 

 仙台もチャンスを作れてなかった訳ではない。切り替えからカウンターでチャンスを作ることができていた。三田が切り込んで右足でシュートしたシーンや、野津田のクロスに飛び込んだ菅井と石原、みたいに惜しいシーンを作ったことは確かである。

 しかし前半のように後方から組み立て攻撃することはなかなかできなかった。ケガ人も多く、交代で攻撃のリズムを変えられないことは後半の戦いに響いたように思える。

 

 お互いにチャンスを迎えるも決めきることができず。それでも集中力の高い、面白いゲームを両者は展開してくれた。結果は1‐1のドロー。広島が敗れたことで仙台の今節での残留が決定した。

 

■最後に・・・

 ケガ人が多く、限られたメンバーしかいない中だが前節・清水戦よりも攻撃が改善され、理想的な形で得点が取れて良かった。また攻撃がうまく機能しなかった後半では我慢強く守り、危ない場面も体を張って守ることができたことの意味は大きいと思っている。

 誰が抜けても同じクオリティのサッカーができれば良いが、そうはいっても抜けすぎるとどうしてもそのクオリティは落ちてしまう。しかし今の仙台は抜けてクオリティが落ちてしまっているものの、今戦える選手がしっかりと課題と向き合いながらクオリティを上げる作業を行うことで、レベルアップを図ろうという姿勢が見えている。チームの底上げではないが、まだまだチームが成長できると感じる試合でもあった。

 

 3週間という少し長い中断期間を経て、残りはいよいよ3試合となる。最後の3試合で今シーズンの集大成をぜひ見せて欲しい。まずは次節の大宮戦、いいゲームを期待したい!

清水を崩すために何が足りなかったのか J1第30節 ベガルタ仙台vs清水エスパルス

 さて、清水エスパルス戦を取り上げます。気がつけばリーグも残り5試合です。f:id:khigu:20171110153432p:plain

 仙台は前節・川崎戦で負傷した中野に代わって蜂須賀が左ウイングバック。負傷者が多数続出で野戦病院状態になっている仙台は、登録メンバー18人でギリギリ戦っている。

 アウェイ・清水は残留争いの真っ只中。早く残留争いから抜け出すためにも負けられない一戦である。今節は松原が出場停止、そしてチョンテセが負傷離脱で欠場。主力がいない厳しい状況である。右サイドバックには夏に加入した清水航平、左サイドハーフに白崎、2トップの一角に北川が前節と代わって起用された。

 

■前半

(1)失点が許されない清水の対応

 残留争いの最中である清水にとっては、まずは失点しないことが前提の試合となった。アウェイということもあり最低限勝ち点1を持ち帰られればというのがあったと思う。

 試合開始から清水は2トップを中心に仙台のビルドアップ隊に対して前からプレスに行く。しっかり前線からコースを限定させることで、ボールを奪う地点を決めて、仙台の攻撃に対応していった。

 序盤のチアゴアウベスの近距離フリーキックを獲得したシーンでは、中盤でボールを奪ってから素早い仕掛けで得たものだった。

 

 しかし時間が経過するとともに仙台もキーパーやボランチを含め数的優位でビルドアップを行うことで、清水の2トップのプレスを無効化していった。

 引くことを選択せざるを得なかくなった清水は、それはそれでしっかりと準備をしてきた。f:id:khigu:20171110153516p:plain

 特に仙台のウイングバックへの対応は前回対戦よりも準備されていた。仙台が大きなサイドチェンジで揺さぶりを掛けたときにボールサイドのサイドハーフ(図では白崎)がボールが動いている間にスライドをしてウイングバックへ対応することを徹底されていた。なるべくサイドバックを引っ張り出させずに、サイドハーフが対応することで横幅を守ろうとしていた。神戸や浦和がやっていたサイドハーフウイングバックのタスクを課すやり方とは少し違うが。

 清水はサイドのケアをしっかりとしながら、中央でも仙台にペナルティエリア内でシュートを打たせない集中力の高い守備を行っていた。

 

(2)ボール保持できる仙台だけれども・・・

 (1)でも書いたように、序盤の清水の前プレに対して、数的優位を作り出すことで無効化することに成功すると、仙台は70%近い支配率でボール保持し攻撃していく。

 ただ、高い支配率であっても前半から有効な攻撃手段を打つことができなかった。それができなかった理由は多々あると思う。ここでは特にサイドの崩しについて見ていきたいと思う。

 この試合の清水は、集中力が高い守備で最後のところを割らせなかった。もちろん集中力が高いから中央から崩すことは難しい。そうなるとサイドの駆け引きでいかに勝つかがポイントになってくると。f:id:khigu:20171110153554p:plain

 この前半、特に見られたシーンが増嶋がボールを持ったところから攻撃がスタートしていくところ。仙台のサイドの崩しの生命線は、左右のセンターバック、左右のウイングバック、そしてシャドーの三角形(またはボランチを含めた四角形)がいい距離感でプレーすることである。

 この試合では、増嶋がボールを持つ位置が低かったために、蜂須賀と西村も距離を保つために低い位置になってしまい、結果的に三角形が低い位置となってしまい、清水のブロックに侵入できない、または対応されてしまうということが多かった。

 特に増嶋から蜂須賀にボールが渡ったときは、清水航平とデゥークの2人を相手することが多くなり、蜂須賀はなかなかサイドをえぐることができなかった。これが中野であれば2人を相手にしても問題ないのだろうが、蜂須賀だと厳しい。そんなところがあった。f:id:khigu:20171110153618p:plain

 これを解決するには増嶋がデゥークを引き付けることが重要だと思う。増嶋が運ぶドリブルでデゥークを引き付け、同時に蜂須賀と西村が高い位置を取り、引き付けた増嶋が蜂須賀にパスを出すことで1対1を作り出す。このようなシーンを作っていけば、状況は良くなったのではないか。

 前半5分のように蜂須賀がえぐってチャンスを作っていたのは確かだが、もっとそういうシーンを意図的に増やしたかった。この試合では、清水が引いたことで、仙台の左右センターバックに時間とスペースがあった。なのでもっとそこを有効活用して攻撃を繰り出したかったのが本音である。

 またこの運ぶドリブルに関しては椎橋が使い手である。椎橋が起用されて増嶋が起用されない理由にはそんなところがあると。ストッパーとして増嶋は素晴らしいが、ビルドアップに関してはまだまだ克服しなければいけない課題が多いと思う。

 

 前半は、仙台が高い支配率を誇るも、清水の守備を崩せずにスコアレスで折り返す。

 

後半

(1)清水の牙城を崩せない仙台

 後半序盤も清水は前半同様に前からプレスと中盤での球際バトルで激しく戦うことで、仙台から自由を奪おうとした。しかしそれも長くは続かず、最終的には後半もほぼ仙台がボールを保持する展開へと変化していった。

 

 後半の清水は左サイドの守備を修正した。前半はデゥークが増嶋に行くのか蜂須賀に付くのかが曖昧になり、仙台に配置的優位性で左サイドを崩されたシーンがあった。後半のデゥークは増嶋にはボールを持たせ、蜂須賀にマークを付くようになる。このことで仙台の左サイドの攻撃は機能しなくなる。

 後半初めに蜂須賀が左サイドをえぐってからのクロスを西村が合わせきれずというシーンはあったが、ほとんどの時間は清水の右サイドをなかなか攻略することができなかった。

 それは前述したように増嶋のポジショニングで清水の守備を動かしていないことや、シャドーが前半よりも中央にいたためにサイドでのコンビネーションがうまくいかなかったことが理由としてあると思う。

 

 時間を追うごとに清水も守備へ集中し、勝ち点1でも持ち帰るという姿勢に全員の意思が統一され始めていく。このことで中央の守備はより強固になっていき、仙台はシュートを打てども清水守備陣にブロックされ、またなかなかペナルティエリア内へと侵入できなくなっていく。

 仙台は茂木とクリスランを投入し、攻撃の活性化を促す。茂木は右ウイングバックに入り、積極的な姿勢を見せる。無理やりにでも縦に行ってコーナーキックを得るなど、流れを変えようと奮闘する。しかしその判断は本当にチームにとって正しい判断なのかというプレーも見られた。本当にそのタイミングでクロスを入れていいのかとか、頑張りが空回りするシーンがあった。同年代の西村がプレーモデルのなかで自分を活かせている一方で茂木にはまだまだやるべきことが多いように思える。

 クリスランは相変わらずというか。どうしてもクリスランが入ると攻撃がアバウトになってしまう。それにクロスのタイミングでなんで中にいないの!?みたいなシーンがあって切なかった。まぁいつものことなんだけど。

 

 最後まで清水の守備を崩せなかった仙台だった。崩せないのは組織の問題だったり、個々の問題だったり、いろいろなことを感じる試合だった。

 

■最後に・・・

 ここ最近、仙台相手だと4バックのチームでもサイドハーフウイングバックみたいに振る舞うことで5バックになるチームの増えているように思う。おそらくこれが仙台に対抗するために効果的な手段なんだと思う。

 そういうチームにはもちろん質的優位(絶対に勝てると保証する場所)を作ることも重要なんだけど、それ以外にも相手の守備をフリーランで動かすみたいなのもやっていくべきなんだと感じる。

 例えば75分に茂木がカットインしてチャンスを作ったシーンがあった。あのシーンでは西村がボランチを引っ張りながら右サイドへとフリーランすることで茂木が中へ侵入するスペースが生まれた。

 こういうマークを動かしてスペースを作る動きをもっともっと作るべきなんだと思う。今までは自分たちのポジショニングだけで攻撃できていたけど、それに加えて相手を動かす動きを増やすことも大切になってくる。

 

 相手が対策を練っていく中で、仙台もそれを超えていかなければならないし、それがチームへの成長へとつながる。まだまだやるべきことは多いけど、残り4試合の中でも成長していく姿を見ていきたい。次節はアウェイでガンバ大阪戦。次節もいいゲームを期待したい!