ヒグのサッカー分析ブログ

ヒグのサッカー観戦日記からのお引越しです。ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

自分たちで戦況を読み取れるか~J1第29節 ベガルタ仙台vs浦和レッズ~

 さて、今回は浦和レッズ戦を取り上げます。

 

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 ベガルタ仙台は、長崎、マリノスのアウェイ2連戦で連敗。一時は順位を4位まで上げたが、8位まで落としてしまった。目標である5位以内、またその上のACLを目指すためにもこれ以上の連敗は許されない試合となった。

 ここ最近はメンバーをいじらなかったが、連敗中ということもあり、テコ入れを行った。システムも3-1-4-2となり、アンカーに椎橋、インサイドハーフにリャンが起用された。なお、ベンチにはハモン・ロペスが入っている。

 浦和レッズはここ最近3連勝で、6位浮上と調子を上げてきている。オリヴェイラ体制になり、手堅く勝てるようになった。仙台同様にこの集団に後れを取らずにACL圏内でのフィニッシュを目指したいところ。

 今節も前節・柏戦と同じメンバーを送り出した。3-1-4-2のミラーゲームで試合が始まった。

 

前半

(1)浦和が仕掛けた罠~パート1~

 前半は、攻守ともに狙いがハマった浦和がゲームの主導権を握る展開で進んでいく。では、その浦和の狙いとは何だったのかを見ていくことにしたい。まずは守備から。

 

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 浦和の守備の狙いを見ていく前の前提として、仙台が攻撃時に狙っていたことを見ていきたい。

 この試合では、お互いに3-1-4-2を選択した。浦和は、ここ最近このシステムを採用しているが、仙台は久々のシステムである。

 仙台としては浦和の5-3-2のブロックの対して、インサイドハーフであるリャンと野津田が、浦和の中盤の守備の横(サイド)をポイントにすることで、前進するスペースを確保し、そこからウイングバックや2トップと連動してゴールを目指したかった。また仙台のインサイドハーフが広がったときに、浦和のインサイドハーフが動けば、中央にスペースが生まれるので、そこを2トップが落ちて受けることも、もう1つの狙いとしてあったと推測される。

 まず仙台の中で前提としてあったのは、浦和が5-3-2の守備ブロックを組んで守るということだった。

 

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 しかし試合が始まってみると、浦和の守備陣形は予想していたものと異なっていた。試合の開始とともに現れた現象は、中盤のマンツーマンでの対応だった。

 長澤が前へスライドし、椎橋を監視。残りの青木と柏木は、リャンと野津田を見る形となった。こうすることで、サイドへ流れる仙台のインサイドハーフにも対応できるような仕組みなっていた。

 そしてもう1つ重要なのが、武藤の役割だ。武藤は、守備時は基本的に板倉を見る格好になる。板倉にボールが入ると、しっかりプレスして寄せる武藤の姿は繰り返されて行われた。

 おそらく仙台の3バックのなかで、一番ボールを持たれて面倒なのが板倉。ドリブルで運べるし、対角フィードも蹴れる。よってオリヴェイラ監督は板倉をしっかり抑えることで、仙台の攻撃の迫力を半減させたかった狙いだ。加えて武藤は、守備ブロックを組む際は、そのまま落ちていき、5-4-1を形成するようになる。

 なお、大岩と平岡はボールが入ってもほぼ放置。たまに興梠や長澤、柏木が寄せに行くが、基本的には彼らが持っても怖くないという判断で、持たせていた格好だ。

 

 仙台としては、狙いの攻撃ができず苦しい展開を余儀なくされてしまう。おそらく相手の中盤がマンツーマン気味で来ていることには気づいているのだが、どう対応をするかという点で、ピッチの選手たちが同じを絵を描けていない。そこが今の課題だと個人的に感じているだが、この試合でも例外ではなかった。

 

(2)浦和が仕掛けた罠~パート2~

 続いて浦和の攻撃を見ていきたい。

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 浦和の攻撃のポイントは「アンカー脇」。いわゆる椎橋の脇である。

 浦和のボール保持攻撃の特徴は3バックにあった。3バックの左右バック(岩波と槙野)がサイドバック並に幅を取る。なお、アンカーの青木が2トップの間に位置することで仙台の2トップをピン留めする働きを役割をしていた。

 岩波と槙野が広く幅を取ることで、仙台のインサイドハーフに長い距離を走らせる(この試合の仙台はインサイドハーフが左右バックにプレスを掛ける仕組みになっていた)。そうすることで、椎橋の脇のエリアを広げる。

 そこからウイングバック経由で、柏木や長澤へと届けたり、右ハーフスペースにいる武藤へと届けていく仕組みとなっていた。

 アンカー脇にボールが入ると攻撃のスピードは上がり、一気の畳みかける。またバイタルエリアで柏木が受けることで、高精度のスルーパスが出ることでさらに迫力のある攻撃を展開していった。

 また攻撃が詰まり、仙台の守備ブロックが構築されると、高さで質的優位を持つ橋岡に当てることで、敵陣深くまで迫っていった。

 橋岡はそれだけではなく、ゴールキックのターゲット。地上戦では関口との走り合いに勝ち、そしてプロ初ゴールを決めるなどなど。素晴らしい活躍だった。

 

 前半は、浦和が24分に宇賀神のロングスローの流れから最後は橋岡が決めて先制に成功する。しかし、仙台も40分に野津田のフリーキックから板倉が決めて同点に追いつく。同点ゴールのフリーキックは、ニアで合わせる狙っていた形での得点だった。

 仙台としては、決していい流れとは言えない前半だったが、準備していたセットプレーで追い付き折り返せたのは大きかった。ということで、1-1で後半を迎える。

 

後半

(1)相手を押し込めるポイントはどこか

 

 前半は、攻守ともに浦和の狙いにハメられて主導権を握られた内容だった。しかし先制は許すものの、セットプレーから同点に追い付き、後半を迎える。

 仙台としては、やはり浦和を押し込んで自分たちのペースへと引き込みたいところだ。ハーフタイムの監督のコメントにもあったように、「相手を見てサッカーがする」ことがカギを握った後半となった。

 

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 浦和の守備を振り返ると、前からプレッシングに行く際は、中盤がマンツーマンに人へと付いていき、それに加えて武藤が板倉を監視することで、仙台の左サイドからの攻撃を抑えていた。またブロックを組んだときは、武藤がそのまま右サイドに入り、5-4-1を形成する。

 しかし浦和は仙台の左サイドを抑える代わりに、右サイドは捨てていた。ということで仙台は、浦和が捨てていた右サイドを攻撃の起点する回数を増やす。

 前半は、ほぼ放置されていた大岩と平岡だったが、後半になると、球離れも良くなり、素早く中盤へと預けるシーンが多くなる。

 また後半は椎橋がキーパーや3バックからボールを受けて、テンポよく散らすことで、浦和に前プレをさせず押し込むことに成功していった。

 こうして仙台は、前半とは真逆の展開にすることに成功する。

 また仙台のインサイドハーフも浦和を押し込んだ状態にできたことで、飛び出す選手と椎橋をフォローする選手でうまく役割を分担できるようになった。

 

 しかし、相手を押し込む作業ができても、それをシュートに繋げられたシーンは少なかった。どこかでパスミスが起こったり、クロスが合わなかったりと、せっかくペースを握れても、どこかでミスを起こしてしまい、その段階に持っていくことができなかった。この辺りはしっかり課題として捉えなければならない。

 

(2)2トップとインサイドハーフの役割分担

 また仙台は守備の修正も施した。

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 前半は、2トップが青木に気を取られて、中央に位置するシーンが多かったが、後半は、相手の3バックに対して、インサイドハーフと協力しながら、3枚で対応できる、ボールが動いたらプレスを掛けられる距離に選手を置くことができた。

 また無理ならば撤退し、自陣で構えている。よって岩波と槙野にボールが入ってもインサイドハーフが寄せに行かなかったり、後ろを気にして、寄せ過ぎない守備を行っていた。

 この修正を行ったことで、前半よりも比較的守備に安定感が増し、何よりもアンカー脇にボールを入れられる回数が減った。

 このような守備の修正も仙台を行うことができていた。

 

(3)交代すればするほど雑になる。

 試合はというと、ピッチの各地で激しいデュエル合戦が行われ、膠着状態が続いていった。

 仙台は奥埜、ハモン・ロペス、永戸を立て続けに投入し、攻勢を強めようとした。しかし、交代で入れば入るほど、後半序盤にできていた押し込んでの攻撃が減っていった。

 特にハモンを投入した後は、攻め急いだせいか、雑なプレーや選択が目立ち、ゴール前に侵入する回数も減っていってしまった。

 効果的なカードを切ることで攻勢を強めたいのだが、この試合では交代カードを切れば切るほど、全体的に雑なプレーが目立ってしまった印象だ。

 

 そして終盤。仙台のプレーが雑になったことで、守勢に回っていた浦和も反撃を開始する。ナバウトのカットインシュートや宇賀神のミドル、コーナーの混戦を槙野が狙うもダンの好セーブにゴールを割ることはできなかった。

 

 白熱したゲームは1-1でタイムアップ。両者勝点1を分け合う形となった。

 

最後に・・・

 非常に激しい好ゲームだったが、結果的には引き分け。上位を争うライバルに勝点3を奪いたかったが、奪うことができなかった。

 前半は浦和のプランがハマった試合だったが、ハーフタイムを経て仙台が上手く修正できた試合だった。逆に言えば、仙台としては前半のうちに浦和のやり方を見抜いて修正し、ペースを自分たちのものにできれば、後半はもっと押し込めたのかもしれない。

 ここ数試合は、相手のやり方にハマってしまい、そこから巻き返す展開となっている。ハーフタイムで修正できることは非常に良いことだが、やはり試合中に、ピッチに立っている選手で修正できれば、なお素晴らしい。というか、そろそろこのチームにはそのレベルが求められているような気がする。そこのハードルを越えられるようになれば、このチームはさらにもうひと段階レベルアップできると確信している。なので、そこにチャレンジしてほしいなと。

 

 残り試合は5試合となった。ここからすべてが大事な試合。まずは代表ウィーク明けてのホーム・鳥栖戦。次節もいい試合を期待したい!

立ち位置を巡る攻防~J1第28節 横浜Fマリノスvsベガルタ仙台~

 さて、今回は横浜Fマリノス戦を取り上げます。今シーズン5度目の対戦。

 

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 前節・長崎相手に0-1で敗れたベガルタ仙台。自分たちが表現したいサッカーができていたものの、最後に決めきれずにワンチャンスに沈んだゲームとなった。上位を目指す上で連敗は許されない。そんなゲームとなった。

 今節もスタメン、ベンチともに変更はなし。ハモンは今週の練習で復帰したもののベンチ入りはしなかった。

 横浜Fマリノスは前節・磐田戦で2-1の勝利。安定して結果が出ないだけあって、今やっているサッカーを信じていけるかにマリノスの将来は掛かってきそうな気がしている。

 スタメンは前節退場となったドゥシャンに代わって畠中、ケガの伊藤翔に代わってウーゴ・ヴィエイラ。不調を訴えていた天野もスタメンに入った。

 

前半

(1)マリノスのボール保持構造と仙台の狙い

 まずはこの試合においてのマリノスのボール保持における構造と仙台の狙いについて見ていきたい。

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 マリノスのボール保持はJリーグでも屈指の異色さを誇る。その理由はサイドバックの動きだ。通常のサイドバックであれば、5レーンの一番サイドのレーンである外レーンを上下動することが一般的だが、マリノスの場合は違う。

 マリノスサイドバックがアンカーの脇に登場し、ボランチないしはインサイドハーフのような振る舞いを行う。戦術クラスタ界隈で偽サイドバックとかアラバロールとか言われている形だ。

 サイドバックが中に絞ることで、ビルドアップ時に多くの人数を掛けることができ、安定したボールを保持を行えるようになる。また、ボールを奪われたとき(ネガティブトランジション時)にも、真ん中にいることで相手のカウンターへの対策になることがメリットである。

 もちろんデメリットもある。それは、可変式であるために攻撃と守備が切り替わったときに移動する時間があるということだ。サイドバックボランチに登場するということは、奪われた瞬間はサイドにスペースが生まれやすくなっているということになる。

 

 仙台としては、このマリノスのデメリットをうまく突きたい狙いだった。ボールを奪ったら、中央からサイドへと素早く展開することで、カウンターないしは敵陣への侵入ポイントとして利用したかった。

 実際に12分のアベタク→野津田→石原ヘディングシュートのカウンターはサイド起点としたものだった。

 

(2)立ち位置変更で狙い阻止と押し込むことに成功するマリノス

 

  仙台はボールを保持されていても相手の守備のデメリットをうまく利用することでカウンターへと持っていくことができた。

 しかしマリノスが修正する。18分あたりからだった。

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 今までは2-3のビルドアップ隊だったが、18分過ぎたあたりから3-2へと変更している。左サイドバックである山中だけがアラバロールし、松原は3バックの一角となる。状況に応じては、山中ではなく松原というケースもあったが、基本的には山中の片上げであった。

 このことで仙台のカウンター時に3枚で対応できるためにサイドに対しても行きやすくなった。これで仙台のカウンターを防ぎ、マリノスが押し込めるようになった。結果的に21分に波状攻撃から山中のゴールで先制に成功する。

 

 また、この変更の副産物として天野がフリーになりやすくなった。

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 仙台としては、さっきまではマリノスのアンカー+サイドバックの3に対して前線の3枚を当てれば守備の基準点がハッキリするが、3-2になったことで守備の基準点がずれてしまい、山中や扇原のところにダブルボランチが見る形となり、マリノスインサイドハーフが浮くような形ができてしまう。

 そして特に天野はその浮くことができるポジションに位置し、ボールを受けることでチャンスを作り出していた。

 また、平岡が試合の途中から天野とのマッチアップが増えたこともこれが原因である。

 このようにして、マリノスは立ち位置を変えたことで仙台のカウンターを阻止し、加えてその副産物として攻撃もうまくいくようになった。

 

(3)大きな展開でチャンスを作りだそうとする仙台

 ゲームは21分に先制を許すものの、直後に仙台がオウンゴールで追いつく。しかし、37分に仲川に中央突破を許して勝ち越し点を決められる。

 

 マリノスが立ち位置を変えたことで、狙いを消された仙台だった。しかし、マリノスのデメリットがすべて消えたわけではない。そう、山中はまだアラバロールをしているのだ。

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 ということで、仙台は大きな展開でチャンスを作りだそうと試みる。お馴染の対角フィードである。前半は、板倉と野津田が対角フィードからの展開を試みている。この辺も相手の立ち位置を見てということだったのだと思う。

 マリノスの素早い切り替えで即時奪回を食らっていた仙台が、対角フィードを行うことでチャンスを作りだそうというアイデアは良かった。実際に野津田のフィードからのチャンスは、右から左に展開し、最後は奥埜のミドルシュートへと繋がっている。これが後半に向けてのヒントとなればというところで前半は終了する。1-2で後半へ。 

 

後半

(1)前から行く姿勢を見せる仙台

 前半を振り返ると、マリノスのボール保持の立ち位置に対して、仙台は横幅を広く使った攻撃を行うことでペースを握ろうと試みた。

 しかしマリノスもボール保持の形を変化させることで、仙台の狙いを潰し、反対に自分たちが押し込む展開を作り出すことで、リードを奪えた内容だった。

 仙台としては相手の立ち位置が変わってきたことを踏まえて、どういう振る舞いで同点そして逆転へと持っていくかがポイントとなる後半戦だった。

 

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 仙台が後半から見せた姿勢は、積極的な前からのプレッシングだった。上図のように守備の基準点をハッキリすることで、マリノスのボール保持を限定させ、またロングボールを蹴らせて、セカンドボールを回収することで、自分たちがボールを保持する展開へと変えていきたい狙いだった。

 なので、前半は浮いていた天野に対しても平岡がハッキリと前に出ていくシーンが見られたり、前線3枚がマリノスの3枚に対して、プレッシングを仕掛けるシーンが後半の開始から見ることができた。

 

 しかし、仙台の野望を早々にマリノスが打ち砕くことになる。

 

(2)再び立ち位置を変えるマリノス。そしてめくるめく山中亮輔

 マリノスは仙台の前プレにすぐさま対応する。

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 マリノスは前半の途中から3-2のビルドアップ隊を形成していたが、次は4-1の形。キーパーも含めると1-4-1の形とも言えよう。山中がアラバロールをしないことで、仙台の前線3枚のプレッシング隊に対して、センターバックサイドバックの4枚を軸に、飯倉と扇原も加わって、6枚でボールを前進させる格好となった。

 そして仙台の守備の基準点をずらすことで、前プレを抑制。結果的に51分に波状攻撃から最後は山中のクロスに仲川が合わせて追加点を奪う。

 仙台としては、しっかり狙いを持って後半に挑んだが、素早いマリノスの対応にしてやられた形となってしまった。

 

 そしてマリノスのビルドアップについてもう1つ言及しなければならないことがある。それはひし形の形成と、山中の臨機応変なポジショニングである。

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 マリノスはビルドアップの形を変えたことで、飯倉が関わることが増える。もちろん仙台のプレスの位置が高くなったこともあるが。

 マリノスで興味深かったのは、ひし形の形成であった。飯倉とセンターバック、扇原でひし形を形成することで、石原を包囲し、簡単に仙台の一列目を突破することに成功している。

 そして山中は前半まではボランチの位置からビルドアップに関わることが多かったが、後半は立ち位置が変わったことで、外からスタートしている。

 外からスタートすることで、外でボールを受けるとき、外から中へ入ることでパスコースを確保するときなど、仙台の立ち位置を見ながら、ポジショニングを調節していたのがとても印象的だった。普通であれば中央のボランチなどがポジションの調節を行うのだが、マリノスサイドバックの山中が行うということに面白みを感じた。

 

(3)雑な攻撃

 ゲームは3‐1でマリノスのリードとなったが、まだ返すのには十分な時間があった。しかも、ハイペースでここまで試合を進めてきたマリノスは、少しずつ疲れが出始めて、中盤が空き始めていた。

 仙台としてはマリノスの前プレが強くとも、前半25分のようにビルドアップに人数を掛けることで前プレを掻い潜り、後方に空いている広大なスペースへと選手にボールを届けていきたかった。

 しかし焦りなのか、想像以上のマリノスの圧力なのか、なかなか思ったようにボールを運べなかった。加えて丁寧に攻めずに大きな展開や、裏へ一発といった可能性の低い選択を行うことで、自分たちの攻撃を自分たちでダメにしてしまった。

 マリノスの守備陣を脅かすような攻撃がほとんどできずにいたのは自分たちの責任であり、そこはとても切ないところでもあった。

 

 そして焦れて前掛かりになり、カウンターを受ける展開に。77分にダンのキックを猛チャージをしたウーゴ・ヴィエイラに当ててしまい、そのままウーゴ・ヴィエイラがゴールを決めて4‐1。ここでゲームが決まってしまった。

 その後、お互いに1点ずつを決めて、最終スコアは5-2でマリノスの勝利。またしても仙台はマリノスに大敗を喫してしまった。

 

 

最後に・・・

 仙台の狙いに対して、マリノスが立ち位置を柔軟に変更することでペースを握り続けた試合だった。おそらく、そういうトレーニングをしこたまやっているのがマリノスであり、その成果をまざまざと見せられた結果となった。

 本文には書かなかったが、マリノスと対戦するといかに自分たちの守備が整理されていないのかを知らされる。そういった意味ではマリノスはとても色んなことを教えてくれるチームなのだなと感じる。

 

 仙台としては守備もさることながら、攻撃でも課題が残った試合となった。

 本来ピッチを広く使い、丁寧に相手を押し込んでいくことが仙台が目指すスタイルならば、今節はそれを自分たちから放棄してしまった。もっともっと丁寧に丹念に攻撃しなければならないし、焦れないことが重要だ。相手との我慢勝負に勝たなければならない。

 

 重要な試合で連敗をしてしまった。この事実は変えられない。まずはしっかり自分たちが目指すべきサッカーをもう一回思い出して、次節に臨んでほしい。

 次節は浦和レッズとの対戦。仙台らしいサッカーを目一杯ユアスタの地で見せてくれることを期待したい!

この集団に付いていくために~J1第27節 V・ファーレン長崎vsベガルタ仙台~

 さて、今回はV・ファーレン長崎戦を取り上げます。

 

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 V・ファーレン長崎は前節・名古屋戦で鈴木武蔵ハットトリックもあって、久々の勝利を挙げた。最下位ではあるもののまだまだ残留のチャンスがある。この試合に勝利することで、残留圏との勝ち点差をさらに縮めたいところだ。

 今節は徳永悠平が出場停止。代わりにヨルディ・バイスが起用された。それ以外は変更なし。

 ベガルタ仙台も前節・FC東京戦に勝利し、4位に浮上。ACL圏内も見えてきた状況だ。長崎のようなハードワークするチームとはサッカーのスタイル上どうしても相性が良くないが、そのような相手に勝利することでさらに自信を深め、勝ち点も積み重ねていきたいところだ。

 今節も前節と同じメンバーが名を連ねた。なお、帰ってきたハモン・ロペスがケガで欠場。代わりにジャーメインがベンチ入りとなった。

 

前半

(1)守備の基準点をずらす

 守備の基準点という言葉がある。守備の基準点とは簡単にいえば、その試合で自分が見るべき相手選手のことで、その選手にボールが入れば自分がプレッシングに行くという1つの基準である。もちろんチームや戦術に応じて変化をしていくことなので、一概には言えないが、大まかにいえばそのような意味の言葉である。

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 この試合は両者ともにシステムが3-4-2-1である。図でも表したようにマッチアップがハッキリし、前述した守備の基準点が明確な形となっている。

 ボール保持が持ち味の仙台と激しいプレッシングとハードワークが持ち味の長崎。よってこの状況だと、守備の基準点がハッキリしている長崎は激しくプレッシングに行きやすい形となる。

 仙台としてはボールを保持したいので、長崎のプレッシングを避けたい。このような前提条件が試合開始時にあった。

 

 ということで、ボールを保持したい仙台が試合開始からさっそく変化を見せていく。

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 この試合では、ダブルボランチである奥埜と富田の一方がディフェンスラインに入って4枚+ボランチという形でビルドアップすることが基本だった。ミラーゲームとなっていた状態から自分たちが立ち位置を変化させることで、相手の守備の基準点をずらす狙いだ。

 守備の基準点をずらすことで、長崎の激しいプレッシングに規制を掛けることができた仙台は、ボール保持からの攻撃を目指していく。

 前線を眺めていくと、左ウイングバックの関口は板倉がサイドバック化することでサイドに張る役割から解放され、中に侵入する回数が多かった。

 またシャドーは野津田が奥埜と近い距離感に位置し配給役を担えば、相方の阿部は石原と近い位置でプレーすることで2トップのような形となり、足元や裏へ抜ける動きを繰り返し行っていた。

 このような立ち位置をしっかりトレーニングで準備することで、長崎の土俵でサッカーをすることなく、ゲームを進めることができた。

 

 しかし、ボールを保持するためのセッティングは上手くいっても、その先がなかなか崩せなかった。

 では、なぜ長崎のブロックを崩せなかったのか。そのあたりを長崎の視点から見ていくこととしたい。

 

(2)高いラインと5-2-3のブロック

 前述の通り、本来ミラーゲームであった試合は、仙台がボール保持の立ち位置を変更することで、ミラーゲームではない展開となった。

 長崎としては、前からのプレスを行うことで、仙台のビルドアップを阻害し、自らのペースに持っていきたかったはずだ。試合開始から数分の間はキーパーまでプレッシングをする意思を見せていたことからも、そのことが窺えた。

 それをうまく回避された長崎であったが、守備ブロックを敷く方向へシフトチェンジをすることで仙台の攻撃に対応していく。

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 長崎のブロックは5-2-3だった。仙台が4枚に変化したことで、同数プレッシングを行うことはできなくなったが、そのぶん仙台のビルドアップに対してスライドすることで、コースを限定する守備へと前線は切り替えた。

 また長崎のディフェンスラインは高いラインを維持していた。高いラインを維持し3ラインをコンパクトにすることで、縦パスが入った際に迎撃しやすくし、また中盤を窒息させる狙いがあった。

 もちろん裏を取られる場面もあったが、しっかり付いていくことで攻撃のスピードを緩めさせることに成功している。(この辺りは石原や阿部だったということも影響しているが・・・)

 とにもかくにも、前プレを掛けられない分はしっかりコンパクトな守備陣形を整えて守り、前線3人のカウンターを発動させることが長さきの狙いとなっていった。

 

 仙台は、このコンパクトな長崎のブロックに対して、なかなか前を向いて仕掛けられるスペースを見つけられない前半だった。いわゆるビルドアップの出口を見つけられず苦しむ展開となった。

 試合はスコアレスで後半を迎える。

 

後半

(1)攻撃の糸口を見出す

 前半を整理すると、長崎のプレスに対して4バックに変化することで、守備の基準点をずらす。このことでボール保持を安定させることに成功したが、次は長崎のコンパクトな守備ブロックになかなか攻め入ることができない。

 ということで、どこをビルドアップの出口として攻撃しようかがテーマの仙台となった。

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 5-2-3の守備ブロックを見てみると、どこにスペースが生まれそうかと考えてみる。そうすると、相手のシャドーの裏、つまりダブルボランチの脇が空きそうなことに気付く。また長崎の守備の特徴上、前線3人に入ると、迎撃で出てくる左右バックがいる。ということはその裏にもスペースが生まれてくるのではないかと。

 よって仙台のシャドー(阿部と野津田)や時々石原が登場することで、そこから攻撃の糸口を見つけ出していった仙台だ。

 一番の好例が63分のシーンだった。この試合一番の決定機。

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 平岡から蜂須賀へとボールが渡る。それと同時にボランチ脇へ降りてくる石原。そしてそれに呼応して飛び出そうとする奥埜。

 このときに石原に対して髙杉が付いていこうとしているのが分かる。

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 髙杉が石原に付いていったことで、その背後はフリーに。そして待ってましたと奥埜が走っている。そこへスルーパスを入れる蜂須賀。

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 奥埜が飛び出したことで中央のバイスも引き出すことに成功した。奥埜はダイレクトでクロスを上げる。待っているのは中野(途中出場)と阿部。後方からも野津田が走り込んでいる。

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 中野は阿部に落とす。阿部はフリーでシュートへ。あとは決めるだけ。

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 しかし阿部のシュートはゴール遥か上を超えていった。中野の落としがバウンドしたことも影響していただろう。

 ただ、形としては最高だった。決めたかった場面だ。

 

 このように後半に入ると、攻撃の糸口が明確になったことで、ゴール前まで侵入できた。あとは何度も決定機を作りだし、決めるだけだった。しかしなかなか決められない。

 そうするうちに、長崎も動き出す・・・。

 

(2)ファンマの登場、そして先制点

 72分にファンマが中村慶太と代わって投入される。ここから長崎のギアが一段上がっていった。ファンマが入ることで、ロングボールが収まり、後半からシャドーに入った鈴木武蔵も活きるようになる。

 それまで仙台の攻撃を対応するのに精一杯だったが、収まりどころができたことで、攻撃もできるようになっていった長崎だった。

 そして先制点が生まれる。79分。右サイドハーフウェイラインからのバイスのキック。ファンマを目掛けてキックする。ペナルティエリアぎりぎりのところに落ちていったボールに対してダンが飛び出す。しかし間に合わずファンマは胸で澤田に落とす。澤田は落ち着いてボレーシュート無人のゴールに決めて我慢強く守っていた長崎が先制に成功する。

 高木監督の采配が的中した形となった。

 

(3)ラスト10分の攻防

 失点を喫した仙台は立て続けにリャンとハーフナーを投入する。そしてクロス爆撃開始。長崎も5-4-1に守備ブロックを変更して仙台のクロス爆撃に備える。

 アディショナルタイムが迫ると板倉も上がり、パワープレーに出る。しかし長崎の粘り強い守備やクロスの精度に悩み、最後まで長崎のゴールを割ることができなかった。

 

 そしてタイムアップ。長崎が粘り強く守ってゲームを制した。

 

最後に・・・

 非常に安い失点での敗戦となってしまった。ダンにとってはあまりにも高い授業料となってしまったが、これを糧にさらに一段とレベルアップして欲しいと願うばかりだ。

 試合としては決して悲観する内容ではなかったように思う。対長崎に備えてボール保持の立ち位置を準備し、また後半にはビルドアップの出口を明確にすることで攻め入ることができた。時間の経過ごとに改善され、あとは焦れずに攻め続けることでゴールに結び付けたかった。

 一方、このゲームは長崎の勝ちパターンへとハマっていったとも言える。粘り強く守り、仕掛けどころでファンマを投入し、攻撃へ転じる。確かFC東京戦も同ような勝ち方だったと記憶している。見方を変えれば、実は長崎のゲームへと徐々になっていったのではないだろうか。

 

 ひとまず敗れてしまったものは仕方がない。切り替えるしかないのだ。この集団にしっかり付いていくためにも連敗だけは許されない。

 となると次節はとても重要なゲームになる。対戦相手は横浜Fマリノス。あの日のリベンジを果たし、この集団に食らいついていきたい!