ヒグのサッカー分析ブログ

ヒグのサッカー観戦日記からのお引越しです。ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

鹿島相手に内容を伴った勝利~J1第15節 鹿島アントラーズvsベガルタ仙台~

 さて、今回は鹿島アントラーズ戦を取り上げます。15連戦最後の試合。

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 ベガルタ仙台は、前節・広島に1-3の敗戦。首位に格の差を見せつけられた試合となった。今節は前節出場できなかった野津田が復活。加えて板倉とケガ明けの阿部がスタメンとなった。

 鹿島アントラーズは、前節はACLの関係で試合なし。ミッドウィークのACLではベスト8進出を決めている。そのACL・上海上港戦から伊東、小笠原、中村が代わってスタメンとなっている。

 

■前半

(1)決定機、生かすか殺すか、それが問題だ

 試合はコイントスで勝った仙台がエンド変えてキックオフする。試合前の渡邉監督の言葉にあったように、前半から飛ばしていく意思を見せる。

 

 その言葉通り、2分でゲームを動かすことに成功する仙台だった。

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 セカンドボールを拾った晋伍が左の関口へ展開する。ここで関口は伊東との1対1を迎える。

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 ハーフスペースへフリーランする野津田。この動きで永木が引っ張り、バイタルエリアを空ける。そこを見逃さなかった関口は中へカットインする。

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 中では植田と昌子の間を走った石原、ファーに奥埜が待っている。関口は石原へピンポイントのクロスを上げる。

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 石原はコースをずらすだけのヘディングシュート。まさに職人芸の動きとシュートで仙台は先制点を奪う。

 この得点はすべての動きが連動した得点だった。野津田のフリーランで空いたスペースを活かした関口は特に見事だった。

 

 素晴らしい得点を挙げた直後、4分に鹿島も決定機を迎える。仙台の中央の守備バランスが崩れたところを永木と金崎の関係から、最後は永木がシュートを放つ。惜しくもシュートは右に外れた。

 前半早々の決定機を生かした仙台と殺した鹿島。もし、ここで鹿島も決めていたら試合の流れは変わっていたかもしれない。そんな、試合のポイントとなった早々の時間帯だった。

 

(2)どこをポイントに攻撃するか?

 15分あたりになるとゲームは次第に落ち着いていった。この辺からお互いがボール保持からの攻撃を目指すようになっていく。

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 仙台のボール保持攻撃のポイントは相手のサイドハーフ裏にあった。

 鹿島の守備は2トップが晋伍のケアをする。ゆえに2トップが縦関係になることもあった。そして両サイドハーフが仙台の左右バックにプレスを掛けていく。

 よってその後ろをポイントにしたい仙台は、左サイドでは野津田が登場し、右では蜂須賀が落ちてくる形を取っていた。

 鹿島は人に対する意識が強いので、野津田が左に流れると小笠原も付いてくる。そして小笠原が空けたスペースを2トップが利用するといった形を仙台は作り出していく。もちろん小笠原が来なければ野津田は前を向ける。

 反対に右では奥埜が裏へ飛び出し、永木を引っ張る。そしてそのスペースを2トップが利用するというような形があった。15分や23分のビルドアップはこの形ができたシーンだった。

 仙台は、鹿島の選手がどう動けばどこにスペースが生まれるのかをしっかり理解していた。なので鹿島のプレッシングが中途半端に見えてしまったのだと思う。

 

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 反対に鹿島はどうか。鹿島は伝統的に4-2-2-2のブラジル式で攻撃をするのだが、肝心のビルドアップの入口を作っていなかった。

 仙台の守備構造上、2トップ脇をポイントにするのが定石だが、そこを誰が利用するのかが決まっていなかった。小笠原が落ちてきたり、伊東が落ちてきたりと色々と人の出入りが多かった。小笠原が落ちてきたのに、センターバックのポジションが変わっていなかったときは切なかった。再現性のなさから恐らく何も決めていなかったのだろう。

 よって鹿島のチャンスはトランジションから生まれることが多かった。気合の金崎夢生大作戦。前半早々の決定機以降、なかなか決定機を生み出せなかった。

 

(3)「球際」の捉え方

 この試合、特に前半では各地で球際の争い、デュエルが数多く見られた。その中でしっかりボールを奪えたのは仙台だった。

 なぜ仙台が勝てたかというと「球際」の捉え方の違いによるものだと思う。渡邉監督は試合後のコメントでチーム戦術があるうえでの球際だと話していた。チーム戦術がしっかりしているからこそ、球際にチャレンジできるということだった。

 このゲームを見ていると局面局面で、仙台の方が人数を掛けていることが分かる。鹿島の選手が1人なら仙台は2人や3人で、鹿島が2人ならそれ以上の数で球際バトルをしている。その差が自分たちのボールへとできた最大の理由だと思う。これこそチーム戦術がしっかり理解されているからこそのプレーではないかと思う。

 一方の鹿島も球際では激しく行っていた。しかしその球際に関わっている人数が少ない。特に金崎が1人で頑張っているシーンが多数みられた。そこにあるのは各々が球際で激しく行くことを意識していたものではないか。

 鹿島が個々での球際の強さを言っているのならば、仙台はグループとしての球際の強さを言っているのだと思う。そんなところを前半は感じる取ることができた。

 

 前半は仙台が電光石火の先制点を奪い、1点リードで折り返す。

 

■後半

(1)3バックにした鹿島の狙いは?

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 鹿島は後半に向けて小笠原と中村に代えて犬飼と鈴木優磨を投入し、3-4-2-1のシステムに変更する。まさか3バック。

 

 鹿島の狙いとしては仙台とシステムを合わせることで、対面の選手をハッキリし、より強く球際で勝負しようとしていた。実際に鈴木が入ることでプレスの強度は上がったし、仙台にロングボールを蹴らせることができていた。

 一方の攻撃はどうか。

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 この図は57分の鹿島のビルドアップを表したものである。どこか既視感のある図であることは内緒だ。

 鹿島は犬飼と永木がサイドバック化し、2トップ脇を起点とする動きを見せた。しかし永木に関しては、中盤のバランスを取るために、さほどサイドバック化はしていなかったのが事実。

 おそらく仙台を押し込むためにこの可変式を採用したのだと思う。ただ、鹿島はビルドアップの先でどこをポイント(狙い目)として攻めるかがハッキリされておらず、最終的に質的優位である金崎と鈴木にボールを入れることが多かった。気合いの金崎夢生大作戦feat.鈴木優磨。

 仙台も押し込まれはしたが、最後のところは大岩を中心に跳ね返すことができていた。

 

(2)成熟度の違い

 今シーズンの仙台は3バックとの対戦が割と多かったと思う。ゆえにこの鹿島の変更も冷静に対応できていた。

 鹿島は攻撃と守備で可変する。ということは攻守が切り替わったときにシステムが変わる時間がある。そんなわずかな時間を見逃さず、その隙を突いて仙台はカウンターを発動させていった。

 加えて鹿島の立ち位置は非常に悪く、去年の仙台を見ているようだった。仙台は中盤で野津田と奥埜が鹿島のプレスを剥がすことでカウンターを発動していった。

 西村が投入されると、鹿島の右サイド(仙台の左サイド)を起点にカウンターを仕掛ける。そして65分にカウンターから得たコーナーキックで板倉が決めてリードを2点に広げる。まさに理想的な展開でゲームを進められた。

 

(3)ラスト10分の攻防

 ゲームは攻める鹿島、守りながらカウンターを狙う仙台という構図へと変わっていく。時間の経過とともに質で上回る鹿島が次第に仙台を自陣に押し込む時間が長くなっていった。

 仙台としては鹿島からボールを奪い、カウンターへと繋げていきたいが、連戦の疲労と鹿島の圧力もあり、なかなか前へとボールを運ぶことができなかった。

 そして85分に遠藤のアーリークロスを鈴木→安部→鈴木で決めて1点差に詰め寄る。

 その後もパワープレー気味に押し込んでくる鹿島に仙台が跳ね返す展開が続く。本当はこうなったときのために1枚カードを残しておきたかったが、蜂須賀の緊急交代もあり3枚切ってしまっていた。

 それでも集中した守備で鹿島の攻撃を跳ね返した。アディショナルタイムの5分もやり切ってタイムアップ。中断期間前最後のゲームを勝ち切ることに成功した。

 

■最後に・・・

 最後の10分を除けば、満点のゲームだった。鹿島を相手に内容を伴った結果を得られたことは非常に嬉しい。

 アベタクが帰ってきたことで、前線で収まる選手が2人いること、個人の力でゴリゴリと突破できるバリエーションが増えた。加えて相手が疲れたところで推進力のある西村を起用できることも大きい。1人帰ってきたことで多くの選択肢が生まれた。

 

 これにて長かった15連戦も終了した。15連戦ということもあり、多くの選手試せたということはポジティブな要素か。ただし、これだけ試合が詰まってお互いがベストコンディションで挑めないのは興行としてどうなの?とは思う。まぁ終わったあとだから言えるけど。

 ひとまずリーグは中断だが、来週はルヴァンのプレーオフ天皇杯が待っている。6月の3連戦もいい試合を期待したい!

昔の自分たちとの対峙~J1第14節 ベガルタ仙台vsサンフレッチェ広島~

 さて、今回はサンフレッチェ広島戦を取り上げます。

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 ベガルタ仙台は、前節・湘南戦で6試合ぶりの勝利。中断期間までこの勢いを持続させたいところだ。今節は野津田が契約上の関係で出場できない。ということで晋伍がスタメンに帰ってきた。それ以外は変更なし。

 サンフレッチェ広島は前節、神戸に2-0で勝利した。下馬評を覆す以上の成績を残している広島は、このままリーグを独走してしまうのだろうか。この試合も前節同様のメンバーで挑む。

 

■前半

(1)どこに前進できるスペースがあるのか

 まず広島の守備の特徴から見ていくと、前からの激しいプレスと4-4-2のコンパクトな守備ブロック形成を特徴としている。ざっくり言えば手倉森仙台2012ver.と似ている部分が多い。そんな昔の自分たちとの対戦となった仙台である。

 

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 広島の守備と自分たちの立ち位置を考えたときに、まずどこのスペースが空くかを考える。そうすると4-4-2の横スライドのときに逆サイドが空くよねということに気付く。

 開始から20分過ぎまでの仙台はそんなサイドのスペースを利用して攻撃を仕掛けていった。特に広島は右サイドでの守備のときに柏が絞ってくる。状況に応じて晋伍のところまでプレスを行うので、そこを掻い潜れば蜂須賀のスペースには広大なエリアがある。

 仙台はボールを奪った後に素早く右サイドへと展開することが多かった。そしてその流れから奥埜の得点を生むことができた。まさに狙い通りの得点だった。

 

 その後、柏は蜂須賀のケアをするために必要以上に中に絞らなくなる。ただ、次に問題が生じるのが中盤の3センター。単純に仙台が3枚、広島がダブルボランチの2枚なので、数的優位を活かし、今度は真ん中からゲームを作り出していく。

 そんなこんなで20分過ぎまで仙台がボールもゲームも握る展開となった。

 

(2)前線と最終ラインを同機させる

 失点後もなかなか広島は仙台のボール保持に対応できない。ということで、この試合に次なるテーマは広島がどういう選択をするのかである。改めて前からプレスを掛けに行くのか、それとも一旦引いて仙台の攻撃を受け止めるのか。

 広島が決断したのは前者だった。城福監督の言葉を借りれば「前線と最終ラインを同機させる」。ここまでの広島のプレスは前と後ろとでズレが生じてしまい、仙台にそれを利用された展開となった。

 よって前と後ろのズレをなくし、仙台のボールホルダーに対してしっかりプレスを掛けることを徹底していく。

 具体的にいえば、晋伍のところでダブルボランチのどちらかが素早く寄せていく。前節の湘南であれば石川の役割をどちらかがこなす形を取る。それまではどうしても3人全員に意識が向いていたが、それを「ボールホルダー」にポイントを絞ることで守備をハッキリさせた。

 そして全体のプレスの強度を上げ、仙台にロングボールを蹴らせることを選択させる。そのセカンドボールを回収することで次第に広島はペースを取り戻すことに成功していった。

 そして困ったときのセットプレー。41分に中央からのフリーキックをパトリックが合わせて同点にする。

 

 仙台としては、広島のダブルボランチが前に出た背後を上手く取りたかった。これは渡邉監督も試合後のコメントで話している。現象としては湘南戦の後半と同じだった。あのプレスを剥がすことで、攻撃へと転じたいのが渡邉監督の理想なのだろう。

 それには各選手が頭も体も素早く切り替えることが必要。この辺は中断期間で取り組んでいくことになりそうな部分である。

 

 前半は序盤から中盤にかけて試合を支配できていた仙台だが、徐々に広島が盛り返してきたところで失点を喫してしまった。1-1で折り返す。

 

■後半

(1)前への意識

 後半、お互いにどこを修正してくるのかを注目したが、両者ともに大きな修正点はなかった。

 仙台としては前半途中から広島にペースを握られてしまう形となった。よって後半は前半良かった時間帯を思い出し、積極的に前へ仕掛けていく意識は持っていたと思う。

 前半よりもサイドを早めに使っての攻撃が多かった。蜂須賀が佐々木を破ってのクロスから奥埜のシーンが決まっていれば、流れは変わっていたはずだ。

 広島も前から仕掛けることには変わらない。2トップがキーパーまで追うことで、仙台に対して自由にボール保持をさせない狙いを持っていた。

 

(2)ティーラシンの投入

 広島は62分に渡に代わってティーラシンを投入する。ティーラシンのタスクは渡同様に前からのプレスをして、仙台のボール保持を制限させることだった。要は強度を落とさないための交代。

 タスクは変わらずとも、この交代は地味に効いて、強度が落ちない広島のプレッシングに対し、仙台は剥がすことができなくなり、次第に仙台陣内でのプレーが長くなった。

 そして広島が逆転する。71分。右サイドでの攻防から広島にボールが渡ると青山がダイレクトで柏へ。柏はそのままカットインし逆サイドのネットへ突き刺し、逆転に成功する。この得点は関のロングキックから始まっているが、これにプレスを掛けたのがティーラシンだった。

 

(3)6バックも辞さない広島の守備

 逆転に成功した広島は、前からプレスに行くのではなく、ラインを下げてブロックを構える形へと変化していく。攻撃でパトリック大作戦があるからこそ、なせる業だろう。

 吉野や川辺を投入し、守備の強度を保ちながらゲームをコントロールしていった。

 広島は仙台の攻撃に対して6バックも辞さない構えになる。ペナルティエリアの幅を4バックで守り、ウイングバックに対してサイドハーフがケアする形。これはガンバもやっていた形だが、あれは狙ってやっていたものではないだろう。

 

 仙台としては6バックになった相手に対して、スペースが生まれるバイタルエリアで仕掛けたかった。しかしいつもの悪い癖でサイドからのクロスに終始してしまう。ここは本当に課題。

 サイドへ展開すること自体は悪くないが、やはりそこからバリエーションを持って攻撃したい。サイドからハーフスペースとか、バイタルエリアにボールを入れるとかは何かしらの工夫がないと崩しきれないだろう。

 この試合ではロビングパスで、ハーフスペースにボールを届ける場面がいくつかあったが、ああいうことをもっと増やしていきたいところだ。

 

 試合は攻めあぐねる仙台をよそに、高い位置で奪った広島がショートカウンターからのパトリックで3点目を決める。人間ブルドーザーとはまさにこのこと。

 試合は1-3で広島の勝利。まさに力負けだった。

 

■最後に・・・

 昔の自分たちと対峙しているような試合だった。広島は本当に細かいところにこだわっている。寄せの早さとか距離とか、シュートに対してブロックしに行くとか、プレスの強度を落とさないとか、そういう勝負所を極めているチームなのだろうなと。だからこその首位なのではと感じた試合だった。

 

 仙台は、試合開始からはおおむね自分たちのやりたいことを表現できた試合だったと思う。しかし相手が修正してきたところ、相手の土俵になったときにどれだけ対応できるのか、その土俵で我慢強く戦えるかは、まだまだ足りない部分である。昨年よりはできているがそれでも足りないことを痛感した。非常に多くのことを感じることができた試合だろう。

 

 さて、15連戦も残すは2試合となった。次節は鹿島アントラーズ戦。連戦最後の試合に勝利し、気分よく中断期間を迎えたい!

戦いの幅~J1第13節 湘南ベルマーレvsベガルタ仙台~

 さて、今回は湘南ベルマーレ戦を取り上げます。

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 ベガルタ仙台は前節・ガンバ大阪戦で0-1の敗戦。最後のところで決めきれない問題にぶち当たっている。今節は、関、椎橋、中野、関口が前節と代わってスタメンになっている。関口は復帰後初スタメンに。

 湘南ベルマーレは前節・柏戦で1-2の敗戦。それまではガンバ、浦和に連勝している。今節はアンドレバイア、大野、秋野、ステバノビッチが前節と代わってスタメンになっている。

 

■前半

 この試合はメインスタンドから見て、右から左へと強い風が90分間吹く中で行われた。

(1)仙台の攻撃、湘南の守備

 前半は仙台がゲームを握る展開となる。それは仙台の攻守が良かったのもあるし、湘南が攻守で上手くいってないことも要因としてある。そんなところを見ていきたい。

 まずは仙台の攻撃と湘南の守備について。f:id:khigu:20180510204327p:plain

 前半開始から30分過ぎまで上図のような現象が起きる。

 湘南の守備は5-3-2。仙台の3バックに対しては2トップが見る形となっている。しかし問題が発生する。それは誰が奥埜を見るのか。石川と菊地の守備の基準点は、仙台のインサイドハーフだった。よって奥埜はフリーとなる。

 そんな奥埜は、2トップの間に位置してピン留めの役割もあったと思う。奥埜が2トップの動きを制限することで金と椎橋がボールを持てる。そこから2人は運ぶドリブルないしは縦へと預けていく。

 

 そんなこんなで3分に試合が動く。

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 椎橋→大岩→金とステーションパスをつなぐ。ここで左サイドにいる石川に注目してほしい。石川は奥埜に行くのか、本来見るべき野津田に付くか迷う。よって中間に位置を取ってしまった石川だった。

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 最終的に石川は判断が遅れ、野津田に裏を取られてしまう。その間に金は頂点の石原にロビングでパスを送る。

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 石原にボールが収まっているときには、石川は野津田に置いていかれている。相手をずらすことに成功した仙台は、石原から野津田に落として西村へとボールを繋げる。

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 そして西村のキープから右の蜂須賀へ展開する。

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 サイドをえぐることに成功した仙台。蜂須賀のクロス時には、ペナルティエリアに3人が入ってきている。

 石原はニアへ、野津田は中央へランニングする。この動きはトレーニングでされてきたものだろう。

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 そして野津田がプッシュして先制点を奪う。最後の最後まで石川は野津田に付いていけなかった。

 この得点のポイントは、奥埜のところで石川を迷わせたことだろう。石川のところがずれたことで湘南の守備が全体的にずれていった。仙台としては奥埜の位置的優位性を活かせた得点だった。

 湘南としては秋野が石川を前に出すことでマークを明確にし、ずれを作らせたくなかった。3-1-4-2のシステムに順応していないこともあってか、そこまでの判断を行うことが湘南はできていなかった。

 

 その後も仙台は湘南の守備位置をずらしながら攻撃をしていく。

 27分にPKを獲得した(石原が止められたほう)が、これも狙い通りの形で攻めることができた。

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 こちらも右からの攻撃。ボール持っている金。湘南は5-3-2で守備を組む。

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 金は中野へ縦パス。マークに付いているのは秋野。代わりにアンカーに石川がいる。

中野へ対して蜂須賀は素早くフォローに入る。

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 そして蜂須賀はアンカーの奥埜へ。ここでも奥埜が浮いている状態になっている。加えると逆サイドの菊地も中途半端な位置を取ってしまっている。前へスライドするか、アンカー脇をカバーするのかが半端なポジション。

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 奥埜は一気に石原を狙ったロングボールを入れる。DFに弾き返されるも、しっかりセカンドボールへ準備していた野津田が回収する。

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 そして野津田は左の関口へ。これで仙台は相手陣地へと入ることができた。ここから外→中→外のボール回しで、最後は関口のクロス。大野に引っ張られた石原が倒されてPK獲得となった。

 

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 湘南も手を加えなかった訳ではない。30分過ぎになると菊地が一列上がり、3バックに対して3トップでプレスを掛けるようになる。要は出所を抑えようと。

 しかし奥埜が空いてしまうことには変わりはない。仙台もウイングバックを経由して、奥埜へボールを届けることに成功していった。よって修正し切れていなかった湘南である。

 

 それから仙台の攻撃で面白かったのは、3センターが密集する形だった。

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 特に右サイドでの攻撃時、奥埜、野津田、中野が右サイドで密集し、パスコースを作っていた。マンチェスターシティでいうデブライネとシルバが近距離でプレーしているイメージだろうか。

 ここで肝なのが、逆サイドで椎橋が中にポジションを取ることで、逃げ場を作っていることである。右サイドで窮屈になったら椎橋や奥埜を経由して関口へ届けるといった形を見せていた。

 ついでに言うと、守備に切り替わったときにもメリットがある。これについては後述したい。

 ということで湘南が守備をハッキリできなかった(前から行くのか、ブロックを組むのか)こと、そして仙台が奥埜のポジションに代表されるように、立ち位置で優位性を作ることで湘南の守備にズレを作らせていた内容だった。

 

(2)仙台の守備、湘南の攻撃

 お互いに3-1-4-2のシステムなので、湘南もアンカーの秋野のポジションは奥埜同様にフリーになるはず。しかし仙台はそうさせなかった。その辺を中心に見ていくことにしたい。

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 まずは5分のプレー。ここでは湘南のビルドアップ隊(3バックとアンカー)に対して仙台は野津田を一列あげて前プレを仕掛ける。このときに石原がアンカーをケアする形になっている。

 そして注目してもらいたいのは中野の位置。野津田が前に出たことで中野は奥埜の横をカバー。この動きが仙台にあって湘南にはないものだった。

 このプレーは、結果的に大野から杉岡のところで蜂須賀がインターセプトしている。

 

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 続いては42分のプレー。シーンは山根にボールが渡ったところ。ここで注目すべきなのは中野。石原が山根にプレッシャーを掛けたところで同サイドの中野がアンカーをケアしている。

 ここではパスコースが制限された山根がイジョンヒョプへ長いボールを送るも、仙台がセカンドボールを回収している。

 

 この試合での両者の差は、前からプレスを掛けるときの連動性だった。仙台は3センターがスライドすることで秋野の位置をケアできていたが、湘南はそれができずに奥埜をフリーにさせてしまった。前半のスコアの差はそんな3センターの守備の違いだったように感じる。

 

 また、仙台は湘南のお株を奪う素早い切り替えで主導権を渡さなかった。16分のシーンを振り返る。

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 仙台がボールを持っているシーン。先ほど言った中野が右サイドに登場している場面(真ん中っぽいのはご愛嬌)。中野は野津田へと縦パスを送るも、パスミスとなる。

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 しかし素早い切り替えで野津田がすぐさまプレスを掛ける。

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 野津田は振り切られてしまう。しかし中野がすぐに二の矢としてプレスを掛ける。

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 中野が取り切れるのがベストだったが、取り切れなかった。しかし中野が遅らせたことで野津田がプレスバックし、再びボールを奪いに行く。

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 そして野津田がボール奪取し、仙台へと再び攻撃のターンが回ってくることとなった。わずか4秒間の出来事だった。

 このように攻撃の距離感が近いことで、ネガトラを素早くでき、かつ二の矢三の矢とプレスを仕掛けられるようになる。

 

 前半は仙台が湘南よりも攻守において明確な狙いを持ってプレーできた。そしてそれが結果にも反映された。

 湘南は仙台の素早い出足に戸惑い、2トップへの長いボールに頼ってしまうシーンが多かった。おそらく本来は仙台のウイングバック裏を突きたかったはずだ。左サイドでは杉岡やステバノビッチ、左サイドでは高山が仕掛けていたように、サイドを起点とした攻撃で仙台を押し込みたかったのだと思う。

 ただ、湘南らしいアグレッシブな守備ができなかったことで、鋭い攻撃にもつなげられなかった。

 前半は野津田と西村のPKで仙台が2点リードし、折り返す。

 

■後半

(1)矢印の向きと強さ

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 後半に向けて湘南は、大野に代えて高橋を投入する。システムも慣れた3-4-2-1に変更した。

 後半の湘南は、前半の反省から積極的に前へ出てくるようになる。湘南らしさを取り戻せ!見たいな感じだった。

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 後半の湘南は3バックに対して3トップが、アンカーの奥埜に対しては石川が気合の縦スライドで対応するようになる。これで仙台のボールの逃げ場を抑えることに成功した湘南は、高い位置からのボール奪取と縦に鋭い攻撃でチャンスを作り出していく。

 そして47分にPKを獲得する。それをイジョンヒョプが決めて1点差に詰め寄る。

 後半のスタートから60分あたりまでは、湘南が勇猛果敢なプレスと鋭い縦速攻で主導権を握る。ステバノビッチが負傷交代したことで、前への推進力を失ったが、それでも勢いで優る湘南がペースを握った後半序盤だった。

 

(2)早めに手を打つ渡邉監督

 湘南が盛り返したことで、仙台は前半のようにはいかなくなった。相手の勢いに押され自陣でのプレーを強いられる展開となる。

 それでも渡邉監督はすぐに守備にシフトしようとはしなかった。なるべく前半の展開に戻すことを優先にゲームを進めていく。

 確かに中盤では相手のプレスを剥がすことに成功する。しかしそこから先のパスがずれてしまったり、ディフェンスに阻まれたりでなかなか湘南守備陣を突破することができなくなっていった。

 

 次第に攻撃も機能しなくなると、渡邉監督は64分に関口から永戸にスイッチする。これで左サイドの守備を安定させた。

 そして中央で奥埜が厳しくなると晋伍と交代する。

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 晋伍を入れて3-4-2-1のシステムに変更する。これと同時に湘南は野田を投入する。システムも3-1-4-2の形に戻すことになった。

 野田を投入したことで、ロングボールが増え始める湘南。そして野田投入直後に山根の2度にわたる右サイドからの強襲が始まる。

 これを見て渡邉監督は中野に代えて板倉を投入する。これが78分。80分以内に3枚のカードを切ることとなった。

 板倉がボランチに、野津田がシャドーになることでロングボールへの対応と、山根への対応の2つを行う。板倉を中央で絶対跳ね返すマンとして投入したのは、非常に効果的だった。

 

 その後も冷静に相手の攻撃を跳ね返し、前に出た湘南の裏のスペースを利用できるようになる。

 そして90+2分に蜂須賀のロングボールから抜け出した西村がキーパーとの1対1を制して、ダメ押し点を決める。山根が上がった裏のスペースを利用した得点だった。

 息の根を止めた仙台が3-1で勝利。6試合ぶりの勝点3となった。

 

■最後に・・・

 全体的な印象として、両チームの戦いの幅がこの結果に繋がったのかなと思う。仙台は前半からアグレッシブな守備と相手の守備にズレを作る攻撃できていた。

 しかし湘南はシステムが慣れておらず、前から行くときにどうやってハメていくかという部分でずれが生じていた。今後この辺の課題を克服することで、湘南は強くなるのだろう。後半戦では厄介な相手になると思う。

 また後半は押し込まれる展開だったが、早めに手を打つことで修正した渡邉監督の采配は見事だった。

 

 15連戦もいよいよゴールが見えてきた。次節は首位独走中の広島が相手。野津田が契約上の理由で出場できないが、この勢いを首位にぶつけ、ひと泡吹かせてほしい!