さて、今回はサガン鳥栖戦を振り返ります。
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スタメン
川崎、湘南とのホーム2連戦は、どちらも引き分けだったベガルタ仙台。リードしても追いつかれる展開が続いている。
スタメンは、前節・湘南戦から変更なし。ベンチにはケガから帰ってきた崇兆が入った。
一方のサガン鳥栖は、フェルナンド・トーレスの引退試合を大敗し、トーレスを快く送りだせなかった。今週は九州が大雨に見舞われ、被災された方々のためにも勇気を与える勝利を目指したい一戦だった。
前節からは4人のメンバーが変更された。特に守備陣にはテコ入れ。高橋祐治と高橋秀人のセンターバックに、左サイドバックには三丸が起用された。
前半
(1)サガン鳥栖のボール保持を紐解いていく
まず、この試合の仙台の狙いを書く前に、ざっくりと鳥栖について書いていくこととしたい。
鳥栖が特徴的だったのは、ボール保持の局面。おそらくここは対仙台の準備をしっかり行ってきたと思われる。
鳥栖のボール保持は、上図のような形が多かった。数字で表すならば、2-3-4-1。
マリノス、名古屋とボール保持チームで経験の積んできた金井が存在することでできる形と言える。金井がインサイドハーフ化し、ハーフスペースでプレーする。
横幅隊は三丸とアン。金森とクエンカがシャドーのような役割を担う。
鳥栖の狙いは、仙台の4バックを広げさせて、その間(図で言う所のセンターバックとサイドバックの間)を突撃し、ペナルティエリアへ侵入していく形だ。なので、一旦大外に広げてからの攻撃が多かった。
また、人への守備意識が強い仙台の守備に対して、大外に一旦広げることで、仙台のサイドハーフを下げることを狙いとしていた。特に鳥栖の左サイドでは、三丸にボールが渡るたびに、道渕が下がるシーンが増えていく。これは鳥栖が狙いとしていたことだろう。
前節の湘南もそうなのだが、仙台の守備をしっかりスカウティングするチームが増えて、サイドに人数を掛けられることで、仙台を押し下げるチームばかりになってきた。ここは課題の1つとなっている。
(2)可変する相手には、時間を与えない
では、そんな鳥栖に対しての仙台の狙いを見ていくこととしたい。
ボール保持の局面で、4-4-2からシステムを可変し、仙台を攻略しようと図る鳥栖。ただ、サッカーの定跡して可変するデメリットとして、ボールを奪われたあとにシステムを戻す時間を要するというものがある。仙台が狙いとしていたのは、そこの部分だった。
仙台はボールを奪うと素早く2トップへとボールを送る。鳥栖の中央、特にアンカーの位置には松岡しかおらず、そこでボールを収めるとカウンターを発動することが可能だ。
前半は、石原と長沢が松岡周辺でボールを受け、サイドハーフが追い越していくことで、カウンターを発動していくシーンを何度も作ることができた。
また鳥栖は可変することに加えて、攻撃時は前線に人数を掛ける。そのため、中央にオープンなスペースが生まれることも、スカウティングのなかであったと思われる。
また鳥栖はセットした状態の守備も、仙台と同様に課題を持っていて、ゾーンで守るというよりは、こちらも人へ意識が強いために、守備のバランスが悪いときがある。
20分の道渕のゴールも蜂須賀に対して三丸が寄せたことで、三丸とセンターバックの間にスペースが生まれ、結果的にそこへポジショニングしていた道渕が仕留めることができた。
仙台としては、切り替え時にオープンなスペースから素早く攻めることと同時に、鳥栖にセットディフェンスの局面を作らせ、そこから押し込むことで、自分たちがボールを保持する時間を長く作りだしたかったなというのが、個人的な本音としてある。
そこの判断をボランチ、特に松下なんかにして欲しいのだが、縦に急ぐあまりに攻撃が単調になることが多かった。そこの判断力とかゲームを読む力はもっともっと身につけて欲しいなと感じる次第である。
前半は、道渕の2試合連続ゴールで先制した仙台がリードして折り返す。
後半
(1)前半の伏線を回収する鳥栖
鳥栖は後半から松岡に代えて小野を投入する。システムは4-1-4-1へ。
前半、仙台が先制した後の流れは、ボールを保持する鳥栖、引いて構える仙台という展開へと徐々に流れが変わった。鳥栖も前半の最後の方になると少しずつ仙台へ圧力を加えられるようになり、金監督としても手応えを得て、ハーフタイムを迎えたことだと思う。
よって、前半の伏線を回収しに行く鳥栖。システムも可変することのない4-1-4-1へ変更することで、ネガティブトランジション(攻撃から守備へ切り替え)を素早く行えるような配置に変更した。
後半の鳥栖は、サイドで三角形を形成し攻め入るようになっていく。特に左サイドでは小野が投入されたことで、攻撃の迫力が増したのと同時に、自由に動くクエンカを見ながら、ポジションバランスを保つことで、アンバランスな状態にしないことを心掛けていた。
また中央で2トップに簡単に収められていたセンターバックも、しっかり前ではじき返すことを徹底。そのことでセカンドボールを回収し、鳥栖が自分たちのターンを繰り返していった。
(2)あまりにも無抵抗だった仙台
そんな攻勢を強めてきた鳥栖に対して、仙台はただただ防戦一方となるばかりだった。
サイドハーフが下がり、後半はほぼほぼ6バックの状態で守備をしていた。相変わらずシマオと平岡の跳ね返す能力で、なんとか失点することなくゲームを進められていたが、前述の通り2トップがボールを収められなくなったことで、前半のようなカウンターを発動できない。そんな苦しい試合展開にも関わらず、なかなか手の打てず、無抵抗のまま、耐える時間をずっと続けていくばかりだった。
渡邉監督は試合後の会見で、ひっくり返せばもう一度チャンスを作りだせたという話をしているが、おそらくピッチ上で戦っている選手としては、そのひっくり返すエリアを見つけ出せなかったように感じた。
システムを変えるなり、大きなクリアから押し上げるなり、ボールを取り上げ、自分たちの時間を確保するなり、さまざまな対応策はあったのだろうが、そのどれを打つわけでもなく、とても残念な後半の戦いぶりだった。
(3)仕留める鳥栖と金崎夢生。
鳥栖は、金森に代えて豊田を投入する。
仙台を6バック化させ、完全に自分たちのペースへした鳥栖。後半は特に左サイドからの攻撃でチャンスを作ることができていた。
よって左サイドのユニットはそのまま、前線に豊田を投入し、左から中央で仕留める形へ変更。左右は不均等だが、これで鳥栖は最後の仕上げに掛かる。
そして77分に金崎がPKを獲得し、自身がそれを決めて同点。その6分後には、中央のスクランブルから再び金崎が決めて逆転に成功する。
仙台もハモン、阿部を投入し、最後の追い上げをしようと試みるが、自分たちが消費してきた時間は帰ってこない。
アディショナルタイム5分をしっかりクローズさせた鳥栖が逆転勝利。仙台としては結果もだが、内容も不安と不満が残るものとなった。
最後に・・・
90分を改めて見直してみて、鳥栖の方がしっかり準備し、チャレンジしていた。先制はされたものの自分たちが準備してきたものを信じ、最後までトライし続けた結果が逆転勝利に繋がったのだと思う。
仙台はどうだっただろうかと。しっかり相手を見てサッカーをし、そしてこの試合でトライし続けただろうか。
ここ最近、どこか閉塞感の漂う試合が続いてきたが、今回敗れたことで、その閉塞感が表立って出現したかなと。そういう意味では、この敗戦で、課題を洗いざらい反省できるし、思い切った修正もできる。そういう意味では、ポジティブに捉えることもできるかなと思う。
大事なのは、この敗戦を意味ある敗戦。もう一回這い上がるためのばねにしなければならないということだ。この苦しい状況を渡邉監督はじめこのチームだったら乗り越えられると思うし、乗り越えるヒントを自分たち自身が持っていると思う。
あとは、勇気を持つこと。恐れないこと。戦うこと。上を見れば、まだまだステップアップできる位置にいる。まずはもう一回、自分たちがどこを目標に戦っているのかを再確認してほしい。
代表ウィークで中断期間に入る。次節はアウェイでの北海道コンサドーレ札幌戦だ。恐れず、勇気を持った戦いを。そして仙台らしいエモい試合を期待したい!!