ヒグのサッカー分析ブログ

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先手必勝~明治安田生命J1第21節 ベガルタ仙台vsジュビロ磐田~

 今回はジュビロ磐田戦を振り返します。夏本番。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

スタメン

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 前節・セレッソ大阪戦をスコアレスドローで終わったベガルタ仙台。今節はそのセレッソ戦からスタメンに変更はなし。ベンチには、ケガから帰ってきた長沢が入った。

 一方のジュビロ磐田は、1-3で敗れた浦和レッズ戦のスタメンから大幅に変更。新加入の今野、秋山、ルキアンは早速スタメンに選ばれた。

 

前半

(1)相手が整っていない間に仕留める

 この試合は、開始間もなくゲームが動く展開となった。

 3分に磐田のセットプレーを奪うと富田から仙台のカウンターが発動。右サイドを攻略すると、道渕のクロスが磐田のクリアミスを誘い、それを関口が冷静に仕留めて先制に成功する。

 さらに8分には、またもセットプレーのこぼれを関口が拾い、相手をかわすとロングカウンターが発動。関口が左サイドから中央へとドリブル。それに呼応するように石原がフリーランで相手を引っ張り、中央のスペースを空け、そこに登場する道渕。関口のパスを受けた道渕がカミンスキーとの1対1を決めて、仙台は10分間で2点のリードを奪うことに成功した。

 

 共通点は、相手セットプレーからのカウンター。おそらくこの試合で準備や狙っていた形という訳ではなく、日ごろからのトレーニングや意識が生んだゴールといえよう。

 特に1点目のように、富田が奪ったボールを丁寧に繋いだことで、カウンターに持っていくことができた。クリアだけではなく、あのようにパスを繋ぐことで生まれる世界線を大事にしたいと思う次第だ。

 夏場の戦いは、先制点が1つのポイントなる。その中で、早い段階で2点のリードを奪えた仙台は、非常に有利な展開でゲームを運ぶことができるようになった。

 

(2)仙台の磐田攻略のポイントと狙いとは

 2点先行した仙台。その後の試合展開も、ボールを保持する仙台。それに対応する磐田という構図でゲームが推移していった。

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 磐田のオリジナルフォーメーションは3-1-4-2だが、ボール非保持のときは山田がシャドーのように振る舞う5-4-1ないしは5-2-3の形となっていた。

 おそらく仙台のビルドアップ隊(センターバックボランチ)へ前線3枚(ルキアンとシャドー2枚)が前プレする形を準備していたのだと思うが、見ていくと磐田のシャドーの2枚が、どのタイミングで仙台のボランチ(もしくはセンターバック)へプレスに行くのかが整理されておらず、中途半端なプレスの仕方になっていた。

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 よって、仙台はサイド大外のサイドバックへボールを付け、相手ウイングバックを引き出すとその裏(相手ウイングバックと3バックのギャップ)にスルーパスを送り、そこに2トップやサイドハーフが抜け出してチャンスを作り出すシーンを増やしていった。

 この試合では開始から2トップの並びが、左にハモン、右に石原という並びだったが、おそらくサイドに流れるハモンの特徴とこの狙いをリンクさせるためのものだと思う。そういう意味では、トレーニンからしっかり準備してきた形と言えるだろう。

 

(3)飲水タイムを挟んだ磐田の修正

 試合は22分に飲水タイムに入る。この短い時間を利用して劣勢の磐田が修正を図った。

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 飲水タイムの磐田は、前述したようにシャドーの守備基準が曖昧で前プレが機能していなかった。

 飲水タイム後の修正は、そのシャドーの守備に基準と狙いを持たせることだった。磐田は仙台がサイド経由の攻撃だと分かると、仙台のサイドバックへボールが渡ったときにシャドーがプレスを開始する。

 シャドーが中央へのコースを切り、仙台のパスルートをサイドへと限定させ、攻撃を限定させていった。

 またシャドーの守備基準が明確になったことで、ウイングバックも必要以上に縦スライドすることなく、狙われていたウイングバック裏のスペースを埋めることに成功する。

 このことで徐々に仙台のボール保持を規制させ、自分たちへのペースを持っていった。

 

 そして27分のその狙い通りの守備で永戸からボールを奪うとカウンターからファウルをもらってフリーキックを得る。

 そのフリーキックは壁に阻まれるが、その二次攻撃から左サイドで再びフリーキックを獲得すると、山本のキックに今野が合わせて1点差に詰め寄る。

 守備が機能した磐田が、狙い通りにボール奪取から得点へと結びつけた形となった。

 

 その後も、磐田がボールを握る展開へと移行する。仙台もボールは奪えども、試合序盤のように奪ったボールをなかなか前線へと届けられない。磐田のネガティブトランジションを越えることができず我慢を強いられる展開となり、前半が終了する。

 2-1で仙台がリードし、後半を迎える。

 

後半

(1)サイドからの攻撃を整理する磐田

 前半は、早い段階で2点リードを奪った仙台が、その後もペースを握り試合を進めるが、飲水タイムを挟み、磐田が守備を修正すると徐々にペースが変わり、31分の今野のゴールで1点差となった流れだった。

 

  後半は、より攻勢を強めたい磐田がペースを握り、ゲームを進めるようになる。

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 前半の磐田は、仙台を押し込んだとき、同サイドの多くの人数を掛ける形を取っていた。逆のインサイドハーフが登場したり、2トップがいたりと、より密集地帯を作って突破しようとする狙いがあった。

 しかし、密集しながらも、揺さぶりがないぶん仙台としては、しっかり同サイドを守っていれば怖くない磐田の攻撃となっていた。

 

 後半の磐田は、人数の掛け方を修正し、基本的に同サイドの左右バック(高橋と新里)、ウイングバックインサイドハーフ、2トップの4人の関係でサイドを突破するようになる。特に右サイドでは高橋が持ち上がってスクエアを形成し、最終的に2トップがサイドバックの裏へ抜け出してクロスを上げるシーンが増えていく。

 図では山田だが、ルキアン、途中投入されたアダイウトンがサイドに登場するシーンが多くなった。象徴的なのが65分のプレーで、右サイドから左サイドへと揺さぶり、左のクロスにアダイウトンが合わせた形だ。あそこで得点が決まっていたら、ゲームの流れがさらに磐田へと傾いていったはずだ。

 

(2)課題と向き合う仙台

 押し込まれる時間が長くなった仙台。飲水タイムを挟んで、再び前へ出ようと修正を図った。

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 飲水タイム後の仙台は、相手の3バック、特に左右バックに対してサイドハーフが寄せるシーンが増える。

 ここ最近のような撤退して守備するだけではなく、もう一度前に出て、ラインを押し上げようとする狙いが見られた。長沢を64分の段階で投入したことも、もう一度前から守備のスイッチを入れようという狙いだったと思われる。

 

 しかし、サイドハーフがプレスに行ってもサイドバックが連動していないので、プレスが遅れ、結果的に磐田にサイドバック裏のスペースをさらに与える格好となってしまった。

 

 ただ、ここ最近の押し込まれたらサイドハーフが下がって5バック化するのではなく、もう一度自分たちからアクションを起こして、前から守備に行こうという狙いが見えたのは良かった。ここでサイドバックボランチも連動して守備ができるようになると、戦いの幅が広がる。そういった意味では、ミスをしながらも課題と向き合って戦っている証拠だと感じたシーンだった。

 

(3)5バックで逃げ切る仙台

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 試合終盤に向けてクロス爆撃になっていく磐田の攻撃に対して仙台は、ハモンに代えてジョンヤを投入。5-4-1にして逃げ切りを図る。

 5バックにして面白かったのが、ここまでズレが生じていたサイドの守備が整理できたことだ。相手のウイングバックと仙台のウイングバックが対峙する形となったので、クロスを簡単に上げさせない、もしくは遅らせることでペナルティエリア内の守備を整わせることに繋がり、仙台はしっかり集中力を保って跳ね返すことができた。

 アディショナルタイムの4分もしっかり逃げ切った仙台が、4試合ぶりの勝利をホーム・ユアスタで挙げることに成功した。

 

最後に・・・

 まさに先手必勝というゲームだった。最後まで勝ち点3を掴んで離さなかった試合だった。

 磐田の修正があり、前半の飲水タイム後からは徐々にペースを握られる苦しい展開だった。後半の開始にしっかり修正して再度盛り返すことができれば、より良かったが、まずはリーグ戦3試合勝ててないことを考えれば、厳しい夏の戦いでしっかり勝点3をもぎ取れたことを素直に喜びたい。

 また、押し込まれたときに、自分たちでもう一度押し返す、前から守備のスイッチを入れていこうとする意思を見られたのは良かった。まだまだ連携面に課題は残るが、継続することで自分たちの武器にしていきたい。

 

 厳しい夏の戦いは続く。次節はアウェイでのFC東京戦。首位相手ではあるが、苦手な相手ではない。しっかり我慢強く戦い、首位相手に一泡吹かせたい!!