ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

手痛いドロー~J1第18節 ベガルタ仙台vsセレッソ大阪~

 さて、今回はセレッソ大阪戦を取り上げます。

 

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 前節・鳥栖戦に勝利したベガルタ仙台。勝ち点2差のセレッソを叩き、さらに上位へ進出したい試合。スタメンは阿部から西村に代わった以外は変更なし。矢島とハーフナーにとっては初めてのホームでの試合となる。

 一方、鹿島のACLの日程上水曜日に試合があったセレッソ大阪。ターンオーバーを採用した鹿島戦は0-2で敗戦。中断期間明け3試合勝利なしの状況である。優勝を狙う上でこれ以上負けられない今節は、鹿島戦から7人が変更となった。ベンチにはケガから戻ってきた柿谷が入っている。

 

前半

(1)セレッソの攻撃と仙台のカウンター

 

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 セレッソの攻撃の起点(ビルドアップの出口)は、お馴染になりつつあるサイドバックに設定されている。まずは仙台の3センターを動かしたいセレッソだった。そしてそこからボランチサイドハーフ、2トップが絡んでの攻撃を仕掛けていく。意外だったのは、杉本、山村という高さのある2トップだったのにも関わらずアーリークロスからの攻撃が少なかったことだった。

 

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 セレッソとしては狙い通りというか定跡通りの展開で仙台を押し込んでいく。しかしこれは仙台が仕掛けた「罠」だった。

 仙台にとってもお馴染になってきいる対策なので、サイドバックにはある程度ボールを持たせることは許容している。そしてじわりとサイドに追い込んでボールを奪い取るのが仙台の守備での狙いだった。

 そして仙台は、セレッソボランチセンターバックの間をカウンターの起点とする。セレッソは相手を押し込んだときにボランチが双方とも高い位置を取り、センターバックとの間にスペースが生まれる。そこに西村と石原を置き、そこを起点に仙台はカウンターを仕掛けていく。

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 写真は同点となったカウンターの起点のシーン。見て分かる通りボランチが2枚とも高い位置を取っている。どちらかがアンカーの役割でいれば、対応できていたシーンが数多くあった。

 また時間が経過するとともに、ソウザが左脇(左サイドバックの位置)に落ちてきて、ビルドアップの出口になろうとしたことで、中央の穴はさらに拡大していった。おそらく仙台は、この当たりはしっかりスカウティングしていたと思う。

 

(2)左右で違う仙台の定位置攻撃

 

 次に仙台のボール保持攻撃を見ていく。

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 仙台の攻撃は左右で違いを見せていた。左サイド起点の攻撃から見ていく。

 板倉がボールを持ったときの選択肢は2つ。1つはダイナミックなサイドチェンジで蜂須賀へ送り、そこから1対1を作り出すこと。これは非常に効果的な攻撃だった。セレッソは4バックなのでズレが作れるという昨シーズンから仙台がやっている形だ。

 そしてもう1つは、中野のポジションで松田を釣り出し、その裏のスペースを活用すること。こちらは回数こそ少なかったが、西村が積極的なランニングで、起点を作り、またヨニッチを引き出すことに成功している。

 

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 右サイドでは、主にセレッソが前からプレスを掛けてきたときの攻撃が主だった。平岡がボールを持ったとき、セレッソは高木を前にスライドさせる。仙台はその逆を利用して平岡と蜂須賀でワンツーし、そこを掻い潜る。また蜂須賀に対し、丸橋が付いてくれば、その裏が空き、奥埜や2トップが抜け出すことが可能となる。

 こちらは具体的なシーンを見ていく。22分。

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 大岩から平岡へ。このときに高木がプレスを掛けに来る。

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 それに対して仙台は、蜂須賀が降りてきてフォロー。平岡とのワンツーで高木のプレスを掻い潜る。そして蜂須賀には丸橋が付いてくる。

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 ボールを受けた平岡は、ライン間で待つ奥埜へ縦パスを送る。

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 奥埜がライン間で受けたことで、木本が寄せることとなり、仙台からの見た右サイドのスペースは広大になる。そしてそこに待ち構えランニングする西村。

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 完全に抜け出せた西村だが、グランダーのクロスはヨニッチに弾かれ、得点とはならなかった。

 このように低い位置から相手のプレスを剥がすことで、アタッキングサードで広大なスペースを得られ、いわゆる疑似カウンターの形を作ることができる。この右サイドの形は日ごろから練習してきたものだろう。また平岡と蜂須賀は試合を重ねるごとに多彩な選択肢を作れるようになっている。

 

 前半は、フリーキックから丸橋が直接決めてセレッソが先制。その後カウンターから西村が決め、仙台が追いつく展開で、ハーフタイムを迎える。

 

後半

(1)サイドを巡る攻防

 

 前半と打って変わった点は、両者ともにサイドからの攻撃が増えたことだ。

 

 セレッソは、前半と変わりなくサイドバックを攻撃の起点としていた。前半と変わった点は、前半よりも早い段階で縦パスを入れることだった。サイドからの斜めパス、それを2トップが収めることで仙台の中央の守備を崩しにかかろうとしていた。

 また前半はクロスのシーンが少なかったが、後半は積極的にクロスを上げるようになる。またクロスはニアよりもファーへが多かった。この辺も狙いとして持っていた可能性がある。前半よりもシンプルさではあるが、仙台のゴール前にボールを入れていくことで、チャンスを作り出していたセレッソだった。

 

 一方の仙台は、後半スタート時にインサイドハーフの位置を変えている。

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 恐らく何かしらの狙いがあったのだろうが、後半スタートから読み取れなかった。ただ、前半よりもスムーズさは失われてしまった感があった。

 セレッソのサイドのスペースが生まれることが分かると見るや、仙台は矢島に代えて永戸を投入する。これで奥埜が右のインサイドハーフ、中野が左のインサイドハーフとなる。

 この交代から仙台は、前半あったようにセレッソボランチ周辺をカウンターの起点にして、スペースのあるサイドへ素早く振ることでチャンス作り出していった。

 特に交代で入った永戸は、スプリントからのクロスで仙台の攻撃を活性化させていった。キレも戻ってきたようでそろそろ本領発揮となりそうな予感を受けた。

 

(2)両チームの交代の意図

 

 セレッソは68分に柿谷と水沼の2枚を切る。両者ともにサイドハーフに入った。おそらく前半から走っていた高木と福満の疲労と、後半サイドをえぐってからのクロスでチャンスが作れているというところからだろう。

 特に福満サイドである右サイドからは、深くえぐってのクロスが多く、右(水沼)で上げて左(柿谷)で仕留めるというイメージを持っていたのかもしれない。

 

 一方の仙台は71分に西村から阿部、76分にはハーフナーを投入する。始めの阿部の投入は、西村との役割と大差がなかった。降りて収める石原に対して阿部は、引っ張る動き、またはドリブルでの仕掛けのところで、さらにパワーと強度を維持させたかった交代だった。

 ハーフナーに関しては、サイドからの攻撃ができていること、そして勝ちに行きたいというメッセージを込めての投入だった。システムも3-4-3に変更。実際にハーフナーが入ってからは、永戸と蜂須賀からアーリークロスが増えた。またハーフナーが中央で収められるので、石原と阿部は前を向いた状態でボールを受けるシーンが数多くなった。

 

(3)逆転に成功、しかし逃げ切れず。。

 

 仙台は阿部とハーフナーを投入したことで、徐々にペースを握り、セレッソ陣内へと押し込む時間が長くなっていく。セレッソの守備網も広がったことから板倉が攻撃の起点となり、縦パスを入れる回数も増えてくる。またクロス攻撃からコーナーキックを得る回数も増えていった。

 そして84分。永戸の右コーナーはクリアされるも再び永戸がクロスを入れて蜂須賀が得点し、逆転に成功する。副審がフラッグを上げていたのでセレッソの選手は足を止めてしまっていた。セレッソの選手心理を考えれば同情の余地もあるが、やはり「笛が鳴るまでプレーをやめない!」っていうことはとても大事だと改めて学んだ。

 

 残りの時間も少ないので、しっかり逃げ切れば問題のない仙台。しかしアディショナルタイムの4分間は中途半端なプレーや判断が多かったり、ロングボールが増え、ピッチを行ったり来たりすることが多かったりと時間の使い方が決して上手いとは言えない過ごし方をしてしまった。

 そうなればサッカーの神様は見逃さないということで、ラストプレーで丸橋に決められ逃げ切り失敗。

 仙台は非常にもったいない引き分けとなってしまった。

 

最後に・・・

 もったない試合だった。この試合はラスト4分間のプレーがすべてだろう。4分間のなかでも落ち着く時間、意思疎通を図れる時間はいくらでもあった。しかし、のらりくらりとやってしまった結果、最後に重い罰を食らってしまった。

 セレッソとの順位や勝点差を考えれば、やはり勝ちたかった試合だったし、トップ5を目指すにはこのような直近の相手に勝たなければならない。落としてしまった2はとても痛いものだと考えている。

 しかし、いつまでも失ったものを嘆いていても始まらない。次の試合はすぐやってくるし、再びホームでやれるという意味はとても大きい。

 次節は名古屋戦。失ったものが取り戻せない分、ここから巻き返しに期待したい!