夏の中断期間が明けました。リーグ戦が再開です。柏レイソル戦を取り上げます。
中断期間前は大阪勢と神戸に3連敗。この3試合で10失点と守備に課題がある仙台。中断期間は守備に時間を掛けた。夏の補強では名古屋からウイングバックの古林を補強。さっそくベンチ入りをした。一方で石川直樹が札幌へ完全移籍となった。
スタメンでは契約上の関係で増嶋が出場できない。代わりに椎橋。ルヴァンカップで台頭した若手がリーグ戦デビューとなった。また左のシャドーに佐々木匠、ワントップに石原を起用した。
一時は8連勝で首位にも躍り出た柏。中断期間前に鹿島、セレッソに連敗したことで上位戦線から後退した印象がある。これ以上引き離されないためにも今節は勝ち点3を取りたいところ。夏の補強ではキムボギョンを補強。こちらもさっそくベンチ入りをした。スタメンはおなじみのメンバー。ベンチにはハモンやディエゴオリベイラ、細貝と贅沢極まりない陣容が揃っている。
■前半
(1)柏がボールを保持しているとき
今節の仙台のテーマは「守備」ということになる。中断期間前の理想を追い求めたところから少し現実的な戦い方へと変わっていった。
前半は柏がボールを保持し、仙台が自陣でしっかり守備ブロックを組み展開が多かった。
柏のボールを保持したときは、センターバックとダブルボランチがビルドアップ隊となり、サイドバックは高い位置へ押し上げ、両サイドハーフと中川がライン間に登場する形となる。センターバックとダブルボランチの4人がボールを落ち着かせることで柏の攻撃は安定感を増していく。
そんな柏に対して仙台は541のブロックを形成。この試合、仙台の前線は石原のワントップに佐々木と西村のシャドーだったが、守備を考えての起用だったと思われる。石原は主に相手のビルドアップ隊に対してパスコースを切る役目。シャドーは中に絞りながらも、状況に応じてはウイングバックと協力しながらサイドバックへとアプローチするのがタスクとされていた。シャドーに若い2人を起用したのは運動量を要するから。そして守備のタスクを忠実に行えるからだろう。
本来の柏の狙いはビルドアップ隊から、もしくはサイドバックからライン間にいる選手に当てて中央から崩していく形だった。しかし仙台の5バックがしっかり受け渡しをしながらマークできていたことで、柏は中央から崩すことがなかなかできなかった。
ということで見出したのがサイドの裏のスペース。右サイドでは伊東が抜け出して、椎橋と一対一を作ることで質的優位を作り、左サイドではクリスティアーノが顔を出すことでキープし、相手の懐へとボールを入れていくことに成功する。しかし、伊東のクロスははじき返され、クリスティアーノは孤立するなど、柏の攻撃が機能していたとは言えない前半の内容だった。
(2)仙台がボールを保持しているとき
前半は柏がボールを保持することが多かったが、仙台もボールを保持できる時間帯はあった。
仙台のボール保持はおなじみになりつつある343(325)。
仙台の攻撃は今までよりも慎重というか、手数を掛けないで攻めようみたいなところがあった。攻撃も中央からというよりはウイングバックを経由して攻めることが多かった。
また三田の3列目からの飛び出しや大岩のオーバーラップもなかったことから、やはり守備のこと(ボールを取られたあとのこと)を考えながら攻めている印象だった。勝負は後半、前半は慎重に我慢しながら戦うみたいなところが攻撃からも垣間見れた。
一方で柏の守備。柏といえば、中川をはじめとする前線が相手のビルドアップ隊に対して猛烈にプレッシングすることが特徴である。しかしこの試合では無理に前からプレスを掛けることはしていなかった。おそらく夏になり、体力の消耗のことを考えてだろう。もちろんセットできた状態のときは前から行くときもあったが、時間の経過とともに442で構えることが多くなっていった。
お互い、慎重にそして我慢強く戦って前半はスコアレス。勝負は後半へと続く。
■後半
(1)我慢比べが続く中で
後半も試合の展開は大きく変わることなく始まる。仙台は自陣に541を敷きながら粘り強く柏の攻撃に対抗していく。
我慢比べが続く中で変化があったのは、柏だった。試合の展開は大きく変わってはいなかったが、柏はボールを奪われた後、また仙台陣内にボールがあるときは前半に比べて積極的にプレッシングを行っていた。前半は前からプレスを掛けに行くシーンは少なかったが、後半はより圧力を強めて仙台のボールホルダーに対してプレッシングを行い、ボールを奪い返すことで二次・三次攻撃へと繋げていった。
このことで前半よりもボールを繋げられなくなる仙台。無理に石原やシャドーにボールを預けようとするも、中山・中谷の前に簡単にボールを失い、柏に押し込まれる展開が続いていく。
本来であれば、柏のプレスにビビらずにボールを繋いでプレスを回避し、自分たちがボール保持する展開へと持っていきたかったが、慎重になっているがゆえに勇気を持ってボールを繋ごうという意思は見られなかった。
そして柏が先制点を奪う。68分。クリスティアーノの左コーナーからファーで伊東が押し込み先制。ファーの担当は蜂須賀だったうまく前に入られてしまった。これでまた課題のセットプレーから失点を喫してしまった。残念無念。
(2)棚ぼたの同点のゴール
失点前には奥埜を投入していたが、失点直後にクリスラン。そしてその後新加入の古林を投入する。
先制を許し、否が応でも攻撃へとシフトチェンジしなければならないのだが、疲れからか前に人数を掛けられることができない。また柏も先制したことで自陣に引き、仙台のウイングバックを両サイドハーフがケアすることで守備に安定をもたらした。そして攻撃のときには韋駄天・伊東や交代で入ったディエゴオリベイラを中心にカウンターを仕掛ける仕組みへと変化させていった。
手詰まり感が否めない仙台の攻撃。疲労とともにイージーなパスミスも増え、シュートどころか相手のペナルティエリアにも侵入できない状況が続いていった。
85分過ぎには、442に変更する仙台。ほぼ2バックの状態にしてパワープレーを仕掛けたかったのだろうが、ベンチの指示が行き届いていなかったのか、システム変更も効果はあまり見られなかった。
それでも90+2分。ロングボールをこぼれを拾ったクリスラン。中野へ一回落とし、自分が裏へ抜け出しスルーパスをもらう。低いクロスは相手に当たり石原のもとへ。石原は巧みなキープから中野へ落としてシュート。DFに当たりながらこれが決まり同点。後半、まったくチャンスのなかった仙台だったが、最後の最後でチャンスを活かして同点に追いついた。
そしてタイムアップ。1-1の引き分けでゲームは終了した。
■最後に・・・
内容からすれば負けゲームではあったが、最後に1をもぎ取った。貴重な勝ち点1だと思う。
試合のテーマは「守備」であった。守備はこの中断期間で整理できたなと思う反面、以前の迫力ある攻撃がなくなってしまったのは少し残念。この試合では我慢強く戦いながらも、どこかで攻撃へとシフトチェンジするのだろうと思っていたが、先制を許してしまったためにタイミングが分からなかった。
試合を見終わった直後は今までの攻撃へのチャレンジがなかったことが非常に残念だった。しかし、今後上位を目指すためには、今までチャレンジしてきた攻撃の部分と、今節から取り組んでいる守備の部分を両立させることが重要だと感じた。そして「攻撃と守備をつなぐもの」が今後仙台にとって重要なポイントになってくる。これは攻から守への切り替え(ネガトラ)と守から攻への切り替え(ポジトラ)ということになってくると思うが、これをチームとしてオーガナイズさせることが両立を図るためのポイントになる。
まずは守備の立て直し、そして迫力ある攻撃との両立を目指してほしい。
次節はアウェイでの鹿島戦。一筋縄ではいかないと思うが、強い気持ちで王者に挑んでほしい!