ヒグのサッカー分析ブログ

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若手の成長と奮起~J1 2ndステージ第8節 ベガルタ仙台vs柏レイソル~

 前節、鬼門・カシマスタジアムで鹿島に勝利した仙台。久々にホームに戻っての今節の相手は柏レイソルとなった。f:id:khigu:20191230150847p:plain

 仙台は前節の鹿島戦でリャン、平岡、石川直樹が負傷。そして六反も翌日に行われたサテライトで負傷と、ケガ人だけでチームを組めちゃうぐらいの数になってしまった。よってこの柏戦は満身創痍の状態の仙台。左サイドバックにはルーキーの小島雅也、右サイドバックに菅井、左サイドハーフに藤村が前節と代わってスタメンに名を連ねた。

 一方の柏は、前節マリノスに敗戦。しかしそれまでは3連勝と決して調子は悪くない柏。けど、2ndステージを取るためにこれ以上負けてられないというのも本音。ということで上位に食らいついていくためにも大事な一戦となった。スタメンでは前節から増嶋に代わって鎌田がスタメンに名を連ねている。

 

■前半~ブラジル人コンビの爆発と狙われる左サイド~

 前半、スタートからお互いに前から奪いに行こうという意識の見えた前半だった。

 柏は仙台が4-4-2だったこともあり、4-1-4-1でゲームを進める。仙台はビルドアップ時にボランチが降りてきて、最終ラインを3枚にして行う。それに対して柏はワントップのオリヴェイラとセントラルハーフの栗澤、武富が出てきて、3枚に対応し、仙台のビルドアップから時間とスペースを奪おうとしていた。よって仙台も後方からのロングボールを使うことが多くなる。

 一方の仙台は、4-4-2のまま前からプレスを掛ける。特に難しいことをしていたわけでもないが、2トップとボランチの間にいる大谷をどうするかで迷っているシーンもあったが、仙台は状況に応じて無理をせずに自陣で4-4-2のブロックを作っていく。

 

 序盤の展開は非常に膠着したものだったが、仙台が先制する。15分。セットプレーは流れとは関係ないと言われるがごとく、藤村の左からのコーナーキックを真ん中でハモンが合わせて先制。セットプレーの守備に課題がある柏だったが、このシーンもいまいちハッキリしていない守備だった。にしても藤村はナイスボール。

 追加点は4分後、19分。ウイルソンが中央突破を試みるが失敗。そのまま前からプレスを掛けると鎌田がパスミス。拾った藤村がウイルソンへパスし、ウイルソンは中山を振り切って左足で決めた。奪われても素早く切り替えて、高い位置で引っ掛けることが出来たシーン。前節の奥埜の得点も素早い切り替えから相手のミスを誘っての得点だったが、同じような得点を取れたのはしっかり出来ている証拠である。

 

 その後のゲームの展開が変わるきっかけは、30分に訪れる。大谷が奥埜との接触プレーで負傷し、秋野との交代を余儀なくされる。柏は秋野投入後にシステムを変更(正確にはその直後にハモンが痛めたタイミングで)。f:id:khigu:20191230150942p:plain

 柏はクリスティアーノを前線に上げて4-4-2の布陣に変更。ここから柏の狙いはハッキリする。

 柏は仙台の左サイドを狙うようになる。いわゆる小島サイド。この試合の仙台のウィークポイントというか能力的にどうしても劣ってしまうのは左サイドバックの小島。柏は伊東とクリスティアーノを同サイドに置くことで、そこから崩そうという狙いを見せ始める。

 そして直後の30分。その左サイドから伊東に突破されてクロス。クリスティアーノのシュートはミートしなかったが、そのあとの詰めたオリヴェイラを三田が後ろから倒してPK。これをクリスティアーノが決めて2-1になる。

 その後も徹底的に右サイドから崩していく柏。小島は序盤から伊東とのマッチアップにアップアップだったのに、それにクリスティアーノが登場ととても酷だったと思う。よって仙台も全体が左に寄ってしまい、守備のバランスがおかしくなるシーンが出てくる。

 残りの時間は、柏にペースを奪われ我慢の時間帯が続いていった。残りはなんとかしのぎ切り、2-1で折り返す。

 

■後半~効果的だった1枚目の交代~

 柏は大谷の負傷交代後、クリスティアーノオリヴェイラの2トップにし、仙台の左サイドを狙い撃ちすることで、自分たちのプレーがハッキリし、1点返して後半へと折り返すことが出来た。

 柏は後半も同じ展開へと持っていく。とにかく小島の裏に伊東またはクリスティアーノを走らせ、前半よりも小島狙い撃ちを色濃くしていく。小島サイドで起点を作ることが出来た柏は、前半の終盤同様に自分たちのペースへとゲームを持っていくことに後半も成功していった。

 そして同点ゴールは52分。狙い続けた仙台の左サイドから。後方からのロングボールをオリヴェイラが落として、伊東が小島を振り抜く。そのまま伊東はペナルティエリアに侵入し、ファーサイドへシュート。これが決まって22の同点に追いつく。

 仙台としては前半から狙われていただけに対処したかったシーンではあった。けど、交代カードを切ることよりも、自分たちでボールを持つことでそれを避けたかったのが本音であろう。今年の仙台であればなおさらである。

 

 失点後、仙台は決して慌てていなかったと思う。同点にされた時間帯が早かっただけに、まだ取り返す時間があると考えたはずだ。

 しかし、小島のサイドをやられていることは事実。ということで渡邉監督は動く。小島→茂木で藤村を左サイドバック、奥埜を左サイドハーフにし、茂木を右サイドハーフに置いた。

 結果的にこの交代が、このゲームのポイントだったと思う。藤村を左サイドバックにしたことで守備が安定。藤村は不慣れながらも、しっかりとした位置取りをすることで伊東やクリスティアーノに突破されることを防いでいた。 

 また奥埜を左に置いたことで奥埜は自由に動くことで攻撃のアクセントとなった。また左に流れてくる2トップともうまく連動して、左サイドを攻撃の起点することが出来ていた。

 また茂木の登場で右サイドでも起点が作られるようになる。時には開いて受けたり、時に裏へ抜ける動きで柏の左サイドを制圧していくきっかけとなっていった。

 この交代をきっかけに仙台が徐々にペースを取り戻していく。次第に相手の深い位置まで侵入し、コーナーキックを獲得していく回数が増えていった。

 そして勝ち越しは73分。きっかけはコーナーキックコーナーキックのセカンドボールを拾い続け、左右からクロス爆撃を行う仙台。右サイドから奥埜がいれたボールに対して、博文が競ったが遅れた鎌田が思わず博文のシャツを引っ張ってPK獲得。これをハモンが決めて勝ち越し。

 ここぞというところで、シンプルにクロスを入れ続けた結果である。博文を引っ張った鎌田があまりに軽率な判断だったが、それを引き起こしたのは仙台が、繰り返しセカンドボールを拾い続け、クロスを入れ続けたからである。

 

 その後柏は山中、大津を投入し、一気に攻勢をかけるが、この2人が試合に影響を及ぼすことはなかった。柏は右サイドの攻撃を塞がれてしまったことで、攻め手を失ってしまった。この日の柏の攻撃は、組織でというより個に依存するような攻撃だった。1stステージでは組織的なサッカーをしていた印象だが、今回対戦してだいぶ印象が変わってしまった。良くも悪くもクリスティアーノの加入が影響を与えているのだと思うが。

 

 仙台は85分に左サイドからハモンがいれた低くて速いボールを輪湖がクリアしきれずオウンゴール。これで勝負アリ。4-2で仙台の完勝。ケガ人が多い中でも若手の奮起もあって引き分け挟んでの4連勝となった。

 

■最後に・・・

 ゲームのポイントはやっぱり仙台の1枚目の交代かなと。あそこで柏が何も出来なかったのはすこし驚いたけど、ペースを取り戻して勝ち越し、そして追加点を奪ったということは今シーズンの成長だと思う。

 それに近年まれに見るケガ人の多さだが、若手の奮起と成長によってこのゲームを勝てたことは、このチームの財産だと思う。特に藤村なんかは使うことで成長して、ついにアシストという結果を残してくれたし、後半の途中からは左サイドバックとして、しっかりと役割をこなしてくれた。

 初出場だった小島はほろ苦いデビューとなってしまったが、相手が伊東純也やクリスティアーノで、あまりにも分が悪すぎたかなと思う。まだまだこれからの選手だし、今回はいい宿題をもらったのではないだろうか。

 

 若手の活躍は見ていて本当にうれしいし、間違えなくこのチームには明るい未来があることを証明してくれた試合だった。次節は大宮。勝てばさらに浮上できる試合。満身創痍であることには変わりはないが、若手の奮起と成長と共に次もまたいいゲームが出来ることを期待したい!