ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

着実に力をつけている仙台~J1 1stステージ第13節 湘南ベルマーレvsベガルタ仙台~

 前節、大宮に敗れ連勝とはいかなかった仙台。今節は、福岡との裏天王山に敗れ最下位に転落した湘南ベルマーレとの対戦となった。f:id:khigu:20191230142658p:plain

 湘南はミッドウィークのナビスコ・鹿島戦で勝利し、その試合で活躍した選手を主に起用。前線の3枚には端戸、大竹、アーリア。ボランチ菊池大介。なお、今シーズンのホームでの成績は6戦6敗。

 一方の仙台はミッドウィークのナビスコはお休み。よって日程的には有利。前節との変更点はセンターバックに平岡が復帰し、大岩が右サイドバックに戻っただけ。なお、この試合でリャンがJ1通算200試合出場というメモリアルマッチ。

 

■前半~どう先手を取るのか?~

 この試合の仙台のテーマは、いかに湘南の背後を取るかというものがあった。具体的に言えば、湘南は前からの激しいプレッシングを行い、高い位置でボールを奪うことをチームの信念としてある。そういう前向きの矢印が強い相手に対して、仙台は背後を取ることでペースを握ろうという狙いを持っていた。

 この試合での仙台は、前節・大宮戦のように長い間ボールを保持し、回して崩しにかかるのではなく、相手が前から来たのであれば、簡単にロングボールを蹴って、なるべく相手の矢印の方向を変えることを行っていた。その役割を担っていたのがハモンロペス。ハモンは前半のスタートから左サイドに位置し、味方の長いボールに対して裏に抜けて起点を作る、または単騎特攻でクロスを上げることを行っていた。

 ここ最近のハモンはようやくチームにフィットしてきた感があり、また少しずつ戦術兵器として、仙台の攻撃において質的優位が出来るポイントになりつつある。

 そんなハモンへのロングボールを主に仙台は湘南の背後、特にサイドの裏を起点とした攻撃を展開していく。おかげで湘南の両ウイングバックは低いポジショニングなり、湘南の攻撃に厚みを持たせなかった。

 またクロスはファーサイドに上げることを徹底していた。クロスをファーに上げるということは、相手にとっては揺さぶられる形となり、守りずらい(いわゆる視野リセット)のに加え、そのボールが逆サイドに流れても、ボールを回収できるというメリットがある。40分の決定機はファーサイドに上げ続けたことで波状攻撃へとつなげることが出来た。

 

 仙台は守備でも主導権を握って守ることが出来ていた。仙台は川崎戦以降、DFラインが高くなったこともあり、4-4-2の3ラインがコンパクトになったことで、中盤におけるプレッシングも強度が上がり、特にボランチでボールを回収、または奪取出来るようになってきている。この試合では特にコンパクトであることと、中盤でのバトルで負けなかったことで、すぐにボランチを中心にボールを奪うことが出来ていた。

 また状況に応じては442のブロックを組み、湘南の攻撃に対抗していた。湘南の攻撃がうまく機能していなかったのは、湘南自身に問題があったこともさることながら、仙台が球際での勝負や全員の守備の統一された意識の中でやっていたからだと思う。

 

 前半は湘南に対して、攻守において先手が取れたことでゲームをうまく進めることが出来た。あとはどう決めるかだけみたいな前半だった。

 0-0で折り返す。

 

■後半相手が変化する中で

 湘南は後半スタートから岡本→下田の交代f:id:khigu:20191230142750p:plain

 三竿と菊池がいつものポジションに変更。

 

 湘南は前半の反省を踏まえて全体をコンパクトにするようにしていた。前半は前プレを掛けるときに前線3枚と中盤との距離感があり前プレが機能していなかった。また中盤での競り合いでことごとく仙台にボールが渡っていた。

 よって湘南は、DFラインを前半よりも高く設定することで全体をコンパクトにしていた。象徴的だったのは、坪井が落ちてくる仙台のFWに対して付いてくるシーンが多かったことである。

 湘南は、全体がコンパクトになったことでプレスもかかるようになり、また距離感がいいことでパスのテンポも上がり、次第に仙台を押し込むような時間帯を増やせるようになった。

 

 一方の仙台は、そんな湘南に対して自陣で粘るシーンが増える。特に前半とは違っていたのは、湘南の圧力が強くなったことで、相手の背後にボールを蹴れなくなってしまったことで、相手の矢印の向きを変えることが出来なかったことである。

 また前半に比べてハモンも右サイドに流れるようになる。監督コメントを読むと指示ではなく自分の判断だったらしい。ハモンは右がお好きな様子。

 しかし、自陣で粘るシーンが増えたものの、相手が高いラインに設定したおかげで、湘南の裏のスペースを突破すること(ダイレクトプレー)は多くなった。前半では相手のサイドの裏が多かったが、後半は中央の裏を取れるシーンが増える。特に野沢が下りて両サイドハーフ(特に金久保)が全速力で追い越して、スピードに乗った状態で受けるシーンが増えていった。

 

 そして76分に仙台が先制。湘南の右サイドからのクロスをファーで途中交代で入った奥埜が回収して富田とパス交換。奥埜はハモンに預けてハモンは左サイドのリャンへ。リャンの左足のクロスを走り込んできた奥埜がワントラップして冷静に決めて先制。

 湘南のお株を奪うようなカウンターだった。仙台は今シーズン、ボールを保持しながら崩すことを目指しているが、このような湧き出るカウンターも出来るようになると攻撃のバリエーションが増える。また後方から全速力で上がってきた大岩がいたことで3人中にいたことも素晴らしかった。完璧なカウンターだった。

 

 残り時間は、若干後ろに重心を置きながらも、攻めることも忘れずといった内容だった。交代カードを切りながら最後まで集中力のある守備をした仙台。見事に湘南をシャットアウトし、勝ち点3をゲットした。

 

■最後に・・・

 前節の反省と対湘南ということも踏まえて、攻撃はシンプルなものへと改善された。ゴール前に入っていく人数、クロスの狙い(ファーサイド)も改善され、前節のような悪癖が出ていなかった。

 話は変わるが、個人的にはボールを回して崩していくスタイルが決して悪いとは思わない。というより、そういうボールを回して崩していくことと、今節のようなシンプルな攻撃を、相手の特徴や状況に合してうまく使い分けしながら出来れば素敵だなと思う。それが出来るようになったら相当な進歩。

 

 守備では早い出足で、特に前半は高い位置でボールを奪う回数が多かった。また前節は中盤の攻から守への切り替えが遅く、守備で後手を踏んでいる場面が多かったが、今節はボランチは中盤での激しい寄せでボールを回収し、サイドハーフはしっかりと相手のウイングバックへとしっかりついていけていた。先制点のシーンも奥埜が菊池に対してしっかりついていたことで、クロスに対応しボールを奪えたことはこの試合の象徴的なシーンだった。

 

 次の相手は新潟。福岡戦でも書いたが勝った次が大事。このチームには勝つこと、結果を出すことが自分たちの歩んでいる道を証明するものである。下位から中位争いへ加わることが出来るチャンスの試合。ホームで勝つこと、そしてこの勢いを加速できるな試合を期待したい!

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