テグ、本当に良かったね!!感動をありがとう!!!
っていうことで、遅れてしまったけどU-23決勝戦・日韓戦を書いていきたいと思います。
この大会では、テグはローテーションを方式を採用。というか、その試合に合ったメンバーを選んでいた。仙台時代はそんなことはなかったじゃないか!と思っちゃうけど、それは選手層、多様なタイプの選手がいるからということ。谷間の世代と言われようが代表は代表である。
決勝戦は武蔵が欠場、南野はオーストリアへお先に帰還ということで、トップは久保とオナイウのコンビ。ローテーションと言われる中でも室屋、遠藤、中島、久保あたりは重宝されている。いわゆる替えの効かない選手。
一方の韓国。ここまでの試合を見てないので、何とも言えないが、うわさによるとここまでは4312を採用してきたらしい。けどこの試合は433。中盤がスリーセンターということは共通点として見れる。
■前半韓国のデザイン
前半開始からの無秩序な時間を切り抜けると、初めにボールを保持し始めたのは韓国だった。
韓国のビルドアップは、アンカーのパク・ヨンウがセンターバックの間に落ちて、3枚にすることで日本の2トップに対して数的優位を作ってから開始する形が多かった。横幅はサイドバックが取り、両ウイングは日本の44のブロックの四角形の間に位置することが多かった。
韓国のボール循環は基本的にセンターバックからサイドバックという循環が多かった。もし低い位置でサイドバックが受けたのであれば、ウイングが横幅を取り、外外循環でボールを前進させる。韓国は、逆のインサイドハーフがボールサイドに寄ることで、サイドでの数的優位を形成していた。
5分のオフサイドになったシーンは、韓国のセンターバックの運ぶドリブルから矢島が釣られて、サイドで数的不利になり、最終的には岩波までもが引っ張り出されて真ん中を破られるシーンであった。韓国が狙いとして出来た象徴的なシーンだった。
一方の日本は、ビルドアップ時は、4411。久保がアンカーの位置まで下りてきて、アンカーのパクを引っ張り中央に出来たスペースにオナイウが入って受けるパターンが行われていた。スカウティング時にアンカーのパクが人に対しての意識が強いことが分かっていたのだろう。だから状況に応じて韓国が5バックにも見えていた。しかし、そのあとが続かない日本である。グランドの悪さと、韓国の激しいプレスの前にシュートまで持っていくシーンを作れなかった。
先制は韓国。韓国の右サイドでのルーズボールの競り合いから韓国がボールを取ると、7番のムン・チャンジンがサイドチェンジ。左サイドバックのシム・サンミンのクロスを折り返して、最後はクォン・チャンフンがボレーで先制。サイドチェンジをされたことで、日本は簡単に揺さぶられ、マークを外す格好になってしまった。今大会初めての流れの中からの失点。
その後、日本は韓国の勢いに押される時間帯が続く。それでも矢島と中島が中に入り、サイドバックへのスペースを空けることでボールを前進させるシーンが増えていった。それと同時に2トップがサイドに流れることも増えていった。
この辺から韓国も守備の修正を行う。久保に付っきりだったパクは、久保にべた付きになることなく、マークを受け渡すシーンが増えていった。また、パクが出ていった際は8番のイ・チャンミンがアンカーのポジションをカバーするシーンが見られた。よって韓国は中央が堅くなり、サイドからクロスが上がってもエアバトルで負けないという状況で守備を行うことが出来た。
前半は01で韓国リードで折り返す。
■後半脈絡のない3点
後半から日本は、オナイウを下げて原川で、433へと変更する。
目的は中盤の構成力で、相手を上回り、ペースを奪うこと。そして、点を取ること。
けど、あっさりとその野望は打ち砕かれる。47分に、韓国の右サイドで、ムン、クォンがサイドを突破。イ・チャンミンがインナーラップで、ペナルティエリアに侵入。それをチン・ソンウが反転シュートで追加点。サイドを起点にインサイドハーフで数的優位を形成。尚且つインナーラップでペナ侵入と、理想的な得点を奪った韓国であった。
日本はその後も苦しむ。というかシステムを変えたことが、機能しない。ボールは回らないし、クロスには一人しか飛び込まないしで、一向にうまくいかない日本。60分に浅野を入れて442に戻す。やることは今一度はっきりした日本であるが、流れは韓国で、普通にサイドをえぐられたり、バイタルに侵入されてピンチを招いていた。テグの言葉を借りるなら我慢の時間帯。
そしてその我慢の時間帯を切り抜けた先に待っているのは、韓国のエネルギー切れであった。65分くらいから、急に韓国の足が止まり始める。原川がペナルティエリアに侵入して惜しい場面を作ったが、この場面では原川の飛び出しに対して誰も追っていなかった。
そして67、68分に立て続けにゴールが決まる。矢島のスルーパスから浅野。山中のクロスから矢島で、あっさり同点。相手の疲弊した時間帯にゲームを振り出しに戻すことに成功した。
韓国は、この状況を打破するために、キム・ヒョン、キム・スンジュンを投入して、パワープレーに入る。けどここまでの戦いでパワープレーに慣れている日本。植田を中心に体を張って跳ね返すと、81分に中島のロビングのパスに抜け出した浅野が決めて逆転。すべて、相手の足が止まってからであり、脈絡のないシンプルな3点だった。
残りの時間帯は跳ね返すことに専念する日本。そして終盤には途中投入された豊川の本場の鹿島るで、時間を稼ぐ。そしてタイムアップ。アジアで結果が出せなかった世代がアジアを制することに成功した。ミッションコンプリート。
■最後に・・・
韓国のシン・テヨン監督は試合後のコメントで、内容は勝っていたが、試合には負けてしまった、みたいな類のコメントをしている。それは、自分たちの形みたいなのがしっかり表現できていた、けど90分続かなかったみたいなことだと思う。韓国は今まで対戦してきた中で、1番いろんなことが出来ていたチームだったと思う。チームとしての動きや連動、デザインされたプレーみたいなのが見れたし、守備の修正も出来ていた。たぶんこの監督は優秀な人だと思う。
一方の日本。脈絡のない逆転劇だった。というか韓国が足が止まり始めた65分あたりまでは完敗の内容。けど、テグにとっては勝てばいいのだということだろう。仙台時代に、90分で相手よりも1点でも多く取っていればいいじゃんみたいなことを言っていたのを思い出して、この試合はまさにそういうことなんだなと思う。
改めてテグのサッカーを見ていると戦術的な面じゃなくて、もっとサッカーの本質的な部分で見ている面が大きなと感じる。自分たちが表現したいことはあるし、それを実行したうえで勝つのが理想なんだけど、そんなのうまくいくもんじゃないと。90分通してそうじゃない、いわゆる相手の時間帯が必ずあるわけで、そういう時に焦れずに我慢して凌げるかみたいな。その時間を過ぎればまた自分たちのターンが来るんだみたいな。
こういうことを選手たちに言い聞かせるのは難しいことであって、特に代表なんかに選ばれる選手はエリートな選手たちばっかりだから理想を追い求めたくなるだろう。けどそういう選手を説得させ、ゲームマネジメントさせるかみたいなのは、本当にテグはうまいなと感じた。そういった意味でも、守り切れた初戦の北朝鮮戦の勝利はすごく意味のあったことなんじゃないかと思う。
けど、次に待ち受けるのは世界の列強である。ここまでは相手の疲弊するときを狙って、持久戦に持ち込むとか、列をなしてないけど困ったら中固めろ作戦で守り切れるとか、そういうのだと簡単にやられる。というか韓国にやられているわけだし。韓国以上のチームがリオにはゴロゴロいるわけで。なんで、もっと守備組織はこだわってやらないといけない。特に引いたときにボロが出てるし、サイドハーフの守備のポジションが曖昧だから、ボランチがすごく負担している現状もあったりするので、リオまでにその辺をどう修正するかはとてもポイントじゃないかなと思う。
この優勝で怖いのは、勝ったことによる慢心みたいなもの。現場の人間は理解しているだろうけど、メディアとかサポーターがこの優勝で行けると感じちゃったらなんか違うのかなと。この世代はどんなときでも石橋を叩いて渡ることが重要だと思うので、リオで素晴らしいゲームを見せてもらうためにも、残りの期間、テグにいいチームに仕上げてもらいたい。