ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

低調な試合の中にあるもの~J1 2ndステージ第10節 名古屋グランパスvsベガルタ仙台~

 W杯2次予選に伴う2週間の中断を経て再開されたJ1。気が付けば残りも8試合。ここからは優勝争いなり残留争いなりで、より熾烈でシビアな戦いが待ち受けている。前節、新潟に敗れ、じわりと下との差が詰まってきた仙台は今節、アウェイで名古屋との対戦となった。f:id:khigu:20191218202247p:plain

 この中断期間にナビスコ準々決勝と水曜に天皇杯があった名古屋。ナビスコはガンバにPK戦の末敗れ、天皇杯でも町田に0-1で敗戦。踏んだり蹴ったりな名古屋であるが、リーグ戦もいまいち波に乗り切れていない様子。スタメンでは矢野貴章が出場停止で、右のウイングバックに小川。ボランチには田口と磯村、2トップはナビスコで2点決めた野田隆之介と永井のコンビ。ベンチにはダニルソン、レドミ、川又らが控える。

 一方の仙台は日曜日の天皇杯・仙台大戦で3-2で勝利したものの内容に課題を残す形となってしまった。そんな仙台であるが、センターバックに鎌田が復帰、左サイドハーフは野沢ではなく奥埜、2トップはハモン、金園のコンビとなった。

 

■前半~名古屋のボランチと仙台のFW~

 この前半は3つの状況の変化の流れがあった。

 1つは試合開始から見られた名古屋の攻撃のデザインと仙台の守備セット仕方である。f:id:khigu:20191218202348p:plain

 名古屋は開始からボールを保持する。仙台はアウェイということもあり、まずは守備からという意識見られ、4-4-2でプレッシングもハーフラインを越えてから開始していた。

 名古屋は攻撃時に3-1-4-2のような変化していた。磯村が仙台の2トップの間に位置することで2トップをピン止めし、3バックが自由にボールを持てる状態にすることが第一優先だった。攻撃のルートとしては3バックから矢田と田口のところに預けるか、右の小川からの攻撃、そして永井の裏がだいたいであった。左は守備的な本多であるので、あまり起点にはならなかった。

 こうして序盤は名古屋がボールを握ることが出来ていた。

 

 そんな状況を打破するために仙台も動き出す。これが変化の2つ目。f:id:khigu:20191218202416p:plain

 試合当初は低めの位置でゲームを開始していたが、名古屋の3バックに対してあまりに自由にボールを持たせていたし、前線には永井がいるので、闘莉王などにロングフィードを簡単にさせるとどんどん相手のペースになってしまう。

 ということで仙台は、4-4-1-1の形にし、FWが縦関係になり、FWと両サイドハーフが3バックに対してプレスを掛けることで、名古屋の守備陣に自由にボールを持たせないようにさせた。

 この前プレによって仙台も次第に高い位置でボールを奪えることができ、攻撃する回数も増えていった。

 

 そして3つ目は、この仙台の守備に対する名古屋の修正である。f:id:khigu:20191218202446p:plain

 難しい話ではない。単純に田口がボランチの位置まで引いて、5vs2の状況を作り、FWをボランチに意識させることで、再度3バックに自由に持たせることである。仙台もボランチに対してボランチが当たればいいのだが、矢田もいるためにそう簡単に出ていく訳にはいかないし、まだ前半であることを踏まえ、前に掛けなかった。

 仙台は名古屋の修正に対して、中途半端な前プレを掛けることとになり、守備にズレが生じ始め、危ない場面も作られたが、最後のところでしっかり守り、前半を折り返した。

 

 互いにミスが多く、決定機も少ない前半であったが、両者の駆け引きが見られた前半だった。

 

■後半~レドミ投入の功罪~

 後半は、前半に比べて仙台のダブルボランチが名古屋のボランチにプレッシャーを掛けるシーンが増えていった。前半はより慎重な戦いであったが、後半は自分たちから仕掛けていくことで、主導権を握ろうという狙いを持った後半の入りだった。

 名古屋は62分にレドミと川又を投入する。システムは変えずに人を変えることで攻撃をさらにパワーアップしようと。個の能力勝負がより色濃く出た采配だった。

 レドミを投入したことで、名古屋は仙台を押し込むことに成功する。トップ下で起用された矢田は、ボールをもらいたがるために下りてくるために、ブロックの外から仕掛けていたが、レドミはブロックの中にいることで、仙台のボランチを下がらせた。たぶん、レドミが下がって受けるのが好きではないからだとは思うが。。。

 そしてレドミが下がらないことで、田口、磯村の両者が、前半より高い位置で攻撃に加わることが出来ていた。

 

 しかし、その一方で名古屋は、ボランチと3バックの間にスペースを与えることとなった。そこを逃すわけにはいかない仙台。ウイルソンを投入し、そんな間延びした名古屋に対して、カウンターからゴールを目指すシーンが増えていった。名古屋は攻守が分断しがちで、戻りも遅いチームであるが、レドミを投入し、走らない選手が増えたため、より名古屋の攻守分断がひどくなっていった。

 こうしてしぶとく守り、カウンターが明確になった仙台は79分に、ウイルソンのスルーパスに金久保が抜け出し、一度は止められるものの、そのボールを奥埜につなぎ、苦し紛れのシュートが決まり先制に成功した。

 あとは名古屋の攻撃を凌ぐのみ。村上と山本を両サイドハーフに代え投入し、丁寧にクローズし、試合終了。仙台が4試合ぶりの勝ち点3を手に入れることに成功した。

 

■最後に・・・

 本音を言えば低調な試合だった。両者の最近の調子がそのままピッチに反映された展開だった。けど、勝ち点3をもぎ取ったのでそれはそれで良しとすべき。当面は残留を目指す戦いを強いられるので、内容悪くとも勝ち点3を取れたこと以上のことはない。

 試合を分けたのは、データに裏付けされているのように走りの量だった。名古屋の101.86に対して、仙台は110.91。名古屋の個別の走行距離を見ると1人も10を超す選手はいなかった。個人的には数値化されたデータで語ることはあまり好きではないが、この試合に限ってはこの数字が試合にそのまま反映されていると思う。どれだけ名古屋の選手が攻守の切り替えが遅くサボっていたのかが良く分かる。そんなチームに対して仙台は、しっかりコンパクトに陣形を保ち、そして攻守の切り替えを早くすることで名古屋を上回った。

 

 次の相手は湘南。今回みたいに簡単にスペースを与えてくれるチームではもちろんない。お互いによく走るチームだけあって、重要になってくるのは球際や切り替えの部分になってきそう。

 とにかくこの流れを持続させることが仙台には大切なことになってくるので、粘り強く戦うことが今後ともポイントになってくる。勝って兜の緒を締める。ということで次も我慢強く闘う姿勢を見せてもらいたい!