ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

奇襲は成功したけれど・・・~J1 2ndステージ第7節 鹿島アントラーズvsベガルタ仙台~

 ミッドウィークの松本戦で、ようやく2ndステージ初勝利を挙げた仙台。今節は中3日でのアウェイ・鹿島戦。鹿島は監督交代後、目下3連勝中である。

スタメン

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 仙台は前節からキム・ミンテに代えて金久保。それ以外は変更点はない。一方の鹿島は、この連勝中もメンバーを毎試合入れ替えている模様。今節はここまでの4-2-3-1ではなく、4-4-2で、ダヴィと赤崎の2トップ。ボランチには前節はベンチスタートの柴崎が復帰。

 

前半~奇襲~

 今節は仙台がエンドを変えてキックオフ。

 前回対戦同様、4-1-4-1の布陣で入った仙台。もちろん、相手の心臓である小笠原と柴崎をケアするところからゲームをスタートさせる。f:id:khigu:20191218201408p:plain

 で、3分で先制に成功する。相手のバックパスを逃さない仙台は前プレを掛け、昌子のパスミスを誘うとリャンが拾って最後は野沢。仙台は見事に奇襲を成功させた。

 ここから少しずつゲームが落ち着いてくるのだが、仙台の本当の狙いどころはボランチのポジションではなく、センターバックのところと分かってくる。ゲームコントロールボランチコンビに任せているため、自分たちでビルドアップするのはさほど得意ではない。よってボランチにマンツーマン気味で付かれると苦しくなる。先制点の場面でも昌子はボランチにマークが付かれていたために完全に慌ててしまった。

 仙台は、スカウティング通りに先制に成功し、その後もうまく4141でブロックを敷き、相手の攻撃を防いでいく。とくに前回対戦のように富田の周りに注意する選手がいないために、富田は自由を謳歌して、最後の奪いどころでしっかりボールを絡め取っていた。

 鹿島は、ダヴィが完全に攻撃のストッパーになっていた。どうしてもダヴィに入ると自分で打開しがちになり、攻撃に連動性が失われていった。遠藤は徐々に状況を把握し、アンカー脇で受けようとしていたが、フィニッシュはすべてペナルティエリア外からで、怖いものではなかった。

 そして27分に六反のキックから金園がフリックして野沢の左足で追加点を決め、仙台はさらにプラン通りに事を進めることに成功する。

 

 状況を変えたい鹿島は、前半のうちに中村からカイオにスイッチ。この辺から鹿島はリズムを取り戻すようになっていく。

 仙台は、前半の守備は安定していたものの、奪ったボールを丁寧に運べず、自陣で奪われる展開が多かった。繋ぎたい意識は伝わるが、パスがずれたり、ドリブルを止められたりで、自分たちで苦しい場面を作ってしまうのは多々あった。

 そして42分の失点も自陣でボールを奪ったにも関わらず、それを奪い返されてからの失点だった。右からのクロスに左サイドバックの山本が合わせて1点差。右の西に対しての野沢の寄せが明らかに甘いし、距離が遠すぎた。野沢だからと言ってしまえばそれまでだが、前半のうちに1点返されたのはかなり余計だった。

 

 ということで仙台がリードして折り返すんだけど、最後が余計な前半だった。

 

後半~適切な選手交代~f:id:khigu:20191218201505p:plain

 鹿島は後半スタートから、イマイチなダヴィに代えて金崎。システムを4-2-3-1に変更。

 鹿島の狙いは2つ。1つは4-1-4-1の脇から、金崎がどんどん顔を出し起点を作ることである。金崎の投入で鹿島は連動した攻撃が徐々にでき始めた。そういった意味ではダヴィを外すという判断はとても良かった。

 もう1つの狙いは仙台の左サイド。鹿島の1点目でも起点になったように、仙台の守備のウィークポイントは左サイドである。二見と野沢であるから、どうしても守備に不安がある。

 ということで鹿島はこの2つのところから仙台のブロックを崩そうという意思が見えていた。実際にカイオと金崎の投入前後では攻撃はかなり修正できたと感じた。それに前半ひどかった後方のビルドアップも、仙台が前からプレスを掛けれなくなったこともあるが、シンプルにサイドバックに任すシーンが多くなった。よって鹿島はボールの前進に迷いがなくなった。

 

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 仙台も4-1-4-1が90分で持つとは思っていなかったと思う。相手が鹿島であるし、どこかで相手も修正し、狙いどころをハッキリさせるだろうと。ということで後半の仙台のポイントはその後のプランBを持っているかどうかだと思った。守備が徐々にまずくなった後半の早い段階で野沢からミンテにスイッチし、いつもの442で、中央のスペースを狭くし、金崎や遠藤、カイオなど中央に侵入してくる相手を対応する。これが仙台のプランBだった。定石といったところだろうか。

 確かに、鹿島の攻撃に対して、ある程度中央をやられなくなった仙台であるが、次なる問題が発生する。それは押し上げられないこと。夏場の連戦で、しかも前節から選手がほとんど変わっていない状況なので、守備で選手が疲弊し押上げが効かなくなり、自陣に籠りっぱなしの展開に陥ってしまった。

 仙台はここでハモンを入れる。あくまで前線に選手を投入して、押上げで点を取りに行く意思を捨てなかった。そして最後も奥埜から藤村で、前線を変えた。あくまで前線から行くということ、前線からプレスを掛けて押し上げようということも考えていたのかもしれない。

 しかし、仙台の守備は決壊する。82分に左から山本のアーリークロスを大外で待っていた西が折り返し、途中出場の土居が決めて同点。足が止まった仙台に対して畳みかける鹿島は、88分にも遠藤→柴崎→土居で逆転。そしてタイムアップ。

 足が止まり、相手の適切な交代でやられた仙台は2点のリードを活かしきれず逆転負けを喫した。

 

最後に・・・

 鹿島は勝負所をラスト10分とみていたのかもしれない。最初の2枚は早目の切り方だったが、最後はここぞというところで土居を投入し、勝負に出た。仙台が疲弊していたのは明々白々だったので、最後まで我慢してジャブを打ち続け、相手のへばったとき、スパートをかけて、ぼこぼこにしたという感じだろうか。鹿島は、選手を上手に起用し、その選手たちも期待に応え、逆転に成功することができた。

 逆に仙台は、途中で入った選手が機能しなかった。前節はみんなしっかりタスクをこなしていたんだが。。。特に2,3枚目の交代は、「アリ」だとは思う。もちろん疲労していた二見なり金久保なりを変える手段もあったが、あくまで前線からの押上げを選んだのは決して悪い選択ではなかった。しかしハモンにしろ藤村にしろ試合にうまくはいることが出来なかった。そこが鹿島との差を生んでしまった1つの原因ではないだろうか。

 総合力で相手が上だったといえばそれまでだが、2点のリードがあったので、もっとよいゲームの進め方が出来たのではないかと思う。まぁ、どれもこれも経験である。まだ上を向いて歩ける時期だし、希望を持って闘うべきである。

 

 次は首位・浦和。次もアウェイである。ここ2試合で渡邉氏はいろいろ仕込んでいるのし、チャレンジしようとする意志が見えるので、このチャレンジを続けてもらいたい。厳しい相手ではあるが、今節の反省を活かして闘う姿勢を見せてもらいたい!!