ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

期待と不安の中で今シーズンのベガルタ仙台について

 今年もいよいよ開幕の足音が近づいてきた。2015年のJリーグの開幕ももう間もなくである。今シーズンは2ステージ&チャンピオンシップという前までの大会方式(チャンピオンシップは前より複雑だけど・・・)に戻り、Jリーグにとってはまた新たな幕開けのシーズンになる。

 そしてまた、ベガルタ仙台にとっても新たなチームの幕開けといって過言ではないだろう。ここ数シーズンの好成績と昨年の苦しい残留争いに貢献してくれた角田、赤嶺、太田、武藤、広大がチームを去り、また桜井や中原といったベテラン勢もいなくなり、12人もの選手がいなくなった。そしてその代わりにレンタルバックの3人を含む12人の選手が加わった。多くの選手が出入りしたことで、仙台はまた新たなチームとしてJ1の舞台で戦うこととなる。

 ということで今回は、今シーズンのベガルタ仙台について考えていきたいと思う。

今シーズンの態勢

 まずは今シーズンも渡邉晋氏が指揮をとることになった。昨年の最悪の状態から立て直し、なんとか残留まで導かせた手腕は素晴らしかった。今シーズンは昨年とは違い、キャンプ時からチーム作りをすることになるので、渡邉監督がしたいことができるのは今シーズンからといっていいだろう。昨年の反省を活かし、よいチームに作り上げてもらいたい。そんな渡邉監督は、チームのテーマとして「挽回と献身」、戦術的なテーマとしては「堅守”賢”攻」を掲げ、それを達成するための3つの要素として「走力」「球際」「切り替え」を挙げた。渡邉監督らしい実直で分かりやすいワードである。そのなかでも「堅守”賢”攻」は今シーズンの仙台にとって重要なワードになってくる。テーマとして掲げていることは2年前に手倉森前々監督が言っていた「柔軟性」というところと似ていると思う。単に「堅守速攻」だけではなく、相手にひかれた時に自分たちで打開していく力も備えつけていくといったことである。2013年はだいぶポゼッションが独り歩きし、全体的に優勝争いしていた時のチームのバランスを失ってしまったが、本来目指すべきものはカウンターもできれば、ポゼッションでも打開できるチームである。今回もまずはここを目指していくためのシーズンになっていくだろう。

 それでもなお、一番重要なのは「堅守の復活」であり、たびたび渡邉監督が言っているように、まずは昨年の50失点を喫してしまった守備の再建に取り掛かることが第一であり、その先に「堅守”賢”攻」が見えてくるのだと思う。

 

 そして、前述のように今シーズンは多くの選手の出入りがあった。これは単に引き抜かれた面もあるが、多くの選手が30代に突入し始め、チームの新陳代謝が悪くなったことも踏まえ多くの選手を入れ替えた面もある。いわば若返りである。今回の出入りにより仙台は、平均年齢が昨年の28.7歳から26.3歳と年齢的に見れば若返りに成功することができた。またその一方で昨年の残留争いに大きく貢献した石川、富田、リャン、野沢、ウイルソンといった選手の慰留に成功したことは今オフの収穫といえよう。

ポジション別戦力チェック

 次にポジション別での視点で今シーズンの仙台を考えていきたい。

 何度も書いている通り、今シーズンはチームの核であった角田、赤嶺、太田などが抜けたことで、多くのポジションで何かしらの変化がありそうなシーズンになりそうである。そのことによって、サッカー自体にも何かしらの変化があってくるのではないかと個人的には考えている。では、GKとDFから見ていく。

GK&DF

・GK(六反(←横浜FM)、ダニエル、関、石川慧(←秋田))

 GKは昨シーズン33試合出場の関を筆頭に、マリノスから加入の六反、ダニエル、秋田からのレンタルバックの石川と仙台としては珍しい4人体制となった。その中でも今シーズンは関と六反の定位置争いになってくると思う。もしかすると林がいたころのようにシーズン通して1人がゴールマウスを守るのではなく、関と六反はたまたあとの2人でコンディションがいい選手が出場する形になっていくのかもしれない。ここまでの練習試合を見ていると関が主力組で入る形が多いらしいがシーズンに入ってみないとこのポジションは誰が出るのかわからない。

・CB(鎌田、渡部(←柏)、上本、多々良(←松本))

 CBは、広大や角田が抜けたことにより柏から渡部、松本から多々良を補強。特に渡部は柏で1シーズン通して出場していた選手だけに期待は大きい。このポジションは鎌田が軸でその相方を3人が争う形になっていく。特に渡部か上本になっていくと思うが、ここも練習試合を見ていると渡部が主力組で出ることが多く、鎌田と渡部が組む可能性が大きい。このポジションは仙台が堅守を取り戻すために肝となってくるポジションなので、いいチーム内競争が求められる。どの選手が出ても問題ないポジションになることを期待したい。

・右SB(菅井、蜂須賀)

 このポジションはずっと菅井が務めてきただけあって、大きな変化はないと思う。しかし菅井はここ数シーズンケガで欠場することが増えているので蜂須賀やまたは村上といった選手も重宝される。仙台にとって右SBは攻撃において大事なポジションの1つだけに、誰が入るかによって変わってくると個人的には思う。

・左SB(石川直樹、村上、二見)

 こちらも同様に基本は石川直樹が務めていくと予想。ただ個人的には二見の成長に期待したい。昨年は開幕から先発で出たもののなかなか結果が出せず苦労したので、今シーズンこそは悔しさと昨シーズン経験したものを糧に成長し、石川直樹とのレギュラー争いにチャレンジしてもらいたい。

MF

ボランチ(キム・ミンテ(←光云大学)、リャン、富田、藤村、武井)

 ボランチは昨年の終盤からコンビを組むリャンと富田が軸となってくると予想。角田がいなくなり守備のフィルター役の即戦力がいなくなってしまったのは不安材料としてあるが、リャンと今年からキャプテンの富田が賢い守備でそのあたりはクリアしてくれると期待したい。また武井やアンダー世代の韓国代表の招集歴のあるルーキーのキム・ミンテ、オフにダニエルとスペインへ武者修行へ行った藤村などポテンシャルのある選手が揃う。またいざとなれば蜂須賀が大学時代にこのポジションを経験しているので、蜂須賀をフィルター役としてボランチで起用することも個人的には面白いと考えている。

・左SH(野沢)

 昨年の途中から野沢が左SHに君臨することで多くのチャンスを演出してきた。ボランチのリャンと石川直樹とのコンビネーションは特に素晴らしかった。よってここは野沢がファーストチョイスになってくるであろうと考える。しかし野沢も今年で34歳となるため1シーズン通して同じパフォーマンスを求めるのは難しい。なのでここは新戦力の金久保や杉浦、またはリャンが務めることもある可能性は非常に大きい。また今シーズンは野沢への依存度が高くなると危ないかもしれない。野沢がいなくても勝てるような集団にしていくこともポイントになるだろう。

・右SH(奥埜(←長崎)、金久保(←川崎F)、杉浦(←神戸)、茂木(←仙台ユース))

 昨年まで3シーズン連続で全試合出場を果たした太田が磐田へ移籍したためこのポジションが最も予想が付かないポジションである。このポジションは年間通してもいろんな選手が務めるポジションになってくるかもしれない。練習試合を見ると奥埜や茂木が入るケースがある。特に茂木はユース上がりながら、さっそく主力組で練習試合に出ていたり、ゴールなど結果を残しているのを見ると開幕戦でメンバー入りを果たすかもしれない。

 このポジションは菅井という特殊なSBとコンビを組むために、歴代の右SHは関口や太田のような縦に素早く帰陣していく運動量とスピードが求められるポジションだったので、今シーズンもそのような組み合わせにしていくかまたは違ったタイプの選手を置くのか、その辺で今シーズンの仙台のサッカーは変わっていくのかもしれないと思う。とにかくこのポジションは誰が入っても面白いし、読めないポジションである。

FW

ウイルソン、金園(←磐田)、ハモン、山本(←松本)、西村(富山第一高))

 最後はFW。ここ数シーズンFWの軸として存在していた赤嶺がガンバへ移籍したため、ウイルソンが残ったもののある程度の変化が見られるだろう。まずはウイルソンがFWの軸となっていくがその相方として磐田から加入の金園、松本から復帰の山本、ハモンがあげられる。練習試合ではハモンがハットトリックのアピールをするなど好調をキープ。最初は金園が有力かと思っていたが、ハモンが相方の可能性も十分にある。また山本も昨シーズン松本に途中加入ながら7点を挙げるなど反町監督のもとで成長することができた。J1の舞台でも泥臭く得点を稼ぎ計算のできるFWになってもらいたい。そして金園はケガがちでありながらもポテンシャルは確か。新天地での復活に期待したい。そしてこのポジションで練習試合で結果を出している奥埜も候補に入ってくるかもしれない。

 昨年までは前線の起点となっていた赤嶺がいなくなったことで、前線の起点をどのように作っていくのか。この辺も仙台が変わっていく1つのポイントになってくるかもしれない。

最後に・・・

 ここまでこのような分析っぽい(?)ことをしてきたが、今シーズンは個人的には残留出来ればいいと思ってます。多くの選手が出入りしてまた新たにチームを作って成績を残していくのはそう簡単なことではないし、それをJ1という舞台でやるのだからJ2で若手を起用していたころとはまた違い、結果を求められながら世代交代をしていかなければなりません。仙台にとってはまた新たなチャレンジへ踏み出す一年になります。まずは強くなるための1年として仙台らしく我慢強い闘いを見せていけばいいと思います。

 また今シーズンの陣容について期待だけではなく不安もあります。というのも赤嶺、角田というセンターラインの軸となる選手が去り、その代わりの選手が見当たらないということです。ここはこれから戦ううえでもしかすると問題点になってくるかもしれません。今シーズン中に新しいセンターラインの軸となる選手を見つけることが出来れば、仙台はいい結果を残せるかもしれません。個人的には散々言ってきたもののこの「センターライン」が一番大きなカギを握っていると考えています。

 いろいろと不安なことも書きましたが、開幕はみちのくダービー。山形だけには負けるわけにはいきません!!新生ベガルタ仙台が開幕戦のユアスタのピッチで躍動してくれることを願い、そして今シーズンが実り多き一年になることを期待したい!!!