さて、今回は徳島ヴォルティス戦を振り返ります。
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スタメン
ベガルタ仙台は、前節・栃木SC戦で勝利。5連敗からようやく抜けることができた。栃木戦では攻撃時と守備時で立ち位置が変わる可変式を採用しさっそく伊藤色が見え始めた。今節はリーグ最少失点の守備と丁寧なボール保持をベースに戦う徳島との対戦。ホームの声援を背に難敵を倒したいところだ。
仙台は前節からスタメンの変更はなし。ベンチには氣田に代わって石原がメンバー入りを果たしている。
一方の徳島ヴォルティスは、ファジアーノ岡山を下し14試合負けなしとなっている。今シーズンはここまで21分けと勝ち切れない試合も多いが、着実にプレーオフ圏内へと近づいている。岡山に続いて仙台を倒すことで一気にプレーオフ圏内へ近づきたい一戦だ。
今節はセンターバックの内田が出場停止。代わりに安部がセンターバックの一角を務める。また右サイドバックに新井、ワントップに一美を起用した。
前半
(1)前から人を捕まえに行く仙台
前半はお互いにボールを保持する場面がありながら、両チームの駆け引きが面白い内容だった。前半はそんなところを振り返ることにしたい。
まずは徳島がボールを保持する局面から。
徳島のボール保持は基本的に4-3-3の陣形を崩さずに各選手が列やレーンを移動しながらパスコースを形成して前進をしていく。
また両ウイングが斜めのランニングで後方からのロングフィードに抜け出すシーンも数多くあった。
そんな徳島のボール保持に対して仙台は徳島陣内から人を捕まえて積極的に前からハメに行こうとする。
仙台は徳島のセンターバックに対して中山とシャドーの一角がプレスに行く。ここは遠藤が安部に対してプレスを掛けることが多かった。またアンカーの白井にはフォギーニョが前へ出てきて捕まえる。
徳島がサイドバックへボールを渡したら、ウイングバックが縦スライドでプレスに行く。右サイドの真瀬は、田向に対して迷わずに行けるシーンが多かった。一方の左サイドは、初めは新井に中島が行くのか蜂須賀が行くのかで迷いがあったが時間の経過とともに整理されていった。
また、前線で人を捕まえる代わりに後方は同数を受け入れる。ロングボールで前線へ供給されたら3バックを中心に前を向かせず、奪いに行く。
加えて徳島が仙台陣内へと押し込んだら、仙台は5-4-1のブロックへとシフトチェンジし、中央を堅く守って対応していった。
仙台は敵陣では積極的に人を捕まえボールを奪いに行く姿勢を見せて、自陣では割り切って守備をすることが整理されていた印象だった。
(2)仙台のボール保持vs徳島のボール非保持~ハイレベルな駆け引き~
一方で仙台がボールを保持した局面では、短い時間のなかで多くの駆け引きが行われていた。
仙台のボール保持は栃木戦同様に4-3-3で行う。中盤では中島とフォギーニョがポジションを入れ替えたり、遠藤が自由な動きからボールを引き出すことで、ボール保持を安定させていった。
また自陣から組み立てていくだけではなく、センターバックからの対角フィードを織り交ぜながら一気に敵陣深くまで前進する。右サイドでは真瀬が、左サイドでは中島とポジションを入れ替えた蜂須賀が積極的に抜け出していくシーンが目立った。
一方の徳島はキックオフから4-1-4-1の配置から積極的にプレスに行くというよりかはある程度構えて守備をスタートしていた。
しかし、時間の経過とともに徐々にプレスを仕掛る。仙台のセンターバックに対して両ウイングが外切り(サイドバックへのパスコースを消す)しながらプレスを掛けるようになる。このウイングのプレスで縦パスを誘発させ、中盤で奪ってショートカウンターを狙うような形だったと思われる。
しかし仙台もすかさず対応する。今度は若狭が内側に入って松下をサポートする。これでウイングのプレスを無効化し、かつ徳島のインサイドハーフをくぎ付けにする。この立ち位置を取ることで今度は徳島のアンカー脇が空くようになり、そこへ小畑やセンターバックからボールが送られることで徳島のプレッシングを掻い潜って前進することができるようになる。
そんな仙台の変更に対して徳島はインサイドハーフの児玉を一列前に上げ、杉本と白井のダブルボランチにし、4-4-2の陣形で対応するようになる。
この変更でアンカー脇のスペースを消し、また一美と児玉が松下と若狭を監視することで仙台が狙いにしていたことを消すことができた。
この一連の駆け引きが20分から35分あたりに行われており、非常にハイレベルな駆け引きとなった。
その後試合は、40分に遠藤が田向との競り合いで肘を突き出していしまい、これが2枚のイエローカードで退場となる。ここで一気にゲームの流れが変わった。
残り5分を仙台は5-3-1の陣形に変更して、まずは前半をなんとかやり過ごしてスコアレスと折り返す。
後半
(1)3センター脇から攻め入った徳島と勇気を持って前へ出て行った仙台
改めて仙台の陣形を整理すると、遠藤の退場後は5-3-1の布陣となり、松下のアンカーにフォギーニョと中島がインサイドハーフになった。
一方の徳島は、前半終了間際にイエローカードをもらったカカから石井に代わっている。
5-3-1で守備ブロックを組む仙台に対して、徳島は3センター脇のスペースを起点に攻め入ることが主な狙いだった。インサイドハーフやサイドバックが受けて仙台の3センターにスライドをさせながら、隙あらばブロック内に侵入、または大外からのクロスからチャンス作り出そうとする。
そして徳島が後半開始の早い段階で先制に成功する。
2022明治安田生命J2リーグ第37節#ベガルタ仙台 1-1 #徳島ヴォルティス
— 徳島ヴォルティス 公式🔜9/25水戸戦(H) (@vortis_pr) 2022年9月18日
49分 #一美和成⚽️@1110Kazunari #vortis pic.twitter.com/AgD6w3oTYZ
仙台を押し込んだ流れから、新井のクロスに西谷が折り返して最後は一美が押し込む。
仙台としては後半開始で、慎重になってしまったことでズルズルとラインを下げてしまい、簡単にクロスを上げさせてしまった。
1人少なく、かつ先制点を許す苦しい状況となった仙台だが、それでも全員が勇気を持って前へ出て行く。それが実ったのが58分の同点ゴールに繋がった。
🎦 ゴール動画
— Jリーグ(日本プロサッカーリーグ) (@J_League) 2022年9月18日
🏆 明治安田生命J2リーグ 第37節
🆚 仙台vs徳島
🔢 1-1
⌚️ 57分
⚽️ 真瀬 拓海(仙台)#Jリーグ#仙台徳島 pic.twitter.com/AJrpBLpHv0
自陣で若狭から松下へのパスで徳島のプレスを剥がし右サイドへ展開。そこから左サイドにもう1回展開し、攻め上がったキム・テヒョンのクロスに真瀬が合わせて同点ゴールを決める。
ポイントは若狭から松下のパスでプレスを剥がせたことだろう。徳島のプレスが誰が誰に行くのかが曖昧になっていたこともあるが、若狭のパスで一気に展開をひっくり返せたので攻撃へ転じることができた。
(2)守備の強度を保ちながら耐え凌ぐ仙台
仙台は同点直後に中島から石原に交代。65分には松下とフォギーニョを代えてリャンと名倉を投入する。連戦で疲労が溜まり、また3センターがスライドで頑張らなければならない展開で早めに3センターを変えることで守備の強度を保ちながら、前へ出て行くエネルギーも残す交代となった。
一方の徳島は田向と一美に代えてエウシーニョと藤尾を投入。新井とエウシーニョがサイドバックになったことで、彼ら自身が斜めに侵入したりブロック内へパスを送ることが増えていった。
その後は70分に玄と浜下を投入し、早い段階で交代カードを切り終え、仙台の守備に対して何回も仕掛けていくが、クロが合わなかったり、ブロック内でのパスがズレたりして崩し切ることができない。
仙台は77分に蜂須賀と中山から内田と富樫を投入する。終盤に差し迫っていくなかで守備に追われる時間が長くなり、徐々に疲労から前へ出て行くパワーがなくなっていく。
それでも守備の集中力を保ちながら、3バックを中心に食らい付いていく。特に徳島がシュート態勢に入ったときに体を投げ出していったシーンが数多くあったことが印象的だった。
アディショナルタイムにはフリーキックの二次攻撃からエウシーニョの折り返しに藤尾が合わせてネットを揺らすもエウシーニョのポジションがオフサイドと判定され、ノーゴールに。リプレイを見ると微妙な判定だったが、守備で耐えた仙台に最後は運が味方してくれたように思う。
終盤まで集中力が切れなかった仙台は、10人でかつ先制点を奪われながらも追いつき、勝点1を獲得した。
最後に・・・
前半は両者ともに非常にハイレベルな駆け引きがあり面白い試合だったが、退場者が出たことで内容が一変した。
昇格を目指すなかで勝点3をホームで奪えなかったことは痛いが、10人で先制点を奪われた状況のなかでも、勇気を持って前へ出て追いつけたことは今後に繋がると思うし、守備でも体を投げ出して耐えれたことも残り5試合への試金石になったと思う。
これで今シーズン最後の連戦が終わり、残り試合はすべて1週間の準備期間が作れる。伊藤色が出てきたなかで、プラスアルファで対戦相手に応じた対策を練られるかがポイントとなる。
次節はアウェイで3位・ファジアーノ岡山との対戦。初の昇格を目指すなかで今一番波に乗っているチームと言っても過言ではない。まずはチャレンジャーとして、トレーニングからいい準備をして、岡山へ立ち向かって欲しい!!