ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

Death Match~明治安田生命J1第33節 清水エスパルスvsベガルタ仙台~

 さて、今回は清水エスパルス戦を振り返ります。

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スタメン

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 ベガルタ仙台は、第31節・大分トリニータ戦で2-0の勝利。これでアウェイでは3連勝となった。残り2試合となったリーグ戦だが、清水エスパルス湘南ベルマーレとすぐ上の順位のチームが続くだけに、連勝をし、最下位脱出してリーグ戦を走り切りたい仙台である。

 今節は、大分戦と同様の11人とシステム。ベンチには柳が入った。

 一方の清水エスパルスも、今シーズンは非常に苦しいシーズンを過ごした。クラモフスキー監督になった今シーズンだが、なかなか結果に結びつかずに平岡監督へスイッチ。11月は、3勝1分1敗と立て直しに成功した。この試合に勝利することで最下位を免れたい一戦だ。

 中3日で迎える今節は、3人のメンバーを入れ替えて挑む。中盤の核となっていたヘナト・アウグスト、チームトップスコアラーのカルリーニョスは欠場となっている。

 

前半

(1)狩りたい仙台、引き付けたい清水

 前半、まず序盤でポイントになったのは、中盤のエリアだった。

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 この試合でも前からプレッシングに行くことで、高い位置でボールを奪いたい仙台。

 この試合は清水は4-4-2であるので、清水のビルドアップ隊に前線3枚がプレッシングに行き、その後方もボランチウイングバックが連動して、前へ圧力を掛けることで、清水から時間とスペースを奪い、ボールを奪ってショートカウンター発動を狙った。

 しかし、一方の清水もそんな仙台のプレッシングに対して、センターバックボランチからボランチ背後にポジショニングしていたサイドハーフや2トップにボールを預けることで、攻撃を加速させることを狙った。

 特に清水は、自分たちのボランチ(竹内と宮本)に対して、仙台のボランチ(椎橋と松下)がプレスに来ることがあったので、そこを引き付けて背後を突きたい狙いだった。

 

 そんな攻防のなかで、アウェイである仙台は、次第に前からプレッシングに行かなくなる。

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 仙台は、無理なプレッシングはやめて、まずは清水の狙いたいスペースを消すことを優先してブロックを組むようになる。

 これで清水にボールを持たれる時間は長くなったが、むやみなプレッシングから、ボランチ背後を突かれてしまうようなシーンはなくなった。反対に仙台が中盤のエリアでボールを引っかけることで、カウンターへと持っていくシーンが増えるようになった。

 

 守備から次第にペースを握れてきた仙台は17分にコーナーキックから先制点を奪う。

松下の左コーナーキックにファーで蜂須賀が合わせて先制。マンツーマンの清水に対して、あえてターゲットとなる長沢やシマオ・マテ、平岡を越えて蜂須賀に合わせたのは狙い通りだっただろう。11分にもどうように松下はファーに蹴っているが、あれが伏線となった。

 

しかし、29分に同点に追いつかれる。

 この西澤の得点は、清水にとっては狙い通りの得点だっただろう。中盤のエリアでボランチを引き付けて、その背後に金子と西澤が潜り込んでのゴールだった。後藤のランニングで、最終ランを押し下げたこともポイントになった。

(2)広げて、前進していく仙台

 同点にされた仙台だが、前半はスムーズにボールを前進させることができていた。

 よって、相手を押し込んで攻める場面もあった。

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 この試合の仙台は、ボールを奪ったらシンプルにサイドへ広げたり、前を向いているシャドーに預けて前進するシーンが多かった。

 大分戦では、ボールを奪えても相手のプレスを掻い潜れずに、再び奪われることが多かったが、この試合は奪った3バックやボランチがシンプルにサイドへ広げて、そこから前進していくことで、相手の深いエリアまでボールを運べるシーンを増やせることができた。

 また、そこからシンプルに長沢や山田を目掛けてクロスを送り、それが跳ね返されてもセカンドボールを松下や椎橋が拾うことで二次攻撃へと繋げられることもできた。ここも1つの狙いだろう。

そして45分に勝ち越し。

 このシーンでもシマオ・マテが横へ広げたところがスタート。また、クロスのセカンドボールを拾って、松下が最後はミドルシュートで決めている。まさに狙い通りな攻撃からの得点と言えよう。

 

 前半は、一時は同点に追いつかれたものの終了間際に突き放して折り返すことができた。

 

後半

(1)背後への意識で仙台を押し込んでいく清水

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 後半開始から仙台は足首を痛めた長沢から西村。清水は河井、中村、ドゥトラの3人を一気に代えて挑んだ。

 

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 後半は1点ビハインドの清水が、攻勢を強める展開となっていった。

 清水は、後半に入ると前半から裏へのランニングを繰り返していた後藤をシンプルに使うようになる。

 また後半から投入された中村がサイドから斜めにドリブルして侵入することで、相手を引き付ける。またファン・ソッコが高い位置を取れるようになった。

 このことで次第に清水が押し込む時間帯が長くなっていった。

 

 仙台は、長沢から西村になったことで前線に起点が作れないことや、全体のラインが下がってしまったために、ボールを奪ってもサイドへ展開して、そこから前進していくシーンを作り出すことができなくなっていった。

 なので、大分戦同様に後半は我慢の時間帯が長くなっていった。

 

 しかし、大分戦のように耐え切ることができなかった。

 これも1失点目同様に、自陣で構えていた状況からの失点だった。跳ね返しきれずにセカンドボールを奪われるとファン・ソッコの丁寧なクロスにドゥトラが合わせて同点に追いつかれる。

 

(2)前輪駆動。勝ちに出た仙台

  同点に追いつかれた仙台。この失点でドゥトラと競り合った平岡が負傷交代。柳へとスイッチした。

 

 その後、仙台が勝負に出たのは76分の交代からだった。

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  浜崎とゲデスの投入で4-3-3に変更した。

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 この変更で、ここまで自陣に引いていた時間帯が長くなっていたが、リスク承知で前からプレッシングを掛けに行くようになる。

 気合と根性な部分もあったので、多少距離が遠くなり、プレスへ行く距離が長くなったりしたことで、ファウルで止めることが多くなり、次第にゲームの熱量は上がっていった。

 清水も仙台が4-3-3にしたことで、ベンチから「アンカーの脇!」、「5番の脇!」という言葉が聞こえてきたが、仙台もプレッシングにより清水から時間とスペースを奪うことで、アンカー脇を攻めさせなかった。

 

 そして、86分に勝ち越しに成功する。

  照山がドゥトラにファウルを受けてフリーキックを得る。松下と浜崎は、中へ送るそぶりを見せながら、浜崎が最後はゴールへ蹴り込んだ。まさに駆け引き勝ち。見事なフリーキックで清水を突き放すことに成功した。

 

 残りアディショナルタイムを加えた10分間は清水のパワープレーを跳ね返していく展開に。シマオ・マテ、照山を中心に跳ね返し続けた仙台。

 裏天王山をものにした仙台は最下位を脱出。16位まで順位を上げた。

 

最後に・・・

  まさに死闘。デスマッチ。久々に痺れる展開で、チームにとって非常に大きな勝点3を手にすることができた。

 清水よりも準備期間が長かったこともあるが、セットプレーの策略や、大分戦での反省を生かして、それが得点に結びついたのは良かった点だった。

 

 残るゲームもあと1試合となった。次節はホームで湘南ベルマーレを迎える。最後にこのチームで笑って有終の美を飾りたい。今シーズンの集大成をユアスタの地で見せてくれることを期待したい!!

木山隆之の真骨頂~明治安田生命J1第31節 大分トリニータvsベガルタ仙台~

  さて、今回は大分トリニータ戦を振り返ります。残すところラスト3試合。

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スタメン

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 ベガルタ仙台は火曜日に行われた柏レイソル戦で0-2の敗戦。5バックで堅く守る柏の守備陣を崩しきれずに、クリスティアーノとオルンガにやられた試合だった。今節を残してラスト3試合となったなかで、いかに自分たちの戦いに価値を見出せるかがテーマになってきている。

 今節は3-4-2-1を採用。シマオは久々のスタメンで照山はリーグ初先発となった。また、松下と崇兆がそれぞれ前節と代わって起用されている。

 一方の大分トリニータは、前節・名古屋グランパス戦でスコアレスドロー。今シーズンは昨シーズンほどの躍進は遂げられなかったが、着実に勝ち点を稼いでいた印象がある。こちらも来シーズンに向けてどれくらいの上積みができるかどうかというラスト5試合となった。

 大分は前節から4人メンバーを入れ替えて挑む。両ウイングバックに松本と田中達也。前線3枚は知念を頂点に野村と町田が並ぶ形となった。

 

前半

(1)開始17秒の先制パンチ

 試合は開始早々の17秒で動いた。

 仙台のキックオフの流れから右サイドを攻略すると、蜂須賀のクロスにファーで崇兆が合わせて先制点を決める。

 崇兆は嬉しいJ1初得点となった。仙台にとっては、アウェイでかつ守備に重きを置きたい前半に先手を取れたことは非常にゲームを進めやすくなった。

 

(2)大分のボール保持に対する仙台の守備

 開始早々に得点を取れた仙台。アウェイということもあり、まずは守備に重きを置いて戦うことをテーマとしていたと思う。

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 この試合の仙台はシステムを3-4-2-1にし、大分に対して守備の基準点をハッキリさせることで、守備の安定を図ろうとしていた。

 ボール保持時に、ボランチが下りて後方が4枚となる大分のビルドアップ隊に対して、前線3枚が前からプレッシングを行うシーンがあった。長沢はアンカーとなる長谷川を消しながら、センターバックへプレス。クエンカと山田は岩田と三竿のコースを消しながら、外から中にプレスを掛けていた。

 しかし、仙台のボランチのエリアで、大分のシャドーである野村と町田が受けることで、プレスを回避させることもあり、大分にプレッシングを剥がされ、サイドから押し込まれる展開もしばしばあった。

 

 ということで、仙台は飲水タイムに修正を図る。

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 ここまでセンターバックへとプレッシングを行っていたクエンカと山田は、ボール非保持にボランチと協力して、相手シャドーを挟むような立ち位置を取るようになる。

 このことで、センターバックからシャドーのパスコースを消すことに成功する。飲水タイム後に、センターバックからシャドーへパスを引っかけてショートカウンターを発動できるようになったのは、この立ち位置に変更したからである。

 

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 ちなみに、自陣へ撤退したときは5-4-1の守備ブロックを形成。5トップのような形になる大分に対して、5バックで対抗するような形をとった。

 またホームで対戦した大分戦では、サイドチェンジから決定機を作られるシーンを数多く作られたが、この試合では5バックにすることで、横のスライドでサイドチェンジに対応できていた。よって、サイドチェンジから危ないシーンを作り出されることは少なく、大分の攻撃を鈍化させることに成功させた。

 

 ということで前半は早々に先手を取ることができ、その後はボール非保持のやり方を変えながら大分の攻撃を凌いでいった仙台だった。1点リードで後半へと折り返す。

 

後半

(1)脱出できるか、できないか、それが問題だ

  後半は、前半と同じようにボールを保持して攻める大分とそれに対抗する仙台という構図で展開されていった。

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 仙台の守備は、大きく変更されたことはなかったが、後半に見られた形として上図のようなものがあった。

 山田が前半序盤にやっていたプレスを再度やり出すようになり、長沢と2人でセンターバックへとプレッシングを掛けるようになった。このことで、仙台の左サイドで守備をするような形となり、そこからボールを奪ってカウンターを発動させるというような狙いが見えた。山田のプレッシングによって、相手の攻撃エリアを狭めることで、仙台はより的を絞りやすくなったと思う。

 

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 そして、仙台は奪ったボールを広げることでカウンターを発動する。ここが後半のポイントなった。

 ボールを奪ったときに、大分も即時奪回を狙うために、素早い切り替えからボールを奪おうとする。そこを仙台は脱出できれば、中盤が手薄になる大分に対して一気にカウンターからチャンスを持ち込める。しかし、脱出できなければ、再び大分のターンになる。この脱出できるか、できないかが後半の主導権を握る大事なポイントなった。

 後半開始から10分間は、仙台も大分のプレスを脱出して、カウンターからチャンスへと持ち込めたが、次第に脱出できなくなると仙台は自陣に張り付いて守備する時間が長くなり、耐える時間が長くなった。

 大分のクロスやラストパスの精度に助けられ、危ないシーンはそこまでなかったが、仙台にとって、厳しい時間が長く続いたのは事実だった。

 

(2)関口の投入。セットプレーからの追加点。

 大分の素早い切り替えをなかなか脱出できないでいた仙台は、クエンカに代えて関口を投入する。

 自らボールをキープして時間を作るクエンカではなく、ドリブルでの前進やシンプルに捌くことができる関口へのスイッチは理に適った交代だったと思う。

 関口投入後も耐える時間が長かった仙台だが、73分にようやく大分のプレスを脱出すると、山田が決定機を迎える。このシュートは惜しくも高木に弾かれるが、それで得た左コーナーキックを山田がニアで合わせて、耐え凌いでいた仙台が追加点を奪う。

 

 ここ数試合、スタメンを勝ち取ってきた山田は、決して目立つ存在ではなかったが、ハードワークをすることでチームを助ける存在になっていた。この試合でも、長沢と協力してプレッシングをしたり、突破からチャンスメイクをしたりと、この試合でも愚直にチームのために戦っていた。そんな山田が決めたのはある意味で必然だったのかもしれない。

 

 74分に追加点を奪えた仙台は、その後もシマオ・マテや平岡を中心となり、集中した守備で、攻勢を強めた大分の攻撃をしっかり抑えることができた。

 疲労が見えた選手に代わり、浜崎、飯尾、西村を起用し守備の強度を保ちながら、ゲームをしっかりクロージングすることに成功した。

 仙台は2-0で勝利。今季5勝目を挙げ、最下位脱出が見えてきた。

 

最後に・・・

 木山監督の真骨頂が見えたゲームだったと思う。

 もともと大分は、ボールを保持することを志向するチームだが、相手がプレッシングに来たところを剥がすことで、擬似カウンターを発動させ、得点を奪うことが得意なチーム。自陣に撤退された状態だと、仙台同様に個人能力が高くないだけに、意外と崩すのが苦手なチームだ。

 そんな大分に、自陣で構えることで相手の苦手なシチュエーションを作り、手薄になったところでカウンターからチャンスを作った。

 木山監督は、もともと相手の嫌なことをすることが得意なイメージだったので、この試合ではそんなイメージ通りの試合運びをしたなという印象だった。

 

 欲を言えば、奪ったときに相手のプレスをどう脱出してカウンターを発動させていくかに、さらに磨きが掛かれば、この大分戦でも苦しい時間を少なくすることができたと思う。ただ、試合中に守備のやり方を変えながら大分の攻撃に対応していったことは良かった。

 

 残すところ2試合となった。残りはすぐ上の清水エスパルス湘南ベルマーレ。ここは結果を求めていきたいところだ。まずは清水戦。相手も好調なこともあり、難しい試合になると思うが、まずはハードワークして粘り強い戦いに期待したい!!