ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

ラストゲーム~明治安田生命J1第34節 サンフレッチェ広島vsベガルタ仙台~

 さて、今回はサンフレッチェ広島戦を振り返ります。シーズン最終節。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

スタメン

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 ベガルタ仙台は、前節の大分トリニータ戦で勝利し、残留を確定させた。一方のサンフレッチェ広島は、湘南ベルマーレに敗戦。この結果、6位が確定している。ということで失うものはない一戦となった。

 お互いにメンバーをいじってきている。仙台は大岩やリャン、それにルーキーの田中渉がスタメンに名を連ねた。

 一方の広島は、若い東、ワントップにドウグラスヴィエイラを起用した。

 

前半

(1)広島に終始押し込まれる仙台

 この試合は、前後半トータルで広島の押し込まれる展開となった。

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 広島のビルドアップの形は3-4-2-1。それに対して仙台は、いつも通りの形で広島に対抗しようとする。

 いつもの形とは、3バックの左右バック(野上と佐々木)にボールが渡ったら、サイドハーフ(リャンと渉)が前プレしに出ていく。そこからサイドに限定させ、ボールを奪い取るような形だ。

 しかし、この試合ではいつもの関口と道渕のコンビではないためにサイドハーフのプレスがいつもとは違う。前プレを懸けるシーンはあっても、その強度が低いから相手にとっては、プレスになっていないということが多かった。

 よって広島はウイングバック、もしくはハーフスペースにポジショニングしているシャドーへとボールを付けることで、仙台陣内へと入り込んでいった。

 

 また2トップもボランチを監視しながら3バックも見る形で、この試合のほとんどは、5vs2の鳥かご状態になっていることが多く、2トップも守備に非常に苦労していた。

 広島は仙台を押し込むと、ボランチや3バックの野上と佐々木も攻撃参加し、一気に押し込む。よって仙台は、自陣低い位置で、ひたすら広島の攻撃を跳ね返し続ける展開になっていった。

 

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 また広島は、ボールを奪われたときや仙台がビルドアップを開始したときは、積極的な前プレを行っていった。

 前線5枚とボランチを加えた7人で、仙台へと襲い掛かる。仙台は逃げ場を見つけらずにロングボールを選択。しかし後方で待ち構える3バックにボールを回収され、再び広島のターンという状況が続いていった。

 昨年までであれば、このようなプレスをどう剥がすかがテーマだったが、今は悲しいことに、ただ真正面からプレッシャーを浴び続けられることしかできなくなった。

 ボール回しもどこか爆弾ゲームのようになり、見れば見るほど切ない気持ちが増大していった。

 

(2)バラバラなボール保持

 前半は、仙台にもボール保持をする時間帯はあった。

 しかし、どこかチグハグな感じは否めない。お互いがイメージを共有し合ってというよりは、各々が立ち位置を探りながらやっている感じだった。

 椎橋が列を降りるとか、リャンや渉がハーフスペースに入り込むとか、2トップが抜け出すとか、そういうのを各々の判断でやっていた。そこに連携があったかと言うと、非常に微妙なところだ。

 よって、広島のブロックを崩すどころか、サイドを含めて敵陣深くまで潜り込むことができない。シュートまで行くどころか、パスミスで攻撃が終わることが続いていった。

 メンバーが今年のレギュラーとは大きく違うとはいえ、やはりこちらも切なさを感じる内容となってしまった。

 

 広島優勢の試合ではあるものの、スコアは動かず0-0で折り返す。

 

後半

(1)なんとか攻撃の糸口を見出そうとする仙台

 前半は、プレスが上手くかからなかったり、広島のプレッシャーに屈してしまったことで、ほとんどの時間を自分たちの陣内で過ごすこととなった。

 後半のスタートからは、それでも攻撃の糸口を見出そうとする姿が見て取れた。

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 仙台としては、広島の素早い切り替えにハマりたくないので、前線に早めに預ける。そのボールを2トップが収めて、時間を作り、その時間で後方が追い越したり、押し上げたりすることが狙いだったと思う。

 後半開始1分で、長沢が収めたところから永戸に落として、右の渉へと大きな展開をするシーンが見られたが、あのようなシーンを作ることで、仙台は前進をして、広島陣内でプレーすることを目指していたのだと思う。

 ただ、お分かりの通り、結局は長沢と石原が収めないことには始まらず、やはり能力の高い広島の3バックに収められる回数は少なかった。

 よって、後半もそのシーン以外では、なかなか前進することができずに、結局は前半のリピートのような展開となっていった。

 

(2)表面張力からの失点

 

  仙台は早い段階でサイドハーフを変える。道渕と兵藤が登場。

 しかし道渕は、今週のトレーニングを体調不良で休んでいたらしく、明らかにコンディションが悪く、いつもの力強さは発揮されなかった。

 兵藤は、左サイドの攻撃を円滑にしたシーンもあり、永戸が高い位置で仕掛けられるようになったものの、こちらも大きな影響を与えることはできなかった。

 

 試合は、前半のリピート。広島はレアンドロ・ぺレイラや青山を投入し、より攻勢を仕掛けていく。

 決定機はいくつもあったが、クバがここぞのところでスーパーセーブを続けた。残念そこはヤクブ・スウォヴィク。

  しかし、表面張力で守り続けた守備もついに決壊してしまう。80分にハイネル→ドウグラスヴィエイラレアンドロ・ぺレイラのブラジル人トリオに仙台のゴールを破られることとなった。

 

 仙台も慌ててハモンを投入し、スクランブルアタックを試みるも、最後までチグハグな攻撃を改善できずにタイムアップ。

 今季最終戦は、0-1での敗戦となった。

 

最後に・・・

 この試合に関していえば、残留というミッションをクリアし、選手の緊張も解け、非常にモチベーションが保ちづらい試合だったと思う。監督コメントを読む限り、体調不良で休んでいた選手も多かったらしく、いかにここまでプレッシャーのかかった最中にいたのかがよく分かる。

 それでも試合内容は肉でも魚でもない、どこか寂しい内容となってしまい、今シーズンはレギュラーとして戦ってきたメンバーとそうではないメンバーに大きく差が出てしまったシーズンを象徴するような試合となった印象だった。

 

 そして、この記事を書いている途中で、渡邉監督の今シーズン限りでの退任が発表された。

 本音を言えば非常に寂しいし、まだまだ渡邉監督と一緒に戦いたかった。そして何よりあと一歩届かなかった「タイトル」という夢を一緒に掴みたかった。それができないのはとても寂しいのだ。

 しかし、いつまでも渡邉監督におんぶだっこしてもらっているクラブでもダメだというのは現実としてあって、いつまでもドラえもんにすがっているのび太の状態ではいけないのだ。

 だからこそ、クラブはこの決断をしたのだと願いたい。これから自分の足で進むための、勇気ある決断であることを信じてやまない。

 次の25年に向けての第一歩。この決断が成功になるか失敗になるか、すべては自分たち次第だ。踏み出すことは不安もあるけれど、それが正しいと思って進んでいくしかない。

 

 まずは一年間、本当にお疲れさまでした。短い間ですが、体を休めて、また来年もともに闘いましょう!

最低限のノルマ~明治安田生命J1第33節 ベガルタ仙台vs大分トリニータ~

 さて、今回は大分トリニータ戦を振り返ります。ホーム最終戦

↓前節のレビューはこちら

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スタメン

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 ベガルタ仙台は、前節・ガンバ大阪戦で敗れたものの、今節は引き分け以上で残留が決まる。ホーム最終戦で勝利し、残留を確定させたいところだ。

 前節、負傷交代した松下に代わって椎橋。2トップの一角に石原直樹が入った。

 一方の大分トリニータは、現在7位。片野坂監督のボールを保持するサッカーで、昇格初年度としては上々の成績を収めている。残りの試合も勝利し、1つでも上の順位でフィニッシュしたいところだ。

 今節は三竿が出場停止で、代わりに特別指定選手の羽田が初スタメンとなった。また小林裕紀も欠場。この試合では中盤を3センターにし、アンカーに長谷川、その前に小塚とティティパンという並びを採用した。

 

前半

(1)ガンバ大阪戦の反省を活かして。

 まずはじめに大分の戦い方を振り返ってみると、大分は自分たちがボールを保持して、ゴールへ迫っていくスタイルを標榜し、そのスタイルで昇格初年度のシーズンをここまで過ごしてきた。

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 この試合での大分のボール保持は、3-1-4-2を基本として、前線の4枚(オナイウ、三平、小塚、ティティパン)がポジションチェンジを繰り返しながら、ボールを受けて、前進させることを狙いとしていた。

 特に上図のように、三平とオナイウが縦関係になり、三平が中盤のエリアまで降りて、小塚やティティパンが2列目から飛び出すことは、大分がデザインしていた攻撃だったと思う。

 また、両ウイングバックが仙台のサイドバックを引き出して、その背後をインサイドハーフなどが狙う形や、左ウイングバック田中達也が仕掛けてクロスを上げるというシーンも多かった。

 13分の田中達也からオナイウのヘディングシュートの場面は、大分の1つの狙いが出た場面だった。

 

 では、そのような大分に対して仙台がどのような守備対策を行ってきたを、次は見ていきたい。

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 大分のボール保持攻撃で、そのポテンシャルを一番発揮するシーンは、キーパーからのビルドアップで、相手を大分陣内に呼び込み、相手の前プレを剥がすことで、背後にできたスペースにボールを運び、擬似カウンターを発動することである。

 なので、仙台としてはそのようなシーンを作られたくないので、基本的には大分にボールを保持させて、自分たちはリトリートしながら構えるという時間が長かった。

 この守備でのポイントはいくつかあって、一番のポイントは、久々に起用された石原の役割だった。石原はリトリート時には、アンカーの長谷川とデート(マンツーマン)で見ることで、3バックからアンカーへのパスルートを途絶えさせていた。このことで大分の攻撃をサイドへと誘導することができていた。

 また両サイドハーフは、相手の左右バック(岩田と羽田)とウイングバックへプレスに行ける中間ポジションをしっかり保ちながら守備をしていた。特に関口の守備での立ち位置は素晴らしく、いい立ち位置を取れていることで、相手のどの選手にボールが渡っても、プレスを掛けることができていた。

 加えてボランチのエリアでは三平が降りて、2vs3の局面になるので、椎橋と富田がボールサイドの選手をスライドして掴まえるようにしていた。またオナイウに対してはシマオがデートして潰すように準備されてきた。

 

 前節のガンバ大阪も大分と同じ3-1-4-2のシステムを採用していた。ガンバ戦での反省点は、アンカーの遠藤を掴まえきれなかったことだった。遠藤を掴まえきれないことで、ガンバに押し込まれる展開となり、仙台は前へ出ることが難しくなった。

 その反省もあり、この試合では石原がアンカー番をすることで、同じ仇を踏まないようにしたし、それが大分のボール保持に対して非常に効果的だった。

 ガンバ戦の反省を活かしたことで、この試合では安定した守備を実現することができた。

 

(2)松下のタスクを複数で補う。

 この試合における仙台のもう1つのポイントは、松下のタスクをどう補うかであった。今シーズンの松下のタスクは多岐にわたり、ボール保持時の展開・配球はもちろんのこと、ポジティブトランジション(守備から攻撃への切り替え)時の前線へのスイッチャー。そして守備でも激しい守備でボールを奪い取ることができ、気がつけば松下に頼っていた面が大きかった。

 そんな多岐にわたるタスクを、仙台は複数のメンバーで補うことで、松下欠場の穴を埋めた。

 それが、この試合で起用された石原と椎橋だった。

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 石原のタスクは、前述した通りにアンカーの長谷川を監視することと、もう1つはポジティブトランジション時にカウンターの起点となることであった。

 奪ったボールを一度石原へ収めて、その時間を利用して両サイドハーフが押し上て、そこへボールを渡すことで、カウンターを発動させていった。

 特に前半は、石原から道渕という展開からチャンスを作ることができた。後半の追加点も石原が収めたところを起点としたカウンターだった。

 

 椎橋は、リトリート時のボランチエリアのスペース管理はもちろんのこと、ビルドアップに参加し、ボール前進させることがタスクだった。

 しかし、椎橋がビルドアップに参加しても、うまく大分の前プレを掻い潜るシーンは少なかった。これはビルドアップ隊の技術面やトレーニング量の少なさも影響していたところがあるので、一概に椎橋の影響とは言えない。だが、それでも個で解決できる松下の存在の大きさを思い知った場面でもあった。

 

 前半は、26分にコーナーキックのサインプレーで道渕が先制点を挙げる。セットプレーで先制したことに加えて、前述した守備が機能し、1-0のリードで折り返す。

 

後半

(1)大きな展開とセンターバックを引き出そうとする大分

 同点を目指す大分は、後半に入り、攻撃面で修正を施した。

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 前半でもあったが、大分は大きなサイドチェンジを多用するようになる。

 特にアンカーの長谷川や小塚から右サイドへ展開し、松本と岩田のコンビで仕掛ける形が増えた。

 一番狙いとしていたのは、上図のように大きなサイドチェンジをし、仙台のスライドを強要させ、ずれたところで、松本→岩田でダイレクトのクロスを上げる形。仙台の守備視野をリセットさせて、時間を掛けずにクロスを上げることで、仙台の守備を揺さぶろうとしていた。

 

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 また、前半の大分は仙台のサイドバックの背後にインサイドハーフが出ていくシーンが多かったが、後半は2トップが出ていくようになった。

 2トップが出ていくことで、仙台のセンターバックを引き出し、そして中央のスペースが空いたところにクロスを送るような形。

 後半の頭にオナイウがシマオをサイドで抜いて、三平がフィニッシュする決定機があったが、あのような形を狙いとしてた。このシーンは大分にとって、この試合一番の決定機だったと思う。

 

 ただ、仙台としては大きな展開も、2トップの抜け出しも前節対戦したガンバ大阪戦で経験済み。なので、焦らずにしっかり対応できていたと思う。またガンバ戦と違い、先制点を取れていたことも大きかった。

 

 (2)狙い通りの追加点

 焦れずに守備をする時間が長かった仙台だったが、61分に追加点を奪う。

 小塚のパスミスを奪ったところからカウンターが発動。関口から右サイドを駆け上がった蜂須賀へ。蜂須賀のアーリークロスにニアで長沢が合わせて、効率よく2点目を奪う。

 前半にも同様なシーンがあり合わせられなかった長沢だったが、後半はしっかりニアで合わせることができた。第23節の川崎戦以来の得点。守備で奮闘する試合ばかりだったが、ここで一つ報われたように思える。

 

 その後の大分は、小林成豪を投入し、3-4-2-1へシステム変更。ミシャ式をするようになり、列を降りる長谷川が石原のマークから解放されたことで、大分が再び押し込む展開となるが、2点リードしている仙台も焦らずに跳ね返しながら、時計の針を進めていった。

 

 仙台は、リャンと大岩を投入。大岩投入時に、5-4-1にシステム変更を行い、抜かりなくゲームをクローズさせた。

 そしてそのままタイムアップ。ホーム最終戦を2-0で勝利し、来シーズンのJ1残留を確定させた。

 

最後に・・・

  ホーム最終戦で勝利し、1試合残して残留を確定。最低限のノルマを達成した。

 ゲームの内容としては、今年戦ってきてたこの4-4-2の戦い方の総決算のような内容だったと思う。セットプレーで先手を取り、その後も抜かりなく守備をして、カウンターから追加点を奪う。理想的と言えば理想的な内容だったと思う。

 

 ただ、試合後のコメントやセレモニーで渡邉監督は、これが目指すべき戦い方や形ではないと断言していた。

 今年は多くのメンバーが入れ替わり、昨年とは180度違うサッカーとなってしまった。いわゆる弱者の戦い方というものだったと思う。

 その選択を決断できる渡邉監督は、すごいと思う一方で、やはり毎年切って張ってを繰り返している現状では、この先のクラブの未来はないというのは、とても頷けるものだった。

 

 僕は経営面とかには興味がない。ただサッカーの中身に興味がある人間だ。ただ、今回の渡邉監督の言葉を聞いて改めて思ったのは、理想とするサッカーを目指すには、お金が必要ということだ。

 現場とフロントの両輪が上手く回ってこそ、目指せるものなんだと思う。その両輪が今上手く回っているのか。そういう危機感みたいなのを渡邉監督はあの場で提示してくれたのかなと、だからこそのビジョンの明確化なんだと。

 今まで目を塞いでいた問題と向き合う時期に来ている。それを提示できる指揮官はそうそういない。それだけ渡邉監督はベガルタを愛してくれているのだと。幸せなことだと思う。

 まずは素直に来年もJ1で戦えることを喜びたい。そして、この先も日本のトップリーグで戦えるために、僕たちも一緒に考える必要があるのではないだろうか。

 

 まずは、最終節のサンフレッチェ広島戦。このメンバーで戦えるのも残り1試合。広島の地で最後まで勝利を目指して、いい締めくくりができることを期待したい!!