ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

チーム完成度の差~明治安田生命J1第7節 大分トリニータvsベガルタ仙台~

 さて、今節は大分トリニータ戦を振り返ります。

↓前節のレビューはこちら

khigu-soccer.hatenablog.com

 

スタメン

f:id:khigu:20190414215024p:plain

 ベガルタ仙台のスタメンは前節・鳥栖戦と変更なし。今シーズン初めて2試合続けて同じメンバーがスタメンとなった。またベンチには石原直樹が帰ってきている。

 大分トリニータは、ボランチに島川を起用。古巣対戦となる。それ以外は変更はなし。

 連勝を目指す両者の試合となった。

 

前半

(1)大分のボール保持に対して仙台が準備してきたもの。

 この前半では、まず守備において仙台が準備してきたことや前半の途中で行った修正などを見ていきたい。

f:id:khigu:20190417211633p:plain

 大分は、キーパーを含めた11人全員が関わったボール保持からの攻撃をスタイルとしている。この試合でもそれは例外ではなかった。

 大分のボール保持は、ビルドアップを安定させるためにビルドアップのスタート地点において、数的優位を確保することが特徴だ。

 自陣深い位置であれば、キーパーとセンターバックの鈴木が並列になり、2対1を形成。相手が撤退し、ピッチの中央でボールを保持するときは、ボランチの一角が下がって2対1を形成する。そこからボール保持の状態を安定させ、相手の守備にズレを生じさせながらボールを前へ運び、ゴールへと結びつける。

 

 そんな大分に対して仙台が準備したことは、噛み合わせを合わせることである。

 以前から書いているが、仙台の守備は人を基準として守っているために、守備の基準点がハッキリすることが重要である。

 この試合では、相手の3バックに対して仙台は2トップなのでズレが生じるのだが、仙台は海夏を一列上げ、その代わりに富田と兵藤がダブルボランチを見る形で、基準で明確にした。なお、ジャーメインに関しては、キーパーと鈴木、またエリアが変われば落ちてくるボランチと鈴木を見る形で、1人で2枚を見ることとなっていた。相手の2枚は距離が遠くないので、タスクオーバーにはならない。

 ジャーメインは背後のボランチを気にしながらなので、プレスを掛けるというよりは背後を気にしながら、大分のボール循環をサイドへと誘導するタスクだったと思われる。

 仙台としては、相手エリアでボールを奪えることを理想としながらも、相手がロングボールを蹴ってくれればオッケーというイメージだった。そういう意味では前半の守備は上手くいったと思う。

 

(2)大分の狙いたいスペース。仙台が施した修正。

 仙台の守備が上手くハマったとは言え、もちろん大分が仙台陣内へと侵入することもあった。

f:id:khigu:20190417213036p:plain

 大分の攻撃は、ほとんどが右サイドからだった。おそらく岩田と福森の攻撃能力の違いによるものだと思われる。

 仙台は撤退したときには5-3-2を形成するようになっていた。よって守備で撤退すると岩田のポジションがフリーになりやすい。

 ただ、仙台としては人を基準で守るので誰かが出ていく。よってハモンではなく崇兆が対応することとなる。そうすると背後でも金正也がずれて松本へと対応し、結果的にペナ角のスペースが空き、そこに小塚や藤本などに利用されることとなった。

 常田がスライドして対応することもあったが、そのスライドが遅かったりすると、ペナ角のスペースを開けてしまうこととなった。前半の大分のチャンスは、ほとんどがこのスペースからであり、自分たちがストロングポイントとしているサイドからの攻略が行えていた。

 

f:id:khigu:20190417213803p:plain

 ただ、仙台もやられっぱなしになるわけではなかった。前半の半分が経過したころになると、自陣でもハモンがそのまま岩田に付いていくようになり、仙台の左サイドでマークのズレがなくなった。

 これで大分が利用していた右サイドのペナ角を埋められるようになり、大分の攻撃を抑えることに成功した。

 前線を2枚から削ることとなったが、しっかり埋めるべきポイントを前半途中で埋めることができたという意味では評価のできる修正だったと個人的には考えている。

 

(3)崩しきれなかった大分の守備ブロック

 

 大分のボール非保持、守備の特徴は、素早く守備ブロックを形成することである。大分がボールを奪われたら、そこで即時奪回を狙うのではなく、自陣に下がって守備ブロックを形成することを優先としている。この意識はかなり徹底されているものだった。

 

 逆に言うと仙台はこれが分かっていたので、(1)で書いたように大分にロングボールを蹴らせてもオッケーということなった。

  •  相手陣地から守備で守備ではめ込む
  •  大分がロングボールを蹴る
  •  セカンドボールを回収する
  •  大分が自陣へ撤退する
  •  仙台のターンになる

 みたいな流れを作り出すことで、仙台は自分たちのターンの回数を増やしていった。

f:id:khigu:20190417214743p:plain

 ボール保持することができた仙台だったが、大分の引いた5-4-1のブロックを崩しきることがなかなかできなかった。

 大分の守備は、キーパーの高木と3バックを中心にペナルティエリアをしっかり固め、クロスやシュートに対してしっかりクリアすることやブロックすることが意識づけられていた。

 また仙台の2トップは、裏に抜け出すことが得意だが、大分の守備が低いのでスペースがなく、なかなか鳥栖戦のような形を作り出すことができなかった。

 例えばジャーメインとハモンの位置を左右で変えてみたり、先発で石原を起用することで大分のディフェンスと中盤の間のスペースから崩しに掛かる狙いを持っていても良かったかもしれない。ただ、前節2人とも得点を決めたことなどを考慮するとこの2人がスタメンだったことは妥当だったと思う。

 ペナルティエリアでシュートを打たせてもらえなかったという表現が正しい前半の攻撃だった。

 

f:id:khigu:20190417215501p:plain

 そして大分は、途中からシステムを3-1-4-2へと変更している。この狙いについては、後半に書くこととしたい。

 

 前半は大分のボール保持を上手く守りながら自分たちのターンを増やしたものの、大分の守備を崩しきれなかったという内容だった。

 スコアレスで折り返す。

 

後半

f:id:khigu:20190417215501p:plain

 両者、交代はなし。前述した通り、大分は前半途中でシステムを3-1-4-2へと変更している。

(1)システム変更とハーフタイムの整理によって得点に結びつけた大分

 まずは、大分のシステムを変更した狙いがどこにあったのかを見ていきたい。

 大分は攻守においてシステムを変更した狙いを持っていたと思うが、最も利益を得ることができたのは守備の方だった。

f:id:khigu:20190417221504p:plain

 大分の守備は5-3-2での守備ブロックへと変わっている。

 前半、システムの噛み合わせのなかで構造的にフリーになる富田がいた。富田がセカンドボールを回収することで仙台は二次攻撃へと繋げられたことは確かで、前半ではキーマンとなっていた。

 そんな富田の位置に2トップを配置し、富田にボールを渡らないように修正を施した。

 そして3センターは中央の3レーンを守るイメージ。前半の5-4-1のブロックでは、大分の中盤4枚のボランチとシャドーの間のスペースを海夏と兵藤が利用することで仙台は、大分のブロック内へ侵入を試みることができていた。

 しかし大分は3センターにすることで、そのスペースを埋め、仙台に中央のエリアを使わせないようなった。

 これで海夏と兵藤は下がってボールを受けることとなり、前半よりも押し込んで攻撃することができなくなった。

 左サイドでは、崇兆がハーフスペースへと入り込んで、高い位置までボールを持っていくことができたが、右サイドでは、海夏のポジションが低くなり、なかなか深い位置までボールを運ぶことができなくなっていった。

 

 そして大分は、守備を整理したことで後半早々にショートカウンターから先制点を奪うことに成功する。47分だった。

f:id:khigu:20190417222142p:plain

 仙台が3バックでボールを回していると、三平が前プレのスイッチを入れる。三平が常田へとプレスへ行くと後方も、これに呼応して連動してプレスを行う。常田は兵藤へと縦パスを通すが、岩田にカットされカウンターが発動。最後は、奪った岩田がゴールを決めて先制する。

 もちろん常田のクリアミスがあったが、大分のプレスがハマり、狙い通りのゴールを奪うことができたシーンだった。しっかりハーフタイムで整理できた証拠がこのゴールだろう。

 

(2)抗うことができた仙台だったが・・・。

 リードを許した仙台だったが、大分がボールを保持したときの守備の整理はできていた。

f:id:khigu:20190417223218p:plain

 アンカーの島川が落ちてきたこともあるが、仙台は相手がシステムを変更してきても再度守備の基準点を整理し直せたことで、システム変更でズレを生み出したかったであろう大分のボール保持攻撃から危険なシーンを作らせることはなかった。

 反対に中盤のボールの奪い合いで競り勝つと、そこから局面をひっくり返してカウンターを発動できるようになる。このカウンターを活かすことができれば良かったが、ジャーメインもハモンも海夏も活かしきることはできなかった。これは今後の課題といえよう。

 

 奏功しているうちに大分は、三平からオナイウ阿道にスイッチ。

f:id:khigu:20190417223707p:plain

 この交代で、大分はロングボールを上手く使いながら前進できるようになる。仙台はボランチから前の選手が大分のボール保持を阻害しようとくるが、その反面、ボランチと3バックの間にはスペースができ始めていた。

 ここを見逃さなかった片野坂監督。高さとキープ力のあるオナイウを入れ、ロングボールを効果的に使うことで、仙台の前プレを無効化&疑似カウンターに繋げられるようになっていく。この交代が後半の流れを変えたものだと考えている。

 

(3)選手交代によって失われたもの

 仙台はジャーメインから石原、兵藤からリャンにスイッチする。

 前線の選手には疲労が見え始め、徐々に前プレが効かなくなってきたこともそうなのだが、それ以上に交代で入ってきた選手が守備の基準点を失う形となり、そのことで前プレが機能不全へと陥ってしまった。

 結果的にこのことが77分の追加点に繋がったと思う。疲労で前へ行けなくなったのは事実だが、加えて前線が選手が代わったことで、誰がどこへ行くのかが曖昧になり、それが連鎖として起こってしまい、最終的にゴール前まで運ばれる形となってしまった。

 リードを許し、得点を奪わなければならなかったが、その分バランスを保っていた守備が機能しなくなったことで、追加点を奪われてしまった。非常に切ない失点となってしまった。

 

 最後に長沢を投入する仙台だったが、長沢へロングボールとそれのセカンドボールを狙うパワープレーなのか、はたまた地上戦で運んでいくのか。全体がバラバラに動いてしまったところでジ・エンド。

 0-2で大分の勝利。仙台は今季初の連勝とはならなかった。

 

最後に・・・

 チームの完成度の差が内容、結果とともにそのまま出てしまった形となった。非常に切ないがこれが現実だ。

 ただそれでも、守備の基準点をハッキリして、狙いを持って守備ができたり、相手の変化に応じて守備の修正を施せたところはポジティブに捉えられるところだと思う。

 しかし一方で、最後まで崩しきれなかった攻撃は課題となった。特に相手がシステムが変わって、うちの使いたいポイントを使わせないようにしたときに、またすぐに立ち位置を変えて、相手のブロックに侵入できなかったところだ。

 チームスタイル的に、いい立ち位置を取ることが必要とされているなかで、それができなかったということは、チームが新しくなったと言ってもやはり悔しい。この部分はやはり突き詰めてやっていって欲しいところだなと思う。

 

 次節は鹿島戦。大切なのは連敗しないことである。いい立ち位置からの攻撃をもう一回思い出して、次節こそアウェイ初勝利をもぎ取りたい!!