みなさん、こんにちは。ヒグチです。
さて、今回はオフ企画の第二部となります。
前回は今シーズンの編成について考えてきました。キャンプも進むにつれて誰がどのポジションでプレーするのかが見えてきたかなと思います。
今回の第二部では、昨シーズンの戦いからどこが課題だったのか。そして今シーズンを迎えるに当たって、その課題をどのように克服すれば、より勝利へと近づくことができるだろうかについて考えていきたいと思います。
もちろん、これをチームがどう捉えているかは別な話です。あくまで個人の意見として読んでいただきたいですし、また今シーズンを見るに当たって、1つのものさし的な記事になればと思います。
では第二部、「今シーズンの課題・テーマを考えてみよう!!」です。
課題①「ボール非保持~レーン守備からの脱却~」
まず初めに挙げる課題が、ボール非保持について。いわゆる守備に関してである。渡邉監督も今シーズンに向けて守備の強化を図りたいとは、多くのメディアで話しているが、どこをどうすることが強化なのかを考えていきたい。
(1)昨シーズンまでのボール非保持
まずは昨シーズンまでのボール非保持がどのようなものだったかを見ていきたい。
仙台は2017年シーズンから3バックを採用しており、ボール非保持のときは5バックで守ることが一般的になった。
以前採用していた4バックよりも守備の枚数を1枚多くしたことで、失点が減ると思われたが、2017年は53点、2018年は54点と、4バックを採用した最終年である2016年の48点を上回ってしまっている。
なぜ、失点が増加したのか。それは3バックを採用するに当たって登場した「レーン」という考え方が悪影響を及ぼした可能性がある。
仙台の5バックは各レーンを意識した守備となってしまっている。これを便宜的に「レーン守備」と名付けさせてもらった。
自分が担当するレーンを意識してしまうあまり、ラインが上下にしか動かず、サイドチェンジをされると選手間の距離が空いてしまい、そこにボールを通されることが多々あった。
実際にやられるケースで多かったのは、上図のような形だ。仙台の守備はレーンを意識するので、ディフェンスとミッドフィルダーの間(バイタルエリア)にボールを通されると、裏を取られることを嫌がり、ズルズルとラインが下がってしまうことだった。
ボールがバイタルエリアに入ったときにボールホルダーへと寄せられないのは、寄せたときに背後にカバーする選手がいないからであり、守備における約束の一つである、「チャレンジ&カバー」ができていない状態と言える。
(2)チェーンを意識した守備へ
では、どうすべきなのか。ここで提案したいのが「チェーンを意識した守備」である。
チェーンとは、ざっくり言えばお互いの距離の話である。5枚や4枚の並びがチェーンで繋がっているように、同じ距離でしっかりスライドできる守備のことである。
以前、ハリルホジッチ元代表監督が練習でロープを巻き付けて守備練習を行ったことがあったが、イメージとしてはあのようなものである。
お互いの距離を保つことで、ボールを基準にしっかりスライドを行えるようにし、加えてチャレンジ&カバーができる距離を維持することが守備では大事である。
先ほどのシーンをチェーンを意識した守備に変えると、上図のようにしっかりスライドできればボールホルダーへとチャレンジができる。また距離を保つことで背後でカバーできるポジションも確保できる。このような距離で守備を行うことで、強度が高い守備が行えるし、安定したボール非保持の局面を作ることができる。
そもそも5バックで5レーンを埋めるというのは間違っていて、このオフに3バックを採用しているチーム(ベティスやジローナ、サウサンプトン、カタール代表などなど)を見ていて、5レーンを埋める守備をしているチームは1つもなかった。
4バックであろうが5バックであろうが、守備の約束事は変わらない。ボールがどこにあるかで守備の立ち位置も決まってくる。
攻撃のいい立ち位置があるならば、守備にも必ずいい立ち位置があるはずだ。今シーズンの仙台にはそこを見つけ出してほしいと思う次第である。
課題②「ボール保持~ハーフスペースの入口の認知と意識~」
(1)取れなかった「いい立ち位置」
このシステムを採用してからの仙台は、後方からボールを繋いでいくスタイルを追求している。
しかし、昨年は中盤から終盤に掛けて、相手に研究されたこともあり、なかなか自分たちが追求しているスタイルを試合で出すことができなかった。
特に、相手が前からプレッシングに来たときは、ボールをうまく繋げられず、最終的にはロングボールを蹴らざるを得ない展開になることが多かった。
このようになってしまったのは、後方、いわゆる「ビルドアップ隊」の立ち位置のバランスが悪くなってしまったからだと考えている。
相手が前からプレスを掛けに来たことで、それを回避しようと3バックの外2枚が広がりすぎたことで、中央のセンターバック(大岩)との距離が空き、パスが通せなくなった。
また後方の立ち位置が整っていないので、前方も順々にバランスが悪くなり、最終的に全体のバランスが崩れ、「いい立ち位置」が取れなくなってしまった。
後方からボールを繋いでいくスタイルゆえに、やはりその最初の段階となるビルドアップ隊がいい立ち位置を取れているかは、このスタイルのカギを握っていると言えよう。ということで、ビルドアップ隊がいい立ち位置を取るにはどうすべきか考えていきたい。
(2)ハーフスペースの入口
ビルドアップ隊が立ち位置を取るときに意識したいのが、「ハーフスペースの入口」である。
ハーフスペースの入口とは、後方からビルドアップしたときに、チームのなかで後ろから数えて最初にハーフススペースに立つ選手がいるエリアである。
よって、このエリアは固定したものではなく、動くものである。もし3バックのラインが高ければ、ハーフスペースの入口も高くなる、ということになる。
このエリアに左右のバックがポジションできると、5レーンに的確に人を配置できるようになる。理想は上図のようなスクエア(四角形)を形成して、ボールを前進させられることだ。
これは決して目新しいものではない。2017年シーズンでは、仙台はリーグが終盤になっていくにつれ、このような立ち位置を取れるようになってきていたのだ。
しかし、2017年シーズンは相手も前からプレスを掛けてこなかったので、余裕を持ってポジショニングできていた。
ここで言いたいのは、前からプレッシングに来られても、この立ち位置を確保することが必要だということである。しっかりハーフスペースの入口を認知・意識することで、ビルドアップの軸となり、あとは他の選手がポジション修正を行うことで、いい立ち位置でボールを前進させられるはずだ。
また亜種もある。昨年の天皇杯準決勝、決勝のようにボランチが一枚落ちて4バック化する形だ。しかしこの時でもハーフスペースの入口を意識していきたい。
相手のシステムに応じて、4バック化することも試合を通じてあると思う。4バック化したときは、落ちてきたボランチとセンターバックがハーフスペースの入口へ。そして落ちずにそのままいるボランチとキーパーでスクエア(四角形)を意識して形成させていきたい。
そうすると、ここがビルドアップの軸になるので、あとは各選手がポジションを修正し、確保しながらボールを前進することができる。
4バック化したから意識しないのではなく、どのような形であれ、しっかりハーフスペースの入口を認知し意識しながらポジションを取ることで、いい立ち位置が取りやすくなっていくのではないかと思う。
課題③「アタッキングサード~ペナルティエリアへの侵入~」
(1)ペナルティエリア侵入できないゆえの大外クロス
最後に掲げるのはアタッキングサード、ラスト30ⅿにおける課題である。
この課題に関しては、同じベガルタ戦術藩であるとーれすさんが昨年末に書いた内容が濃いので、そちらを参照してもらいたい。
西村がロシアへ旅立ってからは特にだが、仙台はアタッキングサードにおいてなかなかペナルティエリアに侵入することができなくなってしまった。
西村移籍以降は、攻撃が外外へと逃げていくしか方法がなくなってしまい、身長が低い仙台の攻撃陣にも関わらず、大外からのクロスでしか攻撃できなくなり、得点が取れなくなっていった。
加えて、先ほど書いたボール保持において、いい立ち位置が取れなくなったことも原因としてはある。
得点力アップには、個々の選手の決定力向上を求めることも確かだが、それ以上にチームとして相手の嫌なエリア(=ペナルティエリア)に侵入できるような仕掛け、攻撃のデザインを形成していく必要があるはずだ。
(2)ペナルティエリアに侵入するために
ここでどうすればペナルティエリアに侵入できるか提案したところだが、アタッキングサードでの攻撃は、さまざまなアイデア・方法がある。それ故にこれだ!と特定した形を考えることは難しい。
大事なのは選手間のコンビネーションとなる。その中でペナルティエリアに侵入する意識を持って、仕掛けることやフリーランニングすることなどが大切になってくると思う。
しかし、その中で一つ。クロスに関しては少し触れておきたい。
昨シーズンは、蜂須賀をはじめとするウイングバックからのクロス数が多かった。クロス数でいったら、リーグではトップクラスの数ではないだろうか。
クロスを上げることは攻撃するに当たって重要ではあるが、さらに重要なのが、どのエリア・ポイントでクロスを上げるかである。今シーズンはここを意識していきたい。
クロスを上げるにしても、タッチラインから上げるよりも、よりペナルティエリアに近いポイントで上げたほうが、味方に合わせられる確率、そして得点を生みだす確率が高くなる。昨シーズンもクロスからの得点は多かったが、得点に結びついたクロスは、タッチラインよりもペナルティエリアに近いポイントで上げた回数の方が多かった。
今シーズンはここを意識してできれば、クロスからの得点や合わせられる確率も格段に上がっていくのではないだろうか。
最後に・・・
さて、ここまで3つの課題に触れてきた。冒頭にも書いた通りあくまで個人の意見であるということは強調しておきたい。
ただ今シーズンに関しては、個人的にこの課題・テーマができているかを見ていきたいなと思うし、そういう内容がチラホラと出てくるかもしれない。そのときは、そういえばオフ企画でそんなことを書いていたなと思い出してもらえればと。
今シーズンは、メンバーも大きく変わっていく中で、今までやってきたことをどれくらい実践できるか、新しいメンバーがどれくらいの早さで理解できるかに掛かっていると思っている。楽しみであるが、不安も少しばかしあるのが本音だろうか。
まずは蓋を開けてみないと分からない。ワクワク、ドキドキしながら2月23日の開幕戦を待つことにしたい。