ヒグのサッカー分析ブログ

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失った自信を取り戻せ!~J1第33節 ベガルタ仙台vs鹿島アントラーズ~

 さて、今回は鹿島アントラーズ戦を振り返ります。ホーム最終戦

 

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 5試合勝利のなかったベガルタ仙台は、前節の広島戦に勝利をしたことで、トンネルから抜け出すことに成功した。天皇杯も徐々に視界に入りながら、リーグの残り2試合を全力で戦い抜きたいところだ。今節の対戦はアジア王者となった鹿島。5月の再現を目論む。

 前節からの変更は2つ。契約の関係で広島戦に出場できなかった野津田が復帰。またケガのハモンに代わって阿部。システムは前節と変わらず3-1-4-2を採用した。

 鹿島アントラーズは、過密日程を総力戦で戦い抜き、悲願だったACLを制覇。また天皇杯でも甲府を破って、ベスト4への進出を決めている。リーグ戦におけるノルマはACL圏内でフィニッシュするところ。常勝軍団は最後のそのらしさを見せつけることができるか否か。

 スタメンは、ベストメンバーと言っていい陣容となった。ケガで代表を離脱していた鈴木優磨もスタメンに返り咲いている。そして地味に安部がスタメンに定着している。彼は天才だ。

 

前半

(1)2トップの守備の基準点を椎橋に設定する鹿島

 まずは鹿島の守備の整理をしていきたい。

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 鹿島の守備時のシステムは敵陣、自陣、双方ともに4-4-2であった。

 ポイントは2トップとサイドハーフの役割であろう。前節の広島は、仙台のビルドアップ隊に対し、2トップとサイドハーフ、加えてダブルボランチの片方が前からプレスを仕掛ける仕様になっていた。

 しかし、鹿島は2トップの守備の基準点を椎橋にし、3バックには基本的にボールを持たせる状態にしていた。仙台の3バックが横でつなぎ、左右バック(板倉と平岡)にボールが渡ったときを合図にサイドハーフが前に出て、プレスを掛け始める。

 仙台対策でこのようなやり方をやってきたのか、いつも通りなのか、はたまた連戦の疲労を考慮しているのか。理由は定かではないが、鹿島はリトリートからタイミングを見計らって前プレという守備の方法を取ってきた。

 なお、自陣に引けば全員での4-4-2のブロックへと変わっていく。

 

(2)狙い目はダブルボランチ

 次に仙台のボール保持における狙いを見ていきたい。鹿島が前線から強烈なプレッシングを掛けてこなかったので、仙台は後方からボールを前進させる時間を獲得できた。

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 仙台がこの試合でポイントにしていたのは、相手のダブルボランチ。レオシルバと永木のところだった。

 仙台はビルドアップ隊がボールを持つと、インサイドハーフである野津田と奥埜が積極的に裏へランニングする姿が見られた。

 彼ら2人が裏へランニングすることで、鹿島のダブルボランチを動かし、その空いたスペースを2トップが利用する、もしくは裏へランニングしたインサイドハーフへとボールを届けることが仙台の狙いだった。

 例えば、8分に板倉から阿部が縦パスを受けているが、その時に奥埜は裏へランニングすることで、永木を若干だが動かすことに成功している。

 31分には野津田がサイドへとランニングすることで永木を引っ張る。このことで鹿島の2トップとボランチの間にスペースを生み出し、そこに椎橋が登場して、ボールを受けることで、鹿島の2トップのプレスを交わすことに成功している。

 しかし、デメリットもあった。インサイドハーフが裏へと飛び出すことで、ミドルサード(中盤)でボールを引き出す選手が少なく、結果的に長いボールや裏を目掛けたボールで、単調な攻撃に終わってしまうシーンもあった。

 時間の経過とともに、野津田が中央でバランスを取るようになって少しずつボール保持に安定感を持たせることができていたが、ビルドアップ隊と前線で距離が生まれてしまい、なかなかくさびのパスを通すことが難しかった。

 

 また、仙台はサイドからも活路を見出そうとするが、鹿島のプレスにハマって窮屈になったり、作り直さずに縦に急いでしまったことで、攻撃が終了することが多かった。特に蜂須賀と平岡の右サイドでは、縦に急ぐシーンが多く、単調な攻撃に終始してしまった印象だった。

 

(3)安定した守りだったものの、セットプレーに屈する

 仙台の守備は5-3-2の撤退がメインだった。相手にボールが渡ると、敵陣から積極的なプレスは掛けず、自陣で待ち構える形を取っていた。ここは広島戦と変わっていない点。

 仙台は鹿島のサイドバック(山本と西)にボールが渡っても、しっかりインサイドハーフがスライドして対応している。

 また、縦パスに対してもしっかり受け手にプレスを掛けることで、自由にさせない。加えて、球際でも複数人で囲みに行くことで、競り勝つことができ、ボールを奪いきっていた。

 この試合の仙台は、しっかりブロックを形成して守備を行ったときには、鹿島の攻撃に対してほとんど危ないシーンを作らせることがなかった。そこは良かったポイントではないだろうか。

 

 しかし、先制点を許してしまう。34分。我慢強く守っていた守備陣だったが、仙台の左サイドで板倉がセルジーニョを倒してフリーキックを与える。

 遠藤はサインプレーで永木へ。永木のクロスは仙台が触るものの、クリアしきれなかったボールを昌子がワンフェイク入れてからシュート。右隅に決めて鹿島が先制する。まさに困ったときのセットプレー。

 仙台としては、守備が安定していて、攻撃でも糸口を見出せそうな流れだったが、不用意なファウルで失点を許してしまう展開にしてしまった。

 ということで、鹿島が1点リードで折り返す。

 

後半

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 まずは後半スタート時のメンバーを整理したい。前半に蜂須賀が安部のとの競り合いで左足首を負傷。代わりに中野が入っている。一方の鹿島は変更なし。

(1)全体のポジションを整理する仙台

 後半は開始から鹿島が押し込む展開となる。追加点を奪って、楽にゲームを進めさせたいという意思を見せる。この辺りの勝負に対する鹿島の隙のなさはさすがだった。

 押し込んでくる鹿島に対して、受けに回ってしまった仙台は、危ないシーンをいくつか迎える。

 永戸のハンド疑惑があったり、鈴木がフリーでヘディングシュートしたり。どちらかが入っていたら、ゲームはほぼ決まっていたかもしれない。

 

 ただ、鹿島が追加点を奪えなかったことで、徐々に仙台がボールを保持する流れへと変わっていった。

 後半の仙台は、前半の狙いと大きくは変更はなかった。しかし前半でもあったように、後方と前線に距離が生まれてしまうことで、なかなかくさびのパスを通せない問題があった。

 またビルドアップ隊が鹿島の連動した前プレに対してなかなかパスコースを見出せず、テンポが生まれないことが多かった。

 よって後半は、野津田が降りてビルドアップ隊に加わる。このことで後方からの前進をスムーズにかつテンポを上げる狙いだった。

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 加えて阿部からジャーメインにスイッチしたことで、相手のディフェンスラインの裏、特にサイドの裏でボールが収まるようになった。これで仙台が鹿島陣内へと押し込むことに成功する。

 しかし肝心のシュートまで持っていける場面が少なかった。最後はやらせない鹿島。何がすごいってボールをしっかり奪えるところ。相手のボールのさらし方が甘いと見るや、しっかり体を寄せて対応する鹿島の守備はさすがに一言だった。

 

(2)ギャンブルに出る渡邉監督

 鹿島を徐々に押し込めても、なかなかフィニッシュのところまで持っていくことができない仙台は3枚目のカードを切る。椎橋の代えて関口。

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 これでシステムを3-4-3に。永戸を3バックの左。板倉と野津田をダブルボランチ、そして左に中野、右に関口のウイングバックとなった。

 監督コメントでも話しているように、ぶっつけ本番の布陣だった。18人のなかでさらに攻勢を掛けられる布陣がこの布陣ということだろう。まさにギャンブルに出た渡邉監督だった。

 しかしそのギャンブルは失敗に終わる。70分。敵陣中央でボールを受けた板倉がレオシルバに奪い取られカウンターを発動させてしまう。

 そのままレオシルバは独走、鈴木に預けてクロスを上げる。最後は途中交代の安西が決めて追加点を奪う。

 仙台としては賭けに出たポジションのミスが起こり、ダメージはかなり大きかった。そして5分後には、攻めに出てバランスを崩した仙台に対してセルジーニョがダメ押しの3点目を決めて、ゲームを決める。

 

 鹿島はケガ明けのレアンドロと内田を投入し、試運転させる余裕を見せる。

 3点目以降は連戦の疲労も垣間見えた鹿島を仙台が押し込む展開へと変わっていく。途中で入った関口が、果敢に右サイドから仕掛けてエリアに侵入するも、きっちり最後は締める鹿島の牙城を崩すことはできなかった。

 ということで、0-3で鹿島の勝利。仙台はホーム最終戦を完敗で終えることになった。

 

最後に・・・

 なかなか勝ちが続かなかったり、負けが先行していると、ネガティブに考えがちになってしまうが、この試合の仙台は、その狙いが効果的かどうかは置いても、相手を動かそうと狙いを持ってプレーできていたと思う。

 ただ、いい立ち位置を取れていても、そこにパスをする、狙っているポイントにくさびを打つというプレーが少なかった。1つ1つのプレーの選択に慎重になって、よりリスクが少ない場所を選んでしまっている、そんな印象だった。

 しかしリスクを負わないことには、スペースを生み出せないし、チャンスを作りだせない。そこは試合の時間帯やスコアにもよるが、もっともっとチャンレンジしてほしい。

 どうしても勝てない試合が続くと、自信を無くし、より安全なプレーを選びがちになってしまうが、勝つためにはリスクを負うこと、そしてそこにチャンレンジすることが大事だと思う。特に今自分たちがやっているサッカーはそこが生命線といっても過言ではない。失った自信を取り戻す方法は、自分たちが勇気を持ってチャンレンジすることしかないのだ。

 

 次節はいよいよリーグ最終節になる。そしてその先には天皇杯が待っている。今シーズン最後にして最大の山場を迎える。

 まずはリーグの最終節だ。相手はヴィッセル神戸。リージョだろうがイニエスタだろうが関係ない。まずは自分たちが積極的なプレーをすること。チャレンジの先に光があるはずだ。リーグ最終節をいい形で終わらせ、ダービーへと繋げる一戦としたい!