ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

ゴールへと近づくには?~J1第12節 ガンバ大阪vsベガルタ仙台~

 さて、今回はガンバ大阪戦を取り上げます。

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 ベガルタ仙台は、前節・札幌戦からダン、金、奥埜、晋伍、蜂須賀、石原を入れ替えた。奥埜は長崎戦以来のスタメン復帰。金は古巣戦となる。

 ガンバ大阪は、前節・鳥栖戦で3-0で完勝。ホームに関しては3連勝と波に乗り始めている。スタメンは前節と変わらず。ベンチには今野、そしてケガから帰ってきた長沢が控える。

 

■前半

(1)巡り巡るガンバのディフェンス

 立ち上がり10~15分の時間帯のガンバ大阪の守備は、仙台のビルドアップ隊に対して前からプレスに行く姿勢を見せる。藤本を1列上げた4-4-2の布陣でまずは主導権を握ろうとアクションを起こした。

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 ガンバの前プレは2トップを起点にサイドハーフウイングバックボランチは仙台のダブルボランチに付いていく形となる。

 しかし、こうなると仙台のシャドーは誰が見るの?問題が生じる。逆にいうと仙台はそこを回避ポイントにして、ガンバの前プレを剥がしていく。

 時間が経過するともにガンバは前プレをやめ自陣に撤退するようになる。第二形態へ。

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 仙台の前線3枚に対して、4バックがペナルティエリアの幅で守るようになる。これが第二形態。意図的かは不明だが、まずはハーフスペースのところをやられたくない。より距離感を近くし、危険な中央のスペースを守るのは悪くない判断だった。

 しかし、ウイングバックは幅を取って攻撃してくるので、そこをどうしましょうのガンバだった。ということで第三形態へ。

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 第三形態は、6バック。これも意図的かどうかは不明。幅を取ってくるウイングバックに対してとにかく付いていくサイドハーフだった。実際には6バックというよりは、高い位置を取られたサイドのサイドハーフが下がってくることが多かった。もちろん仙台の両ウイングバックが高い位置を取れば6バックになっていたが。

 そんなこんなで仙台の幅を取った攻撃に対して、対応していくガンバだった。

 

(2)仙台の攻撃

 一方、仙台の攻撃はどうだったか。前半序盤は相手の前プレもあって、トランジションから中央を空けてしまう場面が目立ったが、落ち着いてボール保持できるようになると、ガンバを押し込んでいくことに成功していった。

 相手が4バックだったこともあり、幅を取った攻撃を狙っていた。特に蜂須賀や西村から永戸へ大きなサイドチェンジが数多くあったように、4バックの相手に対して広げさせる狙いを持ってやれていた。

 また相手が下がったとき(特に6バック)は、板倉が機を見て上がっていったように、全体で厚みのある攻撃を展開できた。

 しかし惜しいシーンや決定機に繋げられた数はそんなに多くはなかった。それはクオリティの部分なのかどうかは、最後のところで書きたいと思う。

 

(3)ガンバの攻撃

 前半は仙台に押されている時間帯が多かったガンバ。決定機も藤本のフリーキックから三浦のバックヘッドくらいだっただろう。

 ボールを保持する時間が少なかったガンバだが、主に狙いはサイドにあったと思う。仙台対策の定跡にもなりつつあるが、ウイングバックとシャドーを下げさせることを狙っていた。サイドバックに加えてサイドハーフもサイドに張る時間が長かった。それはウイングバックの裏を狙うことや、押し込むことで仙台の攻撃を鈍化させることが狙いだったと思う。実際には仙台のウイングバックに押し込まれてしまったのだが。

 もちろん倉田も米倉も状況に応じては、中へ入ってくることもあったが、おおよそサイドにポジショニングする時間のほうが長かった。

 

 前半は仙台がボール保持する時間が長く、それに対応するガンバという構図の試合展開だった。スコアレスで折り返す。

 

■後半

(1)今野の投入

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 後半スタートからオジェソクに代えて今野をボランチに入れる。

 

 後半のガンバの守備は前半とおおよそ変更はなかった。ウイングバックに対してサイドハーフが付いていくことで、5バックになったり6バックになったりする。

 しかし前半と違うのは、ボランチに今野がいるかいないかである。前半はバイタルエリアを開けてしまったが、今野がいることでバイタルエリアを埋めることができた。

 おまけに遠藤を一列上げたことで攻め残りができ、カウンターの起点を作ることにも成功する。それゆえにサイドハーフが下がって守備をしても問題はないという判断だったのだろう。

 また今野は3列目から飛び出してくることが多かったが、そのぶんマテウスがバランスを取っていたのはちょっと面白かった。

 

(2)ガンバに与えてしまった一瞬の隙

 後半も仙台がボールを保持していたことには変わりはない。前述したとおり相手サイドハーフを押し下げていることからも、しっかりと押し込んでサッカーができていた。

 58分の奥埜のシュートのように決定機を作れる場面もあった。とにかくやり続けることしか道がない仙台は、前半も後半もボールを保持することで焦れずに攻撃していく。

 

 しかし、一瞬の隙をガンバに与えてしまう。そしてそれがガンバ相手だと致命的なものになってしまう。62分。

 仙台からボールを奪ってのカウンター。中央で遠藤が受けると右の藤本にパスし、そのままボールサイドへ遠藤が寄る。これに奥埜が付いていったことで中央のスペースががら空きとなってしまった。

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 写真でいうとこんな感じ。晋伍も攻め上がっていたので中央のスペースが空いていた。

 そして遠藤→藤本→今野へ。今野はすかさずフリーの倉田へ。倉田は冷静にゴール右隅に流し込んで先制点を奪った。

 

 ガンバとしては後半も主導権を握られていたが、どこかでチャンスが来ることを分かっていたのかもしれない。そんな一瞬を待って我慢強く守れていたし、今野の投入もそういうメッセージが込められていたと思った。

 

(3)攻勢を強める仙台

 ボールを保持できているし、ガンバを押し込めている。しかし点が入らないという事実はなかなかにつらい。それでも攻め続けなければ得点は奪えない。

 仙台は失点直後に中野、その後にリャンと関口を2枚投入し、攻撃的な選手を並べて攻勢を強める。

 あと一歩のシーンは数多くあった。

 中野の突破から西村のシュートはバー直撃。

 関口のクロスが弾かれたところにリャンがいたが、うまくトラップできない。

 蜂須賀からのクロス爆撃も三浦、ファビオの壁を超えることができない。

 丁寧にボールを繋ぎ、サイドや中央からゴール前まで運ぶことはできていた。しかし最後のところでシュートが打てない、ガンバのディフェンスに阻まれるという連続だった。

 アディショナルタイムには関口のクロスを大岩が折り返してリャンが合わせるもわずかにバーの上を超えていった。

 そしてタイムアップ。一瞬の隙を与えてしまった仙台はまたしても勝利を手にすることができなかった。

 

■最後に・・・

 今回も決めきることができずに勝利できなかった試合だった。終始ゲームの主導権を握れただけにやはりゴールを奪って勝ちたい試合だった。

 

 ここ最近問われている「クオリティ」という部分。ゴールを決めるために最後の詰めの部分が甘いことは監督コメントでもしばしば話されていることだ。

 もちろん決定力のある選手を獲得できれば解決できる問題である。しかし、そんなお金はないし、そういう選手を獲得できる資金があれば、そもそもこういうサッカーに行きついていないと個人的には思う。

 クオリティを上げることは容易ではない。ではどうすれば良いかというのを考えてみたい。個人的には「ペナルティエリア幅で攻撃する」ことで、確実にゴールへと近づく数を増やしていくことが必要だと思う。

 

 ここでは共通するシーンを3つ挙げてみたい。

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 ここで共通するのは、この3つのシーンすべてでクロスを上げているということである。

 しかしよく見てみると、どのシーンにもハーフスペース(ニアゾーンと言っていいかも)に選手が走り込んでいる。

 もちろんクロスが悪いというわけではない。ただ、クロスよりもこのハーフスペースにいる選手を使ったほうが、より確実にゴールへと近づくことができるのではないかと思う。

 ペナルティエリア幅でプレーする回数を増やすとは、具体的にいえばこのようなシーンである。相手陣地に入るときはピッチを幅広く使い、そして最終局面ではいい意味でピッチの幅を狭くできるかという感じだろうか。

 昨シーズンを振り返ると、ハーフスペースを利用した攻撃でたくさんの得点を取れていた。それはピッチの選手が共有できていたからである。

 しかし今シーズンは相手の対策もあり、なかなかハーフスペースを使えず、さまざまな手段を使うことでゴールを目指していた。ただ、やはりこのスペースが第一優先であると思うし、そこを見失ってはいけない。ここを利用できるときは勇気を持って使うことが必要なのではないか。

 戦いの幅(バリエーション)が増えている中で、攻撃の幅(バリエーション)も増やさなければゴールにそして勝利へとはつながらない。そんな時期に仙台は差し掛かっているのではないか。

 個の質が低いならば、いかに全員で組織的にゴールへ近づくかを考えなければならない。そんなことを考えさせられた試合だった。

 

 ということで試合は続く。次節は湘南ベルマーレ戦。勇気を持った素晴らしい試合を期待したい!