ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

雨中での熱戦~J1第8節 ベガルタ仙台vs川崎フロンターレ~

 みなさん、お久しぶりです。元気に生きていました。ということで、川崎フロンターレ戦を取り上げます。

f:id:khigu:20180417152801p:plain

 ベガルタ仙台は前節・名古屋戦、西村の2得点もあり3-2で勝利した。そのメンバーから6人が変更。一発退場で出場停止となった大岩に代わり、ルヴァンカップで好調を維持している常田がリーグ戦デビュー。またリャンが今シーズン初先発となっている。そしてベンチには6年ぶりに帰ってきた関口訓充が入った。

 川崎フロンターレは前節・C大阪戦で1-2の敗戦。ここ最近はセットプレーでの失点が多い。ターンオーバーを採用した前節から、憲剛、阿部、家長、エウシーニョ、車屋、奈良が帰ってきた。反対に小林悠がケガで欠場。エドゥアルド・ネットもメンバー外となっている。

 

■前半

 前半は、川崎がエンドを変えてキックオフをする。最近どのチームもエンドを変えたがる。

(1)互いのマッチアップと川崎の攻撃

f:id:khigu:20180417153213p:plain

 仙台はこの試合3-1-4-2のシステムを採用している。それは個々の選手のマッチアップをハッキリさせることが狙いとしてある。第6節の浦和戦では反対にマッチアップをハッキリさせられた苦戦した。今回は逆。川崎対策として、よりマークをハッキリさせるやり方をチョイスしたといえるだろう。

 そんな対策を講じられた川崎はお構いなし。左サイドで人数を増やして攻撃に出ていく。頻繁に家長が左サイドに登場する。しかし通常であれば、密集地帯をコンビネーションでくぐり抜ける川崎だが、なかなか成功しない。スルーパスを出してもゴールキックになるケースが多かった。止めて蹴るが信条の風間式で、その精度が落ちているのかどうかは川崎を見ていないので不明。ただ、川崎の攻撃にそこまで怖さがなかったということは言える。

 前半の川崎の決定機は、川崎らしい崩しというより、ポジティブトランジションからの素早い攻めだった。特に家長のポスト直撃×2はどちらとも疑似カウンターの形だった。仙台の守備が整っていない状態に決定機を作り出していた川崎だった。

 

(2)合言葉は「サイドバックの裏」

 相手とのマッチアップを作るなど、川崎に対策を準備してきた仙台。試合前のコメントで渡邉監督は、我慢の時間帯をいかに粘り強く戦えるかがポイントだと述べていた。

 次にそんな仙台が攻撃時にどこを狙いとしていたかを見ていきたい。

f:id:khigu:20180417160209p:plain

 合言葉は「サイドバックの裏」。ボールを持っている、持っていないに関係なくサイドバックの裏を起点に攻めようという狙いが見て取れた。

 特にポジティブトランジション時(守備から攻撃への切り替え)には、長いボールを使ってスピードのあるジャーメインと西村をサイドバックの裏へ走らせ、チャンスを作り出していた。

 川崎のボール保持時は、両サイドバックが高い位置を取るために狙いやすい場所となる。仙台の2トップが裏へ抜け出せる2人ということもあり、効果的な攻撃となった。

 また我慢を強いられる時間帯でも、切り替わったときの狙いが明確なために、素早く前線へとボールを届けることができた。

 

 また、ボール保持時でも、サイドバックの裏をうまく突けたシーンも作り出した。41分のシーンを振り返る。

f:id:khigu:20180417160651j:plain

 まずは常田から平岡へ。このときに野津田とリャンは、相手ボランチ付近にポジショニングしている。そして平岡は蜂須賀へとパス。

f:id:khigu:20180417160757j:plain

 サイドで受けた蜂須賀は前を向く。そして対面の車屋が出てくる。これと同時にリャンがサイドの裏へ抜けていく。

 もう1つ注目はリャンが抜け出したタイミングで西村が降りてきていること。蜂須賀の動きに対してリャンと西村がしっかり連動した動きを見せていることが分かる。

f:id:khigu:20180417160955j:plain

 裏へ抜け出すことに成功したリャンは谷口も交わしてクロスを上げる。このときの降りてきた西村を見ることになった大島。大島のマークがずれたことで野津田がフリーでニアへと猛ダッシュできた。

f:id:khigu:20180417161155j:plain

 野津田のシュートはチョン・ソンリョンの正面に行ってしまい、ゴールとはならなかった。

 このあとすぐに、同じような流れから西村が右サイドを抜け出して、ファーへクロス。受けた中野がカットインからシュートを打つも惜しくも右にそれた。

 このように仙台はサイドバックの裏を効果的に利用して、チャンスを作り出すことに成功した。

 

(3)仙台が押し込むことができた最大の理由

 前半の25分過ぎから仙台は、川崎を押し込むことに成功する。もちろん前述したように川崎のサイドバックの裏を突いた攻撃ができたいたことも理由の1つではあるが、最大の理由がもう1つある。

 それは、ネガティブトランジション(攻撃から守備への切り替え)である。一番初めに仙台は、相手とマッチアップするような組み方をしたと書いた。そのことは切り替え時にも効いていた。

 仙台の攻撃が一時的に終わっても、そのあとに素早い切り替えと高くて正しい位置取りをすることで、ボールを回収し二次三次攻撃へと繋げていった。

 特に目立っていたのは金と平岡の両センターバック。その中でも平岡は高い位置取りをすることで、ボールを回収しまくっていた。というのも、平岡の対面は阿部で、その阿部が仙台の攻撃時に下がったことで、反対に平岡は高い位置を取ることができた。もちろん常田と金が後方でカバーをすることで平岡を高い位置に置けている。

f:id:khigu:20180417162253j:plain

 対面をハッキリさせることは守備だけではなく、自分が取れる位置取りの決め手ともなる。そのことで高い位置から守備を仕掛けられるし、セカンドボールを回収することができる。

 

 前半は、決定機の数では川崎、ボールを持ってペースを握れていたのは仙台という内容だった。スコアレスで折り返す。

 

■後半

(1)自分たちのペースへと引き戻すために

f:id:khigu:20180417173102p:plain

 後半開始から川崎は、知念に代えて大久保を投入する。お互いにシステムの変更はなかった。

 前半は決定機の数こそ川崎が多かったが、ボールを握れていた、自分たちの狙いをうまく表現できていたのは仙台だった。

 川崎は自分たちのペースにするために、まずは運動量を上げて、仙台のビルドアップ隊に対して、プレッシングを掛けていった。まずは相手からボールを奪うこと、回収することが後半開始からの川崎のテーマだった。

 また、前半苦労していた仙台の2トップに対しても谷口、奈良がしっかり対応できるようになり、前半よりも抑えられていた。特に奈良は鉄壁の守備。この試合だけ見れば代表に選ばれてもおかしくないパフォーマンスを披露していた。

 

(2)各地で起こる球際バトル

 川崎が後半から一気にギアを上げてきたことで、ゲーム内容が激しい展開へと移り変わっていった。各地で起こる局面の球際バトルがより一層激しくなっていく。

 戦術的な勝負よりも、局面での勝負がこのゲームを左右する方向へと進んでいった。その中でも前述した奈良の頑張りや、中野の相手に引っ張られながらもドリブルしていく気迫はとても印象的である。

 ふと、不条理な形で解任となった監督がこの試合を見たら、大変喜ぶんじゃないかなと思ったりもして。

 

 そんなこんなで、後半は激しいゲームに。仙台はその中で次第に運動量が落ちていき、川崎の攻撃をゴール前で必死に食い止めるという展開へと変わっていた。それでも初先発の常田を中心に中央を割らせない。

 仙台は中野をインサイドハーフに中盤に推進力を、石原を投入してボールを収めることで全体を押し上げたいところだったが、上手くいかなかった。

 それでも我慢に我慢を重ねて、川崎の攻撃を食い止めた。

 

 90分が近くなると、川崎も攻め疲れで間延びし、仙台もチャンスを作るが、チョン・ソンリョンを脅かすシュートを打つことはできなかった。

 そして両者得点なくタイムアップ。激しく熱いゲームはスコアレスドローとなった。

 

■最後に・・・

 気迫溢れる、熱いゲームだった。いつも以上にテンションが高く、気持ちが入っていることが伝わってくる内容だった。

 年間通して、こういうゲームはいくつかあって、戦術的に見ていると忘れがちになるんだけど、実際はこういう局面局面の勝負がゲームを左右するんだなと思い出させてくれる。

 

 仙台としては積み上げてきたものを昨年王者に十分ぶつけることができた試合だった。だからこそ得点を取って、この強さや勢いが本物であることを証明したかった。充実感もあるけど、悔しさもあるというのが本音。

 

 初先発の常田は素晴らしいパフォーマンスだった。心配はしていなかったが、3バックの真ん中で堂々とプレーしている姿はとても頼もしかった。大岩抜きでも川崎を無失点に抑えたという事実は自信を持っていいはずだ。

 

 そして試合は続く。次回はミッドウィークにルヴァンカップ・新潟戦。そして土曜の磐田戦となる。ケガ人も続出し、台所事情が厳しいことには変わりはないが、総力戦で頑張ってほしい!