ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

相手の対策のその上を行けるかどうか~J1 第2節 FC東京vsベガルタ仙台~

 さて、今回はFC東京戦を取り上げます。

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 ベガルタ仙台のスタメンは前節と変わらず。前節・柏戦では3-1-4-2を採用し、相手の長所を消すことで勝利を手にした。柔軟な戦いができつつある今シーズン、この試合でも柔軟な試合運びができるかがポイントになる。

 一方、ホームFC東京は前節・浦和戦で1-1の引き分け。長谷川健太監督になり、よりソリッドなチームになった印象である。こちらもスタメンに変更はなし。ベンチには久保建英が控える。

 

■前半

 コイントスFC東京がエンドを変えてキックオフ。なお、理由は不明。

(1)システムを変更したFC東京の狙いを考えてみる。

 前節・浦和戦と同じメンバーでスタートしたFC東京だが、この試合ではシステムを変更している。その意図はなにかを考えていきたい。

 まずは守備から見ていく。開始10~15分は仙台に対して前からプレスを掛けることで主導権を握ることに成功する。仙台に安定してボールを保持されたくないという意思がよく伝わってきた。f:id:khigu:20180304113103p:plain

 またブロックを組んだときは上図のような配置を基本としていた。仙台の3-4-2-1に対して、ビルドアップ隊の3バックには2トップが、ボランチ2枚に対しては髙萩が中間ポジションを取ることで、どこにボールが渡ってもプレスを掛けられるポジションを取っていた。またインサイドハーフはハーフスペースに位置取り、仙台のシャドーへボールが入らないようにコースを制限していた。ポイントはシャドーの前にポジションを取ること。

 また2トップや髙萩が前からプレスを掛けに行ったときに、ハマりそうであれば大森が一列出てきて、板倉へプレスを掛けに行くシーンも見られた。東にはそのタスクはなかったので、大森と東とで役割をしっかりさせていたことが窺えた。

 

 続いて攻撃。

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 大雑把であるが、上図のようなイメージだろうか。攻撃には2パターン用意された。

 その前にまず共通だったのは、ビルドアップの出口をサイドバックに設定していたことである。システムのかみ合わせ上、サイドバックのポジションは空きやすい。また対面のウイングバックとの距離もあるため、あえて高い位置を取らず、4バックのままでビルドアップをしていた。

 サイドバックへ行き渡ったときに、次に目指すのが2つある。1つはインサイドハーフにボールを付ける。もしくは降りてくるフリーマン髙萩にボールを付けるである。この場合は同サイドを密集させて、細かいパスワークから攻撃を仕掛けていく。15分の大森の決定機もビルドアップからの形ではないが、同サイドで密集地帯を作ってからの崩しだった。

 もう1つは、サイドバックから3バックのサイド(ウイングバックの裏)へロビングのパスを送ることである。そこに2トップが走り込み受けることで、相手の懐へと入っていく狙いが見て取れた。前田もオリヴェイラもボールを受ける技術が高く、また体も強いので、非常に収まり厄介だった。

 

(2)相手の出方に対応する仙台

 前半開始からFC東京にうまく対応され、自分たちの時間帯をなかなか得られなかった仙台。さすがに黙っていられないと動き出す。25分のできごと。

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 仙台は前節同様に3-1-4-2のシステムへ変更する。これで相手の中盤とのかみ合わせを良くし、自分たちの時間帯を得られるように変えた。

 具体的になにが変わったかというと、守備で基準点がハッキリしたことも確かであるが、ボール循環がスムーズになった。

 特にビルドアップ隊からウイングバックへのパスが増加し、FC東京の3センターを動かすことに成功し始める。またウイングバックへ渡ったら、インサイドハーフ(奥埜と野津田)、そこを掴まえられたら、2トップへ斜めのパスなど。相手の守備とのギャップが生まれたことで、パスコースが生まれるようになった。

 自分たちがボールを保持する時間が生まれたことでゲームを安定させることができたといえる。

 FC東京も仙台のシステム変更を理解すると、高萩が落ちてきて4-4-2でブロックを組むこともあった。最終的にシュートは2本に止まったが、開始早々からのFC東京ペースから緩やかに回復することができた。そんなところで45分が終わる。スコアレスでの折り返し。

 

■後半

(1)どのようにゴールに迫っていくか?

 前半は開始からFC東京に主導権を握られたものの、システム変更を境に緩やかにペースを回復していった仙台。次なるテーマは、どうやって相手ゴールへ迫っていくのかである。ということで後半どのような攻撃を狙っていたかを見ていきたい。

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 前半、システムを変更したことで、ウイングバックへとボールがスムーズに行き渡るようになったと書いた。後半はその続きを描くことで、FC東京ゴールへと迫っていく。

 ウイングバックへとボールが渡ると同時に、インサイドハーフサイドバックの裏へと抜け出す。このことで相手のインサイドハーフ(図でいう東)が付いていくこととなり、サイドバックウイングバックに引っ張り出される格好となる。

 その裏をシンプルに使うことで、FC東京のサイドの懐へとボールを届けることに成功する。そこからクロスないしはもう一回中央を使うというのが狙いだった。

 また奥埜が走ったスペースに2トップが落ちてきてボールを受けるシーンもあった。ここからさらに展開できれば良かったが上手くいかなかった。

 このやり方は右サイドでしか行わなかった。理由は不明。室屋よりも太田のほうが狙い撃ちしやすかったのかもしれない。

 

(2)得点シーンを振り返ってみよう

 攻撃のデザインができた仙台が、この形で先制点を奪うことに成功する。57分。

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 平岡からボールを受けた古林。受けたと同時に2トップの阿部がサイドの裏へ走り抜ける。このときにインサイドハーフの東が阿部に付いていく。

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 古林は裏に走った阿部へスルーパス。これでサイドバックの裏を取ることに成功する。

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 阿部は一度切り替えしてからクロスを上げる。中には永戸を入れて3人がいた。

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 ボールはファーへ流れて、永戸のもとへ。それと同時にしれっとマイナスのポジションを取る石原。

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 マイナスのボールを受けた石原はアウトサイドにこすりながらのダイレクトボレー。両ポストに当たりながらゴールへと吸い込まれた。

 

 と、サイドバックの裏に抜け出したのは奥埜ではなく、阿部であったが狙い通りの形で得点することができた仙台であった。

 

(3)先制後のFC東京と仙台

 得点が動いたあとのゲーム展開は、おおよそFC東京のペースで動いた。

 仙台も決して後方にラインを下げようなど考えていなかっただろうが、どうしても中盤や前線でタメのできる時間が少ない。またはファウルで止められるため、カウンターが発動できない。という流れが続いていった。

 

 FC東京は70分に久保と富樫を2枚投入し、高萩がアンカーの布陣となる。久保は狭いスペースでもボールを受けられるので、仙台としたら非常に厄介だった。2人で囲んで取れたと思っても、普通に股を抜いてパスするし、バイタルに侵入していい位置でフリーキックを取るしで、やはり天才は違うなというプレーを披露した。

 

 仙台も髙萩がアンカーとなり、例えば西村やジャーメインといった推進力やスピードのある選手を起用して、カウンターから追加点を狙っても悪くないと思ったが、この試合では出ている選手を信じることを選んだ渡邉監督だった。

 

 次第にFC東京にも焦りが見え始め、ややパワープレー気味で攻撃してくれたおかげで中を固めることに集中できた。またパワープレーゆえに久保が消えたのも確か。愚直に久保や髙萩を中心に攻撃してくれたほうが怖かった。

 最後は菅井、西村、アディショナルタイムにはジャーメインと逃げ切るためのカードを順々に切って、今回も1-0でゲームを締めることに成功した。ということで2年連続で開幕連勝を飾った仙台であった。

 

■最後に・・・

 今節も厳しい試合だった。昨シーズンまでを考えたら、もっとボールを支配し5レーンを利用しながら、多彩な攻撃でゴールを奪いたいところである。しかしそれができない中でもゴールを奪い、そして守り切れたのは成長の証と言えるだろう。

 

 ポイントはやはり前半だったかなと。前半ペースをつかめない中でシステム変更で修正し、スコアレスで折り返せたことで次の一手を出すことができた。試合中に修正し、しっかりペースを回復できたことは昨年からの上積みである。

 ただ、やはり理想は攻守ともに支配することなので、相手が対策してくる中でも、しっかりできるようになるために、まだまだやる事はありそうだ。相手の長所を消しながら、いかに自分たちの長所が出せるか。そんなところが次なる目標となる。

 3連勝を目指す次節はヴィッセル神戸との対戦。三田と博文との再会戦となる。次のゲームも期待したい!