ヒグのサッカー分析ブログ

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決めるところを決めきるという課題~J1第33節 ベガルタ仙台vs横浜Fマリノス~

 さてホーム最終戦です。横浜Fマリノス戦を取り上げます。f:id:khigu:20171201131228p:plain

 前節・大宮戦では3-0の快勝。残りの2試合もいいゲームをして今シーズンを終えたい仙台。スタメンは変更なしだが、ケガから帰ってきたリャン、そしてジャーメインがベンチ入りした。  

 一方のマリノス。前節、セレッソ大阪とのACL争い直接対決に敗れ状況が厳しくなった。ACL圏内入るためには仙台戦で是が非でも勝利がほしい。今節はマルティノスと扇原が出場停止。前節と代わってデゲネク、山中、喜田、シノヅカ、ウーゴがスタメンと大きくメンバーを入れ替えての一戦となった。

 

■前半

(1)主導権争いの中で  

 試合開始からお互いに相手のビルドアップ隊に対し、激しく前プレを仕掛けることで主導権を握ろうという狙いが見えたスタートだった。よってボールの落ち着かない展開が続く。

 この展開の中で優勢だったのはマリノスだったかと。マリノスは仙台の前プレに対して、サイドバックを前プレの逃げ場として利用することで剥がすことに成功していた。一方の仙台は3バックとキーパーに圧力を掛けられるとどうしてもロングボールを選択せざるを得ない場面が続いていった。

 この無秩序な時間帯で先制に成功したのはマリノス。5分。やや右25ⅿ当たりのフリーキックを天野が見事に沈め、ACL圏内を目指すマリノスが先手を取る。

 

(2)定位置攻撃と即時奪回  

 先制された仙台。思えば昨年の最終節も開始早々にフリーキックで失点した記憶がある。昨年は失点後、ボールを握り磐田ゴールに迫ったが、最後まで得点を奪えなかった。

 マリノス戦の仙台は開始早々の失点でも昨年と同じ仇を踏むことはなかった。この一年で磨き上げた攻撃に加えて、ネガティブトランジション時の素早い切り替えで、ボールを即時奪回し、二次三次攻撃へと繋げていった。

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 毎試合ではあるが、この試合でも仙台の攻撃のポイントはサイドだった。ウイングバックの位置的な優位性を生かした攻撃で、マリノスを押し込んでいく。  

 マリノスは442のブロックを組む。前の2枚とサイドハーフはなるべく高い位置を取って前から限定していく、もしくは圧力を掛けていくのが本来の狙いだったのだろう。  しかし、仙台は3バックからウイングバックへの対角フィードなどをうまく織り交ぜながら攻撃することで、マリノスの前プレを牽制することに成功する。特に増嶋や大岩から右の古林へと対角フィードを送りチャンスを作り出していたのはその象徴的なシーンだった。  

 マリノスと仙台はシステムのミスマッチが発生するために、サイドハーフボランチが誰を見ればいいのか、またはどこにポジショニングしてコースを限定させるかというのが曖昧になっていった。まさにこれは仙台がいい立ち位置を取れている証拠で、この一年間の積み重ねである。 

 そして攻撃から守備に切り替わったとき(ネガティブトランジション)も素早くボールホルダーにプレスを掛け、マリノスにロングボールを蹴らせてセカンドボールを3バックやボランチが回収するといったシーンを何度も作り出したことで、何度も自分たちのターンにすることに成功する。  

 このネガティブトランジションは昨年一番良かった部分だが、今シーズンはシステムの変更もあって、守備時にどこにポジションを取ればいいのかが定まっていなかった。ここ最近(特に前節・大宮戦)では各々のポジションが良くなったことでネガティブトランジションからのボール回収ができるようになった。これは来年に向けても非常に大きな要素になってくると思う。

 

 試合は、19分に右コーナーキックからの混戦で大岩が押し込んで同点。28分には中央やや右よりの三田のフリーキックから平岡が折り返し最後は石原が決め、逆転に成功する。石原はこれで10ゴールとなった。  

 前半は早々に失点したものの、その後は自分たちのサッカーを展開することで主導権を握り、逆転に成功して前半を折り返した。

 

■後半

(1)後半開始から70分まで  

 後半開始からマリノスは再度、前線から圧力を掛けて仙台を押し込んでいく。前半開始と似たように前からのプレスと中盤でのデュエルでボールを奪うと仙台ゴールに迫っていくシーンを作っていく。  

 しかし、それも開始10分まで。その後は仙台が再び押し込む時間帯へとなっていく。

 53分の蜂須賀のグランダーのクロスに野津田が合わせたシーンから仙台が前半同様な展開を作っていく。サイドから中央から攻撃を作っていき、奪われたら素早い切り替えでボール奪取。前半のリピートを後半も行うことができていた。しかしこの時間帯に幾度となく決定機が生まれたものの決めきることができなかった。試合全体を見ると、この時間帯にもう一点取れていたかどうかは試合を振り返るうえで一つのポイントだったと思う。

 

(2)70分から失点まで  

 70分過ぎになると仙台の全体的な体力が落ちてきたのか、徐々にマリノスに押し込まれるようになっていく。マリノスは喜田がアンカーポジションを取り、センターバックやキーパーとともにビルドアップに参加することで、ボール保持を安定させる役割をこなしていた。推進力のある遠藤やトップの伊藤翔を投入し、さらに攻勢を強めていくマリノスだった。  

 一方、攻め疲れなのか次第にボールを持てなくなる仙台。前に出たい気持ちがあるものの、ボールが奪えず、なかなかマリノスのプレッシャーを剥がすことができなかったので、ボール保持を安定させることができなかった。ベンチにも攻撃的な選手しかおらず、選手を変えることでバランスを調整することが難しかった。70分過ぎの攻撃に出たいけどボールを持てないし、守備に追われているという曖昧で中途半端な時間帯は少し勿体無かったかなと。  

 奏功しているうちに88分にコーナーの流れから、天野のシュートをはじき返そうとした平岡のクリアがミスとなってゴールに吸い込まれ同点を許してしまった。平岡は足を振ってクリアしようとしてしまったのが仇となった。面を作ってしっかり当てるだけよかったのだが、無念。

 

(3)失点から終了まで  

 仙台もここでようやく動く。クリスランと菅井を投入。なりふり構わず攻撃へと出ていく。ホーム最終戦で勝ちたい仙台とACLに行きたいマリノス、終盤は間延びした状態の打ち合いになっていく。仙台はクリスランに2度の決定機が訪れるも決まらず、マリノスもカウンターからチャンスを迎えるもバブンスキーのシュートは平岡にブロックさせる。  

 最後の7~8分は反対に見ごたえのあるワクワクする時間帯だった。しかし両チームともゴールを決めることができずにタイムアップ。2-2のドローとなった。

 

■最後に・・・

 1点リードで終盤を迎え、なんとか勝利をもぎ取ってホーム最終戦を飾りたかった仙台にとって悔しい引き分けとなった。前半の内容や後半の70分までの内容は素晴らしかったが、交代カードを切ることができずに最後は少しトーンダウンしてしまった。

 前述したように後半の押し込んでいる時間帯に追加点を奪えれば、勝利をグッと寄せられていただろう。大宮戦同様に決めるところを決めきるという課題を露呈してしまった。  

 交代に関してはしょうがないかと。ベンチには攻撃的な選手しかおらず、スタメンの11人が現状のベストでそのバランスを崩すのもなかなか難しかったと思う。終盤のゲームのクロージングは選手の層を含めて来季の課題といったところか。

 

 今シーズンも残り1試合となった。次節は降格の危機に瀕しているヴァンフォーレ甲府が相手である。今シーズンの集大成、最後の試合を勝利で飾ることを期待したい!