ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

今戦える選手がベストを尽くすこと J1第31節 ガンバ大阪vsベガルタ仙台

 なにやらスポナビブログが終わるらしいですね。とりあえず今年はこちらで書きますが、来年以降どうなるかは考え中です。

 ということで、今回はガンバ大阪戦を取り上げます。

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 仙台は前節とスタメンの変更はなし。というよりもケガ人が多すぎて変更できない。茂木もケガで前日に大宮で大学リーグを戦ったジャーメインを緊急招集する形となった。特別指定の選手を酷使するのはすごく申し訳ない気持ちになる。

 一方のガンバもケガ人が多い。また長谷川監督の今シーズン限りの退任が発表されると一気に調子を落とし公式戦は9戦勝ちなしとなっている。ホームラスト2試合。長谷川監督の有終の美を飾るためにもなんとか勝ちたいのが本音だろう。ファン・ウィジョがケガしたために長沢が先発となっている。それ以外は前節と変更なし。

 

■前半

(1)仙台の攻撃における狙いは何だったのか?

 前半はお互いにボールを保持して攻撃する時間が多かった。その辺を書いていきたいと思う。まずは仙台から。

 

 ガンバのシステムは4312。仙台は3421である。f:id:khigu:20171109204018p:plain

 システムのかみ合わせ上、図のようにサイドは1対1となっている(もちろん図のようにはいかないが)。となるとサイドに人数を掛けてうまく攻略して攻めていきたい。仙台は相手のサイドバックインサイドハーフ(倉田と井手口)をうまく動かしながらサイド攻略を目指していく。

 

 ここでは狙い通りにいった2つのシーンを見ていく。まずは16分のプレー。

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 ここでは仙台は左サイドで四角形ができている。この場面では四角形ができたことで、ボールホルダーの増嶋にはパスコースが3つある。加えて西村が倉田をピン留めし、蜂須賀は初瀬を引っ張り出すことに成功している。となるとサイドの裏にスペースができ、3列目(ボランチ)の位置から三田が抜け出し、ボールを受けてクロスまで持っていくことができた。結果的にはクロスははじき返されてしまうが、相手を引き出し、空いたスペースに味方が走り込むという、連動したプレーが見られた。

 

 もう1つのプレーは同点ゴールの起点となった22分のプレー。f:id:khigu:20171109202101p:plain

 このゴールでは仙台のゴールキックの流れから数多くのパスがつながり決まった、まさに今シーズン目指していることが形になった得点だった。その得点の一番のポイントが蜂須賀がサイドをえぐることができた場面だった。ここを振り返ってみたい。

 大岩からボールを受けた増嶋。このときに前方には増嶋、三田、蜂須賀という三角形が形成されている。三田と野津田が入れ替わっているのは流れの中で入れ替わっているからである。

 入れ替わった三田がフリーだったので、初瀬は三田へマークを付く。しかし初瀬が三田に付いていったことで、サイドの裏にスペースができる。ここを見逃さなかった増嶋が裏へスルーパス。抜け出した蜂須賀がグランダーのクロスを上げる。石原が落とし、三田、野津田と繋いで最後は奥埜のミドルシュートで同点ゴールを決める。

 このように自分たちがいい立ち位置を取り、相手とのシステムのミスマッチを利用しながら、スペースを作って攻撃することでガンバ守備陣を崩すことができた。この2つのシーンでは狙い通りに攻撃することができたと思う。

 また前節・清水戦では、引いた相手を崩すことができなかった。特にサイドからの攻撃では、コンビネーションから崩すことができずもどかしい時間を過ごしたが、今節はその反省も踏まえ、サイド攻撃ではいい距離感で攻撃を繰り出すことができていた。増嶋が運ぶドリブルをできないぶん、周りの選手がいい距離感でフォローすることで、左サイドの攻撃は改善されたと思う。もちろんまだまだできるとは感じるが。

 

(2)ガンバの攻撃はどうだったか?

 仙台の攻撃が自分たちのポジショニングを利用した攻撃だとしたら、ガンバは以前よく言われた「人とボールが動く」という流動的な攻撃を繰り出す。

 ガンバは攻撃時はポジションが自由になる。左にいた井手口が右サイドにフォローに行ったり、アンカーの中原がサイドを飛び出すというのは往々にしてあった。

 ガンバは、パスを出したら動くという基本的な動きが基本である。例えば、アンカーの中原から倉田にボールが渡る。倉田はサイドの初瀬へパスを出す。倉田はパスを出した後に裏へとフリーランをする。倉田が抜けたスペースに遠藤が登場しボールを受ける、みたいな流動的な攻撃をガンバは行う。というかずっとこれをやっている。

 今更なぜこんなことを書くかというと、仙台とガンバは同じ攻撃的なサッカーを志向していても、その中身が違うということを言いたいからである。攻撃的なサッカーやパスサッカーと言ってもさまざまなやり方があるというのは、この試合のお互いの攻撃のアプローチから分かることである。

 

 仙台はガンバの流動的な攻撃に対して、試合開始からなかなか人を掴まえきれないことが多かった。特に開始から10分間くらいは中原がサイドの裏に抜け出しているに、マークの受け渡しがうまくいかずにフリーにさせていたりと、危ない場面が多々あった。時間の経過とともに少しずつ対応できるようになったが、それでも剥がされてシュートを打たれたり、ペナルティエリアに侵入されてしまうことがあった。

 今シーズンは攻撃のクオリティが格段に良くなったものの、まだまだ守備の改善には余地があり、541で堅い守備を形成するのには一つの課題である。

 それでも集中力が高い守備と、最後のところで粘り強く守ったことで、コーナーからの失点のみで前半を折り返せたことは上出来だったと思う。

 

 前半は19分に長沢がコーナーから先制点を決められるも、直後の22分に奥埜のゴールで追いつき1‐1で前半を折り返した。

 

■後半

(1)奪ったボールを大事にできるかどうかf:id:khigu:20171109204209p:plain

 ガンバは後半、井手口と中原の位置を変えてスタートした。おそらく、守備範囲の井手口をアンカーにすることでより中盤でボールを奪えるようにすることが狙いだったのではないか。

 後半のガンバは、前半よりも前からのプレスを強くした。仙台のビルドアップ隊とキーパーに対して2トップが追い掛け回す光景を何回も目撃することとなった。

 一方の仙台はそのプレスをなかなかかわすことができずに、ロングボールで回避することが多くなってしまった。

 プレスの強度が強くなったガンバに対して仙台もボールを奪ったら前半のようにサイドに広げて前進を図りたかったが、ガンバの切り替えの早さが際立ち、前半のようになかなかボールを落ち着かせることができなくなっていった。

 

 ガンバは後半60分に中原から泉澤に代わって、遠藤と井手口のダブルボランチにシステムを変えた。これでガンバはより前からのプレスの圧力を強めるのと、サイドからの攻撃を強化させた。後半は泉澤が入ったことで前半鳴りを潜めていた藤春が高い位置を取れるようになった。

 クロスから惜しい場面を作るガンバだったが、仙台も最後のところを体を張って守っていた。

 

 仙台もチャンスを作れてなかった訳ではない。切り替えからカウンターでチャンスを作ることができていた。三田が切り込んで右足でシュートしたシーンや、野津田のクロスに飛び込んだ菅井と石原、みたいに惜しいシーンを作ったことは確かである。

 しかし前半のように後方から組み立て攻撃することはなかなかできなかった。ケガ人も多く、交代で攻撃のリズムを変えられないことは後半の戦いに響いたように思える。

 

 お互いにチャンスを迎えるも決めきることができず。それでも集中力の高い、面白いゲームを両者は展開してくれた。結果は1‐1のドロー。広島が敗れたことで仙台の今節での残留が決定した。

 

■最後に・・・

 ケガ人が多く、限られたメンバーしかいない中だが前節・清水戦よりも攻撃が改善され、理想的な形で得点が取れて良かった。また攻撃がうまく機能しなかった後半では我慢強く守り、危ない場面も体を張って守ることができたことの意味は大きいと思っている。

 誰が抜けても同じクオリティのサッカーができれば良いが、そうはいっても抜けすぎるとどうしてもそのクオリティは落ちてしまう。しかし今の仙台は抜けてクオリティが落ちてしまっているものの、今戦える選手がしっかりと課題と向き合いながらクオリティを上げる作業を行うことで、レベルアップを図ろうという姿勢が見えている。チームの底上げではないが、まだまだチームが成長できると感じる試合でもあった。

 

 3週間という少し長い中断期間を経て、残りはいよいよ3試合となる。最後の3試合で今シーズンの集大成をぜひ見せて欲しい。まずは次節の大宮戦、いいゲームを期待したい!