ヒグのサッカー分析ブログ

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さらに上へと J1第25節 ベガルタ仙台vsサガン鳥栖

 さて、今回はサガン鳥栖戦を取り上げます。2週間ぶりのリーグ戦。f:id:khigu:20171113115422p:plain

 この中断期間にルヴァンカップ準々決勝を戦った仙台。鹿島相手に54で勝利し初のベスト4への進出を決めた。

 その勢いを持って挑みたい今節、西村が久々のベンチスタートで、シャドーには野津田と奥埜が入った。負傷明けのクリスラン、ルヴァンカップで活躍した野沢がベンチ入りした。

 一方の鳥栖。夏に鎌田が移籍し、FC東京から河野を補強した。その河野はトップ下でスタメン。また豊田ではなく田川が先発に名を連ねた。

 

■前半

(1)鳥栖の守備の狙いと仙台の外し

 まずは鳥栖の守備の狙いから整理したい。f:id:khigu:20171113115445p:plain

 鳥栖の守備は前から嵌めに行くスタイル。前節の札幌と同じような形を取ってきたと言っていい。2トップと河野で3バックのビルドアップに圧力を掛ける。仙台のダブルボランチに対しては高橋義希と原川が付いてくる形になっていた。おそらく豊田ではなく田川を使ったのは、この前プレの強度を上げるため。守備で労を惜しまない田川を使うことでしっかりとファーストディフェンダーの役割を明確にする狙いがあった。

 札幌と違ったのは、鳥栖は中野を警戒していたということ。中野に対しては右インサイドハーフの福田がマンツーマンで付いていた。おそらくフィッカデンティの中では、中野を福田に見させる。そうすると中野は降りてきて左シャドー(西村)がサイドの裏に飛び出してサイドの裏で起点を作る。という作業を仙台はしてくるから、シャドーに対しては藤田にマークさせるとともに、裏のケアをさせるタスクを与えていたと思われる。

 また仙台がボールを保持し、ブロックを敷く際には6バックのような形を取る。4バックはなるべくペナルティの幅で守り、サイドは両インサイドハーフが降りて対応していた。

 

 しかし仙台はその6バックをこじ開けることに成功する。11分。仙台が押し込むことに成功し、敵陣でボールを保持する。鳥栖は64のような形で守っていたので、仙台はセカンドボールを拾いながらボランチを経由して右サイドへ。古林が縦に無理やり突破しクロスを上げると、ニアで石原が合わせて先制点を奪う。

 おそらく鳥栖としては古林が縦に突破してくるのを予想していなかったというか、原川の対応が少し甘かった。吉田豊が対峙だったら分からなかったけど。慣れない対応(6バック)をして先制点を許してしまったのは鳥栖としては痛かった。

 この得点の際に石原の膝が権田の頭部に直撃し負傷、長い中断となった。権田は戻ることができず赤星と交代となる。

 

 その後の仙台は少し相手の出方に苦慮することとなる。鳥栖の3枚の前プレに対して苦労する場面は目立った。しかし時間の経過とともに鳥栖の対応に慣れてくるようになる。鳥栖の対策はマンツーマンで守っているため、人を流動的に入れ替えながら攻撃することで、鳥栖の守備陣にマークをハッキリさせないことを行った。f:id:khigu:20171113115535p:plain

 石原、奥埜が頻繁にポジションを入れ替えることでギャップを生み出し、パスコースを作った。また鳥栖の予想に反して西村ではなく野津田を起用したことで裏ではなく、足元でのプレーが多くなる。

 鳥栖ボランチとディフェンスラインの間に広いスペースが生まれていたので、野津田や石原が足元でボールを受けることでチャンスを作り出していた。また奥埜も右から流れて、左サイドに登場することで数的優位を作り、鳥栖の守備を混乱させていった。

 

(2)仙台の守備とショートカウンター

 仙台はお馴染の541でブロックを形成した。前から行くことはほぼなく、しっかり構えて迎撃するスタイルを取る。鳥栖もパスを回しながら攻めるスタイルを採用している。特に原川がいる左サイドが攻撃の起点となっていた。相手の間にポジショニングし、ボールを動かしながら相手のブロックを揺さぶり空いたところを縦パスで狙う形を目指してた。

 しかし2トップがイバルボと田川で収めるのが得意ではないので、中盤のエリアでボールを動かせても最終的に2トップまでボールが入らない、またはボール入れても収まらない場面が多かった。それよりも裏へ抜け出してチャンスを作るほうが多かったし、イバルボもそのほうが得意そうで、仙台としては裏へ抜け出されたほうが厄介だった。

 早めに先制したことで守備も落ち着いていたというか、集中力を高く持ってできていた。ルヴァンカップで鹿島相手に2試合戦えたことは結構自信になっているのだと鳥栖戦を見ながら思った次第である。

 

 2点目はショートカウンターの形だった。34分。鳥栖の縦パスを晋伍が引っ掛けて奥埜へ。奥埜は少し時間を作ると、そのまま上がってきた中央の晋伍へパス。晋伍は右にいた野津田へ丁寧にパスを出すと右足でダイレクトで流し込み、追加点を奪う。理想的なカウンターだった。

 鳥栖は仙台に対して対策を取ってきたためか全体のバランスがおかしかった。時間の経過とともに前プレが嵌らなくなり、しかしそれでも中盤がボランチへ食いつくため中盤に広大なスペースが生まれ、仙台は中盤のエリアで自由にボールを持つことができていた。まさに策士策に溺れるといった感じの鳥栖の内容だった。

 前半は2-0で仙台リードで折り返す。

 

■後半

(1)よりよい距離感で

 後半の仙台は、前半よりもより距離感を意識してプレーしていた。ウイングバックボランチ、シャドー、ワントップがいい距離感でいることでボールが回り、前半よりもシュートシーンを増やしていくことができた。

 この試合ではシャドーが裏へ抜けることよりも、鳥栖の中盤のエリアでボールを受けることを狙いとしてやっていた。後半は鳥栖がより中盤のスペースを空けてくれたおかげで野津田をはじめ、数多くの選手が伸び伸びとプレーできていた。

 3点目は54分。イバルボからボールを奪ってのショートカウンター。右に三田が右に展開し、古林が奥埜へアーリークロスを上がる。奥埜が胸で落とすと三田がそれをワントラップしてシュート。これが決まって30。ほぼゲームを決めることができた。この得点も非常に距離感がよく、前半にはなかった三田の3列目からの飛び出しで決めることができた。

 

 その後、鳥栖にカウンターを浴びせられることもあったが、冷静に対応し、スペースのある中盤でボールを回し、さらに攻勢を掛けていく仙台。野津田は幾度となく鳥栖ゴールを脅かしていた。

 

 しかしアクシデントが起こる。晋伍が接触プレーで痛め交代を余儀なくされる。奥埜をボランチに西村をシャドーに入れる。

 奥埜と三田のダブルボランチだとフィルターが効かなくなるのが不安であったが、この日の仙台はどの選手も球際バトルで負けずにいたので、問題はなかった。また攻撃に転じれば奥埜がボランチに入ったことでより攻撃での迫力が生まれた。

 4点目は74分。右サイドで古林がクロスを上げるも合わず。しかし鳥栖ディフェンスとキーパーで連係ミスがあり、再度古林にボールが渡ると低いクロスを上げる。西村がシュートミスをしたもののこぼれを石原が押し込んで4点目を奪う。

 

 最後の最後にイバルボにコーナーから決められたものの、4-1で勝利。ルヴァンカップでの勢いを、そのままリーグ戦にも持っていくことができたゲームだった。

 

■最後に・・・

 仙台が上出来だったというよりも、鳥栖の内容が非常に悪く、それを見逃すことなく勝つことができたゲームだった。鳥栖が「人」に対する守備が強かったためにスペースを埋めきれなかった。反対に仙台がそこをうまく利用できたことで終始ペースを握ることができた。

 

 サマーブレイク明けから守備の再整備を行い、また大岩のセンターバック起用や椎橋の台頭、そして古林や野津田といった的確な補強でチームの底上げができている。それに加え、前半戦ではなかった球際バトルで負けないという非常に重要な面も復活しつつある。

 徐々にではあるが新しいシステムでの最適解を見つけられている。やるべきこと、伸びしろはまだまだあるが、このシステムにおけるベースの部分は完成に近づいていると思う。

 

 監督コメントでもあったように鳥栖に勝ったことで上位・中位へ挑戦する資格を得ることができた。さらに上に行くために次のFC東京戦は勝たなければいけない試合となる。

 相手は監督交代直後で非常にやりにくいが、この勢いをさらに加速させ勝利できることを期待したい!