ヒグのサッカー分析ブログ

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トランジションという新たな課題 J1第21節 ベガルタ仙台vsジュビロ磐田

 前節、鹿島アントラーズに0-2で敗れた仙台。3連戦の2戦目、今節はホームにジュビロ磐田を迎えての一戦となった。 

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 仙台は前節から5人スタメンを入れ替えた。左のセンターバックに増嶋、右ウイングバックに蜂須賀、シャドーを匠とリャン、そしてワントップにクリスランが名を連ねた。前3人を入れ替えたことで、どのように変化が起こるのかがこの試合の注目点と言える。

 一方の磐田。前節・広島戦で敗れはしたものの、それまでは6連勝と好調であることには変わりない。チームとして最適解を見つけたことが好調の要因ではないか。前節契約上の関係で出られなかった川辺と出場停止だったムサエフがボランチで復帰。それ以外は変更点なし。

 

■前半

(1)中村俊輔のフリーマンと球際バトルf:id:khigu:20171113150035p:plain

 磐田の攻撃の特徴は中村俊輔のフリーマン。マリノス時代からそうだが、俊輔がボールを貰いに下がり、チームにリズムを持たせる。なのでシャドーのポジションというよりはシャドーとボランチの間に位置しているイメージ。とにかく色んなところへ顔を出してチームの攻撃にアクセントを付けていた。

 磐田のもう一人のキーマンはボランチ川辺駿。俊輔が降りてくるぶん、反対に3列目から飛び出してくる。これが非常に面倒だった。運動量豊富な川辺のチーム貢献度は俊輔の次になるのではないか。それくらい攻守両面において常に動いていた。

 磐田の攻撃は、仙台のようにオーガナイズされたものというよりは、個々のアイデア流動性によるものが大きように見えた。おそらく日頃は相手を押し込んで攻めるというよりは、しっかりと守備ブロックを組んで、アダイウトンや川又をうまく使いながらカウンターで仕留める。もしくは俊輔のセットプレーで点を決めるということがメインだと思う。遅攻はむしろ少ないのではないか。それこそ俊輔のアイデアとともにあるみたいな感じがした。それでも仙台ゴールを幾多となく脅かしていたけど。

 

 磐田の最大の特徴は「球際バトル」で負けないこと。トランジションが発生したときやルーズボールではしっかり球際に寄せることで、セカンドボールを拾っていた。こぼれ球への速さやアプローチの速さはしっかりトレーニングしているんだろうなというのが試合の至る所で見ることができた。ここは相当徹底しているというか、一番負けてはいけない部分というのを名波監督が言っているんだと思う。川辺やムサエフ、大井に代表されるように球際への執念を感じた。逆に言えば仙台は簡単にそこで負けてしまったことが、磐田に押し込まれてしまう原因となってしまった。

 

(2)仙台のボール保持

ここ最近は守備に軸足を置いてプレーしている仙台。しかし今回の磐田はある程度下がってくれるので、ボールを持つ時間もあった。しかし有効な攻めに出ることができなかった。理由はいくつかある。

 

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 まずは磐田がしっかり準備をしてきたことにある。特にビルドアップ隊のうち左右にセンターバックがボールをもったとき。このときにムサエフと川辺は仙台のダブルボランチを見る。俊輔とアダイウトンウイングバックへのパスコースを切りながら、ボランチとの距離感を保つ。そして川又は、平岡へのパスコースを切ることでサイドを変えさせない役割をしていた。そして横パスやバックパスをしたときに徐々に相手との間合いを詰めながら仙台のビルドアップ隊にロングボールを蹴らせることに成功していった。これが最初の理由。

 

 もう一つは、仙台がボール持ったときにパスミスからのカウンターに怖がっていたのか臆病になってしまったこと。特に2つのポジションで問題があった。1つは大岩と増嶋の左右のバック。磐田がしっかりとパスコースを切っていたこともあるが、ボールを受けたときにその場で悩んでしまっていた。よって味方が動くことを待ってしまって最終的には裏へロングボールを蹴る形になってしまった。

 解決方法は主に2つだろうか。まずは悩まずにボールを動かすことで相手を動かし、糸口を探す方法。もう一つは運ぶドリブル。自らがボールを運び相手に食いついたらパスを出す方法。いずれにしても止まるのではなくボールや自らが動きながら糸口を探さないとコースは見えてこないということである。

 次に問題のあったポジションはシャドー。リャンと匠である。リャンと匠はあまりポジションを動かさずにいた。というよりはビルドアップ隊からボールを引き出すための動きが足りなかったり、遅かったりしてボールをブロック内でもらうことができなかった。

 もしかするとムサエフ、川辺という強力なボランチのところで勝負することのリスクを考えたのかもしれない。それでもシャドーが受けることが少なかった。俊輔ほどとは言わないがもう少し自由に動き回ってもいいのかなとも思うし、ハーフスペースで受けるだけがシャドーではないので、もっと自由に動いてボールに触れてもいいのかなとは感じた。

 

 前半は俊輔のフリーキック2本やセットプレーで危ない場面が多々あったが、磐田が最後の最後で外してくれたり、仙台が体を張った守備で耐えしのぎ前半をスコアレスで折り返す。

 

■後半

 後半開始から匠→西村。そのまま左のシャドーのポジションに入った。

(1)仙台は勇気を持ってボールを持てたか?

 西村の投入の意図は、攻撃時にボールを引き出すことと推進力を生かしてボールを運ぶことだっただろう。匠に比べるとその役割をしっかりこなしていた。

 渡邉監督のコメントにもあったように、やはりボールを握りたかった。前半は磐田が541でブロックを組んでいたこともあって、仙台がボールを持てる時間もあったが、臆病になってしまい、効果的な攻撃ができなかった。

 後半はそこを修正したかったと思う。しかし振り返ってみると前半よりもボールを握ることができなかった。

 というのも、やはり磐田が前半の勢いをさらに加速させて前に重心を置き、仙台ゴールに迫ったことで、どうしても重心を後ろに置かざるを得なかったこと。それと前半でも書いたように、磐田の素早い切り替えとプレッシャーで、どうしてもクリアを選択してしまったことが、仙台がボールを握ることができなかった原因だった。

 

 粘り強く守ることができた一方で、後半にボールを握って形勢を変えることができなかったのは、今後の課題となっていきそうだ。

 

(2)互いに疲弊する中で

 試合展開としては、前半同様に磐田が攻勢を仕掛け、仙台が粘り強く守る展開が続いていった。しかし連戦ということもあり、次第に精彩を欠くプレーが増えていく。俊輔はセットプレーのフィーリングが合ってこなくなり、またほかの選手もクロスの精度を欠くなど、疲労を隠し切れないようになってきた。

 磐田はドリブラーの荒木を左ウイングバックで、シャドーで松浦を投入する。仙台はリャンから奥埜。荒木の登場で疲弊し始めてきた蜂須賀に代わって古林を投入する。

 古林の投入直前には、左サイドで西村と中野が崩しクロスが逆サイドに流れて、それを蜂須賀が上げてクリスランがシュートするもカミンスキーのビッグセーブで決めきることができなかった。

 

 ラスト10分あたりからは打ち合いの様相を呈し、オープンなゲーム展開になるがお互いの守備陣が最後まで体を張って守り抜いた。

 ゲームはスコアレスドローで終了した。

 

■最後に・・・

 後半早々の増嶋のヘッドかクリスランのヘッドが決まっていたらミッションコンプリートの試合だった。内容から言えば勝ち点1でも良しとすべき内容だったと思う。

 

 監督のコメントにもあったように、もっとボールを握りたかったし、握れたはずというのが監督の本音だろう。しかし選手が守備を意識するあまり勇気を持ってボールを握れなかった。ここ最近は守備のことを考えてプレーしているので、リスクがより少ない攻撃を選んでしまっているのかもしれない。やはりボールを持つときは勇気を持って全員でボールを握るためのポジションを取らなければいけないし、守るときはしっかりブロックを組んで守らなければいけない。その辺の意思統一というか意識の共有はもっと突き詰めなければならない。

 

 あとはトランジションのところに課題が残った。というか磐田が切り替えが早いので、そこで今節は圧倒されてしまった。ボールを奪われた後に切り替えを早くして相手に自由を与えないこと。反対に奪った後に相手のプレスを回避してボールを確実に自分たちのものにすること、もしくはカウンターを発動できるようにすることは、攻撃と守備を両立させていくうえで大事になってくると思う。

 今はまだ攻撃か守備かの2つに分かれているというか、うまく連結させられていない。この2つを連結させるためには奪った後、奪われた後のプレーをしっかり整備することが必要になってくる。そこはこれから取り組んでいくことになるのかもしれないが。。

 

 シーズンが進んでいくにつれて課題が出てくるのは当然で、それをどう克服するかがチームを成長するために重要になってくる。まだまだ課題の多いチームだがしっかり見守っていきたい。

 次節もホーム。相手はサンフレッチェ広島。連戦で厳しい試合が続くが、勇気を持ったいいゲームを期待したい!