ヒグのサッカー分析ブログ

ヒグのサッカー観戦日記からのお引越しです。ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

後半戦への試金石となるか J1第17節 ベガルタ仙台vsガンバ大阪

 さて今回はガンバ大阪戦を取り上げます。前半戦ラストゲームf:id:khigu:20171113152146p:plain

 前節、打ち合いの末にセレッソ大阪に敗れた仙台。自分たちの目指している形を表現できた一方で、一瞬の隙や軽率な判断ミスで失点を許してしまった。今節は前節で見つかった課題を克服できるか、そして前節同様に上位相手に目指しているサッカーを表現できるかがカギとなる。前節と代わってクリスランがスタメン。それ以外は変更なしとなっている。

 前節は川崎フロンターレと引き分けたガンバ大阪。遠藤のピルロシステムでシーズン前は注目されたものの、ふたを開けてみれば井手口、今野が前プレを仕掛けるトランジションサッカーへ変貌していた。日本代表に5人が選出されているように代表のサッカーとのシンクロ率も高い。パトリック、丹羽、堂安が抜けたものの、選手層の厚さに変わりはない。今節は移籍した堂安に代わってアデミウソンが先発に。それ以外は変更なし。

 

■前半

(1)配置を変えたガンバ大阪の狙いとは?

 この試合、ガンバ大阪の中盤の4枚は川崎戦と違う配置で始まっている。川崎戦では遠藤がアンカー、インサイドハーフに井手口と今野、トップ下に倉田だった。しかし今節は井手口をアンカーにインサイドハーフは今野と倉田、そしてトップ下に遠藤という配置だった。

 この部分は監督インタビューでも聞かれていたが、その狙いについては長谷川監督の口からはコメントされていなかった。ただ、コメントにあったように今野のコンディションが万全ではなかったことは、この配置転換した理由の一つかもしれない。今野のコンディションが万全ではないので、アンカーに遠藤を置くよりも井手口をアンカーに置き、倉田をインサイドハーフで起用したほうが守備強度は保てると考えたのだろう。

 もう一つは遠藤がカウンターの起点になれること。仙台がカウンターに対して弱いことはここまでの戦いでスカウティングできていたはずだ。なので仙台のボランチの位置に遠藤を登場させ、そこをカウンターの起点とし、2トップに前を向かせる狙いがあったのかもしれない。実際に先制点は遠藤が起点になったところからだった。

 とにもかくにも仙台としてはガンバ大阪が配置を変えたことは、少し面を食らったというか、スカウティングとは違う部分が出てきて面倒な展開になったのは確かである。

 

(2)序盤の戦いをどう評価するか

 渡邉監督のコメントにもあったが、仙台の試合の入り方は非常に慎重だった。それは攻守両面において。相手がガンバ大阪ということや前節の反省もあり、立ち上がりは様子を見るというか、無理をせずに試合が落ち着くのを待っていたのかもしれない。しかし早々にクリスランが出血で治療したり、永戸がケガをしたりとアクシデントが続いたことで、ゲーム自体を落ち着かせることに時間がかかってしまった。

 序盤は自陣から繋ぐことよりも、無理せずロングボールを選択することが多かった。ガンバ大阪が前からプレッシングを仕掛けてくることも分かっていただろうし、中盤には井手口や今野といったリーグ屈指のボールハンターが相手である。なので序盤から正面から付き合わなくてもいいという考えだったと思う。個人的にはこの選択は間違えではないと思っている。ただ問題があったとすれば、どこにロングボールを送るかというところだった。仙台はターゲットである中央のクリスランに送ることが多かった。しかし相手はファビオ。空中戦で勝つ確率が低いところで戦っていた。もしこの選択をするのだったら、例えば序盤は石原とクリスランの位置を変えて、ユーベのマンジュキッチみたいにクリスランを相手のサイドバックと競らせるような仕組みを作るべきだったと思う。そこまで仕込めていたら、もう少し敵陣でボールを回収できたかもしれない。

 守備でも慎重さを見せていた。序盤からガンバ大阪にボールを保持させる時間が長かった。自陣に撤退したことで、相手のセンターバックに時間を与えたことでガンバ大阪に自由にボールを回されることが非常に多かった。また中盤が流動的に動く相手に対して、なかなか人を掴み切れずにズルズルと下がってしまっていた。ここでは前線からもう少し限定させながら、ガンバ大阪の攻撃を制限したかったのが本音だろう。

 先制点を許した場面は、前節の失点同様に淡泊な攻撃をしてしまったところから始まっている。中野が少し無理なクロスを上げてセカンドボールを拾われたところからだった。ちょうどクリスランが治療から帰ってきて同数になったところだったので、ここは自分たちがボールを保持できる展開に持っていきたい場面だった。

 

(3)次第にリズムを取り戻す仙台

 23分の三田のミドルシュートを皮切りに仙台は次第にリズムを取り戻していく。f:id:khigu:20171113152227p:plain

 仙台はガンバ大阪からボールを奪った後、まずウイングバックにボールを預けるシーンが増えていく。ガンバ大阪とのシステムの噛み合わせ上、ウイングバックは時間とスペースが得られることは、チームとして共通の理解を持っていたと思う。なので、いつものようにビルドアップ隊から攻撃がスタートすることもあれば、ボール奪取後にウイングバックへ預けることで、そこを攻撃の起点としていたときもあった。

 ガンバ大阪ウイングバックへ誰が行くのかが曖昧だった。おそらくインサイドハーフが行くのが原則なのだろうが、仙台もダブルボランチやシャドーがいいポジショニングを取っていたので、インサイドハーフもなかなかプレスを掛けることができなかった。

 また前半は西村が愚直に三浦と駆け引きをすることで、自らボールを引き出したり、ガンバ大阪センターバックにギャップを作ったりと相手をうまく動かしながらプレーできていたのは、仙台の左サイドの攻撃をより活性化させるのに効果的だった。

 守備でも、序盤は全員が自陣に撤退しブロックを構えていたが、クリスランのプレスを皮切りに前からガンバ大阪のボール保持を制限できるようになり守備も安定していった。また、流動的に動いていたガンバ大阪の中盤を捕まえられるようになっていった。

 

 前半は01で折り返す。序盤は慎重に入りすぎたことやアクシデントも続き先制点を許してしまったが、徐々に盛り返すことができた内容だった。

 

■後半 f:id:khigu:20171113152253p:plain

 前半にケガをした永戸に代わって蜂須賀が入っていたが、ハーフタイムに前半終了間際の井手口のフリーキックをもろに受けたクリスランが脳震盪を起こしアウト。代わって奥埜が投入され後半に挑んだ。

 

(1)442を絶対殺すシステム「3421」

 開始10分は少し落ち着かない展開だった。どっちにもチャンスがあるような時間帯が続いていく。

 状況が代わったのは、コンディションが万全ではなかった今野に代えて藤本を投入したところだった。f:id:khigu:20171113152416p:plain

 この交代でガンバ大阪は井手口と遠藤をダブルボランチとする442へ変更。

 システム変更の意図が何だったかはよくわからない。もう少し前からのプレッシングをしたかったのかもしれない。もしくはもう少しボールを保持できるようにしたかったのかもしれない。試合を見る限りだとわからなかった。

 

 ただ、これで仙台に追い風が吹いたのは確かだった。相手が442になったことで、仙台はよりボールを繋げ、ガンバ大阪の守備ブロックを揺さぶることに成功する。

 3421は442と相性が良い。もともと今やっているサッカーは442(他のシステムでもそうだけど)に対して各エリアで優位性を持たせるためである。ここまでの戦いでも442のチームとは数多く対戦し、相手のどこにスペースが生まれるのか、どこに動けばスペースを作ることができるのかが、かなり洗練されてきている。よって442で来てもらったほうが、今の仙台であればありがたいという話になる。

 ということで攻撃が機能し始める仙台。中央からサイドからとガンバ大阪の守備ブロックを殴りにかかっていく。セレッソ大阪戦のように中央から崩せるようになったことで、今度は春先からできていたサイドからの崩しもより効果的になり、中野と蜂須賀の両ウイングバックがサイドを制圧できるようになっていった。

 

(2)繰り返されるカウンターからの失点

 しかし次にスコアを動かしたのはガンバ大阪だった。70分。平岡の安易なロングボールを回収し、右サイドで仙台のプレスを剥がすと、裏に抜けたアデミウソンへ。アデミウソンのマイナスのクロスに井手口が合わせ追加点を奪う。

 前節・セレッソ大阪戦。そして先制点と同様に安易なロングボールを回収され、自らが間延びをしたところからの失点だった。

 この時間帯まで丁寧にボールをつなぎ、ゴールまであと一歩と迫っていただけに、安易なロングボールからカウンターを受けての失点は少し集中力を欠いたプレーだった。

 このサッカーをやっている限り、90分の中でカウンターを受けるシーンはどうしてもある。それにはシュートがディフェンダーに当たって、それが相手に渡りカウンターが発動するといった不運なものもある。しかし防げるのもあって、それは失点のように自分たちで間延びした状態を作ってしまいカウンターを許すもの。これは修正したいところ。

 カウンターを受けることが問題ではなく、カウンターを受けるような状態を作ってしまうことが問題なのだ。これだけ失点を繰り返せば、チームも分かっていると思うので今後の試合で、その部分の成長を見守っていきたい。

 

(3)諦めない仙台としたたかだったガンバ大阪

 追加点を奪われたものの、まだ20分残っているし攻めていることは事実。ということで諦めない仙台。繰り返しガンバ大阪ゴールへと迫っていく。

 最初に報われたのは76分。失点の6分後だった。右サイドの大岩から蜂須賀へスルーパス。蜂須賀がグラウンダーのクロスを上げると西村が合わせて1点を返す。藤春が奥埜を意識し、蜂須賀へのプレッシャーが緩くなったところがポイントだった。後方から繋いで、前線の数的優位をうまく活かせた得点だった。

 同点ゴールはその4分後。三田の右コーナーキックから石原と平岡が潰れて最後は大岩が決めて同点。狙い通りかはわからないがニアで潰れたことで大岩がシュートを打つことができた。

 ボルテージは最高潮のユアスタ。その後もスタジアムの雰囲気とともにガンバ大阪を押し込んでいく。

 

 ガンバ大阪の最後のカードは遠藤に代えて金。システムを532にする。

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 監督のコメントではあくまでも勝ちに行くための手段だったとコメントしている。それでもこのまま仙台に押し切られるよりも、まずはこれ以上の失点を許さないというところが最優先の采配だった。

 結果的にこの交代で4バックのときより良くなった。危ない場面を迎えるが、人数を増やし体を張ることで守り切っていた。

 そして90分。中央からフリーキックを獲得したガンバ大阪。藤本がファーに蹴ったボールをファビオが合わせ、土壇場で勝ち越しに成功する。

 

 仙台はリャンを投入し、コーナーキックではダンが上がってくるパワープレーで得点を目指すものの、時間があまりにも少なかった。

 2-3でガンバ大阪の勝利。同点まで持ち込んだものの、あと一歩のところで力負けしてしまった。

 

■最後に・・・

 最後のセットプレーでの失点、ゾーンはいいキッカーの前では無意味ということを思い出させるシーンだった。リャンがその昔ゾーンで守る相手に数多くの得点を演出したように、選手と選手の間にボールを入れられるキッカーがゾーンで守るチームにとっては一番厄介だと思っている。あのシーンでは藤本がキッカーだった。後半の半ばに藤本が同じような位置から惜しいシーンを演出している。それも伏線になったのではないだろうか。

 

 敗れたものの、ガンバ大阪相手に2点ビハインドで追いついて見せた。これは間違いなく成長の証。ここ近年のガンバ大阪戦では押し込むことができても得点には至らなかったが、今回は得点を奪うことができた、しかも自分たちの形で。これは自信を持てることだ。

 リーグ戦半分が終わり、仙台が目指しているところが徐々に形として表れていることが純粋に嬉しい。仙台のサッカーはポジショナルプレーの原理によるとは、最近のいろんな人の声である。渡邉監督になってからボールを保持して主体的に相手を崩していくというところはずっとやってきた。今シーズンはよりそれに特化しているが、この2,3年とは違い、今年は相手の守備位置、立ち位置を見て攻撃できているなというイメージ。今までは「自分たちはこういう風に崩していきたいんだ!」というものだとしたら、今年は「相手がこういう立ち位置だからここが開くよね、そしたら次はここが開いてくるよね」みたいな感じだと思う。よりサッカーが理詰めになってきているというか。相手に手段を複数持たせているのが今のサッカーだと感じている。自分でも理解し得ていないところもあるので、もう少し学んでいきたいです。

 

 ということで来週からはリーグ後半戦。相手はヴィッセル神戸。前半戦では負けた相手。自分たちが成長してきたことを証明するにはうってつけの相手だと思う。自信を持って戦ってほしい。