ヒグのサッカー分析ブログ

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上位と戦って分かること J1第16節 ベガルタ仙台vsセレッソ大阪

 今回はセレッソ大阪戦を取り上げます。f:id:khigu:20171115115653p:plain

 ミッドウィークの天皇杯筑波大学戦で敗れた仙台。ショッキングな敗戦ではあるが、試合はすぐにやってくる。リーグ戦では4試合負けなしと好調であることには変わりはない。前節・鳥栖戦からは右ウイングバックの蜂須賀に代わり、ここ最近結果を残している中野が初先発となった。

 3年ぶりのJ1の舞台となっているセレッソ大阪。ユンジョンファンが監督になってからは元々保有している戦力に加え、戦い方がハッキリしたことでここまでは2位と堂々とした戦いぶりを披露している。山村がトップ下で結果を出していることなんて誰も予想できなかった。今節は出場停止明けのソウザ、そして清武が前節と代わって先発に名を連ねている。なお、関口訓充はベンチからのスタート。

 

 ■前半ボランチを動かせ

 試合開始から構図がハッキリする展開の内容になっていった。ボール保持をする仙台とそれに対抗するセレッソf:id:khigu:20171115115735p:plain

 セレッソは開始から高い位置でのプレッシングを行っていた。仙台のビルドアップ隊に対して時間とスペースを与えないようにボランチの蛍が前に出てくることで同数でのプレッシングを仙台陣内で行おうとする。

 もちろん成功することもあった。セレッソにとっての成功とは、仙台に長いボールを蹴らせることだったのだろう。セレッソセンターバックと石原だったらセンターバックに分があるはずだ。そういうことを考えるとセレッソは仙台のボール保持に対して時間とスペースを与えない、ロングボールを蹴らせることで自陣で回収するというのがおおむねの狙いだったのではないか。

 しかし、どちらかというとプレッシングがハマらないことのほうが多かった。セレッソも圧力を掛けてプレッシングを行うが仙台がシステムのミスマッチをうまく使いながら、縦パスでプレッシングを打開できていた。特に蛍が前に出てくることでソウザの脇のスペースが空き、そこにシャドーが登場することでプレッシングを回避できる場面を意図的に作ることができていた。開始10分15分は仙台がボールを前線に運びながら決定機を作っていくことに成功する。

 

 ただ、仙台はセレッソに一瞬の隙を与えてしまう。16分。三田が右サイドから西村にロングフィードを送る。しかしそれが合わずに中央へボールがこぼれる。ルーズボールセレッソのもとへ。晋伍も三田も中央にいない状態だったのでプレッシャーを掛けられない中で清武に渡る。清武は柿谷へとロングフィードを送る。抜け出した柿谷は余裕を持ってボレーシュートを右サイドのネットへと突き刺し先制点をあげる。

 仙台はここまで非常にいい時間を過ごしていたのに、一瞬の隙を与えてしまった。特に三田のロングフィードによって自ら間延びをする状況にしてしまったのはいただけなかった。そしてこういう隙を逃さないのが上位のチームである。

 そして20分には仙台のゴールキックからのつなぎを自陣で奪われ、最後は山村に決めらる。セレッソが開始から行っていたプレスがハマった場面だった。仙台もつなぎたい意思はあるが自陣でボールを奪われるのはもったいない。ただ、ボールを保持するチームにはこういうミスは年に数回起こり得ることでしょうがないと言ったらしょうがないとも言える。

 

 セレッソは2点先行したことで、無理に前から追わなくなる。もちろん仙台がボールを下げたりすると杉本と山村が追いかけるシーンがなかったわけではない。

 仙台としてはセレッソが後ろから構えてくれたほうが良かったかもしれない。そのほうが相手とのシステムのミスマッチを利用することができるからだ。

 セレッソの守備は誰が誰に行くといった守備の基準点が曖昧だったというか整理がうまくできていなかった印象だった。開始から前からのプレッシングをすることでごまかそうしていたが、スコアに余裕を持てたことや体力的なことを考えて後ろに構えることを選択したのだろう。それでも守備の基準点の曖昧さは残したままだった。

 

 36分の仙台のゴールはまさにそんなシステムのミスマッチを利用した得点だった。f:id:khigu:20171115115832p:plain

 15本ものパスをつないで決まった得点。ポイントはセレッソのダブルボランチを動かせたことだろう。三田から西村に縦パスを入れ、ダイレクトで晋伍を落としたことで、セレッソのダブルボランチを動かし、またそこのエリアに奥埜が登場したことで数的有利を作った。そして逆サイドでフリーになった中野へスルーパス。中野から石原が冷静に流し込み1点を返した。

 実はこの得点、逆サイドにいた柿谷がスライドしてちゃんと中に絞っていれば、奥埜に対応でき防ぐことができた得点だった。しかし、まったく絞っていなかったので仙台に中央のスペースを明け渡すことになってしまったのだ。

 仙台としては、ダブルボランチとシャドーで相手ボランチを動かし、そこから攻めることがこの試合の一つの狙いだったのだろう。またサイドハーフの守備の脆さみたいなのも頭に入っていたのかもしれない。

 この試合では、得点場面以外にも相手ボランチをつり出し、そこからチャンスを作ることができていた。合言葉は「ボランチを動かせ」。そんな狙いが見える前半だった。

 

 立て続けに2点先行されるものの、1点返したことで後半へ希望の持てる展開にすることができた前半の仙台だった。

 

■後半スコアと時間の変化とともに

 後半のポイントは、次の1点がどちらに入るかだっただろう。そんな中で後半開始10分間はお互いにボールを保持する時間が与えられる展開となる。

 そんな中でをより多く決定機を作っていたのはセレッソだった。セレッソは右サイドの攻撃を中心にフィニッシュまで持っていくことができていた。それに加えセットプレーを得ることもでき、二次攻撃にもつなげられることができるようにもなった。

 一方の仙台も開始10分間の中で押し込むことができた。しかしセレッソとは違い、シュートまで持っていくことができなかった。クロスを送って跳ね返されたり、パスミスを取られたりと、攻撃が単発で終わってしまうことが続いていった。

 そんな展開で58分にセレッソに得点が決まる。コーナーキックのこぼれを拾って、丸橋が左サイドをえぐりファーへクロス。残っていた山下が合わせて3点目を奪う。

 失点自体は完全にやられたシーンだったが、ここまでの時間帯で1本でもシュートまで持っていきたかったところだった。悪い流れというか、どっちの主導権でもないときに自分たちに主導権を手繰り寄せることをしたかった。

 

 仙台は失点直後に奥埜→クリスラン。セレッソは、山村を最終ラインに下げ、541にシステムを変更する。

 仙台の反撃は失点の3分後だった。三田の縦パスからクリスランが降りてダイレクトでスルーパス。抜け出した西村が決めて再び1点差。セレッソはシステム変更直後だったこともあり、整理ができていない状態だった。そこをうまく突くことができた仙台だった。

 

 その後も541となったセレッソに対して押し込む仙台。しかし、セレッソは最終ラインで同数となり、マークがハッキリしたことで守備が安定。仙台は前半のように相手を動かしながら崩すことがなかなかできなくなる。

 加えて、蛍とソウザのダブルボランチも仙台のボランチを見ることに集中できるようになり、動かされることがなくなっていった。

 そして68分に増嶋のクリアを拾ったソウザがカウンターを発動。そのままドリブルで運び、シュートまで持っていく。シュートはダンが弾くもののこぼれを蛍が決めて追加点を奪う。

 

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 仙台は増嶋→蜂須賀。3バックを左から平岡、大岩、蜂須賀にする。蜂須賀を右サイドに置くことでサイドからの攻撃を活性化させようとする。時折さぼる柿谷を狙い撃ちするような形を取った。

 この交代で、仙台の攻撃はよりサイドからの攻めに比重を置くことになる。しかし両サイドからいいボールが来て、惜しいシーンを作るもキムジンヒョンに防がれたり、センターバックに跳ね返される展開が続く。

 仙台は最後に西村→リャン。リャンもゴール前に顔を出すものの、堅いセレッソの守備を最後まで崩すことができなかった。

 

 結局このまま試合終了。2-4でセレッソが勝利した。

 

■最後に・・・

 2-3というスコアになったときにもう少し落ち着いてプレーしたかった。相手が自陣撤退でカウンターを狙う中で、まんまとカウンターで4点目を奪われたのはいただけなかった。

 スコアと時間とともに柔軟に形を変えていったセレッソは強かった。個の力に加えて守備の強度が強く、現在の順位である理由が分かった気がする。

 

 負けたものの上位相手にここまで戦えるようになった。春先に浦和や鹿島にボコボコにされていたことを考えると、2か月でここまで成長できているのは本当に立派。奪った得点が証明しているように、攻撃の完成度はどんどん上がっている。

 あとは結果に直結させる作業なのだが、結果を出すためにはもっと「判断力」を高める必要があるかなと。スコアや時間帯を考えながら、今すべきことを正しく判断できるようになれば、このサッカーで結果を出すことができると思う。サッカーの内容・中身ではなくて、サッカーというゲームの戦い方・進め方のところだろうか。

 

 次節もホーム。相手はガンバ大阪。前半戦ラストゲームになる。より高みを目指すために胸を借りるつもりで頑張ってほしい!