ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

攻守において上回った仙台 J1第14節 ベガルタ仙台vsヴァンフォーレ甲府

 さて、今回も更新です。ヴァンフォーレ甲府戦を取り上げます。f:id:khigu:20171115120343p:plain

 前節、新潟に逆転勝利した仙台。ホーム連戦とあって連勝で中断期間を迎えたいところ。今節は三田がケガで欠場。代わりにルヴァンカップで良いパフォーマンスを見せた奥埜を起用。また新潟戦で逆転勝利の立役者となったクリスランと西村がスタメンで起用された。

 吉田達磨監督を招へいした甲府。攻撃的なサッカーを志向するイメージがある吉田達磨監督だが、さすがに甲府では守備を重視するサッカーをせざるを得ない。ウイルソン、島川、道渕ら仙台にゆかりのある選手、コーチが多数在籍している。ウイルソンはもちろんスタメン。道渕はベンチ入りも、残念ながら島川はベンチ外となった。

 

■前半仙台は攻撃時にどんな準備をしていたのか

 開始10分の落ち着かない時間帯を過ぎると、次第に仙台がボールを保持することが多くなった。もちろん戦前の予想通りだけれども。

 仙台は甲府の守備に対してどんな準備をしていたか。まずはそこを見ていくことにしたい。f:id:khigu:20171115120410p:plain

 甲府の守備は532。昨シーズンまでであれば541のシステムで守備ブロックを作り、低いラインで自陣に撤退する穴熊戦法を取っていた。

 この試合を見ている限りでは、昨シーズンと違い、少し前から行く姿勢を見せていた。甲府の守備の約束事として、仙台の3バックの左右(大岩と増嶋)にボールが入ったときは、インサイドハーフである田中と小椋が出ていく約束事があった。そこで仙台の攻撃をけん制しようという狙いだったのかもしれない。またインサイドハーフが高い位置を取るので必然的に5バックもラインの設定は高かった。といっても昨シーズンの甲府と比べればだが。

 そんな甲府の守備に対して仙台はしっかり準備をしていた。ダンや平岡から大岩や増嶋がボールを受けたときに甲府インサイドハーフが出てくる。仙台はそこでもう一度平岡に戻し、ワンタッチか2タッチで反対のバックにボールを渡す。

 こうすると甲府の守備はスライドを強制されるので、自然と自陣撤退に守備のやり方を変える。これで仙台は左右のバックを起点に攻撃をスタートさせることができていた。

 

 では、そこからどうやって甲府のブロック内へと侵入していったか。甲府の5バックはマンツーマンでの守備だった。よって誰が誰を見るかはハッキリとしている。

 そこで仙台は5枚が縦の動き(1人が降りたら、1人が裏に出る)で、甲府の5バックにギャップを作り、そこに3バックからボールを通すことでチャンスを作り出していた。

 前半の開始は裏へのボールと飛び出す人間のフィーリングが合ってなかったものの、時間が経過すると次第にボールが収まるようになっていった。

 

 そして先制点は30分。これも縦の動きで西村が増嶋から裏への飛び出してボールを引き出す。西村は一回収めて、永戸へ。永戸は松橋に対して縦に仕掛けると、抜き切らずにクロス。エデルリマの後ろから飛び込んできた石原がダイビングヘッドで決めた。

 ひとつ狙いとしていた形での先制点だった。もちろん永戸の突破力とクロスの正確さが合ってのゴールだったが。

 

 一方で甲府はどんな狙いだったのか。正直言えばあまり狙いが見えてこなかった。ボールを保持したときもどこをポイントに攻めたいのかはっきりしなかったし、仙台が前からプレスを掛けると仙台が簡単にボールを拾うことができていた。

 唯一分かったのは、甲府のカウンターの起点が堀米であること。堀米にボールが入ったときは甲府のカウンターが発動することが多かった。しかし、堀米へのボールが悪かったり、堀米が収めても出てくる選手が少ないので、カウンターで怖い場面はひとつくらいだった。

 

 しっかりと準備してきた仙台が先制に成功し、リードして後半を迎える。

 

■後半自らの勢いを自ら削いでしまった甲府

 前半、自分たちの守りに対して、しっかり対策を講じられてしまった甲府吉田達磨監督のコメントからすると前半は、全くボールに行けてなかったと。もっとボールを呼び込めと。そういう見解だった。

 甲府は後半開始と同時に、勢いを持って入ろうという姿勢を見せていた。積極的にボールを受けて、全員で攻撃しようみたいな姿勢は見えた。また前半守備のタスクが曖昧だった2トップは前から追うようになり、攻守両面において前半よりも積極的にはなった。

 

 では、それに対して仙台はそれを恐れていたかというと、たぶんそんなことはなかったと思う。しっかり541のブロックを作りながら、前からプレスを掛けること、球際で負けないことで甲府の攻撃を抑えていたし、セカンドボールをしっかり回収することで甲府の二次三次攻撃を防いでいた。その中心にいたのはダブルボランチの奥埜と晋伍。晋伍は言わずもがなだが、奥埜もボールを奪う技術が優れている。この2人が中盤にいることで、攻守においてチームを落ち着かせる役割を90分こなしていた。

 

 そして60分。甲府の左コーナーから、仙台がクリアしたセカンドボールに対して永戸がクリアしたところに阿部のカンフーキックが入り、一発退場。甲府は自らの勢いを自ら削ぐ形になってしまった。

 

 ここから30分は仙台がペースを握ることになる。甲府もドゥドゥを投入し、432にして、攻撃を仕掛けようとするが、再現性のない、淡泊な攻めに終始し、仙台のゴールを脅かすことはできなかった。

 一方仙台は、70分に左コーナーの流れから、永戸のクロスが山本に当たったボールをクリスランが蹴りこみ、追加点。ああいう瞬発的な場面では滅法強いクリスラン。これで7点目となった。

 80分には、波状攻撃の流れから西村のマイナスのクロスに途中出場のリャンが決めて3点目。これで勝負ありとなった。

 

 仙台はコンディションを上げさせたい中野と今シーズンリーグ戦初出場となった野沢を投入する余裕の采配。

 攻守において甲府を圧倒した仙台。3-0でホーム連勝となった。

 

■最後に・・・

 甲府が自滅してくれたこともあるが、きっちり3点を奪っての快勝。石原、クリスラン、リャンと決めるべき人、決めてもらいたい人がゴールを決めたことも非常に良かった。

 前半のところでも書いたが、攻撃においてしっかり準備してきたことを表現できたのではないか。相手の状況や状態を見ながらビルドアップや攻撃ができたことは、間違いなく成長だと思う。

 そして、なによりもビルドアップのパステンポがどんどん良くなっている。大岩、平岡、増嶋と徐々にこのサッカーに適応できているなによりの証拠が、このビルドアップのパススピードだと思う。

 また三田がいない中で、奥埜がルヴァンカップ同様にボランチとして存在感を出したのは、これから渡邉監督の頭を悩ましていくことになるだろう。奥埜は三田のような中長距離のロングフィードはないが、確かな技術とパスさばきで、チームに落ち着きとリズムをもたらした。またボールを絡め取る技術もあり、今後ボランチの競争がどうなっていくかとても楽しみである。

 

 代表ウィークに入るためリーグ戦はお休み。次節はサガン鳥栖。勝ち点も非常に近いので負けられない戦いとなる。クリスランはいないけれども、チームの総合力で鳥栖に勝利したいところ。次もいいゲームを期待したい!