ヒグのサッカー分析ブログ

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クリスランと西村拓真 J1第13節 ベガルタ仙台vsアルビレックス新潟

 さてさて。今回はアルビレックス新潟戦を取り上げます。f:id:khigu:20171115121002p:plain

 前節、マリノスに内容で圧倒したものの1-1の引き分けで終わった仙台。内容と結果を伴わせる作業はまだまだ続いていく。内容が良かった前節からスタメンに変更はなし。ミッドウィークのルヴァンカップで活躍した小島、ベテラン野沢が久々のベンチ入りを果たしている。

 一方、呂比須ワグナー新監督のもと前節・札幌戦で勝利した新潟。この勢いをさらに加速させボトム3から抜け出したい今節のゲームである。呂比須ワグナー新体制になってからシステムは4231。チアゴをトップ下にホニ、山崎、鈴木武蔵とスピードに自信がある3人が前線にいるのが特徴的。低い位置でブロックを組んで素早いカウンターを仕掛けるというのがその狙いである。

 

■前半新潟の守備の立ち振る舞い

 前半の展開はボール保持する仙台。自陣で守備を作り、ボールを奪ったら素早い前線3人にボールを預けカウンターを仕掛ける新潟、という展開が繰り返された。

 まず、新潟の守備の狙いから見ていくことにする。f:id:khigu:20171115121046p:plain

 新潟の守備は基本的に4141という布陣だった。オリジナルポジションは4231なのだが、これは攻撃時に見られたシステムだった。

 新潟が4141のブロックを敷いた一番の理由が仙台のシャドーへの縦パスを制限させることにあった。

 前節の仙台はハーフスペースの入口に大岩と増嶋を登場させ、そこから相手の状況に応じてシャドーへの縦パス、ウイングバックへの展開からシャドーといったボール循環を行っていた。

 なので新潟は、まずは縦パスを入れさせないことを第一とし、横パス(3バックからウイングバック)ならスライドで対応するという仕組みができていた。なお、仙台のウイングバックに入ったときには新潟のサイドハーフが基本的に対応していた。特に右サイドのホニは、永戸にどこまでも付いていくマンとして、時には最終ラインまで下がり、5バックの状態になることもあった。

 

 仙台は序盤こそシャドーにボールを届け、開始早々にビッグチャンスを生み出したものの、その後は新潟の守備の修正もあってなかなか前線3人にボールを届けられない。

 新潟がサイドにボールを誘導させたのは、おそらくサイドからクロスを上げられても、仙台の前線3枚が身長が高くないのでソン・ジュフンと富澤で跳ね返せると踏んでいたのだろう。クロッサーに対してもしっかりついていけてたので、新潟にとっては怖い場面はなかった。

 

 仙台は、ボールを握れども、自分たちがやりたいようにボールを回すことができていなかったのが本音だろう。新監督になり、スカウティングできる材料が少ないので、相手の守備の出方にも不明な点が多かったはずだ。自分たちが主体的にボールを動かせていたかというと、どちらかというと相手にうまく誘導させられていた場面のほうが多かった。

 ただ、前半なのでまずは相手の出方を見ながらハーフタイムに修正すればよいので、そこまで深刻になることもないと思った。ボールを握れているという事実はあるので、うまく変化をつければ、反対に主体的にボールを回すことができると。だから慌てる必要はなかった、そんな前半の感想。

 00で折り返す。

 

■後半立ち位置の変更とクリスラン&西村拓真

 前半スコアレスで折り返したゲーム。仙台はボールを握ることに成功し、新潟は狙い通りの守備でゼロに抑えることができた。おそらくお互いに前半の内容を良しとしていたと思う。そこで後半に前半プラスαで変化が加えられるかが重要だと考えていた。

 そのなかで新潟は前半と打って変わって、守備のやり方を変更する。f:id:khigu:20171115121123p:plain

 守備時は442にし、前からプレッシャーをかけることに変更した。おそらくこれはプランの中にあったのだろう。前半はゼロで、後半は主導権を握るために前からプレッシャーを掛けようと。

 ということで、仙台のビルドアップ隊にプレスを掛ける新潟。前半は山崎、ホニは仙台のウイングバックに付いていく場面が多かったが、後半は大岩、増嶋にプレッシャーを掛けることが多くなる。

 山崎とホニが高い位置を取り、攻め残りの状況を生んだため、新潟のカウンターはより強力になっていった。後半開始早々にあったホニのチャンスから新潟のペースで試合が進んでいった。

 

 仙台は新潟の前からの圧に耐えながらボールを前進させるが、シャドーや石原のところでセンターバックに抑えらるシーンが後半はより増えていった。また後半はホニが永戸に付いてこなくなったことで、前半よりもクロスを上げられる数は増えたが、中でセンターバックにはじき返されるシーンが続いていった。

 

 そして新潟の先制点。62分の出来事。リャンと奥埜のところでパスミスが起きて新潟のカウンターが発動。中盤で晋伍がチアゴを止められずそのまま前進。山崎にボールが渡り、一度は平岡がスライディングで対応するもそのボールがリャンに当たり、チアゴへ。チアゴはダンの股下を抜いて冷静に流し込み先制。

 

 その後仙台は二枚代え。石原、リャンを下げて、クリスラン、西村を投入する。結果的にこの交代が流れを変えることになる。

 西村は投入直後にミドルシュートを打ち、仙台に流れを引き込んだ。それ以外にも左サイドを中心に広範囲に動きボールを引き出した。前節同様に永戸の援護(特にインナーラップ)、間でボールを受ける、サイドからのチャンスメイクと数多くの仕事をこなし仙台に攻撃のリズムをもたらす中心となっていった。

 またクリスランはいい意味であまり動かないのでセンターバックをピン止めする役割となり、その結果西村や奥埜がボールを受けられるようになっていった。 

 

 新潟はシステムを4141に変更し、前半同様にしっかり守備ブロックを形成しながらカウンターを発動させていく。仙台の中盤にフィルターが掛かっていないので、素早いカウンターから仙台のゴール前で惜しいシーンを作っていく。

 

 しかし新潟が決めきれないと次第にバテテいった。特にロメロフランクやチアゴは足が止まり始め、ブロックは組んでいるものの前半のように強度を保った守備ができていなかった。それもあって西村や奥埜はだんだんとバイタルエリアで生き始めていく。

 そして83分に仙台はPKゲット。これもバイタルエリアでクリスランと西村のコンビネーションが生んだものだった。これをクリスランが決めて同点。そして84分。永戸のクロスにクリスランがスーパーボレーシュートを決めて仙台は2分間で逆転に成功する。

 

 新潟も直後に鈴木武蔵が一対一を迎えるがダンが顔面でセーブする。その後、成岡と加藤を一気に投入するもゲームに変化はなく、タイムアップ。2-1の逆転勝利。開幕戦以来のホームでの勝ち点3となった。

 

■最後に・・・

 逆転での勝利。クリスランのスーパーボレー。ホームでの久々の勝利。今後チームが盛り上がっていく要素の多いゲームとなったのではないだろうか。

 新潟が後半に数多くのカウンターがありながらも決めきれず、次第にバテてきたところにクリスランと西村の登場は非常に効果的だった。

 それを言うと新潟に適度にカウンターを発動させたことが、逆転に繋がった感じがしてなんとも言えない気持ちになる(笑)

 しかし2試合連続でカウンターから失点したことは何とかしたいところ。前に人数をかけることを前提しているために中盤を剥がされると一気にピンチを迎えてしまう。

 今節のチアゴのように中央にうまい選手がいると、そこで晋伍や三田が剥がされ危ない場面を招いてしまう。今節の失点シーンも奪いに行った晋伍がチアゴに出し抜かれたところから新潟のカウンターが加速していった。相手からボールを奪うのか、カウンターを遅らせるのか、はたまたファウルで止めるのか、この辺はもう少し状況判断が必要になっていきそう。

 

 クリスランと西村はとても良かった。特に西村はルヴァンカップで自信を深めたことで、シャドーのポジションで生き生きとプレーできている。この試合の影のMOMは間違えなく西村だった。

 

 次節はヴァンフォーレ甲府。久々の5バックとの対戦。島川やウイルソンといった面々とも再会できる、とても楽しみだ。次節もホームでいいゲームを期待したい!