2週連続の更新です。横浜Fマリノス戦を取り上げます。
前節、甲府に勝利し連敗を脱したマリノス。開幕直後こそ好調だったものの、ここ最近は勝ったり負けたりが続いている様子。今節は前田が前節と変わって先発で起用されている。
一方、最下位大宮に手痛い敗戦を喫した仙台。立て直しを図りたい今節はクリスランに代わって奥埜を起用。ワントップに石原、シャドーにリャンと奥埜という形を取った。また、ベンチには開幕直前に負傷した中野嘉大が入った。
■前半ハーフスペースの活用とマリノスの修正
この試合、序盤から仙台がマリノスを押し込む展開に持ち込むことに成功する。
その辺からまずは見ていくことにする。
仙台が今年からトライしている343(3421)の特徴は、ハーフスペース(図の白いスペース)に人を登場させやすいことにある。ハーフスペースとはピッチを縦に5分割したときの真ん中のレーンの左右のレーンのことを指す。いわゆる、442で守備を組んだときのサイドバックとセンターバックの間のレーンと言えばわかりやすいだろうか。。
そこに人を登場させることで相手のマークを掴みづらくさせるというのが特徴的。もう一つは相手の4枚の守備に対して5枚を横に並べることで単純な数的優位を作り出すということも挙げられる。ここ最近あったように、大きなサイドチェンジからのチャンスメイクはまさにそんな数的優位な状況が生み出したものである。
この試合では特にこの「ハーフスペース」の活用ができていた。マリノスの守備に連動性がなかったこともあるが、仙台は大岩、増嶋がハーフスペースの入り口に登場し、そこからシャドーへの縦パス、ウイングバックからボランチそこからシャドーへなど、さまざまな形からバイタルエリアもしくはペナルティエリアへの侵入に成功していった。前半の10分間で決定機がいくつもあり、決めきることができていればゲーム内容が変わっていただろう。
仙台が押し込めた要因のひとつとして前述したようにマリノスの守備の連動性の問題もある。
マリノスは守備時は442。基本的に仙台のビルドアップ隊3枚に対して、2トップが。ボランチに対してはボールが入ればボランチが行くという決まりになっていた。しかし、ボランチが前に飛び出したときに最終ラインが仙台の3トップを捕まえきれていないため、簡単に仙台にボランチの背後を使われてしまった。
これは仙台が狙いとしていることでもあったが、最終ラインが人を捕まえきれていないので、守備が後手を踏んでしまい、主体的にボールを取ることができなかったのだ。
そんな状況のマリノスだったが、25分過ぎくらいから修正する。
まずはしっかり3ラインの距離感を保つこと。そしてボールと同サイドのセンターバックはしっかり人を捕まえて縦パスに対しては厳しく寄せることを行った。特にデゲネクが奥埜や石原に厳しく寄せるシーンが増えていく。
反対に自陣に引いたときは、2トップも自陣まで下がり、低い位置で442を形成する場面が出てくる。
このこともあってマリノスは少しずつ、仙台の攻撃を抑えることに成功していった。
そして終了間際のカウンターからの前田直輝の得点へとつながる。しかし、マリノスは前半通して攻撃の形ができておらず、頼みの齋藤学、マルティノスも仕掛ける場面はほとんどなかったし、ラストパスも精度を欠いていた。それ故に棚ぼたのような先制点だった。
反対に仙台はほとんどの時間を押し込むながら先制点を奪うことができなかった。攻撃の形、特にペナルティエリアまで侵入する形はできていても、最後のフィニッシュのシーンで精彩を欠くシーンが多かった。
0-1、マリノスリードで折り返す。
■後半後半の戦い方、選手起用・意図
後半も前半とほぼ変わらない展開だった。後半スタートからマリノスが前から行こうとする姿勢も見られたが、次第に自陣にブロックを作る時間が多くなっていった。
後半のマリノスは中をしっかり固めることで仙台の攻撃に対抗していた。それもあって仙台の攻撃の形はほとんどがサイドからという形になった。特に左右のバックからウイングバックへのパスは多くなっていった。その中でも左サイドからの攻撃が多かったのは、齋藤学サイドよりマルティノスサイドのほうが、マルティノスの守備を考えても攻めることができると考えたのかもしれない。
ということで仙台は、リャンから西村にスイッチする。西村に与えられた役割は、左サイドの攻撃を助けることだろう。時には間で、時にはサイドバックの裏へ走ることで、ボールを引き出すもしくは永戸への時間とスペースを与える役割をこなしていた。
マリノスは齋藤学と前田がはほぼ同じタイミングでケガでダメになる。そして扇原と山中を投入する。仙台もこのタイミングで蜂須賀に代えて中野。齋藤学がいなくなったことで仙台は右からの攻撃も試みる。
中野はケガ明け初めての試合だったんで、まだまだ試合勘を取り戻すのに精一杯という様子だった。持ち前の技術で右サイドの起点にはなっていたものの、自慢ドリブルで縦へ仕掛けることができていなかったのを見ると完全復活まではまだ時間がかかりそうだ。
選手交代を含めて、徐々に相手ゴールへと近づいてった仙台。75分に決定機を迎える。
永戸のクロスから石原、最後は奥埜という場面。最後は飯倉にはじき出される。この場面では、右から左へとボールを展開していくところから始まる。平岡から増嶋に渡ったときに、西村が松原を引っ張ることで永戸はフリーになった。マルティノスの守備が緩慢だったこともあり、増嶋から簡単にボールを受けられた永戸は、低くて速いクロスを入れる最終的には奥埜のシュートは飯倉にはじき出されるが、狙い通りの攻めができたシーンだった。
そしてこれで得たコーナーキックから大岩がドフリーで合わせて同点。この試合のセットプレーはかなり準備されていて、平岡が中澤をうまく釣り出した。またこの試合を通して、PKスポットあたりを狙って蹴られていたし、キッカーもインスイングではなくアウトスイングなるように、左は三田、右はリャンが蹴っていたのも、すべて準備していたものだろう。しっかりと狙い通りに決めた得点だった。
仙台はその後、クリスランを投入し逆転を狙う。クリスランが入ったことでターゲットは増えたものの、中で待っていることが多いので、最終的には中澤にはじき返されることが多く、効果的とは言えなかった。そういったことを含めると、前線のトライアングルを石原、リャン、奥埜にしたのも、攻撃の連動性・流動性を狙ったものだったと言えるだろう。
ということで残りの15分お互いにスコアを動かすことはできずタイムアップ。1-1の引き分けとなった。
■最後に・・・
この内容のマリノスなら勝ちたかった、というのが本音だろう。しかしここまでの戦いや決めきるところで決めきれない現状を見ると、なんだか引き分けが妥当なような気もする。
前半のスタートから押し込み決定機を迎えたところで決めきりたかった。マリノスが修正する前に決めたかった。ピッチの使い方、パスの回し方と連携が深まっていることは間違えない。具体的に言えば、ペナルティエリア・バイタルエリアまで侵入する形はできてきている。あとはそこからゴールまでどう持っていくのか。ここが次のステップになる。個に頼るのか、もう一つアイデア出す、もしくは仕組みを作るか。攻撃はゴールまであともう少しというところだろうか。
次節は監督交代後初勝利を挙げた新潟である。勢いを持ってくる相手をしっかり止めることができるかがポイントになってくる。内容と結果が伴うまでもう少し。次もいいゲームを期待したい!