ヒグのサッカー分析ブログ

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若手の躍動ルヴァンカップグループA第4節 大宮アルディージャvsベガルタ仙台

 今回は現地観戦してきた大宮アルディージャ戦を取り上げます。f:id:khigu:20171115122108p:plain

 日曜日のさいたまダービーでようやく今季初勝利を挙げた大宮。この勢いを更に加速させていきたい、そんな最初の試合。大宮は過密日程でターンオーバーを敢行した。それでも大前、ムルジャが2トップ。なかなか波に乗れない2トップがこの試合できっかけを掴むことができたのか。

 一方、清水2連戦を連勝で終えた仙台。徐々にであるが今シーズン取り組んでいることを表現できてきている。この試合では日曜日のメンバーから全員を入れ替えて挑んだ。11人中9人が生え抜き、そして5人が21歳以下とフレッシュなメンバーをチョイスした。

 

■前半仙台ができていて、大宮ができていなかったこと

 前半は大宮がエンドを変えてキックオフした。

 

 まずは大宮の守備について整理をしたい。大宮の守備の狙いどころは、石川直樹だった。それは大宮のストロングサイドが右サイドだったからなのか、石川直樹のビルドアップ能力を考えて狙い目に定めていたのか、理由はわからない。ただ、仙台のビルドアップ時に石川に渡ると、長谷川アーリアがプレスを掛けていくことはとても多かった。

 

 そんな中、先制点を挙げたのは仙台だった。17分のシーンを振り返る。f:id:khigu:20171115122150p:plain

 シーンのスタートは、小島から始まるビルドアップのところ。大宮は小島が椎橋にパスしたところからプレスのスタートを切った。このときに図のようにアーリアは石川にプレスを掛けている。しかし、椎橋が次に選んだのは、西村。アーリアが前に移動したことで、空いた背中のスペースに西村が顔を出していた。西村に対して大山がプレスを掛けるが、うまくかわし、蜂須賀へ展開。蜂須賀のクロスにファーの茂木が折り返し、西村がシュート。ブロックされたところを蜂須賀。これもブロックされるが、最後、こぼれ球を佐々木匠が落ち着いて決めて先制点を挙げる。

 

 何が言いたいかというと、大宮は前からプレスを掛けているのに後ろが全く連動していないである。前半の大宮は特にプレスが緩く、人を捕まえられていなかった。f:id:khigu:20171115122235p:plain

 下の図のように守備はコンパクトに保っているのものの、ボールや仙台の選手にプレスが掛かっていないので守備が後手に回り、仙台に揺さぶられ放題だった。特にシャドーへの対応はかなり曖昧で、西村や佐々木は間でうまくボールを受けられることができた。よって仙台は自由に、そして自分たちが主体的にボールを握り、攻撃を繰り返すことができたのである。

 

 もちろん、仙台が良かったのはこれだけが理由ではない。大宮の緩いプレスに対して、仙台は前からしっかりプレスを掛けることで、相手から自由を奪っていた。時には裏へボールを運ばれるシーンもあったが、それでも全体が高い位置にポジショニングすることで、前から積極的にプレッシングを行えることができていた。

 また奥埜のボランチも非常に効いていた。おそらくこのシステムのボランチは長崎時代に経験しているはずで、久しぶりながらも慣れはあったはずだ。持ち前のボールキープと肉弾戦の強さでボールを回収。攻撃時には、テンポよく捌くことで、仙台の前進をよりスムーズにさせていた。守備では藤村とうまくバランスを取りながら、日ごろ晋伍が行っている役割を奥埜なりにこなしていたと思う。非常に良かった。

 

 時折、危ない場面を招きながらも、3バックを中心に最後のところでやらせずに、前半は1-0で折り返す。

 攻守ともに若手が躍動していた前半だった。

 

■後半苦しみながらも

 後半はお互いの印象として、大きくやることを変えてこなかったという印象を持った後半だった。

 

 大宮の攻撃の狙いは、仙台のウイングバックの裏だった。具体的にいえば、ウイングバックセンターバックの間を狙うイメージ。仙台は、5バックながらラインを高く設定しいる。よって、まずは裏を取って相手の守備をひっくり返そうというのが大宮の攻撃のテーマだった。

 前半から90分間、その狙いは大きく変わっていなかった。後半に入って、その狙いを色濃くしたというのが真実だと思う。大宮が狙いとしたのは、主に茂木の裏だった。後半に入ってから数多く、奥井に裏を取られるシーンが目立った。前半も裏を取られるシーンがあったので、より明確化したのだと思う。茂木は攻撃では持ち味を出せるものの、ウイングバックの守備はまだまだな部分が多い。85分までプレーしたがいい学習機会だったのではないか。

 反対に大宮の左サイドは、清水が抜け出したり、ムルジャが抜け出してポイントを作ることが多かった。ムルジャと小島をマッチアップさせることで質的優位を狙ったものだった。

 また、大宮は緩かった守備を修正。マークをハッキリさせることで、仙台に自由にボールを持たせなかった。特に縦パスに対しては厳しい寄せで、サイドチェンジを行わせていなかった。

 攻撃は、前半の狙いをより明確化すること。守備は、全体が連動して守備を行うことで仙台のボール保持を自由にさせなかった。このことで次第に大宮ペースでゲームは進んでいく。

 

 しかし、次のゴールを決めたのは仙台だった。57分。奥井が裏を取ってチャンスを迎えるものの、関が飛び出してセーブ。素早く始めて、奥埜へ。奥埜は奥井がいなくなったスペースに走りこんでた西村へロングボールを送る。そのまま西村は対峙する大屋を何回かの切り返しで振り切ると右足を振り抜いて追加点をもぎ取る。

 流れは良くなかったものの、大宮のスキをついて決めることができた。西村は今シーズン初ゴール。

 

 ゲームの流れ自体は大宮ペースのままだった。繰り返される裏への飛び出しで、全体のラインが少しずつ下がる。また、なかなか前線でまでボールを運べず、中盤で引っかかることが多くなっていった。

 そんな中、大宮は大前に代えペチュニクを投入する。その直後に大宮が河面のクロスにペチュニクが合わせて1点差となる。失点シーンでは、人数が揃っているのに、河面に対してプレッシャーを掛けられずに易々とクロスを上げさせてしまった。要反省。

 

 その後、仙台は三田や大岩を投入し、守備の強化を行う。大宮は岩上、黒川を入れて、サイドをより強化する。大宮はミスが多く、自滅してくれて助かった場面がいくつもあった。

 仙台は、前線までボールは運べるものの、シュートまで持っていくことができなかった。後半は運動量も落ち、相手のプレスも激しくなったことで、思うように攻められなくなった。

 時計の針が進む中、仙台は茂木に代わって永戸。奥井のところを最後に蓋をする。永戸は少ない時間ながら、しっかりと蓋をしたプレーはさすがと思った。

 

 最後に岩上のフリーキックがあったりとドキドキするシーンがあったが、なんとか逃げ切り2-1で勝利。ルヴァンカップ3連勝となった。

 

■最後に・・・

 仙台にとって、このルヴァンカップは若手のチャンスの場として設けられている。ここまで佐々木匠、椎橋、西村と若手が着実に成長し、自信を掴んでいるのがとても嬉しい。そして今回の勝利は苦しみながら勝利した素晴らしい成功体験だった。

 この試合では11人中9人が生え抜きと、クラブの成長というか、クラブとして目指したいクラブ、理想としているクラブに着実に進んでいることを実感できるゲームだった。その中でも2年目、3年目の選手がこうやって結果を出してくれるのだから幸せである。

 

 良い競争、そして底上げができているシーズンだと思っている。ぜひ残りのグループステージの試合、この若手たちが中心で決勝トーナメント進出を決めてもらいたい。それもまた大きな自信となり、クラブの財産となるから。次のルヴァンカップは来週水曜日の柏戦。若手がピッチでイキイキとプレーするところを楽しみたい!