ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

ベガルタ仙台テクニカルレポート2016[後編]

 続いて後編です。後編ではいろんな視点から振り返ってみようと思います。

 

■今シーズンのベストゲーム

 個人的なベストゲームは、1stステージ第16節・ヴァンフォーレ甲府戦(2-1)。

 勝った試合でもこれ以上にいい試合はたくさんあったが、あえてこの試合を選んだのは、今まで甲府にはあの541を組まれたときに崩しきれなかった過去があるわけで、そういった過去を払しょくできたこと、そして自分たちがトライしたことが実った試合だったからである。

 もちろん相手がベストな状態ではなかったが、それでも前半早々に失点してからも焦れずに攻撃を仕掛けたことで後半の逆転へと結びつけることができた。そう言った意味でも非常に評価できる試合だった。

 

■今シーズンのベストゴール

 今シーズンも多くのファインゴールがあった。なので一つに絞るのは難しい(笑)ここは現地で見た得点にしようと思う。

 2ndステージ第4節アルビレックス新潟戦の奥埜博亮の得点。

 それまで2ndステージが始まって連敗が続いていた状況での新潟戦。この試合に負けたら残留争いに巻き込まれ、苦しい夏場が待っていたはず。この得点の前には関のPKストップがあり、相手のバランスが崩れたところカウンターで奥埜の見事な左足のシュートで勝ち越しを決めたゴール。左足に切り替えした瞬間にゴールを確信できたことを覚えている。

 関のPKストップを含めてこのゴールがシーズンベストかなと。その後5試合負けなしができたのも、この試合での勝利と奥埜のゴールがあってのものだと思う。

 

■若手の台頭

 今シーズンは数多くの若手が出場機会を得るシーズンだった。これは単にケガ人が多く苦しい台所事情だったということがその原因でもあるが。。それでも多くの若手がJ1で出場機会を得て成長し戦力として計算できるようになったのは、不幸中の幸いだった。

 

 今シーズン最も成長した若手といえばもちろん藤村慶太。ボランチを主戦場としているが、台所事情厳しい中でフォワード、サイドハーフサイドバックと数多くのポジションをこなし、まさかの便利屋として活躍できた年だった。

 しかし本職であるボランチではイマイチなパフォーマンスだった。三田と比べてしまうとどうしても足りない部分が多い。来シーズン以降、ボランチとして勝負するのか、便利屋として生きていくのか大事な年になりそうだ。

 今シーズン成長した選手として2年目の茂木、西村両選手も挙げられる。

 茂木は昨シーズンの序盤はルーキーながらレギュラーポジションを獲得したものの、その後はなかなか出場機会を得られず金沢へレンタル移籍をした。今シーズンもアイスランドになぜか研修に行かされコンディションを崩すというひどい仕打ちに会い、序盤はまったくゲームに絡めなかった。しかし夏場にかけて出場機会を得ると昨シーズンよりもグレードアップしたプレーを随所に披露。特にシュートの精度やドリブルの力強さは格段にパワーアップした。あとはゴールに結びつけられるか。天皇杯では決めたがリーグ戦でも見たい。

 西村は昨シーズンは出場機会はなかった。今シーズンは1stステージ最終節磐田戦で後半から出場するとキレのあるプレーでチャンスを演出。惜しいシュートシーンもあり可能性を感じた。その後はブラジル人コンビの前になかなか出られない日々が続いたが、2ndステージ第12節の甲府戦で先発のチャンスを得ると初ゴールをマーク。得点以外にも献身的な守備と体を張ったポストプレーなど試合を経るごとに成長していった。周りも生かすこともできるので、これからの成長が非常に楽しみである。

 それ以外にも小島雅也は左サイドバックで1試合スタメン出場。佐々木匠も途中出場ながらデビューを飾ることができた。常田や椎橋、差波も含めて来季の成長が非常に楽しみである。

 

■気になった選手

 ここからは気になった選手を。

 まずはハモン・ロペス。今シーズンは自身初の10得点を挙げることができ、仙台の新エースとして頭角を挙げた。

 昨シーズンまでのハモン・ロペスは周りというよりは自分で行くシーンばかりで、我が強いプレーに終始したが、今シーズンは周りを使えて頑張れる選手へと成長。持ち味の左足のシュートとドリブルに加えて、裏への抜ける動きでチームを押し上げる役割をこなした。スペースへのランニングやときにはロングボールの的など、なんでもこなせるようになりプレーの幅が広くなった。来シーズンは某関東のチームへの移籍が濃厚らしいので、お別れの可能性大。けど間違いなく今シーズンのMVP。

 

 二人目はタマこと三田啓貴。今シーズンFC東京からレンタル移籍で加入。FC東京時代は主にサイドハーフとして出場していたが、仙台では大学時代に主戦場としていたボランチとして起用された。開幕戦でゴールを挙げると仙台にとって欠かせない選手へと一気に確立した。

 攻撃ではボールを握れる選手としてボランチの位置で捌き役を、時にはゴール前に顔を出して得点を狙う。ボランチとしてシーズン4ゴールは立派。状況に応じてドリブルで運べることも特徴の一つである。一方で守備でも体を張れる選手で、体は大きくないがファイターであり、富田とともに中盤で体を張りセカンドボールを拾い続けた。リャンが今シーズン2列目でプレーできたのも三田の加入が大きい。

 来シーズンは完全移籍となり、いよいよ本当の意味での仙台の選手となった。開幕から欠かせない選手としてフル稼働した三田。来シーズンも仙台のサッカーを支える重要な存在である。

 

 三人目は渡部博文。今シーズンは副将にもなったセンターバックの要。自陣空中戦ではリーグ1位を誇り、出場停止だった1試合を除き、33試合に出場した。昨シーズンからセンターバックとして欠かせない選手だったが、今シーズンはディフェンスリーダーとしてさらにその存在感は強くなった。失点の数は少なくない数字だが博文がいなければというシーンはいくつもあった。

 来シーズンは残念ながらヴィッセル神戸に完全移籍が決まっている。これだけのパフォーマンスであれば、さらによいサラリーでプレーできる場所で選んでも仕方ない面もある。ネルシーニョ師匠のもとでもう一花咲かせてほしい。

 

 最後に挙げるのは、関憲太郎。今シーズンは開幕こそ六反が正GKとして出場したが、第2節のFC東京戦で六反が負傷すると出番が回ってくる。第3節の鹿島戦のパフォーマンスは圧巻の一言だった。

 その後は自身もケガをし、1stステージはベンチで試合を見守っていたが、2ndステージでは不調の六反に変わりチャンスを得ると、安定したセービングとコーチングで守護神の座を確保した。昨シーズン悔しい思いをしながらも腐らずに努力し続けた結果が今シーズンだと思う。また六反、石川慧とともに切磋琢磨することで自身のレベル、仙台のゴールキーパーのレベルをグッと押し上げた。

 来シーズンは、これにシュミット・ダニエルが松本から帰ってくる。さらに仙台のキーパーのレベルは向上するだろう。そのなかで関をはじめキーパーたちの競争は続いていく。

 

ウイルソン

 気がつけば5年もの月日が流れていた。ウイルソンという男はとてもタフでよく戦う選手だと思っている。仙台にいた助っ人外国人の中でNo.1であると確信している。

 加入当初は中国であまり活躍できなかったことを耳にし、期待は決して大きくなかった。しかし期待をいい意味で裏切ってくれた。前線からの積極的な守備とタフさ、ボールを持てば誰にも止められないドリブルで相手を切り裂き、ゴールやアシストを量産した。赤嶺との2トップは仙台だけでなく、Jリーグ史上でも屈指の2トップだと思っている。

 3年目あたりからケガが増え、満足のいくパフォーマンスができなくなっていったが、今年の夏場に見事な復活を遂げることができた。現地で見た2ndステージ第4節・アルビレックス新潟戦のドリブルからゴールは、まさにウイルソンらしいゴールだったし、その次に決めた湘南ベルマーレ戦のゴールで完全復活を遂げたときにはこれ以上にない喜びを感じた。

 私的のベストゴールは、2013年ホームでのFC東京戦。左サイドからドリブルで相手を振り切るとファーサイドに突き刺したゴールはザ・ウイルソンというゴールだった。現地で見ていたので強烈に覚えている。

 今シーズンで仙台のユニフォームを着たウイルソンを見るのは最後である。さびしい思いもあるが、来シーズンはヴァンフォーレ甲府への移籍が決定している。来シーズンも日本で彼のプレーを見れることが純粋にうれしい。仙台戦以外での活躍を期待している。

 今までありがとう、ウイルソン

 

■来シーズンの期待とか不安とか

 まとめとして、来シーズンについて少し触れたい。今シーズンはサッカーの内容が向上し12位でフィニッシュできた。前編の冒頭でも書いたが、残留争いにも巻き込まれずに勝ち点40台に乗せれたことは素直に評価していい点である。

 ということで来シーズンはさらに上を目指す戦いになる。しかし不安要素も多い。一番は主力が抜けて選手の入れ替わりが必須であるということである。前線は特にである。

 サッカーのベースは変わらないだろう。相手を押し込んで奪われたら素早い切り替えでボールをすぐに奪い返すというのが理想である。ポイントは攻撃の「最適解」をどれだけ早く見つけることできるかという点。今シーズンの序盤のように「最適解」を見つけるのに苦労すると取り返すのに時間がかかる。なのでどれだけ早く最適解を見つけられるかが重要である。システムや選手の組み合わせも含めてキャンプからいい準備ができるかどうか。

 

 また個人的な意見ではあるが、仙台にはいろんなことができるチームになってほしいなと。相手を押し込めることもできるし、場合によっては自陣に引いて相手ができてきたところでカウンターなどなど。状況や相手によってさまざまなことができるチームになってほしいなという希望がある。色んなことができるって素敵じゃん!ってだけなんだけどね(笑)

 

■最後に・・・

 相当長くなりました(笑)ご覧いただきありがとうございました!

 

 当ブログも大学入学と同時に開設し3年目を迎えました。年を経るごとに多くの方に読んでいただき、本当に感謝感謝です。少しでも自分のブログがベガルタ仙台を応援・観戦するにあたって足しにでもなればいいかなと思って書いていましたが、3年でこれだけの方に読んでいただけるとは思ってもいませんでした。

 しかし来年は私自身が大学4年生になります。そうです、就職活動が始まるのです。これからはなかなかベガルタ仙台に時間をかけることができなくなるでしょうし、ましてブログを書くことも難しくなると思います。

 なので来シーズンは不定期での更新にします。今まではリーグ戦をほぼ毎試合書いていましたが、来シーズンだけは書けるときに書くスタイルで行こうと。これも今後このブログを継続的に書けるようにするためです。

 更新頻度が多くなったら就活が終わったんだなと思ってください(笑)いつも楽しみにしてくださっている方には申し訳ないですが、来シーズン以降もよろしくお願いします!!