ヒグのサッカー分析ブログ

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自分たちのゲームが出来なくても~J1 2ndステージ第4節 アルビレックス新潟vsベガルタ仙台~

 前節、浦和を相手に最後の最後で力尽き、4連敗を喫してしまった仙台。中3日で迎える今節はアウェイで新潟との対戦となった。f:id:khigu:20191230145534p:plain

 仙台と同様に2ndステージ開幕から3連敗の新潟。前節は川崎相手に2-3で敗れている。内容と結果が伴っていない様子は仙台と似ている部分である。これ以上負けられない新潟は4-3-3の布陣。コルテース田中達也ラファエル・シルバが前節と変わってスタメン起用されている。

 一方の仙台。2ndステージは川崎、ガンバ、浦和に当たって砕け散ってのスタート。自分たちのやりたいサッカーがある程度表現できているので、それを結果に結びつけられるかが今節の最大のポイントになってくる。仙台はハモンとウイルソンが2トップ。試合途中からはあるがスタートからこのコンビは意外と初めて。それ以外は変更なし。ベンチには新加入のパブロ・ジオゴが入った。

 

■前半~新潟の守備の出方と攻撃の仕組み~

 前半、仙台は新潟の守備に悪戦苦闘するシーンが多かった。f:id:khigu:20191230145608p:plain

 前半のはじめの5分こそ、サイドで起点を作ってセットプレーを繰り返し得ることでチャンスを作りだしていた仙台だが、その後の時間帯は新潟の守備に苦しむこととなる。

 この日の新潟は守備時は4-1-4-1で組まれていた。仙台のシステムをそのまま嚙合わせるとするならば、仙台のサイドバックボランチの位置にサイドハーフインサイドハーフのマークがハッキリする形となる。よってボランチを起点にビルドアップしたい仙台はどうしてもボランチがレオシルバと野津田に捕まっているためにボランチを経由した展開が出来なかった。

 新潟の1列目(山崎)はセンターバックと2vs1の関係になるので深追いはしない。三田が最終ラインに降りてきても新潟のインサイドハーフはついて来なかったので、三田が下がってビルドアップに参加するケースがほとんどだった。

 仙台のビルドアップの出口は主にサイドバックとなった。特に右サイド。田中達也が少し中に絞っていたので平岡から大岩のパスラインは確保されていた。そこから攻撃の糸口を見出そうとする仙台だったが、新潟もサイドに出たところでうまく人を掛けてボールを前進させていなかった。おそらくサイドからであれば問題ないとしていたのだろう。また時折ロングボールからハモンやウイルソンが抜け出すシーンがあったが、どうしても孤立する場面が多く、また2トップの距離感が遠かったのでチャンスになるシーンはなかった。

 新潟の4141のメリットはボールを1人で奪い切れるレオシルバを前に置けることだろう。実際にレオシルバが高い位置で奪ってからのチャンスはいくつかあった。25分過ぎになるとレオシルバが最終ラインまで追いかけるシーンも出てくる。それが個人の判断なのかチームとしての判断だったのか分からないが、新潟はレオシルバが守備のスイッチャーとして前線からプレスを掛けていた。

 

 一方で新潟の攻撃である。f:id:khigu:20191230145636p:plain

 新潟というか吉田達磨監督といえば、ポゼッションでボールを保持して攻めるやり方にこだわる。本当にセットオフェンスにこだわる人である。新潟のビルドアップは相変わらず小林がセンターバックの間に降りてスタートする。前回対戦時では、新潟は4枚でビルドアップする形が多かった。小林が降りてレオシルバが2トップの間に顔を出すといった形である。

 この試合では新潟は5枚でビルドアップしていた。最終ラインの前でレオシルバと野津田がいる。どちらか一方は2トップの間にポジショニングし、もう片方は2トップ脇にいることが決まりとしてあった。

 新潟のビルドアップはサイドバックにボールを付けることで前進することが多かった。ウイングの田中達也とラファエルシルバが仙台のセンターバックサイドバックボランチサイドハーフの真ん中に位置し、ブロックを絞らせることでパスラインを確保し、空いたスペースへとサイドバックがポジショニングする。

 サイドバックにボールを付けるとインサイドハーフやウイングが裏へフリーランニングしながらブロックに隙間を作らせて、中央から突破を試みる。というのが新潟の狙いであった。

 仙台はとにかく辛抱強く守ることが多かった。新潟が中央突破にこだわってくれたおかげで最後はしっかり中を絞ることではじき返すことが出来た。時折スペースを与え、野津田には遠い位置からミドルシュートを打たれるが、枠を外した。

 

 前半は新潟が仙台をうまくハメ込んだ内容だった。0-0で折り返す。

 

■後半~分岐点はPK~

 後半、仙台は少し前からプレスを掛けれるようになる。監督インタビューでもあったように前半は相手の立ち位置、システムを把握するのに苦労していた。そこを修正できた後半は相手のビルドアップに対して中盤含めて前からプレスを掛けれるようになった。

 先制点は54分。仙台自陣のスローインが起点。スローインを博文がロングボール。それを奥埜がウイルソンに丁寧に落とす。ウイルソンはドリブルで中央へ侵入していく。左からフリーランで駆け上がったハモンの手助けもあり、小林を抜くとペナルティエリア手前から低くて早いシュートでネットを揺らす。

 手数が少ないながらも、この試合初めてのハモンとウイルソンとの連携で先制点を挙げることが出来た。後半スタートから雨が降り始めスリッピーなピッチをうまく利用した素晴らしいシュートだった。今シーズンは苦労しているウイルソンだが、ようやく自分の形で点を取ることが出来た。

 

 その後は少し新潟に押し込まれる時間が続く。仙台は前から行くこともあったが、状況に応じて前半のように中央を絞って低い位置で守ることもしていた。

 そんな新潟の時間帯に同点ゴールが決まる。61分。右サイド45度でペナルティエリアから少し離れた位置でフリーキックを得る。野津田が蹴ったボールはキーパーとディフェンスラインの間に落ちていき、舞行龍ジェームズが合わせて同点。ガンバ戦と全く一緒の失点シーンだった。セットプレーの守備は反省点である。

 その流れで攻勢に出る新潟。同点になったことで少しゲームがオープンになる中で、新潟は右サイドの崩しから山崎が石川直樹の裏へ飛び出ると石川直樹が倒してPKを獲得。誰がどう見てもPKだった。

 PKを獲得した山崎がキッカー。左隅を狙ったキックは関がセーブし、仙台は危機一髪となる。

 

 これが試合の分岐点だった。そのわずか1分後、66分にバランスを崩して前に出てきた新潟からボールを奪ってカウンター。左サイドで受けたウイルソンは、後方からランニングしてくる奥埜へスルーパス。奥埜は大野とコルテースを振り切って左足でシュートし、これが決まって勝ち越すことに成功する。ピンチからチャンスへ。あのPKストップがすべてだったことは確かだが、バランスを崩した新潟の隙を付いて先制点同様手数を掛けずに決めることが出来たのはお見事。

 

 ここからは両監督のカードの切り合い。新潟が田中達也→伊藤で、左サイドから崩しにかかろうとすると、仙台もすかさず奥埜→菅井で守備の強化を図る。

 次も新潟。ラファエルシルバ→指宿。4-4-2にしてクロスからの攻撃を仕掛ける。スクランブルアタック。

 仙台はリャン→藤村。サイドハーフを代えることで守備の強度を保つ。

 新潟、コルテース→前野。クロス爆撃機としての前野の起用だったのだろう。

 最後は仙台、ウイルソン→二見。藤村をフォワードに、二見をサイドハーフに。このまま抑えるというメッセージを選手に伝える。渡邉監督。

 最後はコーナーから舞行龍で危ないシーンを作られたりしたが、全員が集中して守り切り、見事2-1で勝利。2ndステージ初勝利を挙げた。

 

■最後に・・・

 戦前の予想通り、非常に激しいゲームになった。ここで勝つと負けるとでは話が違うわけで。そんな中で仙台は激しい中でも冷静に戦えていた印象だった。奥埜のゴールで勝ち越してもまだまだここからという表情が見て取れたし、なによりも表情が引き締まっていた。

 ゲームのポイントを分けたのはもちろんあのPKである。そしてその後バランスを崩した相手に対してしっかりと隙を付いてカウンターで仕留められたことは非常に自信を持っていいことだと思う。今年は人数を掛けて攻めることもテーマの1つであるが、「賢攻」というキーワードはそれだけではなく、ゲームの状況に応じて素早く攻め切ることも求められるわけで、今シーズンはカウンターの得点は少ないけど、手数を掛けない攻撃もこれからは重要になってくるかもしれない。

 今節はうまくいかないながらも、しっかり意思を合わせて戦えたからこその結果だったのではないだろうか。

 次節は湘南戦。暑い中での試合は続く。湘南相手にも走り負けない、ガッツあふれるプレーと連勝を期待したい!