ヒグのサッカー分析ブログ

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自分自身を超えて行け!!~J1 1stステージ第16節 ベガルタ仙台vsヴァンフォーレ甲府~

 前節、アウェイ・柏戦に勝利し3連勝を飾った仙台。4連勝を目指す今節の相手は甲府。1stステージも残り2試合、よりよい順位で終わることが出来るかどうか大切な1戦。f:id:khigu:20191230143901p:plain

 仙台は、ここまで全試合出場だった渡部博文が出場停止。代わりに大岩がセンターバックで右サイドバックには蜂須賀が入った。サブにはユースから昇格してきた佐々木匠がついにメンバー入りを果たした。

 一方、前節・福岡戦を1-0で勝利した甲府はここまでけが人に泣かされている模様。それに加えクリスティアーノの移籍話が出てきて踏んだり蹴ったりな状況。3バックの面々を見てるだけでも台所事情が厳しいのがひしひしと伝わってくる。クリスティアーノの移籍を阻止するためにもこの試合に勝ちたい甲府である。

 

■前半~良くも悪くもクリスティアーノ

先制点は4分に入る。甲府田中佑昌のロングボールを稲垣が落としてチュカヘ。チュウは横にいたクリスティアーノへパス。クリスティアーノがダイレクトで打って六反の手を弾きながらゴール。

 まさかの甲府先制であったが、仙台からしてみればスタートから秩序だったゲーム(仙台がボールを保持し、甲府がブロックを作る展開)を想定していたのではないかと思う。けど始まってみると無秩序な時間が続いていった。そんなところが守備の甘さに垣間見れた。

 

 その後は想定していた展開。いわゆる秩序のあるゲームが進んでいく。ボールを持つ仙台。ブロックを作る甲府の構図。

 甲府の守備はお馴染みの5-4-1。1列目のビルドアップ隊(センターバック)は放置し、チュカが仙台のボランチの位置までしっかり下がってくる。甲府の守備は確かに5-4-1なんだけど、もっと細かく言えば5-4-1-0みたいな感じだった。

 状況に応じては、プレスを掛けて仙台に対して圧力を掛けるシーンもちらほら見えたが、そのほとんどが迎撃スタイルとなっていた。1列目のチュカはほとんど何もしてなかった。だから仙台のボランチにボールがある時は黒木やセレスキーが飛び出して対応する場面が多かった。

 

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 そんな甲府の守備に対する仙台の解答は、とにかくライン間(3列目と2列目)でボールを出し引きすることであった。甲府の5-4-1は主に中央圧縮ではあるが、ライン間にいる選手に対しては意外とマークは厳しくない。それは甲府の最終ラインは人へというよりは裏へのケアをしっかり行っていたからだと思う。

 だから仙台はライン間で様々な選手が顔を出し、時には裏へ抜けることでライン間でのスペースを作る動きを頻繁に行っていた。そして仙台が一番ポイントにしていたのが右サイド。対峙にクリスティアーノがいるサイドである。クリスティアーノはやはり守備のポジショニングが怪しい。蜂須賀を見るべきなのか、縦パスのコースを切るのかで曖昧なポジションをしていた。仙台は、そんなクリスティアーノのサイドを起点とする。主にボランチクリスティアーノの間にはパスラインを作り、そこへ通したら、サイドの蜂須賀へや、反対にクリスティアーノが絞ったら蜂須賀へ出すなど。クリスティアーノのポジションを見ながらのパス交換が多かった。

 とにかく押し込む仙台。中央突破。サイドからのクロス。フリーキックコーナーキックとありとあらゆる方法で甲府の守備を殴りに殴っていた。次第に増えていくシュート数なんだけど点が入らない仙台であった。

 

 全体的に持つ時間は少なかったが次第にボールを握る時間が訪れる甲府甲府の狙いどころは仙台の右サイドバックセンターバックの間。蜂須賀と大岩のところ。甲府は仙台がいつもと違う組み合わせで来たからという理由なのかもしれないし、単にクリスティアーノがいるサイドだったからなのかもしれないが、仙台の蜂須賀と大岩の間を黒木やセレスキーが走ることでサイドを突破することに成功していた。甲府クリスティアーノの単騎特攻が目立ったが、人数を掛けて攻めた時の甲府の攻めは唯一これだった。

 

 展開的には予想通りだったが、スコアは甲府がリードという誤算があった仙台。甲府の1点リードで折り返す。

 

■後半~ずっと仙台のターン~

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 後半、甲府はチュカ→石原。前半まったく機能してなかったチュカ。前線でおさめれなかったチュカ。守備は頑張っていたけどイエローもらっちゃったチュカ。たぶん1トップで体を張るタイプではないと思う。ということでぶっちゃけ守備にシフトチェンジした甲府。攻撃はクリスティアーノにすべてを託すような布陣に。

 一方の仙台は、平岡と大岩のポジションをチェンジ。蜂須賀と大岩の間が狙われていたこと。日ごろ右のセンターバックをやっている平岡をもとの位置でプレーさせるのが狙いだったと思われる。

 

 仙台の攻撃の変更点は、主に右サイドに流れていたハモンが中にいることが多くなったことである。後半の仙台は、平岡→蜂須賀のパスラインから右サイドの攻撃が目立った。特に多かったのがクロスからの攻撃。クロスマシーンと化した蜂須賀がクロスを上げるシーンが増えていく。後半に入って甲府が人へのマークを厳しくしたこともあり、前半のような縦パスによる縦の揺さぶりみたいなのは減っていった分、右からのクロス爆撃を数多く行っていた仙台であった。

 それが実ったのが59分。相手ゴールキックを自陣で回収すると右の蜂須賀に展開。蜂須賀は易々と高い位置へとドリブルで侵入して、切り返してクロス。ファーに待っていたハモンが合わせて同点。この得点における甲府の守備の緩さはちょっといただけなかった。いくら迎撃で待っていても簡単にクロスを上げさせてしまった。仙台はハモンを中で待たせたのが功を奏した。得点シーンではハモンと3バックの中で本職ではない橋爪と競らせることでうまく有利な状況を作りだした。

 

 その後も攻める仙台。ずっと仙台のターンでゲームが進む。同点に追いつき、甲府の守備も緩くなったこともあり、次第に前半のように2列目と3列目の間が空き始める。そこを利用し始める仙台。特に野沢がこのスペースへと顔を出すことで前半同様に中央からの突破を幾度となく試みた。

 仙台は70分過ぎあたりから右サイド偏重の攻撃を止めて、いつも通りボランチを経由しながらピッチの幅をしっかり使った攻撃へと変化していく。そうすることで甲府のブロックを徐々に広げていくことに成功する。

 そして逆転ゴールは78分。ピッチを広く使いながら相手のブロックへ侵入を試みる仙台。この時間あたりからリャンが裏への飛び出しを繰り返す。この得点シーンでは石川が裏へ走り込んだリャンへのパスから始まる。このパスが阻まれるもセカンドボールを富田が回収。それがハモンへとつながり突破してグランダーのクロス。ファーに走り込んだ野沢が押し込んでついに逆転。守備一辺倒だった甲府に対して焦れずに攻めることで逆転へとつながった。

 

 残りの10分。甲府は吉野、熊谷を投入し攻めに出る。一方の仙台は、慌てずに自陣でブロックを作りながら機を見てカウンターを仕掛けるという展開に。仙台は最後の最後に西村、藤村、二見を入れて時間稼ぎ&ゲームをクローズさせて、タイムアップ。

 仙台が今シーズン初の逆転勝利。そして4連勝で順位も8位に浮上した。

 

■最後に・・・

 ようやく勝った。甲府にようやく勝った。それは堅い守備のチームを崩しきれないという仙台の永遠の課題に対して1つ克服したということを意味する。この1勝は強豪チームに勝つことと同じくらいの価値のある勝利だと思っている。

 結果論にはなってしまうが、甲府が先制し、前半をビハインドで折り返したことで甲府クリスティアーノだけを残して守備に力を注いでくれたおかげで、焦れることなく、甲府の守備ブロックを殴り続けることが出来たと思う。同点でクリスティアーノのポジションが変わっていなかった方が仙台としては厄介だったと思う。

 それにしてもしっかりと得点をもぎ取って勝てたことは、甲府にケガ人が多いという状況を差し引いても大きいし、今後の自信になる。

 

 1stステージは残り1試合。最後は磐田。太田吉彰との再会。この調子を持続させ、いい状態で2ndステージに突入したいところ。次もまたいいゲームを期待したい!