ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

2試合目でぶち当たった壁~J1 1stステージ第2節 ベガルタ仙台vsFC東京~

 開幕戦、相性のいい日産スタジアムで勝利し、幸先の良いスタートを切れた仙台。今節のホーム開幕戦はFC東京との対戦となった。f:id:khigu:20191218205901p:plain

 仙台は、契約上の関係で三田が出場できない。代わりには、リーグ初先発となった藤村。昨年の天皇杯準々決勝柏戦以来の先発起用となった。ベンチにはミンテや差波が入った。

 一方のFC東京はミッドウィークにACL・ビンズオン戦があっての今節。ACLで大活躍だった小川がこの試合でもスタメンに。右のサイドハーフには水沼ではなく田邉。ボランチは米本と橋本拳人のコンビとなった。

 

■前半~相手に時間とスペースを与えないFC東京

 前半の開始は、FC東京が相手陣内に早くボールを放り込むシーンが続く。確実性があるかどうかは別として、なるべく早く敵陣に入り、そこから押し込むことで、主導権を握ろうとしていた印象があった。

 けど先制は仙台。7分に初めて得たコーナーキックから渡部博文。この試合の最初のチャンスをものにすることに成功した仙台であった。

 

 けど、すぐに追いつくはFC東京。左ななめから得たフリーキック。小川がファーサイドに蹴って、折り返しを森重。最後は平岡にあたってオウンゴールという形で2分後に追いついた。

 その前にも同じような位置でフリーキックがあったのだが、同じようにファーを狙っていた。おそらく練習通り。森重の動きを見ると、中から外へと走りこんでいた。仙台がゾーンであることをしっかりスカウティングした成果だろう。というか去年も同じ形でやられてたような・・・。

 

 時間が過ぎていくと、FC東京の守備の狙いが見えてくる。同点直後は仙台のビルドアップに対して、2トップがセンターバックからプレッシングを掛ける場面が多かった。次第にFC東京センターバックへのプレスは止めていく。それでもFC東京サイドバックに入ったら、サイドハーフが早めのプレスで仙台のパス回しを窮屈にさせていた。狙いは仙台に時間とスペースを与えないこと。前節の試合から仙台が主にサイドに数的優位を作って攻撃していくことをスカウティングしていたんだろう。それ以外にもボランチが2トップ脇に落ちてきた際は、FC東京の2トップはセンターバックへのコースを切りながらプレスをかけて、仙台の攻撃を制限することに成功していた。

 

 仙台は、終始そんなFC東京のプレスに苦労する。相手の時間とスペースを与えない守備に対して、無理やりにでもサイドからボールをつなごうとする場面が目立った。2トップには、森重と丸山、時には小川と徳永がしっかりマークされて仕事をさせてもらえなかった。こうなったときは、ロングボールでプレスを回避するという方法もなくはないが、仙台の2トップはウイルソンと奥埜なのでどうしてもロングボールのセカンドを回収するということは難しかった。

 

 そんな互いの攻撃には共通した狙いを感じた。それは相手が攻から守へと切り替わったとき(ネガティブトランジション)に、準備される前に早く攻撃しようという狙いだった。FC東京は、ボールを奪うと、阿部が素早く前線でボールを引き出すことで、攻撃をスピードアップさせていた。それに加えてボランチの押し上げも早かった。一方の仙台も、フォワードが早く顔を出すことや少ない本数でのパス交換から素早く攻めようという狙いは見えた。よってゲームの展開も、縦に早い展開が多かったように思える。

 

 そんな前半。1-1で折り返す。

 

■後半~崩すことに固執した仙台~

 後半は早々にゲームが動く。50分にFC東京は左サイドで得たスローインの流れから、ペナルティエリアの角を小川、東、橋本の3人でうまく突破し、橋本が抜け出し、ニアへクロス。これを前田が決めて逆転。この3人目がペナルティエリアのニアゾーンへ侵入していく形はACLの試合で見た記憶があるので、おそらく理想的な形だったのだと思う。

 

 その後の試合展開は、自陣で撤退するFC東京とそのブロックをいかに崩すかの仙台という流れへと変わっていった。ということで後半は仙台は終始ボールを保持することができた(FC東京が保持することを止めたといったほうがよいかもしれぬが)。仙台は前節と変わらず、左では石川直樹が、右では富田が下りてビルドアップの起点となる。左ではリャンと石川がポジションチェンジをして、リャンが起点となる場面も見られた。こうしてサイドからの数的優位で、崩そうとする仙台であった。

 前半であれば、このビルドアップの起点となる位置にFC東京もプレスを掛けていたが、後半になると放置するようになる。その代り2列目と3列目の距離をしっかり保ち、相手にバイタルエリアでやらせないことを第一としていた。

 こうして仙台は、FC東京のブロックを崩すのに苦労する。正確に言えば、崩すことに固執したせいで、パス回しや、前線の選手のアクションが少なかった。無理にフォワードへ当てようとしても、ウイルソンと奥埜にうまくおさまらないという流れが続いていった。

 その後、前線にポイントを作るために金園を投入。さらに水野を投入し、攻撃に活性化を求めるも反対に、ボールの回しが悪くなる一方であった。

 

 最後は六反がまさかのケガで最後の枠を関で使わざるを得ないというところでジ・エンドだった。博文のパワープレーも不発に終わり試合終了。ホーム開幕戦は黒星となった。

 

■最後に・・・

 結果はもとより内容も非常に残念な試合だった。おそらく前節できたことを、今節でも実践しようと思ったのだろうが、過密日程ながらしっかりスカウティングしたFC東京にやられた形となった。

 しかし、おそらく仙台は崩すということでは、昨年よりもある程度はレベルアップしていると思う。それは昨年の柏戦、そして開幕戦で証明してくれた。このチームのポテンシャルは間違いなくあると思う。

 ただ、今節のように相手が前から来られた時の対処は課題となった。センターバックが決して足元がうまいとは言えないし、まだビルドアップにおいてもパターンが1個か2個しかない状況で、まだ相手の状況を見てビルドアップできる段階ではないと思う。そこは今年1年を通しての課題なのかなと個人的には考えている。

 また、今節の後半のように相手がべた引きした時に、崩すことに固執してしまったことは、昨年からの課題。よりシンプルにサイドからのクロス(それも工夫したもの)や簡単なロングボールで、セカンドボールを拾って前進していくなど、相手が引いたときにパスで崩す以外にも方法があるとよりバリエーションの多彩な攻撃ができるし、それを「賢攻」言うべきであると思いたい。

 

 とりあえずまだ始まって2試合。今後をどうこう言うのは時期尚早だと思うので、試合ごとにレベルアップしていく仙台を今シーズンも楽しみたい。次は鹿島。崩すだけに特化せずに、その場に応じて工夫された「賢攻」ができることを期待したい!