ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

【オフ企画】仙台の堅守とは何だったのか?#3~2012年第1節ベガルタ仙台vs鹿島アントラーズ~

 暇つぶし企画の第3弾です。今回は優勝争いをした2012年を取り上げます。開幕戦の鹿島アントラーズ戦です。

 この年の仙台はご存じのとおり優勝争いに絡み、惜しくも2位になった年です。この年にはDFラインに上本大海を補強、そして前線にはウイルソンが加入する年です。開幕前にリャンが負傷し、序盤戦は関口、太田のウイングコンビが2列目でした。

 鹿島は、当時の監督は、前年まで率いていたオリベイラからクラブOBのジョルジーニョへと変わった年です。この年は鹿島は世代交代の波にもまれ、11位という成績で終えます。けどナビスコを獲っているあたりが実に鹿島らしい。開幕戦では4312のシステムでした。おそらくすぐにやめたはずです。

■守備における共通認識

 この年の仙台を振り返る前に、改めて前年の仙台のサッカーをおさらい。

 主に低い位置(自陣)で守備ブロックを組み、奪ったらロングカウンターというのが、2011年の仙台のやり方であった。

 守備では、味方選手との距離感(常に相手より数的優位または数的同数を作れる距離)の意識と、中央閉塞で特にバイタルではやらせないというのが大まかな守備の決まりであった。なのでサイドにボールを誘導させることが仙台の守備のポイントでもあった。

 攻撃ではロングボールを多用し、サイドの裏をまず起点にすることが求められていた。特に守備に時間と人を使うためいかに手数を掛けずに攻め切るか、そしてセットプレーで点を取るかが重要となった。

 おかげで守備では失点数25である一方で、攻撃は得点が39点と寂しい数字となった。

 

 このように2011年では攻撃に課題を残す形となった。ということで2012年はいかに守備の強度を落さずに、攻撃力をアップさせるかということが焦点となったワケである。

 ここで簡単に2012年版の仙台を見ていきたい。

 2011年では自陣に築いていたブロックを、より高いラインに設定することから始める。今までよりも510mほど高くすることで、全体のポジションを高く保ち、1列目(2トップ)がプレッシングを掛けれるようにすることが主な狙いである。

 2011年は基本的に1列目は相手のビルドアップ隊(主にセンターバック)を放置し、自陣に入ってからプレッシング開始というのがチームとしての決まり事であった。

 それをDFラインを高くすることで、1列目からプレッシングを掛け、なるべく高い位置(相手陣内)でボールを奪って、ショートカウンターで仕留めようというのが、このシーズンの仙台のやりたい守備であった。

 なので最終ラインには、裏の対応のことも考え、足の速い上本大海を獲得したわけである。

 以上のことを踏まえて、鹿島アントラーズ戦を見ていく。

 

 鹿島は4312でスタートする。

 おそらくジョルジーニョは、この当時多かった44のブロックに対して、ポジションをずらすことで、相手の守備の基準点を狂わせたかった狙いがあったのかもしれない。序盤では青木が2トップの間に立ってピン止めし、センターバックをフリーにさせる動きをしていた。また増田、小笠原を2トップ脇に立たせ、そこを起点に攻めたかったのかもしれない。ただ、開幕戦ということもあり、うまくいっていない印象であった。

 仙台はラインこそ高いものの、無理にプレスを掛けに行くことはしません。高い位置からの守備と言っても、死なばもろとものプレッシングではありません。ものはタイミング。自分たちの奪いたいエリア、もしくは「ここだ」という共通認識があった時に守備のスイッチが入る。

 ここでは代表例を2つ。

 

 1つは鹿島がセンターバックから高い位置に陣取ったサイドバックに出して、もう一回センターバックへと戻した時にフォワードがプレッシングを掛けに行く。この図で言えば、新井場が関口のプレスに合い、もう一回岩政へ戻した時に赤嶺がプレスを掛け、全体も押し上げるということである。いわゆる相手の状態が、後ろ向きになった時の場合である。

 

 二つ目は、自分たちがアクションを起こすやり方。守備がセットで来た状態で、フォワードがセンターバックへとプレス。センターバックサイドバックへ出した時にはサイドハーフへプレスを掛け、パスコースが限定されたサイドバックが縦パスを入れたところを、仙台のサイドバックもしくはボランチが刈り取る守備である。

 こっちのほうが高い位置からのプレスの代表例で、想像しやすい方だと思う。もちろん先ほども書いたように、常にではなく、ハマった瞬間、行ける状態になってからフォワードはプレスを決行するのである。

 基本的なプレッシング(サイドに誘導させて限定)であるが、しっかり共通認識を持って守備が出来ていた仙台は見事であった。

 この2つが主な代表例であった。

 前半の内容は、五分五分であった。改めて振り返ってみると、意外と渋い試合だったなと。相手のどこが狙い目なのかをお互いに探っていた印象。イメージではもう少し仙台が自分たちのペースでゲームを出来ていたかと思ったけどそうでもなかった(笑)

 後半も、62分にコーナーから赤嶺折り返しての上本で先制した後は、仙台は高い位置からの守備を継続して行っていたものの、終盤は2011年バージョンの中を固めろ大作戦で守り切った、そんな試合であった。

■最後に・・・

 2012年の仙台は高い位置からの守備がイメージとして残っているが、いつでもプレスを掛けに行くといった印象ではなかった。けど、ここだという守備のスイッチの入れ方やチームとしての共通認識が出来ていたからこその守備であったので、本当にチームの中で同じ絵を描けるかはいつのどの時代も大切なんだと思う。

 ついでにこのサッカーに進化して、一番の恩恵を受けたのは富田だと思っている。彼のボールハンティングが開花したのはこのサッカーがあってこそである。この試合でも高い位置から積極的な守備を見せていた。

 ついでにこの年に起こった変化として、オフサイドトラップが多くなったことである。どうしても後ろのスペースが空く中で、上本、鎌田中心にオフサイドトラップを掛けれるのは、このサッカーをやるうえで生命線の1つであったと思う。

 あと、ウイルソンがどれだけありがたい存在かは、書かずにもわかるでしょうし(笑)

 この試合では、鹿島がいまだに未完成だったこともラッキーな要素だったと思う。中盤をトライアングルにすることの利点があまり生かされてなかった。とにかくこの年の鹿島は苦しんでいた。

 ということで今回はここまで。次回でたぶん終わりにします(・∀・)

にほんブログ村