ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

継続性~J1 1stステージ第15節 ベガルタ仙台vsサガン鳥栖~

 前節、アウェイで神戸に勝利し11位まで順位を上げた仙台。今節は2か月ぶりのホームでの勝利を目指し、鳥栖を迎えた。

スタメン

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 仙台は前節神戸戦でウイルソンが負傷、そしてブラジルへ帰国。代わりにハモンでそれ以外は変更なし。一方の鳥栖、前節はホームで浦和に16で惨敗。早急に立て直したい今節は前節退場した吉田豊に代わって、チェ・ソングン。CBにキム・ミンヒョクボランチには岡本を起用した。

 

前半~NOT地上戦~

 鳥栖の攻撃の狙いはロングボールによる前進。ハナから地上戦でボールを前進しようなんて考えはない。ターゲットはもちろん、豊田。鳥栖がロングボールを蹴るのには2つの狙いがある。

 1つは、豊田が競ったセカンドボールを拾うこと。空中戦勝利率が50%以上を誇る豊田、2本に1本は競り勝ってくれる信頼絶大のターゲットに当て、2列目が狙うことでボールを前進させる。そこからサイドに展開し、サイドからの攻撃を仕掛ける。

 もう1つは、セカンドボールが取れなかったとしても、そこから前プレをかけて高い位置でボールを奪い、ショートカウンターからゴールを狙うということ。実際に仙台のCBやボランチに対しては全力で豊田や池田がプレスを掛けに来ていた。

 一方の仙台は、そんな鳥栖のロングボールの対応に追われる。特に前プレを鳥栖は仕掛けてくるから、苦し紛れのロングボールが増え、仙台もまた地上戦を放棄せざるを得ない状況に陥り、互いにロングボールを蹴り合う展開になった。

 しかし、鳥栖も仙台もロングボールからチャンスを作る場面は少なかった。お互いにこの試合がこういう展開になるのを予想できたので、守備陣は双方とも体を張って、FWに仕事をさせていなかった。膠着状態が続く。

 前半は互いに攻撃より守備に重きを置いている印象だった。得点を取りに行くことよりも、まずは失点しないこと。無理にバランスを崩すことがこの試合で1番やってはいけないことだと考えていたのだろう。そんな前半だった。ということで後半へ。

 

後半~きっかけは左サイドから~

 後半早々、つなぎ出したのは仙台ではなく、鳥栖。ボールを繋いでクロスまで持っていく。後半はもう少しつないでいこうなんて言う森下氏の指示があったのかもしれない。

 けど、先制は仙台。六反のロングボールのセカンドを拾ったところからすべては始まる。いくつかのアバウトなプレーがあったがそのすべてにおいて仙台がセカンドボールを拾っている。そして最後は二見が池田を振り切ってクロスを上げたところを鳥栖のエアポケットに走り込んだリャンがジャンピングボレーで決める。

 追加点はすぐに入る。二見のスローインからハモンが繋いで、金園が難しいシュートを決めた。このスローインを得たプレーは高い位置で相手のスローインを取ってのものだった。仙台は前半と意識を変えず、セカンドをとることを必死にやっていた。

 集中が切れてきた鳥栖に対して畳みかける仙台。3点目も左サイドから二見のスルーパスに抜け出した野沢。丹羽のカバーをしていた水沼がなぜかポジションを戻して、やすやすと野沢にフリーのスペースを与えた。野沢は相当な時間をもらい、ファーへクロス、菅井が折り返したところに金園がプッシュし3点目。

 4点目も左からハモンが仕掛けて、クリアされたボールを途中投入の金久保が拾い、右をえぐってクロス、野沢がダイビングヘッドで決め、4点目。なぜか中で誰も見ていない丹羽。完全にボールウォッチャーになり野沢を見失った。

 仕上げの5点目は左でファウルをもらうと野沢のキックにミンテが合わせてゴール。

 ほとんどが左からの得点。丹羽と水沼を狙い撃ちしたのかどうかは映像だけだと不明。ただ、仙台は後半も変わらずセカンドボールを取りに行く姿勢がぶれなかったことで得点が生まれた。90分継続してやり切れたことが5-0につながった。

 継続性といえば、守備においても渡部、石川の両CBが豊田を完璧に抑えたことは5点取ったことと同様に価値があることだった。巧みなラインコントロールとチャレンジ&カバーを絶え間なく続け、豊田に仕事をさせなかった。

 鳥栖を完膚なきまで叩いて、今シーズン初の連勝、2試合連続クリーンシートで順位を7位まで上げた。

 

最後に・・・

 90分の印象はぶれなかった仙台が、勝った印象。もしも後半も鳥栖がロングボールを多用し、圧力をかけてきたら違ったゲーム内容になったかもしれない。それだけ前半の鳥栖は面倒なチームだった。

 ただ、鳥栖も前半のやり方では点が取れないと思ったのだろう。繋ぐことで活路を見出したかったのだろう。ただ、どういうボール循環で運ぶかいまいち明確ではなかったので、助かった。おかげで、距離感が空き、仙台が反対に前を向いて仕掛けれるようになった。

 鳥栖についてもう1つ気になったところといえば、クロスの時の豊田のポジション。前までであれば、クロスに対してファーで待ち構えて、相手のSBと対峙させるようなポジショニングを取っていたが、この仙台を見る限りCBとCBの間に位置する場面が多く、駆け引きがあまり見られなかった。それでも10点取れているので大きな問題ではないだろうが・・・。

 

 仙台はここまでで1番ベストな試合をしたと思う。本当に言うことなし。相手が集中力とメンタルが弱っていたのもあるが、そういう相手にゴールを奪い続けたことは十分に評価できること。前回はこの試合が1stステージの中で重要な試合になると言ったが、こうやって順位の近い相手に勝利することで、実際に7位まで上がることができた。下はまだまだ混戦なので変動はあるかもしれないが、1stステージはとりあえずこのまま7位以上をキープしてもらいたいものである。

 ということで次も重要な試合は続く。相手は2位・ガンバ。今節みたいなことはないと思うので、まずは守備からはいることが大事かなと思う。成長が結果として表れてきている仙台。次もまた成長が見られる試合を期待したい。