ヒグのサッカー分析ブログ

ベガルタ仙台の試合分析が中心です。

ボールを保持する難しさ~J1 1stステージ第13節 ベガルタ仙台vsヴァンフォーレ甲府~

 前節、アウェイ新潟で8試合ぶりの勝利を挙げた仙台。連勝を狙うべく今節はホームで甲府を迎え撃つこととなった。

スタメン

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 仙台はリャンが出場停止で代わりに野沢。それ以外は変更点なし。甲府も新井が出場停止で代わりに下田。こちらもそれ以外は変更点なし。

 

前半~「スペース」~

 スタートから構図がはっきりした。甲府は自陣に撤退し仙台にボールを持たせる展開に持ち込む。試合前から予想通りの展開といえよう。ということで今節の仙台はこの守備網をどう崩すかが90分のテーマとなった。f:id:khigu:20191217212758p:plain  

 甲府の守備は541のブロック形成。敵陣では基本的にプレスを行わず、自陣に侵入してきてからプレスをかけ始める。仙台のゴールキックになっときに仙台のCBに牽制をかけずにすぐ撤退するあたりに甲府の徹底ぶりがうかがえた。

 甲府がまず抑えようとしたのはボランチ。富田とミンテにボールが入るとまずはパラナと下田がプレスをかけ、出所を封じる。ここでは獲りに行くというよりコースを限定しようという守備だった。次に抑えたいのは2トップ。ここは土屋と津田が担当。タイトな守備で前を向かせず、ボールを刈り取る。

 一方の仙台は、狙いどころはボランチと3バックの間のスペース。甲府のWボランチが仙台のボランチに食いつくので、その背後を野沢や奥埜が侵入し、そこを起点に攻撃のスイッチを入れようとしていた。

 しかし、そこをうまく攻めれなかった。というのも、奥埜と野沢、金園、ウイルソンがみんな足元でもらいたがるため、連動性に欠け、甲府の守備に簡単にはじき返される場面が目立った。またボールが入ってもそのあとのフォローが少ないので、攻撃に緩急が出なくなってしまった。

 仙台の攻撃はボランチと3バックの間を狙うことにしか終始せず、生み出すための駆け引きが極端に足りなかった。全体的にスペースを「探す」ボール回ししかできず、スペースを「生み出す」動きがあまりなかった。スペースを生み出すためのフリーランであったり、ポジションチェンジ、シュートがなく、ボールは動いていても人が動いていない状況が続いた。

 

 奏功するうちに次第に甲府もボールを持てるようになる。f:id:khigu:20191217212828p:plain  

 甲府は左右非対称のポジショニングを取っていた。ついでに土屋が攻撃参加してきたのもこのポジショニングが要因。攻撃の起点は最後尾の山本。仙台の2トップがプレスをかけてこなかったので、最後尾からの正確なロングフィードから始まっていた。守備であまり攻撃に力が入りにくい甲府であったが、正確なキックがある山本は非常に貴重な存在な気がする。

 そんなことも見れた前半は、0-0で折り返す。

 

後半~チグハグ~

 仙台のハーフタイムの修正はもっとリスクを負うこと。どんどん仕掛けていこうというのがテーマだった。

 その言葉通り動き出す選手たち。ただ、後半のほうが攻撃がよりチグハグだった。ボランチもどんどん追い越していこうという動きが見えたが、2トップがスペースを空けないので、前線が渋滞を起こしていた。また仙台は狙いどころのボランチと3バックの間に顔を出す選手が減っていく。みんなスペースがあるサイドに顔を出し始めて、さらに前線では距離感が空いてしまった。

 甲府の守備はほとんど変わっていない。足元にパスを出してくる仙台に対して厳しく守備をし、ボランチも仙台のWボランチのところをしっかり見ていた。変わったといえばバレーが少し下がり目になったことぐらいだった。

 いい守備がいい攻撃へつながる定義はこの試合でもあった。65分に右サイドの崩しから、逆に振って折り返しをバレーが決め、甲府先制。なぜ蜂須賀がバレーとの接触で倒れたのか、そしてそのあとすぐに立たなかったのか残念であり、疑問に思うが、人数が足りていただけにしっかり対処したかった。ここまでCBを中心にバレーを抑えていただけに無念。。。

 

 ということで攻め急ぐ仙台。しかしそれがミスを引き起こしたり、連動性が失われていく。ウイルソンも金園も孤立し、中盤はボールをもらいたがり下がっていき、悪循環は続いていく・・・。反対に甲府がカウンターから決定機を作るシーンのほうが多かった。

 最後の10分はいつものパワープレーに出る仙台だが、甲府の集中した守備を崩せるわけもなく、あっけなく敗戦。前節ようやく抜け出せたかに思われたが、またも敗戦を喫してしまった。

 

最後に・・・

 自分たちがボールを保持することの難しさを痛感した試合。というか、仙台の永遠の課題である。仙台はある程度の準備はしてきたが、前線に連動性が欠けていた。また、狙いどころに集中するあまり応用が利かなくなる仙台の悪い癖も露呈してしまった。パスに意識が集中すると、シュートへの意識が皆無になる。この試合でもシュートチャンスでパスを選択するシーンが多々見られた。前半のところで書いたように前線がスペースを生み出す動くがないので、一向に甲府の守備にズレが生じない。ウイルソンと金園がもっと3バックを動かしてスペースを作ったり、浦和戦の4点目みたいにボランチPA内に侵入していったりと変化をつけたりとリスクを負わないとチャンスは生まれない。

 確かに甲府の守備はコレクティブで素晴らしかったが、それ以上にチャレンジしていくことよりもリスクを考えた仙台の攻撃が残念で仕方なかった。

 ただ、これもいい経験。新しいチームなだけにこれを糧にさらに攻撃の精度を上げてもらいたい。また、甲府のようにがちがちに守るチームもJ1では稀有だし、そう落ち込みすぎることもないと個人的には思う。なんせ18点も今年は取れてるわけだし。

 次はミッドウィークにナビスコみちのくダービーを挟んでアウェイ神戸戦。もう一度仕切りなおして、次こそいいゲームを期待したい。