ヒグのサッカー分析ブログ

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首位撃破~第28節 ベガルタ仙台vs浦和レッズ~

 前節、実に7試合ぶりの勝利を挙げた仙台。前節から2週間空けた今節もホームで首位・浦和を迎えての一戦となった。

 結果は、4-2で仙台が勝利した。打ち合いとなったゲームの奥には、互いの監督の細かい駆け引きがあったゲームになった。

 

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 スタメンは、お互いに前節と変更なしでこの試合に挑んだ。

 

 試合を通して言えたことは守る仙台、ボールを握りながらポゼッションで攻める浦和の構図が90分通してほとんどだった。ということを踏まえて互いの狙いはと言うと・・・。

 まずは仙台の守備の狙いf:id:khigu:20190502123100p:plain

 仙台のミシャサッカー対策は、手倉森時代からの継続。仙台のお得意な442のブロックを組み、相手が前線を5枚で張り付いているところは、一方のサイドの選手を捨て、ボールサイドへまず人を集中させ、縦にボールを入れさせないことを前提とし、もし振られた場合でも逆のサイドハーフがプレスバックしながらサイドバックと挟み撃ちでボールを奪うことが狙いとしてあった。縦に入れられた場合でも素早くCBとボランチがはさみにかかることで対応している。

 

 一方の浦和の攻めの狙いf:id:khigu:20190502123422p:plain

 浦和の狙いは、前線に5枚張らせ中盤を空洞化にし、また4バックを横に広く広がせることで縦パスを入れやすくし、CBまたはボランチの選手がシャドーか1トップにボールを当て攻撃のスイッチを入れ少ないタッチで、相手の中央のスペースを崩しにかかることが1つ目の狙いである。しかし近年それもスカウティングで対応されている。その最たる例として、浦和と同じ3421にしミラーゲームに持ち込み、マンツーマン気味でつかせることで前線に5枚張らすことに対抗するチームが多い。

 しかし今回の仙台は44の守備ブロックを構築し対抗してくるチームである。が、仙台は前述のとおりの守り方をするためなかなか縦にボールを通すことが出来なかった。なので、次のステップとして、DF4枚をボールを動かすことで横幅を広げさせようという狙いになっていく。仙台が低い位置に全体が下がったことも幸いし、阿部や鈴木、時には柏木が低い位置からWBへとロングフィードを配給し、仙台のサイドの幅を広げようとしていた。そして横からバイタルへ侵入していこうという狙いを見せていたのが今節の浦和だった。

 

 しかし、仙台もそこはわかってしっかりスライドして対応している場面が多かった。浦和は、サイドへボールが収まるもののそこからの仕掛けでゴール前まで入っていくことがなかなかできていなかった。

 そして、そんなこんなで仙台に先制点が生まれる。全く流れとは関係ないセットプレーで。決めたのはウイルソン。石川のシュートをうまく変化させ先制に成功した。その前に浦和に3本連続コーナーがあったのをしっかり防いだからこそのゴールだった。ピンチがあればチャンスありである(笑)。そして、その4分後に仙台に追加点。これは浦和の守備陣の集中力を欠いたところ見逃さなかった。鎌田の自陣からのFKに抜け出したウイルソンが右サイドで収めてクロス。ファーにいた野沢がバウンドに丁寧に合わせゴールを決めた。この場面では鎌田が蹴る瞬間に赤嶺とウイルソンがうまくクロスする動きでボールを引き出した。浦和はここのところでマークの受け渡しが遅れ、ウイルソンをフリーにし、また中の野沢をもフリーにしてしまった。ミシャの言葉を借りればまさしく安い失点だった。

 しかし、ここから尻に火が付いた浦和が猛攻を見せる。この時間帯から那須や森脇がドリブルで侵入してくるシーンが増えてくる。おかげで低い位置でブロックを構える仙台はややプレスが曖昧になる場面が増えていき、セカンドボールも拾われ続けるようになる。そうすると抜け目なく襲い掛かるのが首位。30分に右コーナーから阿部のフリックにファーの興梠が合わせ1点差に詰め寄る。そして37分には森脇のアーリークロスから李がそらし興梠がうまく鎌田をワンタッチで抜き去りゴール。前半のうちに同点にする。このあたりは浦和の首位の力があるところだった。そして前半は22で折り返す。

 

 後半、浦和は平川を下げ、永田を入れる。で、選手のポジショニングの修正を行った。

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 後ろのビルドアップの人数を3人にし、3対2の状況を作り、柏木が一列下がってボールを受ける、リンクマンのような役割をやるようになっていった。柏木が下がりボールを散らすことで仙台の守備ブロックをかく乱させようという狙いがあったのかもしれない。が、逆これが浦和の攻撃をスケールダウンすることになってしまった。仙台は後半からボランチがあまり飛び出さなくなっていった。なのでリャンと富田が柏木を二人で監視するような形となり、守りやすくなっていった。また散々スライドで対応していたDFラインも4対4で数的同数になったためマークがはっきりし前半よりも戦いやすかったのではないかと思う。

 さすがに機能しなさすぎの浦和の攻撃を見かねてミシャも鈴木を右に移動させ、時には柏木がボランチを引っ張りそのスペースへ鈴木が入って受ける、まるでバイエルンのようなやり方に切り替えたが攻撃がそれでスムーズに回り始めたわけではなかった。

 そんな困った浦和をよそに仙台が勝ち越しゴールを決める。まさに意外だった得点だが、実は仙台がハメて奪った得点と言ってもいいゴールだった。那須の西川へのバックパスに赤嶺がプレスを駆け、最後はスライディングでゴールを奪った。一見、西川の完全なミスだと見えるが、那須がバックパスをし、赤嶺がプレスを駆けに行ったのと呼応してリャンや太田がほかの選手に対してのパスコースを切ったことで、西川は出しどころがなく、一瞬迷ったところで赤嶺に奪われてしまった。しっかり仙台が連動してプレスを駆けたからこその得点だった。

 その後は、宇賀神が退場になってしまい、10人で戦うことになった浦和に対し集中した守備を見せ、ロスタイムに途中出場の村上が泥臭くゴールを決め、試合終了。仙台が快勝という結果を収め残留に向けまた一歩前進することが出来た。

 

 この試合では、ここ最近の仙台らしい粘り強い守備と集中力の高さが継続して表れていた。そして赤嶺とウイルソンがアベックで点を決めたことは何よりも大きい。一時は同点にされながらもその後も切り替えてもう一回仕切りなおせたことは、選手たちの経験の高さと今年幾多となく悔しい思いをしてきた分の糧が生かされた部分だと思う。

 ただしかし、それでも失点シーンは反省しないといけない。特に2失点目、ラインがどうしても下がるため相手に高い位置を取らせることになってしまう、それが故に川崎戦でもあったがアーリークロスを簡単に入れさせ失点している。そこは修正していかなければいけない点である。特に次節は川又擁する名古屋だけにクロスの対応であったり、アーリークロスを入れさせないための寄せの早さだったりが求められることになる。

 今回勝利したことで勝ち点は32まで稼ぐことが出来た。残留できる勝ち点を40ちょっととすれば、残り10くらい稼げば問題なく残留できるだろう。今のサッカーを継続それば勝ち点も必ずついてくる。だから残り6戦、この集中力の高いサッカーをぜひ継続してもらいたい。次はミッドウィークで名古屋戦。終盤になってきての連戦、今まで以上に柔軟さが必要になってくるだろう。とにかく次節も闘ってもらいたい!!